粗挽き十割蕎麦 胡桃亭

2010年10月18日
【店舗数:257】【そば食:453】
栃木県那須塩原市一区町

せいろ蕎麦

蕎麦畑

10月半ば。そろそろ蕎麦シーズン。さあ、蕎麦を食べに行こう。

多分、この時期下手に郊外に出るよりも、都心の蕎麦屋の方が蕎麦は美味いはずだ。なぜなら、「地粉」など手に入らない東京だと、良い意味で節操なくその時期おいしい蕎麦粉を採用するからだ。多分、北海道産の新蕎麦は9月下旬には広く流通していたはず。

しかし、都心の蕎麦屋、しかも通勤ルートから外れる店にわざわざ繰り出すというのはなんとも気乗り薄。ましてや週末、蕎麦屋のために都心をさまようのはなおさら。「ラーメン二郎遍路」とは違い、蕎麦というのは繊細であり、故にガツンとした満足感はない。じわじわと、心地よい。そのため、その蕎麦のために何か事を起こすというのはやりにくいのだった。

となると、ドライブだとか温泉と組み合わせての蕎麦食べ歩きが一番楽だ。そんなわけで今回は「栃木までドライブして、喜連川温泉に入ろうwith蕎麦食べ歩き」という企画にした。3軒ないし4軒、食べ歩くつもり。

東北自動車道矢板ICを下りてみてびっくり。インター出てすぐのところに蕎麦畑。後で調べてみたら、このあたりも蕎麦の生産が積極的に行われているらしい。しまった、それは聞いていなかったぞ。

蕎麦の産地である→地物の蕎麦粉にこだわって蕎麦を打つ店が多い→関東界隈の平野部で蕎麦が収穫されるのは10月末から11月入ってから→この時期蕎麦を食う奴、ルーザー(負け犬)

という論法になる。

結果的にこの日訪れた4軒とも、地産地消を謳ってはいなかったので、ルーザーにはならなくて済んだ。

眼前に広がる蕎麦畑は、実をつけており刈り入れを待つ状態。今年は豊作のようだ。それにしても「雑穀」とはよく言ったもので、麦や米といった穀物と比べて全然色気のない見てくれなのだった。これを見ても、「実りの秋」という言葉はなかなか浮かんでこない。

胡桃亭

この日訪れた一軒目は「胡桃亭」というお店。
11時半の営業開始時間になっても開店する気配がない。店内を覗いても、人の気配がしない。手元にある蕎麦ガイド本は少し古いものなので、ひょっとしたら廃業したのかもしれない。諦めて帰ろう・・・と思ったら、暖簾を抱えた店員さんが出てきた。あ、営業するのか。

あともうちょっとで、「胡桃亭、多分閉店っぽい」と書かれるところだった。風説の流布しなくて済んでセーフ。

お品書き2

お品書き1

ここ最近は複雑怪奇なお品書きに翻弄されてきたおかでんだが、このお店は至ってシンプル。しかも、車を運転していること、この後食べ歩くことを考えれば自ずと選べる品物は限られてくる。おとなしくせいろ一枚手繰っておこう。
おや、ちょっと待った。「蕎麦三位」というのがあるぞ。

蕎麦がき、ざる蕎麦、かけ蕎麦のセットで1,600円。

これだ、これはナイスすぎる。

早速頼んでみたら、店員さんが「少々お待ちください、確認します」と厨房にお伺いを立てにいった。確認もなにも、鮮魚の入荷次第で・・・みたいな不確定要素はないぞ?何を確認しているんだ?と余裕をぶっこいていたら、「できません」の回答。な、なんだってー。

よく見ると、お品書きの左端に「二名様より」と書いてあった。うわあ。ここでもお一人様のハードルが。男女平等が叫ばれて久しい世の中だが、そろそろ「お一人様平等」「お一人様バリアフリー」の概念が世に出てもよいのではないか?

「二名様」の言葉に駄目おしするように、お品書きの下にはこんな言葉が。
「当日の蕎麦の状態によってお造りしない時があります。混雑時の際にお断りする時があります。作りたい時に作る我が侭メニューです」

だって。まあ、ここまで腰が引けているなら、「ぜひに」とはいえんわな。

結局、「せいろ蕎麦」を頼む。【二段】と記されていて、お値段1,350円。ちょっと値段が高いが、二段重ねなら仕方がない。このあたりの蕎麦文化って、長野県の木曽福島界隈のように二段重ねがデフォルトなのだろうか?

ちなみにさらに一段積み重ねたい人は「おかわりせいろ」といって、汁や薬味なしの蕎麦のみが650円。これでわんこせいろでもなんでもしちゃってくれ。

注文した後になってメニューをよく読むと、「ざる蕎麦」なるものが800円であった。あ、ざるでもよかったなぁ。

蕎麦屋において「せいろ(または「もり」)」と「ざる」があった場合、普通「ざる」とは刻み海苔が載ったものを指す。100%そうとは限らないのが紛らわしいのだが。海苔と一緒に蕎麦を食べてしまうと、蕎麦の風味が負けてしまうことが多いので、意図的に「ざる」は頼まないようにしていた。でもこの店の場合、ざるでも有りだな。

なんで「せいろ」はデフォルトで二段積みなんだろう?

せいろ

せいろアップ

せいろ。

粗挽きの蕎麦粉を使っているせいで、表面が若干モコモコしている。十割蕎麦ということだが、十割蕎麦にありがちな神経質な見てくれではない。

モコモコ蕎麦が好きか、しゃきっと表面が引き締まった蕎麦が好きかは人それぞれだが、モコモコ蕎麦のハズレくじをひきあてるのと、しゃきっと蕎麦のハズレくじを引き当てるのでは後者の方が確率が高い。よって、モコモコの方がおかでんは好きだ。

新蕎麦を使っているようで、蕎麦の香りと味は上でき。口にしてしばらくしてじんわりと広がる甘みは、ご褒美のようでうれしい。

しかし、水切りがあまく、すのこの上に水たまりができていた。盛られた蕎麦の底の方を食べる際、水気のせいで味が薄まってしまったのはご愛敬。すのこって、水気を切る働きがあるかと思いきや、実はほとんどそんな機能はない。蕎麦のせいで若干ぬめった水気は、すのこのところで溜まってしまうのだった。

そば湯

「ゆで湯ではなく、蕎麦粉を溶いて作った」蕎麦湯を頂く。

つゆがちゃんと徳利で提供されているので、お好みの濃度で頂けるのがありがたい。ただし、つゆはギリギリ使い切る程度の量なので、蕎麦を食べる際に盛大に辛汁ダイブしていると、調整の余地がなくなるので注意。

このお店、蕎麦はおいしいと思うのだが、2段重ねで1,350円というのはちょっと痛い。廉価版の「ざる」がどのようなものかは確認とれていないのだが、2段重ねでほどよい量であることを考えれば、「ざる」は「ミニサイズ」に相当するものだろう。結局コストパフォーマンスという点で厳しいと言わざるを得ない。

美味い蕎麦は高いんだよ!というのは間違いではないが、リピートしづらいというのもこれまた間違いではない。蕎麦屋稼業ってのはシンプルに蕎麦粉で勝負するだけに、厳しいね。チャーシュートッピングだとかつけ麺だとか、いろいろ付加価値をてんこ盛りできるラーメンとは違う。