2009年12月31日
【店舗数:---】【そば食:440】
岡山県某所
鴨南蛮そば
年末ですな。日本全国、等しく年末。
おかでん家では、年越し蕎麦村が開設され、蕎麦の振る舞い準備開始。
家族一同、新年を迎えるための掃除やらお飾りやら、あれやこれや作業が多い。
家中に正月飾りをするのだが、おかでん家の場合は井戸やら便所にも飾り付けをする。家に一体どれだけの神様がいらっしゃるんだ?しまいには、お仏壇にまで飾り付けをするので、「いや、さすがにそれは違うだろう」と家長である親父に問題提起したのだが、「これがおかでん家の流儀」ということでそのまま。これが本当の神仏混合だ。いつのまにか、新しい宗教が我が家の中に生まれているぞ。
さておかでんの年末行事はといえば、毎年恒例のそば打ち。2000年から開始して、これで9年目になる。このコーナー(蕎麦喰い人種行動観察)のと同じ歴史を歩んできている、そば打ち。「そば打ち歴9年」ともなればさぞやお上手でしょう?と言われそうだが、年々劣化しているのはどうしたものか。悪い意味で、肩の力が抜けすぎている昨今。
昔は、「生地が劣化するからストーブは消せ」とか、「台所で炊事はやめてくれ」などと神経質な事を母親に言っていたものだが、今となっては「ボク勝手に蕎麦打ってますんで、いつも通りに過ごして頂いて結構です」と腰が引けているありさま。それに、家族側も、昔は興味津々でこちらの作業を見学していたものだが、今は誰も興味を示さない。
「昔はあの飯屋、美味かったのに・・・今じゃ、店は汚いし飯はまずいし、もう行かないよ」
という飲食店は数多い。時間の経過は、人のモチベーションを削ぐのだろう。大いなる煩悩・おかでんもその法則からは逃れられなかった。
さて、今年も古河製粉から蕎麦粉をネット注文した。長野の方に良い製粉所があるという情報を手に入れていたのだが、割粉や打粉とセットにした販売をやっていなかった。ちょいとそば打ちしたいだけなんスけどね、というおかでんにとってはこれはNG。結局、品質には問題ないし使い勝手が良いセット品があるしで、古河製粉さん今年もよろしくー。
今年は、既に割粉が混合されている「特上・二八そば」を購入してみた。1袋300gで、5袋+打粉のセット。1袋3人前相当の蕎麦が打て、蕎麦打ち体験などの使用に最適なんだそうだ。別におかでんは蕎麦打ち道場を開設するわけではないが、適量を使って粉を余さない方が良いので、これを選んだ。毎年、大量の割粉などが余って困るからだ。ただし、お値段は当然割高。
家族の誰からも相手にされない中、蕎麦打ち開始。
おかでん家は2009年、兄貴に子供ができた。まだ生後4カ月なのだが、数年もすれば「おじちゃんー、私もやらせてー」なんて言い出すに決まってる。で、蕎麦打ちをその「姪」に教えることになるだろうが、そこでできたグダグダの蕎麦を、一家全員「おいしいねー」とベタ褒めするに決まってる。
しかも、
「やっぱり○○ちゃん(おかでんの姪)が作った蕎麦はいいねー」
「来年からはおかでんじゃなくて、○○ちゃんに作って貰おう」
「うん!わたしがんばる!」
なんて展開になって、おかでんの立場喪失。いじけながら、「もういい。俺来年からやらない。二度と蕎麦打ちやんねぇ」と大晦日の町に飛び出す事になるだろう。
蕎麦打ちをするのもあと数年かー、なんて勝手に妄想して勝手に感傷に浸りながら、蕎麦を打つ。おっと、水の量が多すぎたようだ。いけねぇ、目から何か水がたくさん出て止まらねぇや。
泣いているのは冗談だが、今年は「加水率多め」がテーマだ。昨年は水を少なめにして入念にこねくり倒したので、腰があるというより「単に固い」蕎麦ができてしまった。その反省から、今年は柔らかめに、ふんわりと仕上げようという魂胆だ。
しかし、「水をじゃばーっとな」といい加減に加水するため、生地がベタベタになってしまい慌てて粉を足す、などとありえん展開。
脱力気味で蕎麦を打っているので、生地を延ばす時なんて、食卓の椅子に座っちゃってもう。
柔らかくなりすぎて、生地が気持ち悪いくらいぐいぐい伸びていくので焦る。
食卓のサイズでは生地が収まり切らなくなってしまった。
江戸流の蕎麦打ちのように、三本ののし棒が欲しくなったくらいだ。今までは、あんな複雑な事できねぇ、とはなから興味なかったのだが、今日だけは真剣に欲しい。
