2015年02月19日
【店舗数:386】【そば食:643】
岩手県盛岡市大沢川原
もり(挽き包み)、かけ(温、挽き包み)
観光のため盛岡を訪れた際、じゃじゃ麺と冷麺を食べた。盛岡を代表する麺といえば、この二種類に加えてわんこそば・・・となるのだが、さすがにわんこそばは食べなかった。一人でお店に訪れて黙々とチャレンジするたぐいのものではないからだ。何が悲しくて一人で食べて、一人で「うう、もう食べられない・・・」と苦しまないといけないのか。そもそも、じゃじゃ麺と冷麺を食べた後、さらにわんこそばを食べようだなんて、自分の胃袋をなんだと思ってるんだ。さすがにありえない選択。
盛岡は、明治期頃の建物がところどころに残っていて、それらを見て回ると結構楽しい。そうこうしているうちに、「やまや」という蕎麦屋に辿り着いた。
もちろん存在は把握してあったのだが、「さすがに食べないだろうな・・・」というのが事前の想定だった。しかし、目の前に店を見つけてしまうと、なんだか入らないともったいない気になってしまうから不思議だ。「折角、盛岡に来てるんだし」という言葉が頭をよぎる。
盛岡だろうが東京だろうが、出てくる蕎麦は蕎麦であって変わりはない。だからそんなにありがたがることはないのだけど、と思いつつも、昼下がりなのに「営業中」の札が下がっているのを見たらもうたまらない。俺様を誘っているに違いない、こいつめ!という気になってしまった。
で、入店。
外からみても小さなお店だったわけだが、中は確かに狭かった。セルフうどん屋にありそうな雰囲気がある。15時前だというのに、店内はほぼ満席で、入れ替わり立ち替わりお客さんがやってきていた。繁盛店らしい。
このお店の特徴は、なんといってももりそば1枚で378円という激安っぷりだ。立ち食いスタイルではない蕎麦屋で、この値段というのはなかなか見かけない。一体どうしてここまで安くできるのだろう。
僕がこのお店に「しょうがないなあ」と頭をかきつつ入店した理由の一つが、「378円だったら、まあいっか。」という気持ちがあったからだ。これだ800円だの900円もしたら、絶対に暖簾をくぐらなかった。
そしてこのお店、面白いことに蕎麦は3種類から選ぶことができた。「挽き包(ぐる)み」、「さらしな」、「だったん」だ。全ての蕎麦メニューはこの3種類から選ぶことができる。そういえば、2日前に食べた大沢温泉の食事処でも、蕎麦はこの3種類から選べたな。岩手県界隈では、この3種類を提供するというのが珍しくないスタイルなのだろうか?それとも偶然だろうか。
暖簾をくぐる際、食事を終えて店の外に出てきた若者二人組とすれ違った。その二人は、
「やばいね」
「うん、蕎麦好きから言わせると結構やばい。」
と感想を述べ合っていた。何がどうやばいのか、さっぱり理解できない。でも、おそらく「予想外にうまかった」という意味合いで会話を成立させているものと思われた。
そうか、やばいのか。じゃあ・・・となると、つい我慢ができなかった。注文を取りに来た店員さんに向かって、
「かけともり。かけを先に。両方とも挽き包みで」
とオーダーしてしまった。ああ。2杯食べやがりますか。
オーダーが厨房に通ってしばらくすると、薬味とつゆが届けられた。つゆは、大きな徳利のようなものにコルクの栓がされて出てきた。これ、とてもいいと思う。以前から、もりそばのつゆって余ったヤツは捨てるんだよな?もったいないなあ、と思っていたからだ。この大きな徳利だったら、他の客と使い回しが前提だ。無駄がなくていいと思う。
薬味は二皿届けられ、片方は天かす、片方はわさびが乗っていた。なるほど、かけともりとで薬味が違うよなそりゃ、と納得。久しぶりだ、かけもり両方頼むだなんて。
もりを先に食べて蕎麦の味をよく噛みしめた後、かけを食べた方が良かったかなあ・・・とオーダー後若干後悔した。でも、季節は2月。これだけ寒いんだからかけを先に食べて、まずは体を温めたってバチは当たるまい。
もりそば到着。
細めの麺で、挽き包みなので星が散らばっている。
すすってみると、とてもほっとした。ああ、暖を取るってこういうことだよなと。暖かさもうまさのうちだ。ストイックに、しかめっ面してもりそばばっかり食べてるのは偏屈だったな、と過去の自分を恥じた。それくらい、心地良いうまさ。
蕎麦は手打ちなのかどうかは不明だが、値段が安いからそこまで製麺にお金をかけてはいないと思う。しかし、えっ、この値段なのに!?と驚くくらいの風味を持っている。若干ボソボソした感じがする食感なのは、蕎麦殻が混じっていて繊維っぽいからだろうか。
つゆは関東風のきりっと鋭いものではなく、もっとまろやか。どっちが美味しいかは気分次第だと思うが、今日みたいに寒い時はむしろこういうつゆの方が美味しく感じる。やあ、いいぞいいぞ。これで378円なら、毎日おやつに食べたいくらいだ。
かけを食べ終わった頃を見計らって、もりが出てきた。何も言わないでもタイミングを見てくれていたのがありがたい。このお店、水だけはセルフサービスで給水器から汲んでこないといけないけど、それ以外は全くセルフではなかった。値段は安いのに。
蕎麦は先ほどのかけと一緒なのだが、冷えて引き締まっている分、よりこっちの方がもっさりした感じになっていた。この麺については、温かくした方が味が引き立つと思う。こういう比較が出来るのも、楽しい。でも、こうなりゃ欲が出て、「どうせ二つ頼んだんだから、片方をだったんにしておけば良かったか?」なんてことも気にはなる。よせよせ、胃袋は有限だ、そして財布も有限だ。でも体重だけは無制限。これ以上食べるのはやめておけ。
食後、そば湯をいただく。卓上にカレー粉が置いてあったのが珍しく、ついそば湯に振りかけてみた。・・・やるんじゃなかった。カレー粉、偉大なり。何をやってもカレーになってしまう。僕の食後感はまさにカレー、だった。
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