2011年05月29日
【店舗数:278】【そば食:479】
茨城県守谷市大柏
茗荷せいろ、そば団子
今日は茨城県の守谷市界隈の蕎麦屋を巡ろうと思う。台風が近づいていて雨が降る天気。気温もずいぶんと下がっている。こういうときは、美味そうな品があれば暖かい蕎麦を食べるのも良いかもしれない。これまでのようにストイックにもりそばを食べることもあるまい。
一軒目は「蕎山」。アサヒビールの茨城工場の近くにある。このポジションだったら夜な夜な、闇夜に乗じてビール泥棒ができるんじゃなかろうかと、想像するだに唾液が溜まる。
なんでもここのご主人、もともと奥久慈で大繁盛店をやっていたそうだ。一日800食出たこともある、というのだから、どこのサービスエリアの話だ?というレベル。その店を知人に譲り、本人は軽井沢に移ってお店を始めたのはなるほど納得だ、最盛期だと夜中の2時から蕎麦打ちをやっていたということなので、体が壊れるのは時間の問題だったのだろう。しかし、茨城の人たちは許してくれず、戻ってくるよう乞われて、ご主人は再度茨城の地へUターン。そんなわけで、今ではここ守谷の地でお店を開いている、という流れ。
マイペースでお店をやりたいと思ったからかどうかはわからないが、幹線道路から脇道に入ってしばらくのところにある。しかし、建物そのものは立派で、なんと水車がぐるんぐるんと回っている。目立ちたいのか目立ちたくないのか、どっちかよくわからない。
店内に入ると、ご主人がにこにこしながら出てくる。接客はご主人がやるらしい。とてもおしゃべりな方で、あれこれしゃべってくれる。どこから来たのか、とかなんでこのお店を知ったのか?とか。
客席は広く、かつて繁盛店を切り盛りしていた余韻とご主人の自信がうかがえる。今日は雨だし、まだ開店直後なので客がゼロだけど、混むときは結構混むのだと思う。
出てきたお茶は冷たい蕎麦茶。蕎麦茶といえば暖かいものが出てくるのがふつうだけど、ここはグラスに入っての冷たいお茶。風変わりだが、おいしかった。
弁が立つご主人はお品書きにおいても同じだった。なんかものすごくびっしりと蕎麦について注意書きがあるんですけどー。
「当店の蕎麦は生きておりますので電話が長引きますとそばが死んでしまいます。誠に勝手ながらご注文後の携帯電話はできるだけお切りくださるようお願いいたします」
だって。まあ、ごもっともな話だ。
とはいえ、「電話してしまったんですか?電話したら蕎麦の味がわからなくなるじゃないですか。出て行ってください!お代はいりませんから!」とまくし立てるような雰囲気ではない。もっとゆるやかな表現なので、この文章を読んでも不快感を招かないところがすばらしい。
とはいえ、写真右のように延々と蕎麦の食べ方が書いてあるあたり、執念を感じる。
ご主人は言う。「本当はネギもわさびも、薬味は使ってほしくないんですけどね」と。でも、注文した蕎麦にはちゃんと薬味がついてくるあたり、「大衆迎合」するか「わが道を行く」かで悩んだ結果なのだろう。
本日一軒目だし、ここは妥当にせいろそばを食べようと思っていたが、お品書きを見ていたら妙な一品を発見した。
「茗荷せいろ」。
変わり蕎麦で茗荷を練りこんだものかと思ったが、写真をみると蕎麦の上に茗荷がオンされているぞ。これは面白い。
ご主人に
「変わった蕎麦ですねえ」
と話をもちかけたら、先ほどの「薬味もそうだけど茗荷も蕎麦の味がわからなくなりますからねえ」と残念そうに言う。「すべてのせいろに200円でトッピング可能」とお品書きに書かれているようなフットワークの軽さで、お店としては大推薦しているとしか見えない。でも、なんだかご主人はそうでもないような顔つき。
