朝からガッつけ、松戸南部市場

首都圏の「市場」といえば、築地が真っ先に思い浮かぶ。他にちょっと詳しい人なら、足立、太田といった名前が出てくるだろう。しかし、実はこういう公設市場は食品流通の要であり、結構あっちこっちにあったりするものだ。

松戸南部市場もそう。千葉県と東京の県境、JR常磐線が通る町松戸市にある市場だ。

週末の朝ご飯は何か外で食べるのもいいな、と考えていたとき、ヒットしたのがこの地だった。ストイックにプロの方御用達、といった感じではなく、一般客の来訪も歓迎しているっぽいのも良かった。

「早朝から肉体労働を終えた男たちが、わっさわっさと安くて量が多いメシをがっつく店」

ってのが市場内にある・・・というのが、我々素人の期待値込みの妄想だ。しかし、実際はそうではない、というのは築地市場の飲食店が物語っている。観光地化著しいこともあってか、案外あそこは値段が高く、そして量はそれほど多くない。味はさすがに美味いと思うのだけれど。

しかし、松戸南部市場のサイトを見ると、なにやら量自慢のお店が何軒かあるようだ。おもしれえ、朝から腹一杯にさせてもらおうじゃないか。オレを飼育して、そのまま出荷してくれ。

松戸南部市場に通じる道

土曜日の朝、車で松戸南部市場へと向かう。この市場は、松戸駅から歩いて行くにはちょっと遠いので、車があると便利。

時刻は9時半。嘘だろおい、入場待ちの渋滞ができてるぞ。プロの車はすいすいと出入りしているので、ここに並ぶは一般の買い物客だ。

庶民に愛されている市場、ということなのだろう。

松戸南部市場

松戸南部市場。「南部市場」と書かれたロゴがお出迎え。

この市場には、魚市場然とした建物、肉、野菜、その他食料品などを売る建物、そして飲食店の建物と大きく分かれているようだった。

市場の路地

味があってワクワクが止まらない路地。

「関連食品棟」の一角。

こういう道が建物を横切る形で3本あり、「ワクワクの小径」と名付けたい。

さすがに松戸の市場ということで、築地のように大手業者がガッツリと買っていくわけではないのだろう。地元を中心とした飲食店などがターゲットなのだと思う。なので、我々一般人もお買い物をしやすい。キロ単位でないと売っていませんよ、といったことはない。

飲食店の建物

ひとまず、腹が減ったことだし市場探検は後回しだ。メインイベントである朝ご飯に挑もう。もう朝10時近いので、うっかりするとお昼ごはんに響いてしまう。特に今日の朝はしっかり食べる気満々なわけだし。

松戸南部市場の食堂は、早いところだと市場らしく朝5時から営業しているのだが、遅いところだと10時開店、といったのんびり屋さんもある。市場らしくない。

築地でまずは仕入れて、それを松戸に運んで、あらためてここで商売をやっているから朝が遅いんだ・・・なんて勝手に想像していたが、青果・水産のお店は朝3時からやっているらしい。関連食品のお店でも6時頃。やっぱり市場はどこも早い。

福徳

本日のお目当ては、「海鮮 福徳」。

ひさしには「定食屋 福徳」と書いてあるし、のれんには「福徳食堂」と書いてあって、どれが本当の名前だかさっぱりわからない。松戸南部市場のwebサイトには「海鮮 福徳」と書いてあるので、きっとこれが正しいのだろう。

福徳メニュー

他にも魅力的なお店がある中、敢えてここを選んだのはお店が大盛りにやけに前のめりで意欲的だからだ。

お客様におなか一杯食べていただきたく、毎日一生懸命お料理しています。お客様がお帰りになる頃には、腹十二分目で満足してお帰りになられます。

(松戸南部市場「食べる」より引用)

と高らかに謳っており、おお、その心意気や素晴らしいと食べる前から拍手を送りたくなる。腹十二分目も食べてしまうと、満足というよりも「後悔」しそうな気がするけど、それくらいガッツリと食べられる、ということだろう。ありがたい。朝だからこそ、カロリーなど気にせずにガツンと食べたいものだな。週末だし。

福徳メニューアップ

このお店における「定食」の多くは810円という値段設定になっている。首都圏価格としてはまあまあ安い部類だと思う。で、実はコイツラの量がかなり多いんだから、激安と言わざるをえない。

なんでも、トンカツ定食を頼んだら、100gのカツが3枚!というらしいし、唐揚げ定食を頼んだらなんと500g!だという。500グラムの唐揚げって一体どれだけの量なんだ?想像すらつかない。面白そうだ。

実際、店頭のメニューを見ると、「メガ盛り チキンカツ定食」「特盛り 鶏の唐揚げ定食」などと好戦的な表現がお待ちかねだ。こっちも腕まくりして、身構えなくちゃ。よーしよーし。

今はこれがお得らしい

最初、「鶏の唐揚げ定食」を頼むつもりだったけど、週替わりのお薦めメニューがあるということに気がついた。特にこのメニューは量が多くて食べ応えがあるらしい。ええと、今週は「豚の生姜焼き定食」だそうだ。生姜焼き200gにチキンカツ1枚。じゃあ、これにしてみよう。

唐揚げ500gにも惹かれるが、唐揚げってご飯のおかずにはあんまり向かないんだよね。その点豚の生姜焼きなんておかずに最高だ。朝から胃袋をずしんずしんと揺さぶってくれそうで楽しみだ。

