かんだやぶそば(04)

2018年07月15日
【店舗数:—】【そば食:704】
東京都千代田区神田須田町

せいろうそば

かんだやぶそば

アワレみ隊のばばろあが上京中。二人で東京観光2日目。

この日は秋葉原界隈の探検をしていたのだが、彼が「地方では食べられないようなものを食べたい」というので、神田にある「東京豆花工房」を訪れた。台湾スイーツである「豆花(トウファ)」が食べられる、小さなお店だ。

「豆腐をスイーツにするって、絶対合うと思うんだよな」

ばばろあは熱弁を振るう。お店を開こうかな、とまで語っていた。

そんなひとときを過ごしたのち、東京豆花工房を出た目の前が、「かんだやぶそば」だった。

火事で全焼してしまったけど、今や何事もなかったかのように復活している。燃える前のお店には3回ほど訪れたことがあるが、僕自身すっかりご無沙汰しているお店だ。

アワレみ隊OnTheWeb

店内へ

庭の木々が生い茂り、昔から何一つ変わっていない気がする。

・・・と思って、昔の写真を見返してみたら、全然違った。昔は板塀がお店を取り囲んでいた。

人の記憶って、いい加減なものなのだな。

「藪御三家の一つだぞ、昨日の並木藪に続いて」
「だったら食べんと」

おお?

豆花を食べた後に蕎麦か。そりゃあ、蕎麦はつるつるッと手軽に手繰れるものだけど、なんたる健啖な発想。素晴らしい。

昔はこういう「食べまくる」というのは僕の立場だった。そしてばばろあが、「もうやめとけや」と冷静にたしなめるスタンスだった。今や、僕はばばろあの食欲に驚きつつ、自分の「気がついたら衰えていた食欲と意欲」に残念な気持ちになっっている。

でも、残念がっていても始まらない。今回はばばろあのそのガッツに相乗りしよう。

彼は言う。

「ところで、もう一つの御三家ってどこや?」
「池之端藪蕎麦。上野広小路にあるぞ」
「おう、だったら明日行けるね」

結局この「三日間で御三家制覇」は実現しなかったけど、本当に恐れ入る気力だ。

お品書き

夕方ということもあって、すんなり入店できた。

店内はゆったりとした時間が流れている。お酒をたしなんでいる人が多いようだが、じろじろ人のテーブルを見たわけではないので自信はない。

窓際にカウンター席があって、一人客でもまったりと時間が過ごせるようになっているのは素敵だった。

昔ながらの帳場は健在で、今でもここでおかみさんが「呪文」を唱えている。しかし、比較的若い女性の方が帳場に座っていて、昔のように浪々と注文を厨房に通す、といった感じではなかった。てっきり、そういうやりとりは廃止になったのかと思ったが、帳場をしっかり観察していたらちゃんと「いちばんさん、せいろォォォォ、1枚ィィィ」と唱えているのが聞こえた。

昔っからその程度のボリュームだったのか、2018年バージョンは昔と比べてボリュームが下がったのか、そのあたりはわからない。

やぶそばのせいろうそば

久し振りのかんだやぶそば、「せいろうそば」。

青々とした麺は健在。

せいろうそばアップ

つゆは並木藪蕎麦同様、「ひゃっ!」と驚くほど辛い。なので、麺をドブンと浸けてしまわないよう、注意。

僕の父親は、自分が蕎麦好きであることを棚に上げ、事あるたびに蕎麦通を批判していた。

「落語であるだろ、『死ぬまでにつゆにたっぷり蕎麦を浸けて食べたかった』って。通ぶって蕎麦を1/3までしか浸けてはいけない、とかカッコつけすぎなんだよ」

と繰り返し言っていた。僕から言わせれば馬鹿の一つ覚えだと思う的外れな批判だけど、「それは間違っている」と真っ向から批判しても面倒臭いので、放置している。なので、一度父親をかんだやぶそばに連れてきたかった。東京のつゆは洒落にならんくらい辛いぞ、とこんこんと説教してやりたかった。まだ父親は健在だけど、もうこのままでいいや。

多分父親は、「通ぶっているヤツよりも自分の方が物事の真理を知っている」ということを言いたいだけなんだろう。誰が誰のマウントを取るか、ということに興味があるのであって、ひとまず「自称蕎麦通」を批判することで自分がマウントを取った気になっている。ならばもうそれはそのままでいいや、と思う。今更どんなに言葉を尽くしても、その考えが変わることはないのだろうし。

遠い地に住む父親に思いを馳せる、そんな一枚のせいろうだった。