そばきり 沙羅の花

2010年10月14日
【店舗数:256】【そば食:452】
東京都台東区上野

蕎麦刺し、たらこの料理(名前忘)、鴨せいろう、青森の地酒(名前忘)、豊杯、萩ノ露

沙羅の花

御徒町にある中国東北料理の店、「故郷味」。犬肉料理が食べられる店であり、ガチな現地料理を提供している。そんな料理に魅せられて、「犬肉オフ」と称してオフ会を開いたことがある。

犬肉も名物ではあるが、中国東北料理といえば羊肉の串焼きが不動のNo.1名物。これを卓上で焼きながらビールを飲むというのはたまらんね、と思考する夕暮れ時のおかでん。いやね、仕事が早く終わったので、昼下がりでも飲める店はないものかと考えていたのですよ。で、そういえば故郷味が昼から夜まで通し営業だったな、と。

故郷味に入ろうかどうしようか思案して店の前で立ち尽くしていたら、おや隣は金沢名物の「ゴーゴーカレー」じゃないか。酒を飲むのをやめてカレーというのも手だね、と考えがブレる。さらに、道路を挟んで対面には「楽釜製麺」という新興のセルフ讃岐うどんチェーン店がある。うどんもいいぞ。

選択肢が多すぎて、というか考えがブレ過ぎて収集付かなくなったときに、ふと目にとまったのがこのお店。「沙羅の花」という。楽釜製麺のすぐ隣にあり、静かな佇まい。ガード下にあり、周りの雑踏のなかでは完全に没個性化している。こんなところに蕎麦屋、あったんか。

非常に気になったが、夜からの営業ということでまだこの日は開業していなかった。ううむ気になる気になる、とぶつぶつ言いながら、結局気勢をそがれてしまいこの日は大人しく自宅酒。日を改めて謎の店に潜入することはその日の「一人閣議」にて満場一致にて決定されたのだった。

店頭のお品書き

都心で、「没個性的なところが個性的」な蕎麦屋ってお高いんでしょう?とまず疑ってかかるべきだ。蕎麦いっぱい手繰ったところで爆死することはないにしろ、予想外な出費になるのは誰も望まないことだ。
このお店は、店頭にちゃんとお品書きが値段とともに明示されているから分かりやすい。ポッキリのお値段で提供ですよ。

んーと、せいろう1,000円か。高いっちゃあ高いが、ギリギリおかでんの許容範囲。しかし気になるのは「お造り」があるということ。ここ、蕎麦店か?蕎麦店でお造りかぁ。なんか目指す方向がこちらの想像の斜め上を行ってそうな予感がプンプン。1,500円でお造り、となるとその他のメニューもそれなりに値段がいくぜ、そのかわりいろいろ凝ったモンも出すぜ、という宣戦布告っぽい。ちょっと怯むが、今更後には引けぬ。それ、扉をあけよう。

と、その前に。

何だよ、まだ入らないのかよ。

いやね、こうやって営業中の暖簾を見たのは今回が初めてでね。過去2回、棒に振ったもんで。一回は臨時休業だったらしく、あともう一回は店主が買物に出かけていてシャッター閉まってた。営業時間になっているのにこれじゃ店が開かないわー、ってことで諦めた経緯あり。というわけで今回は3度目の訪問ね。

店内のカウンター

わおう。

中に入ってびっくり。間口が狭い店ではあったが、中もそのまんま。で、鰻の寝床状になっているかと思うと、そうでもなく奥行きもあまりない。しかし、階段を登って二階席もある。狭い空間を最大限使っている。

一階は寿司屋のようなカウンター席5席。カウンターにはガラスケースがあり、その日とれたネタが並んでいる・・・って、ほんと寿司屋じゃねぇかこれ。ケースの中には海老やらからすみが並べてあった。

ランチョンマットのかわりに木の板が使われているのが、おしゃれといえばおしゃれ。この店は椅子、カウンター、扉、階段・・・とふんだんに木材が使われている。椅子など既製品ではないようなので、ひょっとしたらご主人の手作りかもしれん。

おっと、見とれていてはいかん。足下注意。この店、靴を脱いでスリッパに履き替える流儀なのだった。「ほぉー」などとインテリアに感心してそのまま歩を進めると、お店の人に怒られるぞ。

