5日目昼食 のどかなタコベル
【時 刻】 12:00
【場 所】 タコベル
【料 理】 ・タコス ・ブリトー ・ペプシコーラ
マッカラン国際空港にあるレンタカー屋で車を手配した。事前に日本の旅行代理店でクーポンを発行してもらっていたので、保険の手続きをするだけで良い。しかし、愛想の良い受付の黒人ねーちゃんは、やたらと話しかけてきた。
「あら、あなた達にぴったりの車が用意できるわ。プラスアルファのお金がかかるけど、せっかくだからそっちにしない?」
「・・・って言ってるぞ、おかでん。どうする?」
ジーニアスが翻訳しながら、こちらに問いかけてきた。この「どうする?」というのは「せっかくだからお奨めに乗っちまおうぜ」という気持ちが若干込められているようだった。
というのも、ヨセミテ国立公園ドライブの時の車がごくありきたりの車種だったので、「次はいかにもアメリカン!ウヒョー!っていう奴に奮発するか」なんて話をしていたばっかりだったからだ。
「まあ、試してみるか。片道6時間のロングドライブだし、わざわざお奨めするくらいだし。『ぴったりの車』とやらを試してみようじゃないの。」
わくわくしながら、駐車場の『あなた達にぴったりの車』を確保しに行く。どんなイカしたクールな車が用意されているのやら。
ファミリアの北米モデルMAZDA Protege
要するに、ファミリアの北米モデル。
あの受付嬢、日本人だったら日本車がいいんだろうと勝手に判断しやがった。
こっちはド迫力な車だとか、日本じゃ乗れない車だとか、そんなのを期待していたのに・・・。
燦然と輝くマツダのエンブレムが、逆に腹立たしい。
車は延々と何もない砂漠の中を走る。ラスベガス近郊だとテクノやハウスがラジオから流れていたが、どんどん田舎になるに従ってカントリーばかりになる。これが、眠い。
こちらは車のクルーズコントロール機能を使って運転しているので、アクセルすら踏む必要がない。道はまっすぐ、風景はほとんど変化なし。そして流れてくる曲はまとわりつくようなカントリーミュージック。これで寝るなという方が無理だ。
寝ました。二人そろって、寝ちまいました。それでも車は減速せずにまっすぐ走るんだから、怖い。
この先に本当に人は住んでいるのか、なんて不安になりだしたころ、ようやく町を発見。Kingmanだ。ここは、ラスベガスからの道とロサンゼルスからの道が交差するところ。今まではずっと南下してきたが、ここから東に向かうことになる。ちょうど旅の中間地点でもあるので、昼食をとることにした。
しかし、砂漠のど真ん中にぽつんとある田舎町にすぎないわけで、スーパーが町の中心にあって、その周囲に数軒のファストフード系飲食店がある程度。選択の余地はあまりない。
われわれは、その少ない選択肢のうちのひとつ、「タコベル」に入ることにした。ジーニアスが「ここならまず外れることは無い」とお墨付きを出したからだ。
タコベルをご存じか。おかでんも名前は聞いたことがあったが、その存在はよく知らなかった。
全米では結構な店舗数を誇る、タコスのお店。それがタコベルだ。なぜか、日本に進出していないようだ。過去に進出失敗したのか、それとも海外戦略を一切考えていないのか。
まあ、「タコベル」という名前がいかんのかもしれない。日本だったら、ワケがわかっていないオッチャンが来店して、
「何やぁ、タコ焼き売っとらんのか。つまらんのぉ。じゃ、ゲソ天とかないんか。え、それも無い?タコベルって看板にうそついとるんじゃないんか、こら」
なんてカウンタ越しに店員を困らせてしまいそうだ。
でも、タコスって流行ると思うんだけどなあ・・・。
店内はお昼時ということもあって結構混んでいたが、ファストフードはどこでもやるこたぁ一緒。カウンタに並んで、待っている間に壁に貼ってあるメニューを吟味すればいい。僕はタコス+ブリトー+ドリンクMのセットを注文。$3.99+Tax。安いもんだ。
ちょっと日本のファストフードとルールが違うのは、注文の品ができあがるまで待たされるとき、待ち番号を告げられる事。番号札という概念は無いらしい。
タコスができあがるまで、カウンタのそばでジーニアスとひそひそ話。
ジーニアス「でもよ、これって他人のタコスをガメることもできるんだよな。番号札と引き替えじゃないって事は」
おかでん「なるほど、確かに盗むのはたやすいな。アメリカってこういうところのガードが堅いのかと思っていたけど、案外甘いんだな」
ジーニアス「まあ、決死の覚悟でタコスガメるっていうのは、お前の人生何だったんだってカンジだけどな。その程度なのかと」
おかでん「ああ、ちょっと不安になってきた。自分の待ち番号が聞き間違いだったらどうしようって。なれない英語を聞いたから、ひょっとしたら違っているかもしれない」
ジーニアス「まさか!お前、英数字のヒアリングすら自信ないのかよ」
おかでん「大丈夫だと思うんだけど、何しろ注文した料理の実物を見たことがないから・・・注文通りなのかどうかすら、わからん」
ジーニアス「間違えて他人の持っていくなよ?」
おかでん「で、いきなりむんずとデカいお兄ちゃんに襟首捕まれて、泥棒扱いされたらタマランもんなあ」
あと、日本と状況が違う点としては、「ドリンクは自分で注げ」ということだった。ドリンクメニューには、small,mideum,largeと「大きさ」が記載されているだけで、個別の飲み物名称の記載はない。実際、注文すると空のカップだけが渡された。
店内を見渡すと、レジカウンタの横にドリンカーが設置されていた。ここで、自分で注げという事なのだろう。
先にドリンクを注ぎ終わったジーニアスが、ニヤニヤしながらこっちを振り返った。
「いやぁおかでんセンセイ、キミが飲むドリンクはこれしかない!ってのがあったよ」
いやな予感がして、ドリンカーの銘柄ラベルをのぞき込んでみたら。ああ、やっぱり!「ルートビア」
友よ!久しぶりだ、友よ!
