蕎麦遊膳 松鈴 SHOURIN(01)

2015年10月31日
【店舗数:400】【そば食:661】
東京都足立区南花畑

十割せいろ

店舗外観

所要があって、つくばエクスプレスの六町駅で下車した。つくばエクスプレスは秋葉原からつくばに向けてのびている新線で、まだできて10年くらいの新しい路線だ。陸の孤島と呼んで差し支えないような場所を縦断しているので、都心から近い割には地価が安かったりする。

六町は、つくばエクスプレスの開業にあわせて大規模な区画整理をしたらしく、道路が比較的整然とつくられている。そして築浅の家も多いようだ。ただし、絶望的に店がなく、完全にベッドタウンとしてチューニングされた土地だ。まともに飲食をしたり買い物をしたければ2駅先の北千住に行く必用がある。

・・・なんでこんな慣れない「六町という町」を紹介しているのかというと、ふらふら歩いていたらそんな町の中にひょっこり蕎麦屋が現れたからだ。本当に、「ひょっこりと」だ。住宅地の中に、いきなり現れたお店。飲食店が少ない、ひたすら住宅地なこの地に蕎麦屋があることに驚いたし、なにやらこの蕎麦屋には大きな駐車場を備えているということにも驚いた。大通りに面しているならともかく、ここは住宅街の路地に入ったところだ。地元の名店、なのだろうか?

写真はお店と、その前の駐車場を写しているが、道路を挟んでさらに駐車場がある。ちょうど、駐車場に停めた車の中から、振袖を着た子供がパパママに手を引かれておりてきた。あれっ、七五三の帰りか。どうやらこのお店、ちょっとしたお祝いごとに使えるお座敷も備わっているらしい。そういうお客さん向けの「別館」完備。すげーな、住宅地の中だぞ。しかも一戸建てとか、二階建て程度のアパートが並ぶ土地柄なのに。

店頭お品書き

所要で通りがかっただけだし、唐突だしで、蕎麦を食べる気にはならなかった。しかし、時間には余裕があったので、とりあえず店頭のお品書きを眺めてみる。

「今後の参考になるかもしれないし」

とかいいながら。「今後の参考」ってなんだ?とは思うが。

あー、もっとざっくばらんな、「出前もやってます」の延長線上なお店だと思っていた。しかし、結構本格的にやっているぞ。手打ちだし、十割蕎麦も打っているらしい。むー、これはもう少し「今後の参考」を深堀しないといけないのではないか。

こういうとき、蕎麦っていう食べ物はよくもあり悪くもある。あんまり腹にたまらない食べ物なので、おなかが空いていないときでも「とりあえず食べちゃえ」ということができる。いかんなあ、けしからんなあ。

店内様子

予定外ながらも、お店の中に入ってみる。

静かな雰囲気。お客さんはそこそこ入っていて、丼ものとのセットになっているメニューが好まれている気配。

お品書き

お品書きはそれなりにページ数を誇っている。ぺらぺらとめくってみると、会席料理も値段に応じて何種類も揃えていた。今頃、先ほどの七五三帰りのちびっ子は別館のお座敷で会席料理を食べているのだろうか?

酒肴も豊富だ。個人経営の蕎麦屋ではないいろいろなものが列記されていた。

「いろいろなもの」と曖昧な表現をしているのは、情報量が多すぎて記憶にとどまらなかったからだ。

話はずれるが、酒を飲んでいた頃は僕にとっての「蕎麦屋でのお会計」というのは「3,000円以下で収まれば安いね、4,000円くらいいってもおかしくないよね、5,000円はやりすぎ」くらいだったと思う。居酒屋と同じ感覚だ。しかし、酒をやめたら、「1,000円より高いと、躊躇しちゃうぜチクショウ」という感覚になってしまった。そりゃそうだ、「食事」、しかももっぱら「お昼ご飯」として捉えるからだ。1,000円がひとつの分水嶺になってしまうと、言うまでもなく種物が付く蕎麦というのは予算オーバーになってしまう。また、酒肴類をおかずとして追加注文しよう、というのも考えづらくなってくる。とても残念だ。最近の蕎麦屋訪問がいまいち味気ないのは、あれこれ注文して散財する気がなくなってしまったことにある。「酒を飲んでいるんだから、これくらいお金がかかって当然」という発想というか「口実」がなくなったら、ほんとに味気ないっすわ。

十割そば

とりあえずお品書き先頭にあった「十割せいろ」を頼んでみる。1,000円。

味は、あーうまいなー、といった感じ。

何その投げやりな表現、と思うかもしれないが、実際そんな印象だった。昔はこの風味に出会うまでが大変だった。「蕎麦喰い人種行動観察」を始めた直後って、蕎麦屋めぐりは宝探しの要素が大きかった。10店食べ歩いて、2,3店おいしいのに出会えればラッキー、みたいな。

それがどうだ、今じゃ「普通にうまい」(この表現、僕は嫌いなんだけど都合の良い表現でもあるんだよな、だから使う)蕎麦屋がざらになってきた。外観からしておいしくなさそうなお店に入らなければ、うまい蕎麦はあっちこっちにある。この10年20年での蕎麦業界の進化ってのはものすごいのだと思う。おそらく、蕎麦粉の管理や玄蕎麦の貯蔵の仕方が徹底されるようになってきたからだろう。

そんなわけで、ここのお店の十割せいろを食べたときも、「うん、うまいね(にっこり)」としか表現ができなかった。僕はこれまで、「まずい」と「うまい」という振れ幅の広い状況において味をコメントできたけど、いまや「ふつう」以上の蕎麦屋だらけ。味を語るにはより細かい表現(抽象的なものでも可)が必要で、僕にはそこまでのボキャブラリーはなかった。

「ここの蕎麦はうまかったです。まる」

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