第四弾:ちょっと一品、の逆襲

ますゐ全メニュー制覇プロジェクト(その7)

お久しぶりでございます。

半年に一度のアワレみ隊ますゐ詣で、今年の夏もいやーんと開催して参りました。

まさに前回、「寸止め一本」の憂き目にあってしまったのは記憶に新しいと思う・・・いや、あんまり新しくないか、半年前だもんな。とにかく、全3回の企画のはずだったのが、わずかなメニューのせいで全5回まで規模が膨らんでしまった状態になっております。

プレイバック、今年の正月。

・・・前回の参詣時点で、66品目中56品目の制圧が完了していた。残りは、10品目。参加者が10名いたので、一人1品のノルマをクリアすれば、全メニュー制覇達成という状態だった。誰しもが、全メニュー制覇の快挙、ならぬ怪挙に期待を寄せていた。

しかし。

訪問したのが、新春初営業日の1月4日だったのがいけなかった。「魚さしみ」「牛さしみ」「カキフライ」と、鮮度が要求される商品が提供されていなかったのだ。結局、胃袋の空き容量があるにもかかわらず、3品目を次回持ち越し、という結果に終わってしまった。

しかも、カキフライは冬しか取り扱っていない商品。この時点で、夏と冬、あともう2回の開催が必須となってしまったのである。

一同、落胆。夏休みの宿題がようやく終わったー、と万歳した8月31日の夜、かばんの奥からもう一冊宿題に指定されていた問題集が発見されてがっかり、みたいな感じだ。

どうせ、全メニュー制覇した後だって、ますゐには定期的に通う事になるだろう。だから、企画が終了しようがしなかろうが、何ら表面的には変わりないのだが・・・でも、何だか「うわ、先が長い」という気になる。

そういえば、この企画を始めた頃って、僕ぁ20歳代だったんだよなあ。今は既に30歳。20代と30代をまたぐ企画になっているんだなあ・・・ううむ。

おっと、感傷に浸ってしまった。ますゐにため息は似合わない。話を元に戻す。

前回のレポートで、最後にこのように話が締めくくられていた。

残り3品となった。今後の展開としては、

夏に魚さしみ、牛肉さしみを頂く。
冬にカキフライを頂く。
と、小出しに、じわりじわりと全制覇への道をたどっていくことになる。あと、公式メニュー外のお品書きが若干あるので、その辺りも随時制覇していくというおまけのミッションが残っている。これは必須ではないのでまあぼちぼちと。

注目なのは、ますゐで「事前予約」を入れたうえで出てくる「魚さしみ」だ。一体どんな内容なのだろうか?お刺身三品盛り、といった感じの居酒屋メニューのできなのか、それとも豪快な舟盛りとなるのか。値段すら分からないので、今からドキドキだ。

というわけで、今回は「ますゐでさしみを食べよう」という、何だかちょっと不思議なテーマで全メニュー制覇の階段を一歩、上っていく事になる。

と、思っていたのだが。事態は急変した。

現地諜報員のうっちゃんから、6月末に緊急連絡が入ったのである。

こんばんは。
実は今晩はますゐにて晩飯を取ったんですが、
いくつか異変に気づきましたので、メールにてご報告いたします。

1.価格表示が消費税込みに変更!
2.なんと、現在ステーキフェアでステーキは全品500円引き!
3.さらに、おつまみメニューが増殖!

