極太恵方巻、爆誕。

僕にとっての「恵方巻」とは、「コンビニ業界が儲けるために無理矢理盛り上げているもの」という認識だ。それはそれで経済が回るのだから結構なことだけど、あまのじゃくな性格である僕は、敢えて背中を向けてきた世界だ。

とはいえ、いつまでも嫌っているわけではない。歳をとると、反骨精神を持ち続ける気力も衰えてくる。そんなわけで、昨年からは「恵方巻のようなものを自分で作る」ということをやっている。

昨年は、長さ90センチのロングな恵方巻を作り、かぶりついてみた。

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さて2017年はどうするか、ということになったが、前回が「長い」なら今回は「太い」だろう、ということで太巻きを作ることにした。

太巻き図面

カツが張り切って図面を描いている。

太くて長いものを作るのはさすがに無理なので、輪切りの材木のように短いものを今年は作ることになった。作った後、自分たちで食べるんであるということを忘れてはいかん。デカくするだけなら簡単だ。

フライパンと空き缶

巨大な太巻きを作るための巻き簀なんて、家にはない。かわりになるものを探さないといけなかった。特に今回は巻き寿司なので、中に具を詰めないといけないので、ちょっとした工夫が必要だ。

「とりあえずドンブリにご飯を敷き詰めて、そこに具をねじ込んではどうか?」

という検討がまずは行われたが、多分それはカニカマのような柔らかい具が入らないし、卒塔婆のようにご飯に突き刺さった巻き寿司の具ってのはちょっと気持ちが悪い。やはり、ご飯と具はふんわりと融合していて欲しいものだ。

次に考えられたのが、シフォンケーキの型など、ケーキを作る際に用いる機材を用いることだ。特にシフォンケーキの型なら、周囲にご飯を詰め込んで、中の空洞部分に具を入れればちょうど巻き寿司のようになるだろう。

そりゃいいや、ということで近所のスーパーや100円ショップの製菓コーナーに行ってみたが、そんなものは売られていなかった。もっとちゃんとしたお店に行かないと、扱っていないらしい。

さてどうしたものか、ということで、結局落ち着いたのが写真の通り。小ぶりのフライパンと、空き缶の組み合わせ。うまくいくかどうかわからないけど、多分なんとかなると思う。

準備OK

食材準備、完了。

どれくらい太巻きに入るのか検討がつかなかったので、「大体これくらいかな?」と首をひねりながら揃えた質と量だ。

ありきたりな食材を入れるのは面白くないけど、奇抜なことをやったら単なる悪ふざけだ。「悪ふざけ」にならない程度の冒険はしたい。そういう観点でスーパーの食品売り場を見ていたら、鮮魚コーナーにスモークサーモンが置いてあった。そうだ、これにしよう。これなら、今回の太巻きにさりげなく華を添えてくれそうだ。

まずはご飯を詰める

まずはフライパンにご飯を詰める。

「何をやってるんだ、一体」

炊飯釜の2合分のご飯を、しゃもじですくってはフライパンに移す。まるで子供がスコップで土遊びをしているかのようだ。やっている自分が、何をやっているのかわからなくなってくる。「土木工事」または「日曜菜園」の心境であり、到底「今晩の食事を作っている」気分にはなれない。

でも、縁起物だからな?一応は。

2合のお米がすっぽり

とりあえず、2合のお米がすっぽり、きっちり入った。ちなみにこのお米、酢飯にして既に冷ましてある。さすがにこれが普通の白米だったら、単なるおにぎりだ。

固められた酢飯

ぺたぺたと固められた酢飯。

見た目も、やり方も、「巻き寿司」のそれとは全く違う。そもそも「巻いて」いないし。

知らない人が見たら、この段階でも何をやっているか理解できないだろう。そこで僕は言ってやるんだ、「ええ、巻き寿司を作っているんですけど?」と。無茶苦茶だ。

深い穴

真ん中の空き缶をすぽんと引き抜くと、そこには漆黒の穴が現れた。穴恐怖症の人だったら、これを見たら卒倒しそうだ。それくらい、白いお米とのコントラストがすごい。

これ、何かに似てるな・・・と思ったら、ああ!「パインアメ」だ!

