2014年04月24日
【店舗数:365】【そば食:615】
東京都葛飾区亀有
肉つけそば
「あれっ?」
何の気なしに歩いていた商店街だったが、思わずその場に立ち尽くしてしまった。目線の先には、「そば」の文字。
ここは亀有。この日、駅近くのアリオ亀有で「コロッケカーニバル」というイベントがあるということで遠征していたのだが、そのついでに商店街を歩いていたところだった。以前何度か行ったことがある、正統派の広島風お好み焼きの店「おこたろう」がまだ健在かどうか、を確認したかったからだ。
話はそれるがこの「おこたろう」はなかなかうまいぞ。東京で広島風のお好み焼きを食べようと思うと、案外インチキくさい偽物が出てくることがある。でもここならそんな心配はいらない。広島を丸ごと持ってきたような感覚でお好み焼きを楽しめる。何しろ、広島の有名店「ロペズ」のお弟子さんだからだ。
で、その「おこたろう」がマニアックな路地裏で元気に営業しているのを確認し、また今度お邪魔しようと心に誓いつつ商店街に出てきたところで見つけたのがこのお店。
いや、蕎麦のお店くらい珍しくもなんともない。しかし、このお店は蕎麦屋らしからぬ外観なのが気になった。まるで喫茶店のようだ。やっぱり、蕎麦屋というのは「引き戸」というのが暗黙の了解に近い。入り口が「ドア」だと、「おやっ?」と思う。
あまりなじみのない外観の蕎麦屋、というのは新しいお店、若い店主、新しい取り組みだったりするものだ。「意欲的な何か」がそこにはあるかもしれない。そんなお店をほっておくわけにはいかない。
しげしげと眺めてみたら、店頭には蕎麦の看板やビラが置いてある。あ、なるほど、「港屋系」の蕎麦を出すお店なのか。そこには「肉つけそば」「鳥つけそば」の写真があった。
お持ち帰り自由なビラでは、
「亀有で、日本蕎麦の常識が、変わる」
とやたらと大風呂敷をばっさばっさと広げている。「いやでも、港屋のインスパイアでしょ?」という質問に対してはどう答えるのだろうこのお店。まるで全く新しい概念の蕎麦を作り出しました的な勢いだけど、写真を見る限りはどう見ても港屋のコピーだ。確かに港屋の蕎麦屋日本蕎麦の常識を変えてみせたが、このお店はそれを模倣しているわけであり、さらにそこで常識を変えるとなると相当奇抜でないと、無理だ。
看板に出ている蕎麦の見た目だけで判断するなら、常識はもう変わらないぞ。港屋がある愛宕で既に変わっちゃってるから。じゃあ亀有ではそれに加えてどんなびっくりを提供してくれるのだろう?気になって仕方がないじゃねぇかこの野郎。予定外だけどお店に入ってみることにした。
自動券売機で食券を買う。
店内はカウンター席のみ。お客さんはぱらぱらいるが、全員が若い男性。おもしろいもので、港屋インスパイアなお店はあちこちにあるが、その多くは・・・というか僕が見る限り全ての店が、男性客メインだ。ボリューム感が男性に受けているのだろう。しかし、元祖の港屋は、女性の数も結構多い。この違いはなんなんだろう。
つくづく思うのだが、港屋はオリジナルにしてオンリーワンの地位をいまだに保ち続けている。なんか意味不明なオサレ感がある。そして、味においても、その他インスパイア店の一段上をいっているような気がする。味の違いがわかるほど港屋やインスパイア店には通い詰めていないので、断言はできないけど、港屋で感じたうまさというのは他店では追随できていない。本当に不思議だ。
そうこうするうちに、肉つけそば850円が到着。
丼の中にボリュームたっぷりの太麺。そして牛肉、白髪ねぎ、ごま、刻みのりがこれまたたっぷりと盛られている。揚げ玉はカウンター席にあり、自由に盛ってよい。生卵は一人一個、お盆の上に既にスタンバイされている。
麺は、これまでの港屋系同様の太くて黒い麺。そして、堅めにゆでられており、食感を楽しむことを前提に作られている。しかし、他店と違うのは、なんだかこの麺がとても弾力が強いということ。グミグミしている。
葛飾経済新聞の取材記事によると、この麺を作るために何度も粉屋と打ち合わせをしたのだという。確かに、特徴的な麺ではある。しかし、個人的趣味としては弾力がありすぎて、なんだか蕎麦を楽しんでいる気分にはなれなかった。「日本蕎麦の常識を変える」と勢い込みすぎて、蕎麦のうまさのピントからずれてしまった感あり。ただこれは、人によって感じ方は違うだろう。僕はB級グルメ蕎麦のおいしさの基準が、品川駅の「常磐軒」で食べられるボソボソした麺なので、そういう価値観の人とはベクトルが違う。
半分を過ぎたところで、生卵と揚げ玉を入れてみた。まったりねっとりした食感に変わる。
味の変化を楽しむ分には、途中から卵を投入するのはありだろう。でも、最初から入れてしまうと、途中で味に飽きてしまいそうではある。良くも悪くも、卵ってのは味、食感ともに他を圧倒するから。
日本蕎麦の常識はこの蕎麦では変わらなかったけど、この手の蕎麦は最近のおかでんにとっては大のお気に入り。あと100円安ければ再訪してもいい動機付けになるのだけど。
お店を出る際、店主がわざわざお店の外までお見送りしてくれた。ものすごく丁寧な接客なのがとても印象的だった。
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