1と2は、まあ驚く事はない事だ。しかし、見逃せないのが3番の「おつまみメニュー増殖」だ。うっちゃんから送られてきたメールには、そのおつまみメニューが記載されたお品書きの写真が貼付されていた。壁に紙で貼りだしているような、臨時メニューじゃない。ちゃんとデザインされた、立派なお品書きだ。・・・レギュラーメニューじゃん、これ。

送られてきた写真は、カメラ付き携帯で撮影されたものらしく、画像は小さく解像度が低かった。そのため、具体的にどのようなメニューがあるのかまでは把握しきれなかったが、どうやら餃子などがあるらしい。ますゐで餃子ぁ?にわかに信じられない。居酒屋じゃん、それ。

「おつまみメニュー」は、ざっとみただけでも10種類以上はある模様だ。これは、全メニュー制覇をもくろむアワレみ隊に対する明らかな挑戦状だ。その宣戦布告、受け取ったぞ!面白い、こちらは百戦錬磨の手練ればかり。それ、一気呵成に全メニュー食べ尽くしちゃえ。

と、いうわけで、今回もアワレみ隊BBSに戦士の招集がかけられた。

244: 名前:おかでん投稿日:2004/08/07(土) 16:23
【ますゐ詣で2004・猛暑[決定稿]】

年に二度の聖地巡礼。今年も夏にますゐ詣でを開催します。
肉のますゐ・・・そこは、老若男女全てがにっこりとほほえむ事ができる、麗しの
肉屋直営食堂。今回の開催で何度目になるのか、既に検討が付かなくなってきたが、たまにはぱーっとますゐで大騒ぎ!大騒ぎ!

[日時]
平成16年8月15日(日曜日) 18:00-21:00(20:30ラストオーダー)

[場所]
広島県広島市中区八丁堀14-13 肉のますゐ
082-227-2983(おやじ普通な肉屋さん、と覚えましょう)

[内容]
ますゐソースの味に飢えた人々が集い、その禁断の味に舌鼓をうつ。
また、並行して「ますゐ全メニュー制覇プロジェクト」第4回を開催予定。
新メニューが登場したので、それらメニューを完膚無きまで制圧。

[参加者]
一平、うっちゃん、ばばろあ、おかでん、はくちゃん、ちぇるのぶ、蛋白質
(以上7名)
うっちゃん、おかでんは遅刻して参加の予定。

※飛び入り参加は可能ですが、極力事前に連絡ください。アワレみ隊BBS読者誰でも参加可能です。

今回は、7名でお詣りする事になった。十分な戦力だ。酒をぐいぐい飲む人間がおかでん以外居ないのが惜しいところだが、おつまみメニューは彼らの手によって鎮圧されるのは時間の問題だろう。

今回は、「要予約」メニューである魚さしみを注文しなければ意味がない。こやつを食べることが、企画趣旨の6割を占めていると言って、過言ではない。

肉のますゐで刺身。

すっごくいいシチュエーションだ。ますゐを知る人に、「今回はますゐで刺身食べてきたんだよ」と言えば、100人中100人が「えっ?刺身って、魚の?ますゐで?」と驚くこと必至だ。現に、おかでんの周囲の人に試してみたが、みなさん一様に「魚の刺身?ホント?」って聞き返してきた。くぅぅ、小気味いいィ。

ただし、おかでん父だけは「ははは」と小馬鹿にした笑い声をだし、「あそこって肉屋なんだろ?どうせ、近くの三越や福屋のデパ地下で刺身のパックを買ってきて、並べるだけだろ。そんなの、高い値段払って食べる必要ないだろうに」と身も蓋も無いツッコミ。

こら、そこ!そりゃ確かにそうかもしれないけど、ますゐで刺身を食べる事に意義があるんですよ!海鮮居酒屋で食べる刺身とも、デパ地下の鮮魚コーナーのお魚とも意味合いが全然違う。「ますゐのメニューとして、存在する刺身」。これだけで十分。味なんて、はっきりいってどうでもいい。

要予約、ということなので、ますゐに電話して席の確保とあわせて魚さしみの注文をしておいた。そのときの模様がBBSに書き込みされている。

245: 名前:おかでん投稿日:2004/08/07(土) 16:32
ますゐ、押さえました。
連絡先を通達せにゃならんかったので、今回は「おかでん」名で予約。
キングオブますゐとして「しうめえ」名をお店に浸透させようと思ったのだが、僕宛にTELがかかってきて、「はいおかでんです」って出ちゃったら、「あら、間違えました」って電話切られちゃうから。

