ラーメン家二郎を作ってみよう(その6)
ラーメン家二郎企画は終了したはずだった。野菜増し掲示板の人たちには「グッジョブ」というお褒めの言葉を多数頂いたが、やはりアワレみ隊の固定読者層とラーメン二郎とは微妙にリンクしていなかったようで、当サイトの固定読者からはほとんど無反応状態だった。
しかし。先日、ラーメン二郎三田本店で大豚を食べていたときのこと。
やはり模倣二郎を作った身としてはスープの寸胴が気になって、中に何が入っているが凝視していた。今日は随分と水位が下がってきているなあ・・・いつもは寸胴いっぱいにスープがあるのに、と思って眺めていた。
すると。
山田おやじ、いきなり水道水の水をじゃーっと寸胴に継ぎ足し始めたではないか。おい、何をする。まだ営業時間中だぞ。
愕然としてしまい、ラーメンをすするのもそっちのけでその様子を眺めてしまった。水道水(浄水器も何も使っていない)をしこたま寸胴に入れたあとは、ブタの切れ端、まだ煮込んでいないブタ、刻みにんにくを投入して、あとはひたすらゴリゴリと木の棒でかき回す。
そんなので、いいのか。
思わず、自分の食べている丼と見比べてしまった。あの美味い、中毒性の高いラーメン二郎のスープはかくも簡単に増えてしまっていいのか。まさに、「水増し」だ。野菜増しじゃないぞ、水増しだぞ。ただただ、ひたすら驚くしかなかった。やっぱり、ベースとなるスープがきっちりできてると、「雑っぽい」事を後でやっても大丈夫なんだな。・・・いや、雑っぽい、というか明らかに雑なんだけど。
恐らく、次のロットの人はスープが薄く感じたかも知れない。良かった、水継ぎ足し前に食べることができて。
ま、それもこれも、ラーメン二郎の「風情」だ。怪しからん、なんて言ってはいけない。ブレを愛でるだけの心のゆとりができてこそ、真のジロリアンぞ。
それはともかく。
ゴリゴリと寸胴をかき回しているのをぐっと睨み付けて、材料を見極めようとしてみた。まず、スープの色が自作と比べて違いすぎる。前回の自作だと、スープがほとんど透明だった。しかし、お店のスープはでろでろに濁っている。肌色っぽいというか茶色っぽいというか。やはり煮込みの気合いが違う。あそこまで材料を煮込まないと、「それっぽい」二郎にはならないのだろうか?
スープの中に入っている材料で、確認できたのは・・・ええと、ものすごくごつい背脂ばっかりが浮き沈みしているんですけど。それ以外、ほとんど何も見えない。かき混ぜるとき、ゴツゴツと堅い音が寸胴の底でしているので、恐らく豚骨は使ってるのだろう。ま、これは当然だ。あとは・・・あっ、今僅かに長ねぎの青い部分が見えた。
・・・以上。よくわからなかった。確認できたものとしては、
・背脂びっくりするくらい大量
・にんにくをきざんだもの
・ブタの切れ端
・生の豚肉
・ネギの青い部分
というところ。他にもいろいろ入っているのだろうが、相変わらず不明。
この様子を見て、「もう終わった企画」だった家二郎に対してがぜんモチベーションが復活した。もう一度、作ろう。今度こそ、きっちりしたものを。
前回の反省点として、「やはりブタバラ肉からダシを取るには限界がある」という事があった。今度こそ、豚骨を仕入れてじっくり煮てやろう。
今回、「肉のハナマサ」でいろいろな業務用食材が安く買えるらしいという情報をキャッチしていた。車で、肉のハナマサに買い出しに出かける。
「肉のハナマサ」は、飲食業者向けスーパー、という位置づけになっているらしい。店で売られているものが全てジャンボサイズ。一般家庭じゃこんなにつかわねーよ、という量でワンパッケージになっている。その分、値段も安い。
ほとんどの商品で「業務用」と書かれている。業務用コロッケ、業務用しょう油、業務用グレープジュース。
業務用100%グレープジュースって一体なんだ。賞味期限切れ直前で特売になっていたので、ついつい買ってしまった。お値段、1リットルで50円。や、やっすぅ。
それはともかく。生、冷凍共に大量に取り扱われている精肉コーナーを見て回る。おっ、あったあった豚骨。100g20円。とてもいいお値段だ。では、一袋購入・・・うわ、結構重い。重量は・・・2,692g?538円?いや、そんなにはいらないんですけど。困ったなあ。
ここの豚骨は、既に真ん中でまっぷたつに折られている状態だった。中の髄液をスープに溶け出しやすくなっていて、非常にありがたい。本来であれば、ハンマーで殴って骨にひびを入れなければならないらしいが、手間が省けた。
いや、ハンマーなんて持っていないからどうしようかと思っていたのよ、実際のところ。車で袋ごと轢いてみようかしらん、なんてとんでもないことを真剣に考えていたくらいで。
今回のブタはごついやつにしよう、心おきなくブタダブルを満喫しよう、と思っていた。
そこで、豚肩煮豚用、というひとりSM状態の豚肉を購入。まるまるとした豪快な豚だ。100gあたり83円、重さは922g。2回に分けて食べた場合、1回あたり460gも食べられる!豪快!これぞ家二郎の醍醐味(だいごみ)!
