日帰り秘湯巡りの旅

癒しの国:島根

日 時:2007年(平成19年) 01月26日
場 所:千原温泉三瓶温泉小屋原温泉池田ラヂウム鉱泉湯抱温泉
参 加:おかでん、ばばろあ (以上2名)

最近のおかでんが書く記事は、「仕事が大変」だの「ストレスが」だの、ネガティブな表現がとても多い。盟友であるアワレみ隊メンバーにも多大なる心配をかけて申し訳なかったのだが、幸い実家がある広島での仕事という機会が一カ月ほど与えられたため、実家住まいで悠々自適の生活・・・まあ、そうはいっても仕事はあるのだが・・・を送る機会を得ることができた。

これを見逃す広島在住者・ばばろあではなかった。

「ストレスが溜まってるなら、ぜひ出かけるべきだ。徳山の方に戦時中の砲台跡があるからそこへ行こう。もしくは、島根の秘湯巡りだ」

城跡や砲台巡りのためなら、道無き道をもかきわけて山をよじ登る男・ばばろあであったが、さすがにそこまでのガッツは持ち合わせて居なかった。うへえ、砲台はたまらんなあ、と思っていたらあいにくの低気圧到来の予報。砲台めぐりは諦めて、島根の秘湯巡りをすることになった。

折しも、ちょうど平日である金曜日に二人とも時間が確保できた。空いているうちに、良い温泉を満喫しようじゃないか。

2007年01月26日(金)

千原温泉

島根の温泉はあまり全国的に知られていない。せいぜい、「世界遺産に登録か?」と騒がれている温泉津(ゆのつ)温泉くらいか。この温泉津、ったって相当マニアックな部類に入る。

高速道路、JR、飛行機など全ての点において交通の便があまり良くない山陰のこと、大規模に開発された温泉地というのはそれほど多くはない。島根は特にそうだ。だから、見逃されがちなのだが、故に「取り残された」かのような怒濤の温泉が存在するとも言える。

今回はばばろあセレクトによる、充実度120%の秘湯巡りという日帰り企画となった。

まず目指したのは、「千原温泉」という場所。

カーナビが「ああ、千原温泉ッスね。了解了解」と納得してルート設定しておきながら、「実はおおよその場所しか知らなかったんですアハハ」と開き直っていたことに、到着直前になって発覚。恐ろしく大回りなルートを余儀なくされる。この野郎、機械だと思って。覚えてろ。

それにしても、集落・・・以前に、「寒村」と呼ぶのもはばかられるような道を進んでいくんですが。関東界隈の温泉ではあまりお目にかからないようなうら寂しっぷりだ。ああ、でも「千原温泉↑」って矢印の看板が出ている。ちょっとほっとする。

千原温泉らしい

谷底の一軒家がどうやら目指している千原温泉らしい。

温泉?

林業か農業を営んでいる、普通の民家に見えるのだが・・・。

千原温泉湯治場

ああ、確かに「千原湯谷湯治場」と書かれている。

現在は宿泊を受け付けておらず、日帰り入浴だけ可能となっているそうだ。この看板は昔の名残なのだろう。さすがに、こんな山奥に湯治でどこか近隣の宿から通い詰めるのは無理だ。