ということで、遂に!遂に!魚さしみ予約完了!
まだ見ぬ強豪、遂に登場なのです。

・・・本当は、お魚屋さんは盆と正月はお休みなので刺身を扱っていないんだそうな。
いっぺんは断られたんだけど、「僕ら盆と正月しかお邪魔できないんで、毎回食べたくても食べられないんですよぉ」って泣きべそかいたら、「じゃあ、どこかで見繕ってきましょうか?」という神のお言葉。謹んでお願いさせて頂きました。このあたりの融通の利きっぷり、すてきとしか言いようがない。

リアル「魚さしみ」とはちょっと違うかもしれないけど、ますゐからオフィシャルに
提供される以上は、メニュー制覇と見なしてよかろう。
苦節数年、いよいよ魚さしみの出陣だ!!

ちなみに、2皿注文しました。1皿3,500円。一人頭1,000円の負担となってちょっとココロ苦しいですが、「滅多な事ではお目にかかれない縁起物」ということでご了承ください。せっかくだから、参加者全員食べたいでしょ。

なお、未完メニューは「魚さしみ」「牛さしみ」「カキフライ」。
カキフライはこの時期無理として、「牛さしみ」はぜひ食べておかねば、と注文したところ「牛さしみは夏やってないんですよー」という衝撃の事実が。おっと、これは意外だった。
「夏は暑いから、痛んじゃうかもしれないので」
だそうな。成る程、そういうことか。これも、次回持ち越し。
ひと皿3,500円というのは特に決まりがないようだ。お店の人が、「どれくらいのご予算でいきます?」と聞いてきて、「ええと・・・どうしたもんかな」と悩んでいたら、先方が「7名なので2皿、1皿3,500円でどうか」と提案してきたという次第だ。どうやら、大皿に盛りつける刺身盛りになるらしい。

この時の予約電話でのやりとり。

246: 名前:おかでん投稿日:2004/08/07(土) 16:44
相変わらず、予約の入れ方が変。
「この店で、予約を入れなきゃ食べられないメニューって、他にありますかね?」
なんて切り込み方してるんだもんな。で、
「10名弱の人間が集まる」「その連中は、コース料理を注文しないで、バラバラに注文するという」「盆と正月にいつもお店に訪れている」
という情報は、会話の中でわかっているわけ。
お店の人、「ははーん、さてはまたアイツらだな」と気づいたかもしれん。

そういえば、「牛さしみがダメ」って分かったときに、お店の人が「最近、新しいメニューもでてきましてね、鶏のみぞれ煮だとかありますんで(料理名は記憶曖昧)、そちらの方なども試して頂けるとよろしいかと思いますよ」なんて言ってたな。

牛さしみがNG、という事と新メニューの事ってつながりが無いはずなのに、敢えてお勧めしてくるってことは・・・ひょっとして、この時点で正体バレてる?まさかなあ。

今年正月のますゐ詣でで、「いつものヤツら」という事で存在はお店の人に認識されていることは分かった。では、「ますゐ詣でプロジェクトのヤツら」という認識を持っているかどうか、非常に興味深いところ。
全てお見通しだったら、相当恥ずかしいものがあるな。

お店で今度聞いてみようか。「アワレみ隊って知ってます?」って。
・・・まあ、普通、「何ですかソレは」って言われてお仕舞いだろうな。
まあ、そんなわけで、仕込みは完了。

ますゐ全メニュー制覇プロジェクト、第四弾の開始だ。

ますゐ前で記念撮影(おかでん不在時)