毎回苦悩させられる麺だが、今回は肉のハナマサで調達してみた。
「内蒙古産天然鹹水使用 頂香華麺」というらしい。平打ち麺だ。幅が非常に二郎っぽくて良い。風情も、なんとなく二郎っぽい。これは期待できそうだ。
なお、安っぽいデザインで素っ気ない商品だが、「譚彦彬総料理長監修」と書かれているのがやや気になった。譚彦彬、といえば広東料理の名店「赤坂離宮」の総料理長として名高い。
家に帰って、調理開始。この時点で既に23時を回っていた。相変わらず、スタート時間遅すぎ。
まずは、豚骨を4個ほど鍋に投入してみる。鍋のサイズ及び水の量に対して多すぎる気がするが、短時間でエキスを引き出さないといけないので、こんなものでいいでしょう。どうせ、腐るほど豚骨があるんだし。
鍋が沸騰してきた。あくが強烈にわき上がってくる。
豚骨は、煮沸してアクをぬいて、それから一度引き上げて周囲をきれいに掃除して、また鍋で煮るという下準備が必要らしい。
でも、過去いろいろ見かけた「家二郎レシピ」だと、アクは一切すくわない、という記述がある。どうしたものか。
でも、さすがにあまりのアクの量にびびってしまい、最初だけすくうことにした。
おたまですくうと、こんもりとあくがとれた。うわ、グロテスク。
この段階で出てきたアクだけを抜き取り、その後はアクがでても完全に無視を決め込んだ。豚骨から出てくる雑味成分も、うまみの内よ。
アクを抜いたところで、ブタを入れる。さすが900グラム、今まであまり見たこと無い重量感と見てくれだ。重い。
それにしても、鍋に入るんだろうか?このサイズは・・・。
案の定、入らなかった。
おいブタ。お前、風呂を楽しんでいるわけじゃないんだぞ。頭までしっかりとつかれ。
生煮えのブタを食べる羽目になるのだけはイヤだ。
鍋の底に沈んでいる豚骨を、無理矢理移動させてブタを沈める。
「何をする!横暴だ!」とわめく豚骨をなだめすかせる。
呉越同舟。
さあお前たち仲良くいいダシを放出しなさい。
ブタを投入したことによってアクがまた出てきたが、もう見なかったことにする。
ハナマサで買ってきたにんにくと生姜。「プロ仕様」なんて書いてあるけど、こんなに大量はいらないんだよなあ。いずれも、198円と大変にお安い。でも、使い切れずに捨てるのがオチだ。
しょうがを1固まり、適度な大きさに刻んで鍋に投入。
にんにくも、1房分まるごとスライスして投入することにした。
最初は皮をむいていたのだが、途中で面倒くさくなって皮ごとスライスにした。「家で手軽に作れてこそ、家二郎」。手間暇かけすぎちゃ、お店で食べた方がマシってことになる。手を抜けるところは、抜かなくちゃ。
どうせ、今作っているのはスープだ。このにんにくを具として食べるわけじゃないんだから、皮が入っていても大丈夫でしょう。
・・・と思ったのだが。
鍋ににんにくを入れてみて、初めて気がついた。皮って、当然スープに浮くよな、ということに。
これだと、丼にスープをそそぐときににんにくの皮を大量に拾い上げてしまう。あわてて、皮をお玉ですくいあげ、捨てた。
豚骨の方はどうなったか、というと。
骨髄のあたりがとろとろしている。菜箸を使って、中の骨髄を全てえぐり出した。これがうまみの素になるはず。
ネギも投入する。ハナマサで、5本も束になっているネギを買ってしまったので、さっさと使ってしまわないと。2本分の長ねぎの青い部分を鍋に投入。
さて。肝心の背脂だが。肉のハナマサでは売られていなかった。帰り道に立ち寄ったイトーヨーカドーでも「扱ってないですねえ」という店員さんの弁。さて、困った。
無料お持ち帰り可能な牛脂を大量に持ち帰って、背脂代わりにしようという考えも頭をよぎったが、一体あのサイコロ状のヤツを何十個持って帰らないといかんのよ、と考えると現実的ではない。そもそも、牛脂ってのはあんまりだ。
途方に暮れて精肉売場をうろついていたら、一つの豚バラ肉パックに目がいった。
なんだ、これ。脂身ばっかりじゃないか。
こんな商品売ってもいいのか、というくらい脂だらけのバラ肉が売られていた。というか、これ、「バラ肉」と呼称してもいいのか?赤身の部分、限りなくゼロに等しいくらいなんですけど。
でも、こちらからすれば渡りに船。こいつを背脂代わりに活用してみよう。500円近くのお支払いとなって、非常にコスト高になってしまったが仕方がない、今回は我慢する。
脂身と赤身の部分を慎重に切り分ける。
右側が脂、左側が赤身。
うーん、赤身が、まるでしゃぶしゃぶ用肉のようにぺらっぺらだ。逆に脂身のごついことごついこと。
脂身を切り分ける。
小さく刻んだものと、大きめのブロックのままのものとの二種類を用意した。少なくとも三田本店の寸胴では、でかい背脂がゴロゴロしていた。溶けやすいようにあまり小さくしすぎるのも問題だろう。
鍋に背脂・・・ならぬ、腹脂を投入。さあ、あとは煮込むだけだ。
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