専心庵

2019年02月08日
【店舗数:433】【そば食:715】
山梨県甲府市高畑

蕎麦ずくし

山梨県は甲府市で食事となると、B級グルメとして全国区の知名度となった「鶏もつ煮」が代表格で、あとはほうとうが有名だ。

しかし、違うものを敢えて食べてみるのはどうか、ということで、甲府を訪れた今回は「普通の、ラーメン餃子セット」を食べてみたり「普通の、つけそば」を食べてみたりしてみた。「普通」なのだけど、地元民が愛しているお店のものだ。実際、旅情はなかったものの、「そうか、この地域の人たちが愛する味はこういうものなのか」と感心し、むしろ「味覚」よりも「知覚」に訴えかける旅情だったと思う。

そんな中、レンタサイクルを借りてまで遠征したのが、蕎麦屋だった。「専心庵」という。

特に心当たりがあるお店ではなく、ネットで「甲府 グルメ」みたいな安易なキーワード検索をかけていたときに見つけたものだったと思う。

甲府駅からは、微妙に・・・いや、かなり遠い。歩いて行くとなると、30分近くはかかると思う。普通なら、車で訪れる場所だろう。

専心庵に通じる道

狭い住宅街の路地を、レンタサイクルで疾走する。

「疾走」というかっこいい表現を使ってみたけど、単にギコギコ音を鳴らしながらフラフラ進んでいるだけだ。使い込まれたレンタサイクルなので、ブレーキをかけていないときもキーキー音がする。

専心庵

ナビがなかったら気付かなかっただろう。ネットがなかったら知らなかっただろう。

そんな21世紀型の蕎麦屋が、住宅地の奥深くにあった。

別に隠遁生活を送っているわけでもなく、人に気付かれないようにひっそり営業しているわけではなさそうだ。単に、住宅地の中にあった蕎麦屋が、ネットで評判になるくらい腕が良かった、ということにすぎない。

専心庵店内

専心庵の店内。

玄関で靴を脱いで上がるタイプのお店。靴のままで食事ができる席はない。

専心庵メニュー

そばセットが1,290円、蕎麦ずくしが1,940円。

十割粗びき蕎麦と十割細打ち蕎麦とそば豆腐 の組み合わせが「そばセット」。
その「蕎麦セット」に、二八蕎麦とミニそばサラダが付いたら「蕎麦ずくし」。

ミニそばサラダやそば豆腐は正直いらないんだが、折角だから蕎麦をあれこれ食べてみたい。なので、蕎麦ずくしを頼んでみることにした。

専心庵メニュー

週末になると、来客を見込んでご主人大ハッスルらしい。四種類の蕎麦の食べ比べメニューもある。しかもその四種類は全部十割蕎麦だというのだから、おもしろい。「二八」「田舎」「さらしな」みたいな組み合わせでなく、ただ愚直なまでに十割!というのは豪快だ。

専心庵メニュー

十割蕎麦の生産地は、北海道または十日町産のものを使う、と書いてある。

十日町といえば新潟県十日町市のことだと思われるが、あんな米どころど真ん中な場所でも蕎麦の生産が行われているということにちょっと驚いた。

あと、蕎麦打ちの水は「白州の名水」だというから恐れ入る。白州といえば、サントリーがウイスキーの醸造所を構えている名水の場所だけど、もちろん甲府からは相当離れている。わざわざ取り寄せているのか、ご主人が汲みに行っているのか、いずれにせよとんでもない手間だ。

蕎麦ずくし

蕎麦ずくし、1品目。

十割粗びき蕎麦。

蕎麦ずくし

さすがに十割を粗挽きにすると、麺のつながりは非常に悪い。長さは短いものばかりで、「手繰る」ということは無理。しかし、その分麺を噛むことになるわけで、十割のみずみずしい香り、そして粗挽きならではのざらつき感が楽しめておいしい。

蕎麦ずくし

一方、ワンテンポ遅れて提供された十割細打ち蕎麦は、つながりがよく長い麺に仕上がっている。

粉の性質上乾燥が早く、麺同士がダマになりやすい。写真撮影はそこそこにして、一刻も早く食べなくちゃ。

蕎麦ずくし

三番目に、二八蕎麦が出てきた。

十割を2種類食べたあとに二八を食べると、軽くギョッとしてしまう。えっ、これも蕎麦か?と。

というのは、限りなくなめらかな口当たりで、さっきまでのざらざら、ぼそぼそした十割蕎麦の荒々しさと全く違うからだ。いや、蕎麦っていうのはこういうつるつるッと食べるものでしょうが、と自分をたしなめるが、十割蕎麦二連発のあとだと何か「混ざり物」が入っているようで、ちょっと薄気味悪い食感にさえ感じられた。

もちろん、割粉として小麦粉が入っているから「混ざり物」はあるんだけど、ごくごくオーソドックスな二八蕎麦なのに「薄気味悪い食感」とまで形容されてしまうんだから、かわいそうな扱いだ。

でもそれだけ、十割蕎麦のインパクトがクリアで目が覚めるような感じだった、ということだ。これは褒めてるんだぞ?

蕎麦ずくし

蕎麦豆腐と蕎麦サラダ。まあこれは、個人的になくても良かったかな。

最後に蕎麦湯でびっくりさせられた。ここまで濃い蕎麦湯を見たことがない。「ポタージュ状」と形容されることもある、濃い、「蕎麦湯用に専用で作られたもの」は珍しくない。でも、ここの蕎麦湯はポタージュどころの騒ぎじゃなかった。「飲む、そばがき」といった感じ。それくらい、濃い。濃度が、というだけでなく、味も濃い。蕎麦の風味をドロリと喉に感じて、鼻に香りが抜けていく。ちょっと好き嫌いが分かれそうな蕎麦湯だけど、おもしろかった。

やあ、蕎麦ってうまいもんだな。相変わらず。

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