8月15日、18時。

ちょうどお盆だ。ご先祖様の供養も兼ねて、ますゐ前に集合する面々。

この時点で、おかでんはまだ到着していない。おかでん抜きでスタートするという、イレギュラーな形でますゐ詣で2004・猛暑はスタートとなった。

2階にある、おかでん名で予約を入れて置いたお座敷に通される。

今回は、いつも通されていたお座敷とは別の場所だった。しかし、「一番奥の部屋」であることには変わりなく、2時間以上延々と食べ続け、馬鹿話で盛り上がるわれわれに対して防御態勢をとっているのではないか、と勘ぐりたくなる。もちろん、こちらの素性は電話予約の際でしかバレていないのだが、あんなヘンな予約電話を入れている時点で「年に二回のキテレツなお客、襲来!」と見破られていても何ら不思議ではない。

魚さしみ

お座敷で、まず真っ先に目を惹いたのが・・・

出た!

これが幻のメニュー、「魚さしみ」時価、要予約だ!

宴会コースメニューにも含まれていない料理なので、この刺身が客席に供されるのはごくごくわずかなはず。この写真は永久保存版ですな。

これで、3,500円。10品が盛り込まれていて、トロなどの高めのネタも使われていることから、決して高くはないと思う。ボリュームも結構ある。

いきなり、本日のメインイベントが参加者をお出迎え。みな一様に感心することしきり。こんな料理がでてきて、ここが「肉のますゐ」だと思う人は一体どれだけいる?居酒屋だと思うに決まっている。

ますゐで魚さしみを食べた・・・これは、誇りにしていいことだと思う。非常に、希少価値の高いメニューだ。

メニュー検討中

おかでん抜きのまま、メニュー選びを開始する参加者。

ぱっと見た目代わり映えのしないレギュラーメニューだが、よくみると消費税総額表示になっていて「値上がりして見える」。

・・・いや、違う。どさくさに紛れて、値上がりしとる。10円単位で端数切り上げをやっているうえに、ところどころ消費税上乗せでは済まない増額をやっているメニューがあった。便乗値上げ、というやつだろう。

ただし、サービストンカツ350円はお店のプライドであったらしく、総額表示になった現在においても価格据え置きだった。消費税相当額である17円は店側の持ち出しだ。かっこいいー。その心意気たるや、拍手喝さいものだ。

ちょっと一品

さて、今回諜報員からの事前情報で掴んでいた新メニューが、これだ。メニューは以下のとおり。

鴨の薫製 420円
一口ギョウザ 360円
スモークサーモン 500円
海老フライ 1,100円
肉ソテー 1,000円
タン塩焼き 1,100円
チキンソテー 850円
鳥肉天ぷら 850円
白肉ソテー 850円
白肉天ぷら 850円
生ハム 750円
枝豆 160円
冷や奴 260円

ぬう、なんなんだこれは。本当に居酒屋メニューだ。ますゐよ、一体お前はどこに行きたいんだ。夜は居酒屋として二毛作をしたいのか、それとも食堂の位置づけは堅持したいのか。

メニューを見ると、「既に使っている食材を調理法の変更でバリエーションを増やしました」というものが少ない。わざわざ、この「ちょっと一品」用に食材を新たに調達している事がわかる。気合いが入っているのはいいんだけど、あんまり手広くやりすぎると「ますゐ」としてのコアな部分というか、ますゐらしさ、というのが失われてしまうので注意した方がいいと思う。

値段も、ますゐにしては結構高い。メニューそのものは「ちょっと一品」なものをそろえているが、値段は決して「ちょっと一品」と頼めるようなものではない。だからこそ、「一体どうしたいんだ、ますゐ!」と問いたくなってしまう。

まあ、われわれとしては、ますゐの経営方針や値段についてとやかく言う立場じゃない。単に「全メニューを制覇する。」それだけだ。エラそうな事を抜かす前に、完全制覇をさっさとやりやがれ。

ステーキまつり

「ちょっと一品」メニューの裏は、ステーキまつりだった。

庶民派食堂であるますゐが、このように丁寧にデザインされレイアウトされたメニューを使っているというのが、何だか違和感があるし、ほほえましい。

一番上にある牛のロゴマークだが、牛が目をつぶっているのが何だか可愛い。

ますゐのステーキは、さすが肉屋直営というだけあって非常に美味い。これは過去の訪問記で報告した通りだ。ステーキまつりなら、ぜひ今回もまつられてみたいものだ・・・と思うのだが、「魚さしみ」と「ちょっと一品」を完膚無きまで、立ち直れないくらい制圧しないといけないミッションを控えているため自粛。

生ビールの告知

「ちょっと一品」の衝撃に匹敵する驚きが、まだ残されていた。

な、生ビール!?