「そばをすするときにうまくすすれないんですよ。茗荷がひっかかるので」
とかいう。さすがにおすすめしないとは口が裂けても言わないが、どうなんだろう。
ご主人とメニューとを交互に見る。
おや、メニューには「お試しください」と書かれているぞ。よし決めた。これをお試ししてみよう。すいません、この「茗荷そば」ください。
もうね、最近蕎麦食べてこのサイトに文章書いてて、平凡なせいろについてコメントするのに疲れたんですよ。ボキャブラリーなんてないのに、なんとか形容しようとするこの辛さ。だから、ちょっといつもと違う蕎麦ってのに手を出してみようぞ、と思った次第。
茗荷せいろ950円。
おおお!これはビジュアルが素晴らしい。メニュー写真よりも実物見た方がよっぽど色鮮やかで食欲をそそる。
蕎麦の上にまんべんなく刻まれた茗荷が散らされている。茗荷を何個使ったのかはわからないが、結構な量だ。でも、ざるそばにおける刻みのりのように、彩り程度の量では面白くない。味が茗荷に持っていかれようとも、これくらい豪快に乗せた方が良いと思う。
ご主人、これいいアイディアだと思いますよ。ご主人的には、その他の薬味同様小皿で茗荷を提供し、必要に応じて少しずつ茗荷と蕎麦を混ぜて使ってね、としたかったとは思う。でもそれじゃだめだ、このようにぐわっと茗荷を盛ってこそ、茗荷そばの名に恥じないと思う。
食べてみる。最初は茗荷を避けて蕎麦だけで、と思ったが、細かく刻んだ茗荷が麺にまとわりつくのでどうしても無理だった。諦めて茗荷ともどもすする。
うん、美味い!茗荷のシャクシャクした食感、さわやかな香りと味、そして若干のえぐみ。それらが混然一体となってとても楽しい。
それだけだと「単なる茗荷の味のコメント」だが、茗荷に寄り添っている蕎麦の存在も忘れてはいけない。残念ながら、ご主人が危惧しているとおり、蕎麦は茗荷に完全に味も食感も持っていかれてしまっております。とはいえ、茗荷を下支えする存在として、まるでチーズを食べる際のクラコットのように、しっかりと役割を果たしているのだった。適度な硬さと歯切れの良さが、茗荷のさわやかさとよく合っているのだと思う。
この一品トータルでみると相当美味い蕎麦だと思った。
やっぱストイックにせいろ(もり)そばばかり食べてちゃダメだなー。いろいろな蕎麦に、それぞれの美味さってのがあるんだから。もりそば品評会やってるわけじゃないんだから、その店おすすめの蕎麦は聖域なく食べていかなくちゃ。
茗荷せいろですっかりご機嫌になったおかでんは、追加でデザートなんぞを。そば団子300円。デザートを頼むのは非常に珍しいが、次行く予定のお店の開店が11時半なので、まだ時間が少々あった。その時間つぶしの意味もある。
300円という価格設定が素敵。ちょっともう一品、と頼める価格の料理があるというのは重要なことだ。しかもデザート。うれしい配慮だ。
出てきたそば団子は、外はサクッと揚げてあり、中はとろりとしたダブル食感の美味いやつ、だった。中がねっとり濃厚な味わい。おっと蕎麦の風味がここで味わえるぞ。先ほどの茗荷せいろでは感じなかったけど、こんにちはごあいさつが遅くなりました。暖かいと蕎麦の風味がはっきりとわかるな。
300円でこれなら大満足。頼んでよかった。
ご主人から「わざわざ遠方からお越し下さりありがとうございます」と言われながらお店を後にする。いや、おいしかったです。
あの茗荷せいろ、季節限定って書いてあったけど、茗荷の季節っていつだったっけ・・・。家に帰ったら調べてみよう、と思った。
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