店主の奥さんとおぼしき方がおかでんを出迎え、カウンター席へどうぞ、と案内する。えーと、どうしようかな。末席に座ったら、「どうぞよろしかったら真ん中に」と言われ、恐縮しつつ5人席の真ん中へ。

カウンターと対峙

いやー、居心地悪いっす。

なにせ、カウンターを挟んでご主人と一対一の対決になる場所だもの。こっちは料理の写真をとったり挙動不審な客。あんまりご主人と真っ向勝負はしたくないねぇ。

動揺してしまい、「とりあえずビールを」。と言って場を繕う。ええと、メニューメニュー。メニューも張り紙もどこにもないぞ。

生ビールがグラスで供されたが、非常に薄いガラス製のグラス。これで飲むとビールの美味さが一層際立つのでうれしい。蕎麦屋のいっぱい目はぜひこのグラスで頂きたいものだ。居酒屋ビールだったら普通のぶ厚いグラスでも構わないが、蕎麦屋はするり、さらりとビールを飲みたい。

で、間が持たなくなった。ええと、どうしようか。店内には奥さんだけ。

「あの、この後清酒を飲んでいこうと思うんですが、お酒のつまみになるものって何がありますか?」
「今大将が上から降りてきますから、しばらくお待ちください」

うーん、どうも間が悪い。多分俺、この店と相性悪いぞ、というのになんとなく気がついた。歯車がかみ合わない。

で、十分溜めを作った後に二階から降りてきた大将。蕎麦屋の店主でも「大将」って言うんだな。従業員は奥さんだけでも「大将」なんだな、と感心していたら、

「どんなものがご希望ですか?」

と大将から聞かれた。いや、どんなもの、と言われても。まずどんなものがあるのか知らないし。「カレーが食べたいです」とかよっぽど言ってやろうかと思ったが、さすがにそこまではできず。

「どんなものがありますか?」
「どんなもの、って言われても・・・いろいろありますよ」

はあそうですか。いやだからそれをなぜ張り紙などで告知しないのかね大将。

そんないまいちノリの悪い会話をしているうちに、手元にお品書き発見。黒い、表紙に何もかかれていない冊子のようなものに書かれていた。しかし、そこにぽつりぽつりと書かれている料理は値段が書かれていなかったり、「お造り2,500円~」とか「コース料理5,000円」といった文字列が。やばい、ここでおまかせにすると財布の中身が吹っ飛ぶぞ。

今一応8,000円ほど財布の中身があるな、と注文を前に思わず確認してしまったくらいだ。

何を扱っているのか要領を得ないが、そんなに高くはなさそうなものに絞って注文。

自家製豆腐

ビールの付きだしとして自家製豆腐が出た。

非常にざらざらした食感が面白い。おからになる部分も捨てずに使ったのだろうか。こういう繊維っぽい豆腐ははじめて食べた。これがビールのつまみにあうかどうかは疑問だが、面白い試み。ただし、大豆の風味は殆どしなかった。

たらこ

注文時のドタバタで間をつなぐためにビールを早々に飲み干してしまっていた。ええと、次は清酒にしよう。清酒、何があるんだろう。
すると、奥さんが「いろいろありますよ」と、冷蔵庫の中から一升瓶をゴトゴトと持ってきてくれた。わざわざ全種類、6本を持ってきてくれて恐縮。さあどうぞ、と6本の一升瓶を示されても、どれも聞いたことがない銘柄ばっかり。さてどうしたものか。

とりあえず、「ふーむ、なるほどねぇ」などとラベルを読んでみたりして、適当に選ぶ。

その間に、注文した酒肴の一品が届けられた。たらこの桜なんとか、という名前で、正式名称は忘れた。簡素なお品書きには当然書かれていない。たらこを桜に見立てたそうだが、やや無理があるような。でも、酒肴としては悪くない。