遂にますゐが生ビール、はじめちまっただよー。

そんな馬鹿な。

こんな大衆食堂的で、オバチャンが給仕やってくれるようなお店で、生ビールか。ウチは瓶ビールしかありませんよ、ってお店だったのになあ。変わっていくなあ。

ますゐって、建物の造りからしても古めかしく、ちょっとウェットな感じのお店だ。そんなお座敷で、生ビールをキューッというのはどうも似つかわしくないと思う。生ビール好き好き大好き、なおかでんでさえ、そう思う。「チェッ、生ビールないのかよ」とか文句いいながら、瓶ビールを飲む場所、くらいの認識だった。

でも、「ちょっと一品」でお酒を飲むお客をターゲットと据えた以上、生ビールは避けて通れない道だったのだろう。大きな方向転換だと思うが、一体どういう経営判断がなされたのだろうか。・・・単に、アサヒビールの営業マンに口説き落とされただけだったりして。

生ビールに軽い違和感は覚えるが、それは「ますゐ歴が長い人間の、思いこみ」だ。ますゐだって、変わっていく。「いやー、ますゐは昔のほうが良かったネ」なんて常連ぶった高慢ちきな発言を間違ってもしないように、気を引き締めないと。

それはそうと、清酒の銘柄が追加になっていた。以前、瓶で清酒を注文すると福美人というお酒が来たのだが、今回は賀茂鶴が新たにラインナップされていた。

10分経過後も悩み続ける

着席してから10分。まだ何一つ注文を決めきれず、悩み続ける参加者一同。

毎度の光景だ。

鳥取からやってきた一平

今回、ますゐソースとの邂逅だけのために、わざわざ鳥取から車でやってきた一平。アワレみ隊BBSの常連さんで、今回初登場となる。

ますゐ初体験で、われわれますゐのプロ(あくまでも自称。兼、仮称)の指導を仰げるとは幸せ者である。・・・いや、多分逆だ。王道どころのメニューではなく、ますゐメニューの極北なものばかりを注文する連中なので、逆にますゐ道を踏み外してしまうかもしれない。

魚さしみの写真を撮る一平。そう、この料理、恐らく二度とお目にかかることはないだろうからね。ちゃんと写真で保存しておいた方が良い。一生もんの記念になります。PCの壁紙にしても良いです。プリクラにして携帯の裏面に貼り付けても良いです。というか、魚さしみのフィギアの携帯ストラップがあったら欲しい!

・・・いい加減にしとけ。

おかでん到着

集合時間から遅れること15分。おかでん、ようやく八丁堀に到着。

この日、岡山から車で移動していたのだが、西条-志和間で事故渋滞となってしまったために山陽自動車道を下り、JR西条駅で車とお別れしてJRで広島駅へ。その後、タクシーで現地に向かうという、なんとも無駄金を使いつつ現地入りだ。

そうでもして、早く現地に到着しないと・・・幻の、夢にまで見た魚さしみが、原型をとどめないくらいに食い散らかされているおそれがある!それだけは避けなければ!

