2011年05月29日
【店舗数:280】【そば食:481】
茨城県猿島郡境町
もりそば(彩美そば)、そばチーズケーキ
茨城県は猿島郡境町にやってきた。「境町」という名のとおり、すぐ傍らには利根川が流れており、ここが行政的にも地理的にも境界線であるということがわかる。
ちなみに利根川はちょうどここで江戸川と分岐し、分岐ポイントには水運ににらみを利かせるように関宿城がある。ただしこれは川向うなので千葉県の話。
境町は鉄道が走っていないが、案外開けた町なので驚いた。ここにくるのは初めて。そんな街の中に、目指す蕎麦屋「蕎楽」がある。
もともと町の電機屋を営んでいたご主人が蕎麦屋を始めたというから面白い。よく、「脱サラで蕎麦屋」という話は聞くが、「from自営業to自営業」というのはあまり聞かない。
店頭には大小二つの石臼が置いてあった。14時過ぎの昼下がりということもあって、さすがにこの時は稼働していなかった。
この石臼、ご主人が凝りに凝った逸品だとかで、元・電気屋の血が騒いだのか徹底的にあれこれ微調整したらしい。今ではその石臼が一般販売されているというのだからすごい。やはり手に職がある人はやることが違う。
店内は広くてゆったりしている。昔はここに冷蔵庫やテレビが置いてあったのだろうか?それとも電機屋とは別の場所に開業したのだろうか?
「すいません、単一乾電池二つください」なんて注文したら本当に商品が出てきそうな雰囲気が、このお店にはある。・・・あるもんか。完全に、何事もなかったかのように、蕎麦屋の内装だ。そりゃそうだ、何事もなかったんだから。
お品書きを見ると、大きく分けて「十割そば」と「九割そば」とに分かれていた。両方とも常陸秋そばを使っているのは地産地消。「九割そば」の「もりそば」を頼んだら、女性店員さんはまくし立てた。
「彩美そばと全粒そばがあります。彩美そばは蕎麦の実を粗挽きにした後、石臼で粗挽きにし粗く仕上げた上品な手打ち蕎麦で、全粒そばは蕎麦の実全体を石臼で挽いた・・・・」
うわ、なんだこのよどみない解説。あまりに情報量が多すぎて全く理解できんかった。
手元のお品書きを見ると、今女性店員さんが言ったことはほとんどすべてお品書きと同じ言葉だった。すげえ、暗記したのか。マシーンのようだ。
結局お品書きをじっくり吟味し、「おすすめ」と但し書きがついている「彩美そば」を選んでみた。「全粒そば」はおそらくいわゆる「田舎そば」のことを意味しているのだろう。
結局このお店には、3種類の蕎麦が用意されているというわけだ。「十割」「九割(彩美)」「九割(全粒)」。お店の人は蕎麦打ちが大変だ。
出てきましたもりそば(彩美そば)750円。
蕎麦同士はくっつきやすいようだ。箸でほぐしながら蕎麦を手繰る。
非常に甘い!食べた瞬間、嫌味じゃないさわやかな甘みが、さらりと、かつ濃厚に口の中に広がる。唾液がでるぅぅ。これがオリジナル石臼の力、なのか?香りも、甘さほど強烈ではないけどしっかりとしている。
最近の蕎麦屋はどうなってるんだ。こんな新蕎麦の時期から離れた時期でも、美味い蕎麦が食えるなんて。至福ではあるが、なんだかすごいご時世に突入してしまったもんだ。
ふんわりした食感の蕎麦は、その柔らかさゆえに香りと味がよく立つのだと思う。麺は腰が命、とかいってガチガチの蕎麦を出してちゃ、こうはいかないだろう。
さて、これでつゆがいまいちだったらがっかりだが、面白いもんで美味い蕎麦を出す店はつゆも美味い。つゆがめっちゃ美味いんだけど肝心の蕎麦が残念、というお店は存在しないし、その逆もしかり。もちろん好みの問題はあるが。つゆはやや辛めのチューニングだが、蕎麦とよく合っていておいしかった。
食べ終わって気が付いた。
おや、このざるってその下に土台があったんだな。安定感を出すためにこんな細工がしてあるのを見るのは初めてだ。この皿の色が黄色だと100円、緑色だと180円、金色だと500円とかいろいろあるんかもしれん。回転寿司みたいに。ええと、この皿の色だと750円、か。
蕎麦はとてもおいしかったので、お店へのご褒美というか自分へのご褒美ということでデザートをオーダー。ええと、そばチーズケーキ(320円)ください。
届いたそばチーズケーキは淡い緑色の蕎麦の実が載ったもの。
おいしかった。ただ、さすがにチーズケーキそのものを蕎麦の風味で満たす、というのはできないしやる意味がない、ということで蕎麦らしさといえば蕎麦の実が載っているところだけ。それでもおいしかった。お値段がこなれているし、おすすめ。
しかし侮れんなあ、こんなところにさりげなくおいしい蕎麦屋があるなんて。蕎麦ってのは本当に油断がならん。外観だけでいうと、「天丼やカツ丼も扱っている汎用的食堂」なのになあ。
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