蕎麦刺

蕎麦刺。

500円という値段に惹かれた事もあって、名前の珍しさと相乗効果で頼んでみた。

出てきたのは、氷水の中にある、チューインガム状の蕎麦。切る工程の前のものを短冊サイズに切ったのだろう。それをゆでて、冷水で締めてある。

食べてみたら、当然の事ながら結構堅い。で、噛み噛みしていると、蕎麦のうまみがじんわりとにじみ出てくるのだった。おおっと、これは予想外に美味いぞ。下手なそばがきなんぞよりこっちの方がうまい。これはおすすめ。しかも、一人で食べるには結構量があるので、食べきるまでそれなりに時間稼ぎができる。酒飲みにとって、「時間稼ぎができる肴」というのは重要。ありがたい。しかも、添えてある薬味のわさびがすりたてで爽快な辛さ。蕎麦刺に非常によくあった。

ただし、後生大事にちびちび食べていたら、だんだん白っぽくなってふやけてしまった。味が落ちてしまうので、適当なところで冷水からサルベージしてやらんといかんらしい。

鴨せいろうの付け汁

鴨肉をアテに酒を飲み続ける

鴨せいろうの鴨だけ先に持ってきてもらった。鴨肉をアテに酒を飲み続ける。「萩ノ露」というお酒を頼んでいたのだが、てっきりこれは山口県萩市の地酒だと思い込んでいた。帰宅後調べてみたら滋賀のお酒だと知ってびっくり。

鴨肉は脂身がすくないため、鴨独特のまとわりつく、過剰なうまさがつゆには伝染していなかった。これは好き嫌い分かれるところだが、個人的にはあの過剰なうまさを期待していたのでちょっとがっかり。

蕎麦

蕎麦アップ

最後、蕎麦。

ここも木材にこだわりました、ということでお皿のかわりに木の板で登場。皿盛りや箱盛りの店は最近増えつつあるようだが、まさか「木の板」が皿がわり、というのは滅多にないだろう。木の板を敢えてつかう合理性はおそらく存在しないはずなので、格好良いかどうか、という一点でこの方式にしたと思われる。

もちろん、水切りが悪くなってしまう点については店側も考えていて、きっちりと麺は水切りをし、板の上に水たまりができないようにしてあった。

これ、そこら辺のベニア板を持ってきたらできあがり、というわけにはいかない。臭いが移らないものである必要があるし、何度も水洗いしても大丈夫な材質、水はけのよい材質・・・などを考慮しなければならない。ご主人よく考えたな。

で、肝心の蕎麦だが、細い!そうめんか、というくらい細い蕎麦だ。これを打てるというのは結構な腕だと思う。しかし、細いが故にのどごしはよいが、蕎麦の香りも味もはかなく切なく小さくなってしまっているのが惜しすぎる。先ほど食べた蕎麦刺の方がよっぽど蕎麦の蕎麦たる美味さがあった。ただこの好みは人それぞれ。おかでんにはうまく合わなかったが、他の人なら「ビバ細麺」かもしれない。しかし、こんな細いのははじめて食べた。なぜここまで細くしたんだろう?

面白い試みをやっているお店だと思う。しかし、おかでんにとっては全くこの店とスイングせず、ボタンの掛け違いが直ることはなかった。食事中ずっと店主は無言で海老の下ごしらえをし、奥さんは僕からのオーダーを待つため店の片隅で待機。これで居心地が良いって言うのは無理だわ。

多分、積極的に大将や奥さんに話しかけ、料理について質問したりしていたらぐぐぐぃと楽しい空間になっていたと思う。しかし、この日のおかでんは手元の本を読みつつ酒と蕎麦を楽しみたかったので、そういうモードではなかった。店とのコミュニケーションを最小限にした結果、針のむしろ状態の居心地の悪さに。あともう一人、誰か連れがいたら全然違った印象になっただろうに。

しかも、その読みたかった本だけど、テーブルの上に広げようにも、隣の席にはランチョンマット風ボードが既に乗っかっており、箸もセットされている。思うように本をおけず、ますます居心地が悪くなったのだった。

最後、お会計。6,800円。うひゃー。

お酒3杯がきいたな。多分1杯1,000円くらいはしたのだろう。値段書いてないのは駄目だよ、これ。そういうのが「粋」だと思って居るのかもしれないけど、単純にサービス精神が足りないだけだってば。危なく、財布の中がすっからかんになってしまうところだった。