おかでん到着時のお座敷の雰囲気

2階に駆け上がり、「おかでんという名前で席の予約をしているんですけど」とオバチャンに告げると、おばちゃんはすぐに「ははーん」というより「しめしめ」みたいな顔をして、奥の座敷に案内してくれた。

お座敷の入り口から、ひょいとのぞき込んでみたら・・・うわ、大の大人達が難しい顔をしてメニューとにらめっこしているぞ。やばい光景だ。なんか怖い。

すぐに中に入るのをためらい、しばらく廊下で足踏み。一息、大きく深呼吸してからお座敷に踏み込んだ。

一平&おかでん

初対面の一平と記念撮影。

「せっかくだから記念撮影しとけ」と、わけのわからんあおりをうけて、ツーショット撮影だ。一体何が「せっかく」なんだか、さっぱりわからん。

われわれとしては、ますゐ初体験である一平がどのような注文をするのか、興味津々だ。

「ますゐソースを堪能したいので、サービストンカツやカツカレーを食べてみたいんですけどね・・・」

と彼は言う。

「両方食べればいいじゃん。簡単なことだ」

一同、ばっさり一刀両断。

「いや、そんなに胃袋は大きいほうじゃないんで」

悩みに悩んだすえに、結局、「特ランチ」を注文していた。

生ビールがますゐで飲めるようになるとは

「やあやあみなさんお久しぶり」「あっ、アナタが一平ですか。どもはじめまして」「うわ、これが幻の魚さしみなのか!すげぇ!さすが!」

とあっちこっちにあいさつしたり驚いたりしていたところ、

「おかでん、生ビールでええね?」

と声をかけられた。えっ、生ビール?今頃になって、気がついた。そういえば、テーブル上に生ビールのジョッキが並んでいる。

「げげぇ、ますゐで生ビールのサービスが始まったのか!」

この日一番のサプライズで、思わずのけぞってしまった。ガン。いてて、頭を壁に打ちつけてしまった。危ない、酔っぱらって意識を失う前に、脳しんとうで意識を失ってしまうところだった。

そういえば、廊下に生ビールサーバらしき「スーパードライ」と書かれた銀色の機器が置いてあったなあ。その時点で気付くべきだったんだけど、「まさかますゐで生ビールなんてあるわけない」と思いこんでいたので、全然気づかなかった。

・・・しばらくして、生ビール到着。うーん、ますゐで生ビールねぇ。世の中、変わったねえ、といいながらビールをぐいーっ。

くー。美味い。美味いけど、まだ自分自身の中ではこのシチュエーションを消化しきれていない。

刺身用の醤油はスーパーの刺身盛り合わせについているようなもの

ビールとともに、魚さしみを頂く。スーパーのパックものとは違って、なかなかおいしい刺身だ。てっきり、鮮度なんて言いっこなしよ、というヘロヘロぐにぐにな奴が出てくるのかと思っていたのだが。

醤油はテーブルにあるので、各自取り皿に注げばよい。しかし、それとは別に、一人一個ずつの量で醤油+わさびパックが用意されていた。

珍しいので、写真撮影だ。結局このしょうゆは使わず、家に持って返った。母親に「これ、ますゐで最も希少価値の高い醤油だから!」と自信満々にプレゼントしたが、老いた母親は「ふーん、そうなの」の一言で終わらせてしまった。モノの価値をわかっちゃいねぇなあ、と一人毒づく。

恐らく、煮込み料理などに投入するのも少量すぎるし開封が面倒なので、今でも実家の片隅にこの醤油が転がっていることだろう。

壁にある古風なインターフォン

ふと座っている席の脇に目をやると、壁にインターフォンが設置されていることに気がついた。

「こんなの、前からあったっけ?」

と思わず周りの人たちに聞いてしまったが、この年期の入りっぷりからすると、当然のように据え付けられていたのだろう。こういう「ハイテクITインターフェース」(?)があるとは知らなかった。