黒板

レギュラーメニューの他に、このお店には「A定食」「B定食」というものがある。これは決まったメニューではなく、そのときそのときのお薦めが登場するものらしい。

ちなみにこの日のA定食(810円)はメンチカツ、チーズチキンロールカツ、マグロメンチカツの3種類だった。B定食(930円)はトンカツ、カキフライの2種類。

おっと。

「定食には生玉子又は納豆がつきます」と書いてある。おかずの量でメシを喰え、というだけに留まらず、より一層ご飯がはかどるように考慮されたユーザーフレンドリーっぷりが嬉しい。

注意書き

カウンター席に着席すると、目の前にこんな注意書きがあった。

チキンカツ・トンカツについて

当店は、お客様にボリューム感を味わって頂きたく
あえて、チキンカツと、トンカツのカットをせず提供させて頂いております。
ご理解頂けたら幸で御座います。

また、食べづらい場合には、カット致しますので、お気軽にスタッフにお声をお掛け下さいませ。

店主

わざわざカツを刻まない宣言。そうか、こういう着眼点があったか!なるほど、それは良い配慮。敢えて大きなものを大きいままで提供する。その方が食べる方としてもドキドキさせられて、いい。

こいつぁホンモノだ、このお店のご主人、イロモノ的に大盛りをやってるわけじゃあなさそうだ。

注意書き

大盛りの料理が多いからお待たせする場合もある、というお詫び文も貼ってあった。

「従業員一同、お客様におなか一杯食べて頂きたく頑張っておりますのでご理解頂けましたら幸い」

だって。いやもう、そりゃあ十分ご理解しておりますし感謝しております。まだ食べる前だけど、お店の店員さんに両手を合わせて拝みたい気分。あ、すいません、生姜焼き定食でお願いします。連れにはメカジキ塩だれ定食で。

メカジキ

こちらが「メカジキ塩だれ定食」。810円。

やあ、これぞ我々素人が思い描く、「市場メシ」だ。安くて、量が多くて、魚で。ご飯の量が少ないのは、そういうオーダーをしたからだ。何も言わなけりゃ、もっと大量のご飯が出る。

豚の生姜焼き定食

一方こちらが、生姜焼き定食。

生姜焼き200グラムにチキンカツ1枚。これで810円って、かなり嬉しい。冷や奴と納豆が脇を固めている、ということが地味ながらも豪華さを感じさせる布陣。

味は言うまでもおいしかった。

しかし、ちょっと誤算はあった。確かに安くて量が多くて美味いんだが、「腹がはちきれんばかりに満腹」というわけではなかったからだ。非常に常識的な範囲で、大盛りのお店だった。過度に量を期待していると、ちょっと物足りないかもしれない。

しかし、チャレンジメニューじゃあるまいし、これくらいの大盛りを提供するっていうのが、お店にとっても客にとってもちょうど良いと思う。これ以上になると、悪ふざけ感が出てくる。

morimori外観

おなかいっぱい食べた後、市場散策をする。

福徳のお隣にあるお店は「元氣morimori」という名前。木の枝が店頭に飾ってあるのが印象的。

メニュー

このお店は朝10時までに「500円均一」で何種類も定食を提供していた。鯖の塩焼き定食なんてものがしれっと500円で提供しているのだからすごい。

ボリュームに自信!

あと、このお店もお隣の福徳に負けじと大盛りを提供していた。

料理名も、「でっかいチキンかつ定食(850円)」とか、「有頭大海老フライ定食(1,180円)」などと大きいことをPRしている。そしてメニューボードには「メガ盛り」の注釈付き。いいねぇ。福徳で物足りなければ、引き続きこっちにハシゴして食べればいいんだ。満腹になるために1軒で完結しなくちゃいけない法律なんてないのだし。

市場内部

市場を見て回る。

お魚さんがいっぱいで嬉しくなってしまう。

魚が売られている

むき身の牡蠣が安かったので、1パック500円で買った。今晩は牡蠣鍋だー。

ご飯を食べる前にここを訪れていたら、冷静さを失ってしまいあれこれ買っていたと思う。

1kgの鶏ガラスープを買った

唯一、冷静さを保てなかったのがこれ。

調味料などを売っているお店の店頭に売られていた、ユウキ食品のガラスープ。1kgという巨大な袋で売られているのは、さすが業務用だ。

これ、自宅で中華だしの素としてよく使っているのだけど、決して安いものではない。しかし、目の前にある大袋は、「450円」という破格値で売られていたので目を疑った。ありえねぇ。普段スーパーで買っているのは、130gの瓶入りで大体同じ値段。なんなのこの価格差。

・・・と思ったら、「賞味期限切れ」と書いてある。ああ、賞味期限間際なのね。よくあるはなし・・・えっ?賞味期限「切れ」?

賞味期限を確認してみたら、既に3ヶ月のオーバーランだった。よくこんなもの売ってるな。しかし、「450円だったら買っちゃえ!」と思わず買ってしまった客がいる。自分だけど。

さあて、既に賞味期限が切れてしまったこの1kg、一体どうやって使い切ろうか。消費するのにあと1年はかかるのかなあ・・・。

(2017.01.28)

コメント

コメント一覧 (1件)

  • >福徳のお隣にあるお店は「元気morimori」という名前

    一応「氣」というのも変換で出るな(看板参照)

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