壬生

2013年09月08日
【店舗数:350】【そば食:584】
東京都豊島区池袋

肉そば(大)

壬生外観

最近、ぼちぼち蕎麦を食べ始めているんだが、どちらかといえばB級な蕎麦を好んでいる。お高くとまった蕎麦屋には、ちょっと行きづらい気がしている。というのも、今年の春にお酒をきっぱり止めて以来、蕎麦屋とどういう距離感と呼吸で接すればいいのか、よくわからないからだ。

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蕎麦屋に一人で訪れ、小粋な酒肴とともに一献傾け、そして蕎麦・・・これがこれまでの僕の定番だった。お酒がなくなったら、どうすりゃいいんだ?全く分からならい。

いや、「どうすりゃいいんだ」もなにも、単に着席したら「もりそば、一枚」っておばちゃんに頼めばいい。ただそれだけのことだ。でも、そんなシンプルなことが、どうも僕には腑に落ちていない。だから、納得感が出てくるまで、無理して蕎麦屋の暖簾はくぐらなくてもいいやと思っている。

そんな中、「港屋インスパイア系」の蕎麦屋というのは今の僕にとってとても居心地のよい店であり、今回もそんな店を訪れてみることにした。池袋には何軒かその手の店があることは承知していたのだが、何せ「港屋インスパイア系」というのは流行りものだ。気が付いたら店が消えているというのも珍しいことではない。でも今回の店はまだ存続しているということなので、以前から気になっていたことだし訪れてみることにした。

店の名前は「壬生(みぶ)」という。なぜこの店が気になっていたのかというと、挑発的な看板、これに尽きる。店頭にででーんと

「なぜ 蕎麦にラー油を入れるのか。」

と掲げられていりゃ、そりゃ気にならない方がうそだ。これを偶然散歩の途中に発見した時、僕は驚いたさ、なんじゃこりゃあと。昨年、ライトノベルで「せんせいはなぜ女子中学生にちんちんをぶちこみ続けるのか」という作品が発表され物議をかもしたが、店の看板を見たときまっ先にそのことを思い出した。

「広告なんてのは飾りに過ぎない。正直に、真面目においしい物を作り続けていれば、おのずとお客さんはついてくる」

というのは確かに正しい。でも、「お客さんがついてくる」ような食べ物をこの世の中で提供するのはいろいろな意味で大変だ。そうなるとやっぱり、広告ってのは重要なわけで、その点この店は圧倒的インパクトを誇っているといえる。そして今、まさにおかでんが一匹、釣れた。

池袋駅から徒歩で10分はかかるだろうか。駅前の喧騒から随分とかけ離れた場所の中にお店はある。「池袋に用事があったついでに」立ち寄るにはちょっとしんどい土地柄。だからこそ、この看板がモノを言うわけで。

中華の円卓

入口入ってすぐのところの自動食券機で食券を買う。いろいろメニューがあるようだが、とりあえず定番であろう「肉そば」を注文することにした。小、中、大いずれも同じ値段の750円。この日は食事を摂りそびれていたこともあり、「大」を選んでみた。

セルフサービスで冷たいそば茶を注ぎ、席に座る。ここ、今の店がオープンする前は何屋だったんだろう?カウンター席のほかにテーブル席があるのだが、なんと中華風の円卓になっている。真ん中がくるくると回る仕組み。中華料理屋でもやってたんだろうか?

こういうテーブルを目の当たりにしたら、回さないわけにはいかんだろ。意味もなくくるくると真ん中を回してみた。うん、いい感じ。何がいいんだかわからんけど、いい。「港屋」風の店のお約束、生玉子と揚げ玉のセルフサービス皿がスタンバイされている。ラー油もある。後で気が付いたが、でき上がった蕎麦を受け取るカウンターには、唐辛子も用意されていたようだ。

肉そば大

しばらくして、店員さんから「肉そば大の方」と呼ばれたので、カウンターまで受け取りにいく。やや重たいトレイを受け取り、自席に戻る。

丼にこんもりと盛られた肉そば。まるでご飯茶碗にご飯を盛ったかのようだ。普通、この手の丼は「丼のふちよりも上の空間は使わない」と思うのだが、このお店ではがっつり使う。とはいっても、丼が大きいせいか、さほど凶暴な印象は受けない。実際のところ、どれくらいの重量なのだろう?

蕎麦の上には肉と、ネギと海苔と白ごま。肉というのは確かに異色ではあるが、それ以外はもともと蕎麦と相性が良いとされてきたものであり、実は「港屋系」というのはとんでもなく異端というわけではないことに気づかされる。ただ、「量が多い」とか「麺が太くて固い」といったがっつり系のイメージが付加されることで、随分と異端っぽく仕上がっているわけだけど。これまで蕎麦をがっつり食べるってのは基本的になかったからな。「おなかいっぱい蕎麦を食べるのは無粋」とか、誰が決めたんだそんなの、ってことをしたり顔で語る人があちこちにいたわけで。

蕎麦アップ

蕎麦は、太くて、黒くて、固い。そして、蕎麦らしい味は特にしない。「蕎麦が食べたい」という希望でこのお店を訪れるのはお門違いだ。じゃあ、この「蕎麦粉を使った麺」は、別の粉で作ってもいいんじゃないか、と思えてくる。でも、「港屋系」は今のところ、蕎麦でしかないようだ。うどんでもこの手のスタイルの店は多分存在するのだろうけど、少なくとも僕は聞いたことがない。

多分こんにゃく粉で麺を作って同じように調理したら旨いと思うんだが、どっかやらないかな。がっつり食べてもヘルシー、とかいって。

ラー油が何故入るのか。

なぜ蕎麦にラー油を入れるのか。

正確に言うと、「なぜそばつゆにラー油を入れるのか。」ね。蕎麦そのものにはラー油は入ってないから。

ラー油がありなら、タバスコを入れるのも案外ありかもしれんぞ?辛いのは好きなので、自宅でいろいろ試してみると面白そうだ。そばつゆに辛い調味料、ってのは決しておかしいことじゃない。かんずりを入れたっておいしいだろうし、こーれーぐーすだって実は悪くないかもしれない。いや、こーれーぐーすは泡盛臭くてだめか?

この店には、街の中華料理屋や散髪屋のように漫画が並ぶ本棚があった。そこで、僕も「めしばな刑事タチバナ」を手に取り読みながら食べた。お行儀が悪いが、この手の蕎麦にはそういうスタイルで食べるのもアリじゃないか、と思った。でも、あっという間に食べ終わってしまい、一話読み切る前にお店を後にすることになってしまった。

食べ終わって立ち上がると、胃袋に確実な満腹感。美味い物を食べた、というより、「満腹になるものを食べた」って感じ。まずかった、というわけじゃなく、シンプルに「満腹になったー」という印象を強くもった、そんな一食だった。

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