インターフォンも写真撮影する

とりあえず、インターフォンも写真を撮っておくことにする。

「えっ、そんなものまで撮るんスか?」

と一平が驚きの声を挙げる。そうです、どんな些細なものでも写真は撮っておくのです。

写真を撮ったのち、満を持して赤いボタンを押してみる。さて、店員さんはやってくるだろうか。

・・・おー、きたきた。本当にこのインターフォン使えるんだな。

おかでんより先に乗り込んでいた人たちは、まだ生ビールしか注文していなかった。「何を頼もうか決めかねとったんよ」と言う。

「何、そんなの簡単な事だ。ああ、店員さん」

「はい」

「ここに書かれているメニュー、全部持ってきて」

と、「ちょっと一品」と書かれたお品書きをぐいと突き出した。

「おお」と感嘆の声を挙げる一同。冗談言っちゃいけない、今回はこれが目的なんだから。いちいちこういうので驚いていてはいけない。

しかし、店員さんが面食らうのはしょうがなかったような気がする。見慣れない若い店員さんだったが、目を白黒してしまっていた。しばらく、メニューを注文票に書き写そうと必死になっていたが、途中で諦めてしまい、メニューごと持って厨房に引き下がった。

「おい、メニュー持っていってしまったぞ。アホな注文したから没収か?」

「そんな馬鹿な」

やっぱりますゐは、百戦錬磨のオバチャンの方が良い。そういえば、この日は外国人留学生と思しき仲居さんもいた。日本語の理解が完璧でない中で、こちらが矢継ぎ早にオーダーをして、またそれを別の奴が「いや、それはちょっと待った」と取り消したりするもんだから、こちらも大混乱。オーダーするだけでも、ちょっとした騒動だ。

鴨ロース

しばらく刺身をつついていたが、何となくますゐという感じがしないんである。どう考えても、居酒屋で旧友達と馬鹿話をしているだけのシチュエーションだ。全メニュー制覇、という気合いがどうも入らない。

なんか尻がむずむずする違和感を感じながら待つことしばし、「ちょっと一品」の鴨ロースがやってきた。

おー。白い皿に盛られているぞ。こんな皿、このお店にもあったのか。ライスを盛る皿とは、微妙にデザインが違う(ライス皿は、縁がまん丸で模様や凹凸がない)。

これで420円だから、お手頃価格だと思う。粗挽き胡椒のスパイシーさが、鴨の濃厚なうま味にマッチする。

枝豆

枝豆登場。

おい、本格的に居酒屋になってきているぞ。なんか、おかでん個人的にはこれをみてガッカリしちゃった口だ。そこまで酒の肴を用意しなくてもいいだろうに、と。ちなみにお値段は160円なので、「ますゐにおける最低価格料理」として君臨していた「サービストンカツ」を押しのけて、最低価格商品に君臨だ。

味の品評はするまでもないです。普通の枝豆です。

一口ぎょうざ

次にやってきた料理は、一口ぎょうざ。通常のギョウザの形はしておらず、どちらかといえばラビオリみたいな感じだ。揚げギョウザに近い。

店員さんが、「すき焼きはやらないんですか?」と聞いてきた。「ええ、今日はやらないです」と答えたら、既に設置されていたガスコンロと鉄鍋を片づけてくれた。

このように、このお店では「ある程度の人数で宴会」となると、まず間違いなくすき焼きを頂く事になっているようだ。何しろ、テーブルにすき焼きの割り下まで用意されていたくらいだ。 店側は、われわれの事を「当然、この人達もすき焼き食べるんでしょ?」と思っていた模様。しかし、われわれはつねにアラカルトで攻めて攻めて攻めまくるのであった。

料理の到着を心待ちにする人々

いろいろ料理がでて来始めたので、魚さしみが完全に無視されてしまっている。やっぱり、ますゐで魚を食べても満足感は低い。おいしいんだけど、われわれはますゐソースを満喫したいという大前提がある以上、魚は二の次になってしまう。

なんかますゐらしくない一品料理をぽりぽりと食べていると、店員さんが両手いっぱいに料理をもってやってきた。みんなが注文していたサービストンカツだ。全員の視線が、店員さんの胸元・・・じゃなかった、手元に注がれる。

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