・・・できれば二度と見たくなかったんだけどなあ。
「勘弁してください、せっかく朝食まともなものを食べることができて、この昼食もどうやらまともそうだというのに。これ以上傷口を広げるのはやめてくださいお願いです」
なぜか卑屈になりながらひたすら許しを乞いつつ(何でジーニアスに許しを願っているんだろう?今考えると不思議だ)、あわててペプシコーラをカップに注いだ。これで、もうルートビア地獄はなくなった。
「あー」
ジーニアスの非難に満ちた声を尻目に、こちらとしては「よかった、助かった」というファストフード店内で本来あるまじき安どを感じていた。なにしろ、ここで言う「ミディアムサイズ」のカップとは、日本で言うところの「ラージサイズ」に相当するくらいデカい。こんなのでルートビアごっつあんですをやったら、泣いちゃうに違いない。
というちょっとしたやりとりがあったとき、お客の一人がラージサイズのカップをもってドリンカーのところにやってきた。さすがにデカい。早まってこのサイズにしなくて本当に良かったと思ったほど、デカかった。
あっ、ルートビア注いでいるぞ。
あろうことか、その人はラージサイズのカップになみなみとルートビアを注いで、うれしそうにしているではないか。
おかでん「見たか?」
ジーニアス「あ、ああ、見た。すごかったな、なみなみ、だぜ?」
おかでん「ルートビアはこんな田舎町でも愛されてるんだな・・・」
ジーニアス「やっぱ、赤ちゃんさえ泣いて欲しがる飲み物だからな」
おかでん「なあ、俺らって味覚おかしいのか?ルートビアがうまいってのが普通なのか?俺、だんだん自信無くなってきた」
ジーニアス「落ち着け、そんなことは絶対にないから。アメリカに着いてから今日までの料理、見てきただろ?そういう味覚の国なんだから」
おかでん「そうだよな、うん、そうだよな」
自分自身を納得させようさせようと必死なんである。そうでないと、何となく不安になってしまって。
お天気がいいことだし、外のテラスで食事をとった。
あらためて、これで税込みで4ドルちょいというのは安いと思う。野菜もたくさん入っていて、ヘルシーな感じを受ける(本当かどうかは知らん)。
さて、食べてみましょう。今日の食事は、外見だけで安心できるから気楽だ。
ふむ。なるほど・・・。
ここで、「おいしいじゃない」って言うつもり満々だったにもかかわらず、その言葉は結局出すことができなかった。その代わりにでてきたコトバが「なるほどね」。
何が「なるほど」なのかというと、典型的なアメリカな味付けがされていたということ。もっと言うと、アメリカの肉料理で必ずコンニチワする味。・・・要するに、チリパウダー系の味と香りなんですな。慣れると旨く感じるのかもしれないけど、慣れない僕らからすれば、「胡散臭い味」としか感じられない。
まあ、後でいろいろ調べてみたら、タコスにはチリパウダーを入れるのが当たり前らしいし、そもそもチリパウダー自体がアメリカ移民文化が作ったミックススパイスだという。
でも、こちらの味覚としては、「ここはシンプルな味付けで十分なのに、なんでこんなくどくしちゃったの?」って感じるわけで。それが理由で、「うまい」と断言できなかったのだった。
でも、食後の恒例・点数づけは「6点」と高得点をマーク。思わぬところで生野菜を食べることができたという事でついつい評価がゆるくなってしまったようだ。
さあ、気分をあらたに、目指せグランドキャニオン。あと3時間だ。
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