2011年05月28日
【店舗数:277】【そば食:478】
埼玉県秩父郡横瀬町
九割蕎麦
秩父の手前、横瀬は「武甲山」のふもとにある。武甲山は山全体が石灰岩でできているため、恰好の石灰採取の場となっている。秩父のシンボルとなる立派な山ではあるが、今では山の半分が山頂直下からおなくなりになっているというありさまだ。人類がやらかした傲慢さ、ともとれるが、これはこれでフォトジェニックで個人的には好きな眺めだ。
おかでんが大学時代、一眼レフのカメラを買ったとき、初めてそのカメラを利用したのがこの武甲山だった。山に登るということ、写真を撮りまくるということというこのサイトの根底にあるおかでんの「趣味」は、ここで培ったといって過言ではない。発破した石ころを運ぶダンプカーに煽られながら何度も登ったものだ、武甲山。
そんな石灰の町・横瀬の一角に「花いかだ」というお店がある。蕎麦を打つ際、つなぎとして石灰を混ぜるのが特徴。オヤマボクチを入れる(北信)、フノリを入れる(中越)といった例はあるが、石灰を使うのは他に例を見ない。
・・・他に例を見ないどころか、そんな店どこにもあるもんか。うそつくな、うそを。
そんなうそがまかり通るなら、材木店の隣にある蕎麦屋はおがくず入りです、とか青森の蕎麦はホタテの殻入りですとかなんでもありになっちゃう。
お店の近くには強アルカリ性の温泉として有名な武甲温泉がある。そのphは10.5。日本有数のアルカリだ。蕎麦食って風呂入って、という楽しみ方ができる。ついでに武甲山に登れば言う事なしだ。
お店の外観は普通の民家。植物に覆われていて迷彩が効いている。おかげであぶなく通り過ぎるところだった。表通りから路地に入ったところにお店は位置しており、よくこんなところで商売できるもんだな、と感心する。ちなみに駐車場がどこにあるかわからなかったので、お店から少し離れたところの広いスペースに路駐した。駐停車禁止ゾーンじゃないので一応セーフ。
店内は4人掛けテーブルが4つしかないこじんまりしたお店。
民家の一部を宿として開放したものを「民宿」と呼ぶならば、このお店の場合「民蕎」と呼びたい。もっとも、このお店が民家と兼ねているのかどうかは知らないが。
お品書きは大きく文字を書くべきです、というポリシーでもあるのだろうか?全ページ大きな字で書かれていた。1ページ1品、なんていうのが多く、おかげでページ数はやたらと膨大。老眼の方も安心。
この巨大メニューのメリットは、「今日はこの料理は提供できない」となればそのページだけ抜き取ればよいということ。一ページにたくさんの料理名を列挙していると、こうはいかない。賢いっちゃあ賢いやり方。とはいえ、一覧性に欠けるので、一体このお店の料理の全貌はどうなってるのっ、というのがよくわからない欠点もある。
トンポーローを扱っているあたり、このお店が「単なる蕎麦屋では終わらないぜ」という意気込みを持っていることをうかがわせる。
限定の蕎麦が通常メニューとは別にあった。
「花いかだ定番の挽きぐるみ 八割蕎麦 700円」
「玄蕎麦を挽きぐるにして黒くて力強い 九割蕎麦 800円」
むう、ここは「定番」と称している八割蕎麦を選びたいところだが、この日はこれまでに3軒の蕎麦屋を巡ったためにそろそろ違った味を楽しみ隊OnTheWeb。というわけで、九割蕎麦をお願いしてみた。
蕎麦粉の割合が1割増えると100円アップか。ということは、二割蕎麦というメニューが存在すれば100円で食べられるのだろうか。わくわく。一割蕎麦だと、無料サービス。そんな馬鹿な。
九割蕎麦だが、「玄蕎麦を挽きぐるにした」ということから、いわゆる「田舎蕎麦」のことを指しているらしい。田舎蕎麦は店によって結構当たり外れがあるからなー、さてどうかな。
出てきました、九割蕎麦。
庭で摘んだのであろう花がお盆に添えられているのが麗しい。でもそのせいで、写真を撮るときに肝心の蕎麦が遠くに写るアングルになってしまった。この写真の主役は蕎麦でも花でもなく、つゆ。なんのこっちゃ。
蕎麦はがっつり挽きぐるみしやがってるおかげで、繊維質が多い。噛むとキシキシする。麺は短めだが、食感がキシキシぼそぼそなのでそもそもつるッと手繰る類のものではない。これくらいの長さで良いと思う。蕎麦の香りは十分。そうだよこれだよこれ、田舎蕎麦ってのはワイルドに香らないといかんですよ。そう合衆国憲法にも書かれているはずだ。その点この蕎麦はいう事なし。田舎でございと言いつつ全然ワイルドではない蕎麦とは雲泥の差。
つゆは辛い。若干後味がイガイガした感じをうけるからさだが、インパクトの強いこの蕎麦ならそれくらいがちょうど良いと思う。
麺をわざと残しておいて、蕎麦湯で温めて食べるとちょっといいかんじ。キシキシ感が若干ふんわりしてくる。この麺で温かい蕎麦を食らうのもありだな。
バランスよくおいしい蕎麦だと思った。ただ、普通においしいから二度目の訪問はあるだろうか?と心配になってしまうお店でもあった。もうちょっと欠点があった方がむしろ気になってまた訪れてしまうじゃねぇかこの野郎、ってことがあるかも。
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