具を詰め始める

別に今回は「ご飯でドーナツを作ろう」という企画なわけではない。この深淵なる穴をこれからふさがないと。そこで先ほど用意した具の登場だ。

カツが慎重にご飯の高さを測り、その高さにあわせて具をカットしていく。高さがあっていないと、やっぱり卒塔婆になってしまうからだ。

詰め込み完了

隙間なく具を詰め込み完了。

「なんだか、ご飯のエリアが広すぎる気がする」

これだと、圧倒的ご飯と少量のおかず、という構図だ。ごはんごはんごはん、と食べて、ようやく具、そしてまたご飯、というバランス。

もう少し穴が大きかった方が良かったのかもしれないが、今更直すのもよくない。2017年版としてはこのサイズ感と比率で良しとした。むしろ、こんな太巻きは見たことがねぇぜ!さすが巻いていないだけある!まかない太巻きだからこそだ!と喜ばしい。

フライパンから皿に移動させる

このまま食べたんじゃ太巻きじゃない。パエリアみたいなものだ。なので、お皿に移さないと。

「はい、これ」

とカツから平皿が手渡された。「日本三大祭りの一つ」との呼び声高い、「ヤマザキ春のパン祭り」の景品だ。あまりに頑丈なゆえに、かれこれ20年以上現役から退かない鉄人だ。お前こそがこの太巻きを受け取るにふさわしい。

さて、どうやってお皿に移そうか。いいあんばいにお米をスライドさせるのは難しそうなので、お好み焼きをひっくり返す要領でやろうと思う。

腰をクネクネさせながら、歌う。

I have a frying pan、I have a dish・・・

ドッキング

uuuuuuuum!

フライパンのふた

・・・

なんだこりゃ

EHOUMAKI!

いや、なんだこりゃ。

現れたものを見て、カツと二人して爆笑した。見たことがないぞ、これ。まだ海苔を巻いていないから巻き寿司に見えないだけだ、海苔さえ巻けば!・・・とは思うが、いやー海苔を巻いてもダメでしょこれ。

ああ、どこかで見たことがあると思ったら、チャーハンだわこれ。まるっと盛り上がったお米、ということでチャーハンに似てるんだ。

チャーハン的な横っ面

「家の中で一番お椀型になっていないものを使ったんですけどねぇ」

どうしてもフライパンなので、角が丸い。なのでチャーハン型の物体になってしまうのだった。なんかむしろ楽しい。今更完璧な太巻きを作ってどうする。

海苔を巻いてできあがり

海苔を巻いて、太巻きの完成。

「巻き寿司、というのは周囲に海苔を巻くから巻き寿司って言うんだ!」

と強がってみる。

明らかに海苔を後から付けました感満点。巻き簀を使うとこうはならない。もっとご飯と海苔が一体化する。

でも安心してください、ご飯のギュウギュウ詰まりっぷりは従来の巻き寿司以上ですから!食べ応えという点では他社の追随を許しません!しかもデカいし!腹一杯食べていってください!

太巻きの大きさ対比

巻き寿司の大きさ対比用として、おかでんと一緒に記念撮影。

見ろ、料理が人間よりも圧倒的存在感を放っているぞ。

ここであともう少しお皿をカメラ側に向け、折角作った太巻きが床に落ちて台無しになると最高のオチだ。でもそうはしない。おいしく食べてこその、おふざけだ。

太巻き入刀

「では食べましょう」

ということで、包丁で切っていく。さすがにこれを「恵方」に向けて丸かぶりせよ、というのは無理だ。そこまでゲンをかつぐつもりはないので、おしゃべりしながら食べていくつもりだ。

「やっぱりこれはピザを切る要領で、放射状に切っていくんだろうなあ」

太巻きをそうやって切るのは初めて見る。

恵方巻、入刀。

ご飯だけ取れる

「どれくらい食べますか?」
「そうだなあ、1/4くらいかな?」

そういうやりとりの後、包丁によって切り取られた恵方巻。いざ、その「1/4」を切り取ってすくい上げてみて、大笑いだ。

「なんだこりゃ」

太巻きでも恵方巻きでもない、なんか変なことになっている。

バウムクーヘン状の恵方巻き

「バウムクーヘンではないか、これでは」

まさか恵方バウムクーヘンお米版、になるだなんて思ってもみなかった。そうか、太巻きを太くするということはこういうことなのか!

「具は食べる分だけお皿に取り分けてください」

カツが冷静に言う。

「これって、結局ご飯とおかずが別々ってことだよね」
「そうですね」

実際、具を大皿から自分の皿に持ってきたら、巻き寿司の様子は皆無となった。

お味噌汁をすする。

酢飯を食べる。

「うん、おにぎりだねこれは」
「おにぎりですね」

具を食べる。

「全くスシを食べている感覚がない」

そりゃそうだ、明らかに別々のところに具とご飯が分離しているのだから。

それでもおいしかった。これでおいしくなかったら苦行だけど、味は良かったので、笑顔で節分を迎えることができた。

来年は・・・どうしようかね、もうこの際、パンで恵方巻を作るかね?

(2017.01.29)

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