その2:修行の7月
まだまだ遍路は続く。平日休日問わず。
【07軒目】ラーメン二郎環七一之江店(東京都江戸川区一之江) 2010年07月11日
環七沿いにあるお店。街路樹が青々と茂っているため、お店が緑に埋没している。
この緑の奥で、ブタがざっくざっくと切られ、脂が浮いたスープがぐらぐら煮られているとは到底思えないピースフルな光景。
10時半にもかかわらずご覧の大行列。
日曜日、しかも昼前から営業している二郎は貴重。
ぶた5枚入り大ラーメン ヤサイニンニク 800円
一般的な二郎では「大」「大豚」「大ダブル」といった呼び方でブタのトッピング量と値段に差がつけられている。しかし、ノーマルのラーメンにもブタは入っていることから、それを明示しようという試みが行われている。
一般的な「大ラーメン」は「ぶた2枚入り大ラーメン」、「大豚」は「ぶた5枚入り大ラーメン」といった具合。たしかダブルになると10枚だったと思う。
明朗会計。
【08軒目】ラーメン二郎小岩店(東京都江戸川区西小岩) 2010年07月12日
かれこれ10年近い二郎歴だが、はじめての開店前行列に参戦。開店前に早くも並んでいる人数名。
これは早く食べたいからではない。開店前に並ぶのが「待ち時間が一番短くて済む」と判断した結果だ。昼時になるとどこの二郎も混むので、開店前に並んだ方がむしろまだまし、という事は十分ありえる。
行列ワープの図。
5名までは店頭のシャッターに沿って並び、6番目からは5mほど間をあけて、歩道の車道側に並ぶ。二郎となりのビルの入口および駐車場の邪魔にならないような配慮。
行列店故、こういう「ルール」がいたるところにあるのが二郎。店の中でトッピングの呪文を唱えるだけが二郎のハードルではない。状況に応じて適切な対応と他人への配慮ができない人は二郎に来るのは無理。
大豚入り ヤサイニンニク 900円
豚の量がとても多い。ダブルと見まごうばかり量。塩分もとても多く、食べるのに難儀した。
厨房には二郎の祖、山田氏の息子さんがいた。ちょうどこの時期、35店舗全店を巡り、修行をしている最中。彼もまた、違ったコンセプトでの二郎遍路の最中。
【09軒目】ラーメン二郎亀戸店(東京都江東区亀戸) 2010年07月12日
強風+小雨で傘が全く役に立たない状態の中、歩いて亀戸へ。亀戸にも二郎がある。
常識で考えて、一般的には小岩から亀戸は散歩で歩くような距離ではない。しかし、こちらとしては相当ハイカロリーな食べ物を相当ハイペースで食べ進んでいるわけであり、せめて歩いてご恩返し、ならぬカロリー返ししないといけない。
それにしても、この歳になってもいまだに「亀戸」と「亀有」をよく間違える。両方とも東京都東部にある町で、距離としてもそれほど離れていないため、そっち方面に縁がないと大変に紛らわしい。
12時20分だったが待ち行列ゼロ。いつも空いている店なのかと思ったが、後になって行列ができた。たまたま運が良かっただけのようだ。
それにしてもこの看板の脱力したフォントは微妙。
ぶた入り小ラーメン ヤサイニンニク 700円
本日二軒目なので大は頼まず。
ラーメン二郎の店主は、まかないで二郎を毎日?食べているからか、助手時代から比べて随分恰幅がよくなっている人が多い。しかしここの店主は脱サラしてただいま奮闘中、といった風情で他店とは異なる。頑張れ、と応援したくなるお店。というか、「二郎食って体力つけよう!」と大きなお世話かつ的外れな応援をしたくなる。
外見はともかく、味は二郎の平均的なものと異なる。中華料理屋の醤油ラーメンのこってり版、という印象。化学調味料を存分に味わえる。麺が若干細めのうどん、といった感じなのも影響しているかもしれない。
亀戸を出ると、すぐ近くに東京スカイツリーが。
ただいま大絶賛建築中、298m地点まで伸びている。いずれ神の罰が下り、みんなバラバラな言葉をしゃべるようになってしまうので、遺言とか告白とかやり残した事があるなら今のうちだと思う。
【10軒目】ラーメン二郎ひばりヶ丘店(東京都西東京市谷戸町) 2010年07月15日
10軒目は西武池袋線ひばりヶ丘駅前の二郎。
19時時点で待ち12名。二郎の特性として、都心から離れていけばいくほど女性、カップル率が高くなるようだ。
待ち行列の人たちは、二郎の空調室外機から排出される猛烈な熱気にさらされ、自分の順番をただひたすら待つ。