何だか普通の民家

何だか普通の民家に侵入するかのようだ。

「すいませーん、軒先で売られていたキノコ、1かご分売って欲しいんですけどー」

みたいな感じ。

でもちゃんと「千原温泉受付」と書いてあるし、営業時間は「午前8時~午後6時」と書かれた看板が掲げられていた。大丈夫、ここはちゃんとした温泉だ。

民家みたいな玄関

「ちわーす、お届け物お持ちしましたー」 的な感じで入口に入る。

先代の女将さんの時代は、本当に湯治に来たわけではない秘湯マニアな人たちだと判断すると、追い返していたらしい。治療に専念したい人の邪魔になる、と。

今は時代が変わって、われわれのような一般客でも受け入れてくれるようになったわけで、ありがたいような、ちょっと残念なような。

ただ、おかでんの場合はれっきとした「ストレス発散」という湯治目的があるわけで、ぜひここはひとつ、なんとか・・・

そんな事言ったら、世の中誰もが「ストレス」を抱えているわけで、一億総湯治になってしまうわけだが。

玄関の中

玄関の中に入ったところ。

古い箪笥があったり、ちょっと味のある調度品が並んでいる。応対してくれた女将さんに料金(確か500円だったと思う)を払い、浴室に案内してもらう。

「この温泉にはお越しになったことはありますか?」

おっと、さては「来たこと無いだァ?帰れ、帰れ」と言われる予兆か?一瞬、おかでん一人だけ緊張する。

ばばろあが

「夏には来たことがあるんですけど、冬はないんですよー」

と答えたら、

「あー、それだったら冬の間はお風呂が温いから、わかし湯があるんですよ。そちらを上がり湯として使ってください」

という回答が返ってきた。ああびっくりした。普通じゃん。

ぬる湯、大いに結構なのだが、最後にわかし湯に入らないと我慢ならない寒さということか。うう、くる季節間違えたんじゃないのかそれは。

男湯入口

男湯入口。すぐ隣に女湯入口がある。

階段を見下ろす

狭い脱衣所から続く階段を見下ろすと・・・おお、階段を下りたところに茶色いお湯が魅力的な湯船が見える。

それにしても、その途中にある右側の白いカーテンは何だ?

脱衣所が煙い

あと、何だか脱衣所が煙い。いぶされているにおいがする。 何事かと思って、階段脇の謎の扉を開けてみて了解。

なるほど、この写真は判りにくい構成だけど、この写真で説明させてもらうと・・・

カーテンの奥:男子風呂
カーテンの手前:上がり湯用五右衛門風呂(男女共用)
柱の右側:女子風呂

という構成になっているのであった。

すなわち、いぶされているにおいというのは、まさに五右衛門風呂を炊いているわけであって、ボイラーなんぞ使わない昔ながらの湯治場の雰囲気がぷんぷん漂っている。何だか壮絶だ、ここ。

味わいある湯船

「うひゃぁ、これは文化財ものだなあ」

と言いながら湯船に向かう。もちろんカランなんてものは存在しないので、かけ湯をして入るのだが・・・

ぬるいのぅ。

最初から承知はしていたものの、相当ぬるいのぅ。ええと、源泉温度35度?ずっと入っていると体温、奪われっぱなしじゃないのか?

炭酸泉なので、血行が良くなり、実際の泉温よりも暖かく感じるのが救いだが、これは厳冬期の1月末に入るにはなかなかシビレる温泉でございますな。

五右衛門風呂

ためしに気になるカーテンをめくってみたら、あら、小さな湯船みたいなのが出てきた。これが五右衛門風呂か。

沸かし湯で、冷めたらいかんのでちゃんとフタがしてあった。

カーテン

むふふ。五右衛門風呂から続くこのカーテンをめくると、

「イヤーン、おかでんさんのエチー」

な状態なわけだが、金曜日だし、こんな秘湯中の秘湯に若い女性がくるわけもなし。というか、誰もおらんぞ、他の客は。

「この向こうは女湯です。こちらから開けることは厳禁です」

と注意書きが張り出してあった。へへー。仰るとおりにいたしますです。

解説文

おいでなさいませ

案内

まあ、泉質だの風情なの何だのってのは、郡司勇さんとか温泉教授とか、温泉通と呼ばれる人にお任せすれば良いので詳細は省くが・・・ せっかくなので、「おいでなさいませ」と書かれている文章については転載しておこう。

三瓶山南麓、江川支流の渓流沿いにたたずむ千原温泉は、昔から切り傷、やけど、皮膚病によくきく「湯谷の湯治場」として親しまれてきました。

底板の間からフツフツと湧き出る泉源を囲んだ浴場に入ると、気泡がポコポコと体をくすぐりながら立ち上ってきます。最近の秘湯ブームで訪れることの増えた温泉通の人でさえ、ここでは驚きの声をあげてしまうほどの全国的に数少ない「掛け値なしの天然温泉」です。

湯の花のせいで黄褐色に濁っており、ぬるめの湯ですが、濃厚な成分と炭酸ガスの温浴効果で、長くゆっくりとつかっていることができます。10月から5月にかけては、懐かしい五右衛門風呂の上がり湯でぬくもります。(以下略)

そう、この温泉の特徴は床下自然湧出ということ。これはなかなか無いので、非常にうれしい。泉質は「含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉」となんだかややこしい。

成分表

成分表。

個々の成分について解説する気は毛頭無いが、総成分が11.54グラムもあるというのは驚嘆に値する。濃い温泉だ。アメリカ人の胸毛並みだ(←偏見と妄想含む)

