民家とおぼしき建物の奥に、「放泉閣」といういかつい看板が掲げられた建物があった。どうやらここがラヂウム鉱泉に入ることができる場所らしい。
「放射能」の「放」、「鉱泉」の「泉」を名前に使っているあたり、「どうだ!」感が漂っている。
放泉閣に向かう途中の庭に、
「ラヂウム鉱泉 三号泉」
という看板発見。
近づいてみると、風呂用取水パイプの他に、岩の隙間から湧き出ている源泉があった。空気と触れると赤く染まるということは、鉄分が含まれているようだ。
飲んでみると、強烈なさび味と塩味と記録した。すまん、郡司さんのようないい表現はできん。
「こんちはー」と中に入る。
成分表にもありますように30分以内とさせていただきます、んだそうで。で、その成分表がどこにあるか気づかなかった。
後で気が付いたのだが、ここはホント民家のお風呂みたいになっていて、それが2カ所にある。こういう昼時は1カ所のみの解放になっていて、要するに一組お客さんが入っちゃうと、次のお客さんは待機してなくちゃいけないということになる。先ほどの小屋原温泉以上になかなかお風呂にありつけない状態となるわけだ。
週末は混むだろうなあ、これ。
さてそのお風呂ですが・・・
鉱泉なので、当然わかし湯ということになる。源泉温度は16度程度なので、加温のうえ、湯船には木のフタがしてあった。
木のフタを一枚一枚、二人がかりでえっさほいさと取り除いて、ようやく出て参りました池田ラヂウム鉱泉。
残念ながら、こちらで使われている源泉は「6,640マッヘ」の努級ラドン泉ではなく、先ほど庭先で見かけた3号泉を使っている。こちらは183マッヘ、ということでちょっと気合い不足の感はぬぐえないところだが、まあ湯量の問題であるとかいろいろあるのだろう、仕方がないところだ。
ただ、ここの面白いところは、できるだけ元の鉱泉を活かそうとしているのだろう、「これをひねると鉱泉が出ます」というレバーをひねるとジャバーとものすごい勢いで冷たい鉱泉が吹き出てきた。んで、それでヌルけりゃボイラーがあるからそのスイッチ入れて加温しんさい、というわけだ。
常にぐるぐる循環加熱しているよりローコストだし、源泉を楽しみたい人にとっても優しい取り組みだと思う。風邪をひく覚悟があるならば、鉱泉を思いっきり投入して、僅かに残っているであろうラドンを思いっきり吸入してみるのはいかがだろうか。かえって体調悪化するかもしれんが。
このお風呂の面白いのは、湯の花・・・というのかな、何だかわからない浮遊物がいっぱい浮いていたということ。最初、「うわ、ゴミか?」とも思ったが、あまりに均質に、風呂いっぱいに浮いているのでこれは鉱泉からの析出物らしい。何だろう。はじめて見るタイプだ。
「こういうのをニュータイプ、と言うのだろうな」
一人で納得する。
湯船は二人が入ればちょうど良い広さ。
適温に暖められていて、ようやく四カ所目のお風呂(うち1カ所はスルー)にして、「ああ、生き返る」と暖かい湯を堪能したのであった。
思わず
「良い湯だなあ」
と口走ってしまったが、それは先ほどまでの名湯に対して失礼ってもんだ。前言撤回。この風呂も良い湯だが、その千原、小屋原も大変に良い湯でした。
風呂あがり、入口奥のソファがある部屋に一人の男性がいて、
「どうぞ、コーヒーがあるんでゆっくりしていってください」
と僕らを招き入れてくれた。従業員さんかと思って、僕らは「あ、どうも」と軽く会釈してやり過ごしたが、その人はそのままタオルを持って風呂場に向かって行った。あら、僕らの順番待ちをしていた後続のお客さんでしたか。
みると、ご自由にどうぞ、ということでインスタントコーヒーなどがテーブルに並べてあった。確かに、一つしか稼働していないお風呂のこと、待ち客が待機する場所は必要だろう。宿なりの配慮ということだ。
お菓子もあったので、一つ頂戴する。
もう昼時を過ぎているのに、何も食べていない。事前にばばろあから
「覚悟しとけよ、島根の山奥だからな、食べるところなんてなかなか見つからないんだから」
と言われてはいたのだが・・・。
引き続き、新しくできた道を有効活用しつつショートカットし、「湯抱(ゆがかえ)温泉」に向かう。
なんとも優雅な名前で、そそられる。