ラーメン二郎、という電光看板のフォントがなんだか独特。場末のスナックみたいな感じが良い。
大ラーメン豚入り ヤサイニンニク 850円
店内のカウンターはおかでんが「野球場スタイル」と呼んでいる配置。
扇形にカウンターが構成されていて、片翼5名。両翼で10名、座る事ができる。このお店の場合、アンパイア席もあるので合計11名。こういうスタイルは川崎店、目黒店でもみられる。
何が便利かというと、1ロット5杯作れば、1塁側または3塁側にまとめて提供できる。座席配置とロットが一致するので、厨房としては非常にオペレーションしやすいのだった。さらにいうと、自動的に「5人ずつの入れ替え制」に近い形になるので、おしゃべりしながらゆっくり食べている客に対するけん制にもなる、というわけだ。二郎に限った話ではないが、行列店でゆっくり食べるのは御法度とされるのが東京クオリティ。「金払ってるんだから少々いいだろ」というのは通らない。
ヤサイマシにしてもほんのひとつまみしか増やさないのは本店の山田氏譲りか。
そのヤサイだが、もやしの根が強い主張をし、食感を損ねていた。もやしが太りすぎだと思う。それ以外はおいしいのだが。
【11軒目】ラーメン二郎栃木街道店(栃木県下都賀郡壬生町) 2010年07月20日
ラーメン二郎は基本的に都心を中心に出店されている。以前、山梨のラーメン店の主が我が山梨に二郎を、と弟子入りを打診したことがあったそうだが、「山梨」という理由で却下されたと聞いた事がある。あくまでもうわさレベルだが。
二郎専用醤油の配送に限界がある、などいろいろ諸説はあるが、東京神奈川以外の県まで二郎エリアが広がったのはごく最近のこと。
そんな二郎の最果てがここ、「栃木街道店」。都心から車で2時間近くかかる場所。この店の開店が決まった時、悲願の埼玉初出店を望んでいた埼玉県民は地団駄踏んで悔しがったものだ。
郊外店、という事はきいていたが、いざ行ってみるとド郊外。隣は犬のブリーダーで、お犬様がワンワンと吠えている。そして建物背後は迫り来る林。相当な田舎。
当然最寄り駅(壬生駅)から徒歩でやってくる人はほとんどおらず、お客の全員が車。それ故、店の周囲には10台以上の駐車スペースが完備。
建物も一戸建て。もともと別のラーメン店が入っていて廃業した物件らしいが、どっこい二郎は大繁盛。駐車場はいっぱい。
道路に面した看板で、「ニンニク入れますか?」と書いてあるのが二郎唯一。こういう「いかにも二郎なシンボリックな言葉」を敢えて看板に出すのは、普通ならインスパイア系の店がやることだ。珍しい。
お店から道路を挟んだ対面に、第二駐車場まで完備。
盆踊り大会を盛大に催してもよいくらいの広大な敷地で驚かされる。
そして、ここに2時間かけて、高速代払ってまでやってきた自分にもあらためて驚く。
なにしろ空が広い。周囲は畑や田んぼ、そして一戸建て民家しかないので空を遮るのは電柱と電線くらいだ。
大ラーメン豚入り ヤサイニンニク 900円
脂と混じり合ってとろみのついたスープがおいしい。
ここの客層も茨城守谷同様、都心と異なる。作業員風のニッカポッカ姿の人が散見され、今日も暑い中お仕事お疲れさまですと心の中で会釈。
二郎を目の前にすると心が穏やかになる。
漫画を読みながら食べている人、想定外のボリュームに参り、おなかをさすりながらフーフー唸っている人と三者三様の人間模様が楽しい。都心の二郎が「高度に訓練された人たち」によって秩序が保たれているのに対し、こちらはまったり。
それもこれも、広い客席が確保できているからとも言える。少々遅い人がいても、同じ数だけ少々早い人がいる。
食べ終わって店の外にでたら、真っ赤な夕日。
空が広い・・・。
二郎って殺伐とした食べ物だと思っていたが、なんか認識が改まってしまう。
僕たちは大自然に生かされている生き物なんだ、とあらためて腹をさすりながら思った、そんなちぐはぐな黄昏。
赤く染まる空間の中、黄色く光る、二郎。
【12軒目】ラーメン二郎千住大橋駅前店(東京都足立区先住橋戸町) 2010年07月21日
この日、松戸の二郎に行ったのだが臨時休業で退散。店舗ごとに異なる営業時間に翻弄されるだけでなく、この手の臨時休業はとんでもない落とし穴。当日昼過ぎまでネット掲示板で臨時休業がないかどうかをチェックしていたのだが、それすらかいくぐるトリックプレイ。
松戸二郎には過去何度も空振りを食らっており、げんなりしている。でも、そういう気まぐれささえ愛せるドM体質でないと、二郎を楽しめない。