浸かってみる

浸かってみる。

「ううう」

微妙な温度。脱衣所から「寒い、寒い」と言いながら階段を駆け下りてきて、かけ湯して、さあようやく湯船にざぶん、と入ったときに期待する「心地よい温度」とはほど遠い。

ただ、寒いか・・・というと、寒くはない。微妙なんですわ、これが。熱くもなく、ぬるくもなく。永遠に浸かっていられるんじゃじゃないか、っていう感じ。服を身にまとっているよりかは少し冷たく感じるが、かといって裸で寒い、という感じでもない。

湯船の回りは析出物でいっぱい。ま、そりゃそうだ、これだけ濃厚な温泉だ。

秘湯好きにとってはたまらない温泉といえるが、間違ってもカップルなんぞで行かないように。女性に嫌われます。不潔ではないものの、やはりこの析出物であるとか、味のある建造物に理解を示す女性なんぞそうざらにはいない。あと、面白半分でこの温泉に来られても困る。

お湯を接写

お湯を接写。

普通、こういうのは湯気でレンズが曇ってしまい、全く撮影できないものだ。

しかし平気で撮影できちゃうあたり、ぬる湯である証拠。

動画でないのでわからないが、常にぼこぼこ床下からお湯が沸いているのが素晴らしい。「思い出したかのように、時々ぼこぼこっと湯が湧く」のではなく、ここでは常に地下から大自然の恵みがわき上がっている。

大地の力を貰っている、そんな有難い気持ちにさせられるお湯であった。

しかし・・・いつまで入ってもきりがないんである。もちろん、ぬる湯で長湯は大変に結構な趣味と言えるが、「さて、そろそろのぼせてきたのであがるか」などといったタイミングが全然つかめないのであった。45分風呂に浸かっていても、額に汗ひとつかかない。

女将さんからは「1時間でお願いします」と言われていたので、45分経過時点であがることにした。

五右衛門風呂

風呂場中が、五右衛門風呂を湧かしている関係で煙いのだが、さてその五右衛門風呂、ちょうど適温に暖められておりました。熱かったら、湯船からお湯を汲んできてくれということだったが、ベスト。

一度に一人しか入れないスペースなので、先に入ったばばろあが「あああー」と悦楽の声をあげる。人間がスバラシイと感じるちょうど適温だったのだろう。

「やっぱぬるいお湯もええけど、これくらいが気持ちええのぅ」

ついつい本音が出る。

ちなみにこちらの五右衛門風呂も、れっきとした源泉100%。

寒いんだか寒くないんだかよくわからない状態のまま、非常に微妙な気分で次の目的地、小屋原温泉に向かった。ここもばばろあお薦めの秘湯らしい。

ただ、その行く途中に三瓶温泉があるということなので、「せっかくなので寄って行こうぜ、体暖めないとどうも風邪引きそうだ」と立ち寄ることにした。

亀乃湯

三瓶温泉には二つの共同浴場があって、今回はそのうちの一つ、亀乃湯に行ってみた。

亀乃湯営業時間

中に入ろうとすると、共同浴場の向かいにある商店のオバチャンが「今この時間はお湯がぬるいよ~。夕方にならないと暖めないからね~」というではないか。何?またぬる湯か。

「ま、とりあえず中に入って確認してご覧なさい。それで、入ってもいいと思ったらお金払って入るといいんじゃないのー」

だって。

やや。確かに、入口のご案内を見ると、「冬:11月~3月迄 午後9時まで」という営業時間の記載のところに、「午後5時から加熱」と書いてあるではないか。なるほど、もともとぬる湯なので、そのままでも入れないことはないが、適温で入りたければ午後5時以降だよ、ということなのか。

源泉がパイプかがじゃばじゃば

とりあえず中に入ってみる。

おお、源泉がパイプかがじゃばじゃばと豪勢にかけ流されている。円形のお風呂もいい感じだ。できれば入ってみたいところだが・・・

んー。

「どう?入れそう?」

ばばろあが聞いてくる。

「微妙。さっきの千原温泉より僅かに暖かい程度」

「うわあ、それはちょっとキッツいなあ。二連続でぬるいお湯はちょっとしんどいで」

「やめとくか」

「やめとこう」

ここには上がり湯用の五右衛門風呂があるわけでもないし、このまま島根の山奥で風邪引いて立ち往生するのはたまらんので、無念のパス。