あー、ついに生地が食卓からはみ出たよ・・・。
「生地がデーブルからはみ出ている光景」を写真に収めようとしているうちに、あっという間にびりびりと生地が破れ、床のカーペットにダイブ。ああああああ。なんてことを。
※撮影に使われた食材は、撮影後スタッフがおいしくいただきました。
毎年、どこまでグダグダに蕎麦を打てるか選手権をやっている状態だが、今年は過去の王者を蹴散らす圧勝っぷりで蕎麦打ち完了。酷いにも程がある。
これはぜひ友愛のココロで食べていただきたい。
気を取り直して、そばつゆをつくる。
今日は鴨南蛮を作る予定。昨年、にしんそばに挑戦して悲惨な目にあったが、今年は「鴨肉様の旨みで、なんとか蕎麦料理としては合格点に挽回」を目指している。一昔前は、「鴨は美味すぎて、卑怯。俺様の美味なる蕎麦を食べるのに鴨は不要」くらいの意気込みだったが、今年はチキン過ぎる判断。鴨様おねげえしますだ。
鴨南蛮といえば、鴨ロースと長葱がトッピングされているイメージだが、先般松江の「八雲庵」で食べた鴨南蛮を真似てみることにした。即ち、鴨肉も葱もつゆで煮込む。
今回、鴨肉は二種類用意してあって、豚肉みたいな「細切れ」肉と、ロース肉がある。細切れをかつおだしのつゆにドロップ。そして、長葱の青い部分も細かく輪切りにして、つゆへ。はっはっは、これだけで勝ったも同然だ。
鴨ロース(?)の方は、フライパンであぶる。
本当はグリルを使って網焼きにしたかったのだが、面倒なのでフライパン。
焼いてみると、なんだかやたらと縮んでしまった。脂身だけご立派に残ったので、何だか見栄えは悪い。うーむ。
鴨肉から出た脂を使って、そのまま葱も炙る。
3kwの火力を持つIHヒーターは素晴らしい。激しく脂がはぜつつ、葱に熱が入っていく。我が自宅の電熱コンロは、コップいっぱいの湯を沸かすだけでも5分はかかるぞ。
しかし、こっちが期待していた「純白の体に真っ黒な焦げ目」の葱にはならず、こんがりと焼き色がついた。そうか、フライパンだとこうなるんだな。まあいいや。
母親から、「なるとがあるけど使う?」と言われたので、有り難くその案を頂く。
なるとが蕎麦の上にナイスオンするのはあまり例が無いことだろう。でも、彩りが良いし、案外この食材は良いものだ。茶色茶色してしまう蕎麦に、華やかさが伴う。ただし、あまりじっと見ていると目が回るけど。
2009年おかでん家の最後の一皿。年越し蕎麦、鴨南蛮。
なるとがちょうど良いアクセント。
家族からは「うまいうまい」「昨年より良い」というお褒めの言葉を賜った。しかし、いざ自分で食べてみたら、蕎麦は短いし、湯切りが甘くてつゆが薄まっているしで、そんなに美味いもんではなかった。ただ、やっぱり鴨様は偉大なり。鴨のおかげで助けられた。鴨神社というのがもしどこかにあるなら、ぜひ一度参拝してみたいものだ、と本気で思った。やっぱり、トッピング鴨と煮込み鴨を分けたのは大正解だ。トッピング鴨だけだと、鴨の旨みがつゆににじみでないけど、別肉を煮込んでおいたので鴨だらけ。鴨の大群が味蕾に襲撃だ。
おかでんの丼には、うまく切れていない麺や、ダマになった麺などをまとめてこっそりと入れておいた。家族にはバレないように。家族の手前、俺様の蕎麦はきちんと切れているだろう?どうだ?という傲慢な態度は崩さない。
今年は、「蕎麦湯を濃くしてやろう」と、余った打ち粉を切った蕎麦の上にばっさりと振りかけておいたのだが、そのせいで蕎麦が団子になってしまったのだった。そうかー、こうなってしまうとは今更ながら想定外だった。
ただ、そのおかげで蕎麦湯は今までにない濃厚なやつに仕上がった。ポタージュ状の一歩手前だ。だめ押し、と最後に残っていた打粉を投入してみたら、ダマになってしまい大失敗。一度にどばどばと入れてはいかんな。昔も同じミスをやったことがあるが、いまだ学習できていない。
この蕎麦湯を飲んで、ほっこり。あー、温まる。今年もお疲れさまでした。
来年はこの蕎麦湯のように、まったり、もったりとした一年をのんびりとすごしたいものです。さようなら、2009年。
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