2014年04月02日
【店舗数:362】【そば食:611】
東京都墨田区錦糸
せいろ
錦糸町の町を歩いていたら、視線の片隅に木鉢が見えてぎょっとした。
えっ、木鉢?
二度見したら、確かにそうだ。のっぺりした壁面の建物の中に、ライトアップされた木鉢。夜の錦糸町においても、はっきりと見える。
あ、ここは蕎麦屋か。
外観は蕎麦屋にありがちな、「人目を避けるかのような地味さ」。
大きな看板が出ているわけでもなく、気がつかずに通り過ぎる人も多いだろう。
そんな中、最大の看板となっているのがこの木鉢だった。四つ角のすぐ脇に打ち場があり、そこのガラス窓から木鉢がよく見えた。それがこの場所を蕎麦屋であることを教えてくれる。
店名を「蕎麦前 小まつ」というらしい。
蕎麦前か・・・。蕎麦前といえば、お酒のことを指す言葉だが、あいにくおかでんはお酒をたしなまない。「シメに蕎麦も楽しめる居酒屋」だったら、正直どうでもいいお店だ。
でも、店頭にはこうして木鉢。ちゃんと手打ちの蕎麦を出すお店のようだ。見つけてしまった以上食べないわけにはいかねぇじゃないかこの野郎。お店に入ってみることにした。
もしこれが機械打ちのお店だったら、「どうせ蕎麦前は飲まないことだし、いいや」とパスしていた。
店頭にお品書きが出ていたので、それでお店に入ってみる気になった。この外観、そして店名。
事前情報がなかったら、ちょっと入りづらかった。
お品書きを見ると、なるほど「蕎麦前」を謳うだけあって、酒肴が並ぶ。蕎麦そのものがお品書きに登場するのは後のほうだ。
この時期、蕎麦屋だったら山菜の天ぷらがあるかな・・・と期待したのだが、それはなかった。
しかし、「生湯葉とマスカルポーネの旨出庵」という料理名が気になったので、それを頼んでみようと決めた。
お店に入るには、高さが低い引き戸を開けて入ることになる。ひざをかがめながらでないと、入店できない。
こういう細工、面白いとは思うが面倒くさいというのが偽らざる気持ち。年寄りは入店に難儀するだろうし、どうなんだろうか。
店内は比較的ゆったりした作り。外の壁に面してカウンター席もあり、一人客も気軽に立ち寄れる感じになっている。薄暗い店内で、カウンターの上にはキャンドル風の照明が光る。
BGMはジャズで、確かにこれはお酒を飲みながら、軽くぼんやりした頭で物思いにふけるというのは心地よさそうだ。
しかし、こちらはお酒を飲まない。さらに、頼もうと思った料理は品切れで、「生湯葉ならお出しできるのですが・・・」と言われてしまった。もういい、蕎麦だけでいいや。
店員さんからは、のっけから「お飲み物は?」と聞かれた。やはりここはお酒を飲むのが常道なのだろう。その証拠に、着席したらおしぼりとともにコースターが持ってこられたから。
せいろ800円。
蕎麦は印象が薄かったが、蕎麦湯はおいしかった。
いい雰囲気のお店だけど、やはり蕎麦前を楽しまないと物足りない。ましてや、壁を真正面に眺めるカウンター席で、空間を楽しむということもできなかった。
お酒を飲まなくなってもう1年。まだ蕎麦屋との最適な距離感、そして過ごし方というのは見つけられていない気がする。
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