ここは一軒宿の秘湯、というわけではなく、何軒か宿がある場所のようだ。
しかし、営業していると思われる宿に「すいませーん、日帰り入浴ってやってます?」と聞いてみても「やってないんですよー」の回答連発。ありゃー。
あまりにひなびた温泉すぎて、そういうのってやっていなかったのだった。
中村旅館の女将さんはたいそう残念がってくれて、「そうなのォ、せっかく広島から来てくれたのに申し訳ないわねぇ。あらかじめ連絡頂けてればお湯を沸かしてお待ちしてたのに」なんて言ってくださった。わざわざ湯を沸かして待って頂くなんて恐れ多い話だ。
結局、湯抱温泉は入ることができずスルー。
いい加減飯を食わないとやっとれんで、ということになり、食事場所を探す。時刻はもう14時近く。「早く食わんと、夕飯が食えんようになる」と食が太くないばばろあは気になるし、おかでんはおかでんで「早く食べないと、夕食時に満腹状態だと夜のビールがまずくなる」なんてしょーもないことを考えているし。
しかし無いんですなあ、店が。結構な主要幹線道だと思うんだけど、いかんせん山の中の道。なかなかお店がみつからない。
そんな中、ふるさと創生基金で作ったんかこれ?みたいな豪華な建物が丘の上に建っていた。その名も「ゴールデンユートピアおおち」。うわぁ、すげぇ名前だ。ま、名前は兎も角、レストランがあるという看板を発見したので、ぜひともここで食べないとあとがもうない、と一縷の望みを託して施設内の「レストラン石楠花」に向かう。
「営業時間のご案内 午前10時~午後2時半」
良かった、間に合った。今の時刻は2時5分。ぎりぎりセーフだ。
・・・。と思ったら、入口に
「お昼の営業は終了しました。夕方は5時から営業します」
の非情な文字が。
「なんでや!まだ2時半になっとらんじゃろーが!」
ばばろあ、あまりの絶望で腰から砕け落ちる。
うーむ、営業時間の掲示をよく見ると、「オーダーストップ午後2時」と書かれていた。そういうことだったか~。あと5分早ければ。
「安心しろ、この先に道の駅がある。そこにレストランくらいあるだろう」
といじけるばばろあを慰めつつ、空腹のためシートベルトがややキツくしまる状態のまま車は江の川を遡上していく。
目指していた道の駅に到着。
うーん。。。思っていたものと違う。もっとがっちりした立派な施設かと思ったんだけど。これはちょっと。
中を覗くと、確かに食べ物は売られていた。うどん、親子丼、蕎麦・・・。
「でもよ、ここでうどん食ったら負けって気、しない?」
空腹とはいえ、ばばろあにも意地があった。その意地には激しくワタクシも同意するのであった。
「確かに。それだったら食わないほうがまだいいやっていう気になるよな」
「だろ?」
われわれは、結局ここでの昼食を諦めた。
「武士は食わねど高楊枝、ってやつよハハーン」
もういい加減だ。
その後しばらく行くと、今度は「川の駅」なる謎の施設発見。
「あ、待て!ここだったら食べられるかもしれん!停まれ!停まれ!」
車をUターンさせて、敷地内に侵入。
おお、そうだよそうだよ、こういうのを探していたんでスヨ僕らは。
入口には、こんなPR看板が出ていた。
三次の冬 食・感物語
雪見メニューエントリー中!!見た目は質素で作木があふれんばかりにお膳いっぱいに踊り出す定食です。
お店から一言
寒い冬に身も心も温まる冬季限定だんご汁セット 1月6日から発売開始!!!メニューは
「わかたの酒」粕(作木産)
じっくりねかせた極秘味噌
新鮮野菜、こんにゃく、作木産もち米で作っただんご、寒バエなど作木産の食材があふれんばかりに使われています。だんらんセット ¥580
(冬季限定ほかほか定食セットです)
「うおおお。ここまで熱烈にPRされてしまったら、これはもう食うしかないではないかキミイ」
おかでん、早くも陥落。このお店に決めた。だんらんセットで僕はもう、ばばろあと団らんすることに決めた。
で、こちらがだんらんセット。580円とはいっても、具がいっぱいの粕汁がおいしくてボリュームたくさんで、大変にだんらんしました。
「風呂よりもあったまかったかもしれん」
「いや、それを言っては元も子もないからやめれ」
こうして、日帰り島根秘湯の旅は終わりを告げた。
コメント