2016年10月21日
【店舗数:406】【そば食:668】
山梨県甲府市国母
甲府鳥もつセット、もつ南蛮
B-1グランプリによって全国各地の知られざるB級グルメが日の目を浴びて結構な月日が経つ。「こんなの、ご当地グルメでもなんでもなく人工的に作った料理じゃないか!」なんて声もよく聞くが、それはともかく全国各地にいろいろ料理が存在するというのは面白いものだ。
歴代の優勝料理は「また焼きそばか!」という偏りを感じるが、時々「おやっ?」というB級グルメが優勝しているので面白い。その一つが、甲府の「鳥もつ煮」だ。
その名のとおりニワトリのモツを甘辛く照り焼きにしたもので、一般的な豚レバーほど癖は強くなく、小ぶりで食べやすい。僕自身、良い鳥モツが精肉店で手に入ったら自炊する機会があるくらいだから、甲府独特の料理ではないと思う。しかし、甲府では結構メジャーな食べ物なのだという。
しかも面白いことに、その鳥もつ煮は蕎麦屋で食べられるもの、と位置づけられている。もちろん居酒屋メニューやスーパーのお惣菜にもあるのだろうけど、元祖が蕎麦屋。それが、今回訪れた「奥藤本店」だ。
酒肴メニューが凝っている蕎麦屋は珍しくない。しかし、その多くは「メインディッシュである蕎麦の邪魔をしないような料理」だ。酒肴がギトギトしていたり味が濃かったら、蕎麦を食べる段になって味覚がバカになってしまう。
なのに、この奥藤本店では、味だけでなく食感までコッテリしている鳥もつ煮があるという。ちょっと不思議で、面白い。2016年の僕はお酒を飲まないので、「一献傾けながらつまむ」というのはできないけど、せめて「鳥もつ食べて蕎麦食べる」ってことはやってみたいものだ。
お品書きは大きくて立派だ。カラー写真入りで、まるで居酒屋の様相。鳥もつ煮で相当稼いだに違いない。
トップページはもちろん「鳥もつ煮」。どうだァァァとばかりに文字が躍る、写真がテカる。
「写真はイメージです」とわざわざ書いているが、実物とは異なるのだろうか?何でこの注釈がついているのか、謎だ。
「実物は、実は豚モツなのでは・・・」とか深読みしてしまったが、いやそれは写真以前にネーミングに問題がある。そんなバカな。
ちなみに鳥もつ煮の1人前(小)は530円。2-3人前の(大)は680円。さすが内蔵肉だけあって、値段は手ごろだ。これだけでも酒が十分飲める。
レバー、ハツ、きんかん、砂肝の4種類の肉が煮込まれているのだと書いてある。きんかんが入っているだけで、随分華やかな様相になってステキだ。是非食べなければ。
ちなみに、鳥っていうのは面白いつくりをしていて、レバー(肝臓)にはハツ(心臓)がくっついている。実際に僕は鳥もつをさばいたことがあるので知っているのだが、もつの下処理をする際、このレバーとハツを分離させることから始まる。人間の体に置き換えてみると、なんだか不思議な構造だ。
メニューの2ページ目。
蕎麦はまで出てこない。蕎麦屋なのに。
かわりに出てくるのは、山梨における不動の庶民グルメ、ほうとう。
山梨出身の人にほうとうを語らせると、「家でひたすら食べ続ける味」について熱く語る。一度に大量にこしらえるので、一晩では終わらず、二日目・三日目まで食べきらない。で、煮溶けてドロドロになってしまう。「家で食べるほうとう」とは、このドロドロした料理というイメージらしい。
折角山梨に来たのだから、ほうとうを・・・とも思うが、蕎麦屋で蕎麦を食べないのはもったいないな。
ようやく蕎麦がメニューに出てきたと思った3ページ目。
しかしそのページタイトルは「定食」だった。蕎麦単品はどこだ?
定食コーナーのトップにある「鳥もつ煮定食」は1,230円。写真を見ると、蕎麦、鳥もつ煮、そして白米!があるという見慣れない構図。
ざるそばを食べながら白いご飯をほおばるってなんだよそれ。見たことないぞ。しかも、小ぶりな器ではなく、結構がっつりと銀シャリ様が身構えてらっしゃる。こりゃあ、「腹を満たしてやるぞこの野郎」とやる気満々だ。
それもこれも、味付けが濃い鳥もつ煮を食べるからだ。じゃあ、蕎麦ってどういう位置づけなんだ?おまけ?・・・と、わけがわからなくなる。
見たことがない光景だ、これは是非頼んでみないと!
