蕎麦COMBO WATANABE

2013年10月29日
【店舗数:359】【そば食:594】
東京都港区南青山

穴子天せいろ

この日からおかでんは「テイクアウトから揚げの食べ歩き」企画を開始した。数カ月かけて、十数軒ほどお店を巡る予定でいる。その第一軒目として、「いろから 南青山店」を目指した。

そろそろこのあたりが目的地だ、といったん立ち止まり、スマホの地図と周囲とを見比べる。すると、目の前にはラーメン屋の「一風堂」があった。あ、ここにも一風堂はあるのか。

WATANABE

そのままスルーするつもりだったのだが、一風堂の表示のすぐ下に「蕎麦COMBO WATANABE」という看板を見つけた。何だ、これ?

立て看板も発見。メニューを見ると、最近はやりのつけ蕎麦のお店らしい。ふーん。

今日は唐揚げを食べに青山にやってきたのであって、蕎麦が目当てではない。一応覚えてはおくが、今日このお店の暖簾をくぐることはあるまい。名前も胡散臭いし。

パクチーそば!

と、その時点では判断したのだが、すぐにその判断は覆された。

「人気急上昇 パクチーソバ あります!」

の黒板。

なんだこれは。パクチー大好き、蕎麦大好きのおかでんに対する全面的な挑発。こんな夢のドリームタッグ(無駄な重複)が許されて良いのか?ダメだろ、普通。母親から昔よく言われたものだ、「好きなものばっかり食べちゃだめ」と。でもボクももう立派な大人だ、大人の分別ってやつで、ちょっとくらい好きなものばっかり食べてもいいんじゃないか。
それにしてもものすごい蕎麦がこの世の中には存在するものだなあ。最近、蕎麦には新しい風が吹いているが、まさかこんなものまで登場するとは。

一風堂の入り口に辿り着く

結局、唐揚げ屋で唐揚げをしこたま食べた後、このお店にとんぼ返りした。パクチーそば、食べないわけにはいかないだろう。

既に唐揚げが500グラム近く胃袋に収まっているけど、この際仕方がない。事故にあったと思って食べようじゃないかパクチーそばを。一時的な体重増も許す。

しかし入り口でひるんだ。これ、一風堂のお店そのものではないか。蕎麦屋のものではない。

実はこの「蕎麦COMBO WATANABE」、一風堂の新業態だった。ストアインストアの形態をとっており、ラーメン屋一風堂の店内にWATANABEが別にある、という構造になっていた。ラーメンをすすっている客の傍らで蕎麦を手繰っている客がいる、というサービスエリアのフードコート状態なのではない。WATANABEは秘密クラブの部屋よろしく、奥まったところの別室に専用の厨房と客席を備えていて、一風堂とは別モノとして機能していた。どきどきしながら秘密クラブへと潜入。

お品書きはびっちり

WATANABEの店内は、厨房を取り囲むコの字型カウンター10席によって構成されていた。ハイスツール、ハイカウンターというのがいかにも蕎麦屋っぽくない。薄暗いお店は、バーのそれであり蕎麦屋の既成概念を崩しにかかっている。店員も黒いシャツ姿だし。

メニュー(お品書きとはあえて呼ぶまい)はお酒のページから始まっており、このお店が蕎麦だけを食べる店ではないよ、ということをうかがわせている。確かに周りを見ると、ワイングラスを傾けているカップル、清酒を飲む女性一人客などがいる。

酒肴も、えいひれのあぶりといったものから馬肉メンチカツまで、数は多くないけど酒を飲むには十分な種類があった。

あれ?肝心の蕎麦は?・・・蕎麦は、酒飲んだシメとしての位置づけとして配置されていた。なるほど、そういうお店なのかここは。

蕎麦は、デフォルトの「つけソバ」580円からはじまって、「熟盛玉子ソバ」「旨辛もつ煮ソバ」「パクチーソバ」「スパイシー肉味噌ソバ」「ネギチャーシューソバ」「スパイシー坦々ソバ」「グリーンカレーソバ」といったものがある。他店の「つけ蕎麦」とは明らかに違うラインナップ。ラーメンを起点として蕎麦をむむむっと考えたら、こういう発想になるのだろう。斬新だ。特に「パクチーソバ」ってのは斬新すぎる。どうしてこんなん、思いついた?

パクチーソバ

出てきました、パクチーソバ。

その名の通り、パクチー(および水菜)が蕎麦を覆い隠すように載せてあり豪快。でも、ちゃんとこのパクチーははかりで計量されており、案外細かいのねこの店、とちょっと感心した。

オリーブオイルの瓶も追って出てきた。店員さんが

「お好みでどうぞ」

と一言添える。ええと、これはどうすればいいの。

よくわからなかったので、つけ汁にかけてみた。殆ど味は変わらなかった。後で考えたら、これって麺のほうにかけるのが正解だろうな。

パクチーソバアップ

ああパクチーいとしいよパクチー。

パクチー好きとしては、これだけの量のパクチーを牛のようにわさわさと頬張れるのは幸せなことだ。なかなかできるもんじゃあない。

ただ、蕎麦と合うかというと話は別だ。パクチーの香りが強いので、蕎麦と一緒に食べたら蕎麦が完全に埋没する。

これは、蕎麦屋の発想じゃないよな。蕎麦といえばほのかな風味が持ち味。それをぶち壊すパクチーをトッピングするだなんて、生粋の蕎麦屋じゃ思いつかないだろう。

最近のつけ蕎麦全般にそうだが、蕎麦の味とか香りとか殆ど期待されていない。もそもそと食する麺、ただそれだけが期待されているようだ。

でもそれはうどんも辿った道。うどんだって、すごいやつになれば小麦の香ばしさとか味といったものがパーンと強く感じられるものだ。しかし実際のところ多くの食卓に上るうどんは、単なる「白い麺」にすぎない。味が云々なんてあまり気にされていない。

蕎麦だって、それでいいと思う。やれ新蕎麦の香りが、とか石臼挽きが、というのばっかりが蕎麦じゃないってことだ。「美味い蕎麦」であることを自ら放棄することによって、蕎麦の可能性はぐっと広がったと思う。

つゆにもパクチーが入っている

蕎麦湯でつゆを割って飲むと、なかなかに美味かった。

うん、正直変な蕎麦だ。違和感は感じるが、それでもこういう蕎麦を食べるとわくわくする。もっとこういう蕎麦が世に出てきて、いろいろ目を、舌を楽しませてほしい。