京成線千住大橋駅の改札出て目の前にあるのが、今回の二郎。リアルに「駅前」というのはこういうことだ、という典型例。
20時時点で20名の待ちだったが、電車が駅に到着するたびにわらわらっと人数が増えるという特徴がある。到着した人は、「二郎GP」の1レーサーとして駅改札から飛びだし、早足で行列に並ぶ。ライバルは同じ電車に乗っていてこの駅で下車する人、すべて。
二郎の向かいに立ち飲みの焼き鳥屋があり、そこでジョッキ生ビールを仕入れ、行列中に飲んでいる人あり。強者だ!並んでいる最中に飲む、というところが玄人っぽいけど、それにもまして、ビールでおなかがふくれた後に量が多い二郎を食べるというのがド玄人だ。
大豚 ヤサイニンニク 900円
二郎では「チャーシュー」とは言わず「ブタ」というのがお約束。でも、その理由はこの写真を見たらよく分かると思う。「ブタ。」としか言いようがない。
【13軒目】めんしろう(東京都板橋区高島平) 2010年07月26日
二郎遍路の巡礼地をどの範囲まで設定するか、検討する際、「二郎直系+富士丸+富士丸亜流」とした。直系だけでもよかったのだが、富士丸に行く頻度がそこそこ高かったおかでんにとっては、富士丸も候補地に入れておきたかった。で、そうなると芋づる式に富士丸亜流店も対象となっている。
今回訪問した「めんしろう」は富士丸(旧二郎赤羽店)の支店で助手をやっていた人が開いた店「勇花」の助手が開いた店。つまり、ラーメン二郎そのものからみたらひ孫の関係にあたる。もっとも、このめんしろうが二郎に対して「ひいおじいちゃん!」と呼びかけても、二郎側は「知らん。どこの子だ?」と返すことになるが。
「ガッツリラーメン」と勇ましい。
無料トッピングサービス、と称して店頭にカラーの写真入り看板有り。珍しい。
二郎というのは総じて一見さんに敷居が高く、無料トッピングの説明がないところも結構ある。
もともとトッピングという概念が二郎にはなかったのだが、学生さんが「もっと野菜を増やしてくれ」と三田本店の店主に「おねだり」した事から発生した文化がいわゆる「トッピングコール」だ。野菜!と叫べば何らかの量が増えるのは店主の好意。だから、説明がなくて当然、というわけだ。(もっとも、最近では無料トッピングである、と明示している二郎も増えた)
そういう歴史があるので、謎のトッピングコールがまかり通る。「ニンニク入れますか?」「ヤサイニンニク!」・・・知らない人が聞いたら、会話として成立していないので大変不思議だろう。しかし、上記の歴史があるから、このコールは成立するのだった。
豚入りラーメン ヤサイニンニク 950円
さすがに二郎からはひ孫の関係だけあって、二郎とは違う味わい。
ただ、富士丸系のクタクタに煮込んだ野菜(通称:「クタ野菜」)やスープの味付け方は富士丸の系譜を継いでいる。
【14軒目】ラーメン二郎桜台駅前店(東京都練馬区桜台) 2010年07月27日
西武池袋線桜台駅の改札から徒歩45秒ほどのところにある、「桜台駅前店」。千住大橋店が開店するまでは、「リアル駅前店舗」として驚嘆の声で迎えられていたお店。
よく、二郎好きな人の間では「○○がホーム」という言い方をする。ラーメン二郎は複数店舗食べ歩くのが当然、といった人の場合、その複数店舗の中でも特にひいきにしている店を「ホーム」と呼ぶ。ちなみにおかでんの場合、「桜台がホーム」となる。
桜台がおかでんのホームなのは、家から比較的近いということと、23時半まで営業していること、そして味が好みだからだ。23時過ぎると、さすがの二郎といえども行列がなくなってくる。ゆったりと食べる事ができるという点ではありがたい。
大豚入り ヤサイニンニク 850円
遅い時間に行くと豚の在庫が品薄になっている事がある。そのような時は「大ラーメン」「小ラーメン」の取り扱いとなり、それ以外の「豚入り」「豚ダブル」は売り切れ表示になる。「今日は豚を噛みしめ噛みまくりたい」とわくわくしながら訪れると、空振りになることがあるので注意。これはこの店に限った話ではなく、あちこちの店でも同じ傾向がある。麺よりもスープよりも先に豚がなくなるラーメン屋。豚肉屋ではないのに、不思議な話だ。
(つづく)
(2010.10.01)
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