次のページになっても単品蕎麦は登場しない。じらすったらありゃしない。今度は丼もののページになっていた。甲府鳥もつ丼だって。美味そうじゃねぇか。駅弁にして甲府駅で売れば、きっと売れると思う。既にあるかもしれないけど。
そして、次のページになってようやく「冷たい蕎麦」のページになった。見慣れた光景。
蕎麦なんて当たり前すぎて、今更お品書きのトップに持ってくるまでもない・・・と思ったのかもしれない。
ここでも面白いことに、「つけもつ」という見慣れないメニューがある。もつ前面推しのお店だな、つくづく。実際問題、魅力的でしょうがないのでモツ推しは大歓迎だけど。
この「つけもつ」は、温かいつゆに鳥もつが入っていて、そこに蕎麦をドブンと浸けて食すたべものらしい。「つけめん」の蕎麦版アンドもつ煮版だ。これも魅力的。
他にも、「おすすめ新メニュー」にはローストビーフがあったり、そばは蕎麦でも「揚げなすとトマトのつけそば」とか、かなり意欲的にメニュー開発をしていることがわかる。ああ、胃袋と財布が許すなら、あれこれ食べてみたい。
メニューを見ながらソワソワしているうちに到着したのが、「もつ南蛮」930円。先ほどの「つけもつ」が、麺とつゆがドッキングしたものだ。
これもまたすごいな、あたたかいかけそばの上にもつが乗っているのは初めて見る光景だ。精がつくに違いない。
たっぷり載ったネギもさわやかでよろし。
もつアップ。
もうこうなると、蕎麦が食べたいんだか、もつが食べたいんだかよくわからない。でもそれがいい。
汁で煮ているので、コッテリとしたくどさや癖はなく、非常に食べやすい。鳥もつ煮の甘辛いたれがつゆに溶けて、立ち食い蕎麦屋の肉うどんのようになっているかと思ったが、全然違った。単品の鳥もつ煮がかけそばにオンされたものではないからだ。
蕎麦屋で温かい蕎麦を食べる機会って僕は少ないのだけど、きりっとしたつゆがとても好きだ。酸味すら感じるくらい、エッジの立ったつゆは自宅や立ち食い蕎麦屋では体験できないステキなひととき。で、そのしゅっとしたつゆに、もつが相まって良き哉、良き哉。
で、こちらが本日のメイン、「甲府鳥もつセット」(1,230円)。ひゃあ、お品書きの写真どおりのヤツがやってきたぞー。
鳥もつ煮、蕎麦、ご飯、薬味、漬物、そして冷奴。不思議な組み合わせだ。「ラーメンライス」というのはよくあるシチュエーションだけど、「蕎麦ライス」というのはちょっとこれまで経験がない。見れば見るほど、不思議な絵面だ。
鳥もつ煮。
テッカテカにてかってるぞオイ!
みたまんまに濃厚な味と食感。これはご飯がはかどる。さすがに蕎麦と相性が良いとは思えないのだが、ご飯と鳥もつ煮の往復で満腹になるまで食べ続けることができそうだ。
きんかんがアクセントとして一つ、ポコンと置いてあるのがまたいい。
ご飯を食べていたら蕎麦の出番がなくなりそうだ。
ちょうど新蕎麦の季節であり、かなり美味しい蕎麦との遭遇だった。口に含んだときの風味よろし。あ、てっきり鳥もつに重視で蕎麦の味はいまいちなお店だと思っていたけど、それは誤解だった。蕎麦もいいぞォ。
ちなみにこの「甲州鳥もつセット」と外見一緒に見える「蕎麦定食」が1,880円で存在する。なんで値段が違うのか?と思ったら、こちらは蕎麦が食べ放題なのだそうだ。蕎麦食べ放題!そんなメニューまであるのか。では、鳥もつ煮食べ放題もあるのか?と思ったら、さすがにそれはなかった。
たかが鳥もつ・・・なんて思っていたけど、かなり新鮮な体験ができた。とても良いお店だと思う。甲府駅の近くにも支店があるようだし、機会があればまた食べてみたいものだ。
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