八潮:ビリヤニと工場直売ポテトチップを求めて

埼玉県八潮市。東京都に隣接する自治体ではあるけれど、知名度は未だ低い。

三郷市と並んで「陸の孤島」と揶揄されていた交通不便な土地だったけど、2005年に秋葉原からつくばを結ぶ新しい鉄道路線、「つくばエクスプレス」が開通し「八潮駅」が開業。これにより、2018年の今となってはベッドタウンとしての開発が大規模に行われている町だ。

というのも、川一つ向こうが東京都足立区なのだけど、さすが「東京都」と「埼玉県」のブランド力違いで、不動産の値段が全然違う。安く自分の家を買いたい人にとってはお買い得な場所となっている。

ちなみに現在分譲中の「シティテラス八潮」は、住友不動産という大手デベロッパーが手がけたというのに3LDKで2,980万円~だ。キャッチコピーが「東京駅20分 夢の価格」となっているが、本当に激安だと思う。

そんな八潮市には中古車を取引する市場があるのだという。そこで仕入れた中古車を海外に持っていくため、カザフスタン人が数多く住み、「ヤシオスタン」と呼ばれているそうだ。

はて、そんな雰囲気はあったっけ。八潮は何度も訪れているけど、あんまりその実感がない。確認をするため、暇を見つけて八潮市に行ってみることにした。

「ヤシオスタン」には、パキスタン料理の「チキンビリヤニ」が美味しいお店があるということなので、それを食べてくるのも目的だ。

八潮市役所

カーナビの指示に従って、パキスタン料理のお店として八潮では有名な「カラチの空」を目指す。

目的地付近に到着しました、というカーナビのアナウンスを聞き、周囲を見渡したが、全然怪しい雰囲気がない。なにしろ、正面の茶色い建物は八潮市役所だ。もっと、場末感漂う場所に、ひっそりと「ヤシオスタン」はあるのかと思った。

むしろ市役所目の前で、八潮市のメインストリームじゃないか。

ちなみに八潮市役所は、つくばエクスプレス八潮駅から随分と離れた場所にある。「つくばエクスプレス」は秋葉原からつくばまでバーンと突っ走る路線なので、旧来の集落がある場所をてんで無視した作りになっている。そのため、沿線の駅周辺はシムシティ感が半端ない。周りは何もないのに、急に駅がある周辺だけニョキニョキと大型マンションや商業施設が建ち並ぶからだ。遠くからでも、「あ、あそこに駅があるんだろうな」というのがよくわかる。それくらい、駅周辺とその他のギャップが激しい。

もし、町歩きが好きな人がいるなら、今のうちにつくばエクスプレスの各駅巡りをやってみるといい。電車ではなく、車を使って、だ。そうすると、いかにつくばエクスプレスが既存の町や道路をガン無視して駅を作ったかというのがよくわかって面白い。時間が経てば経つほど、このいびつな感じはマイルドになってくるだろうから、見に行くなら早めがオススメ。

話がずれた。その「オールド八潮タウン」ともいえる八潮市役所の眼前が、ヤシオスタンだった。

カラチの空

これが、ヤシオスタンを代表するお店、「カラチの空」。

ちょうどこの建物の裏手に、巨大なオムライスを出すお店、「りゅうしょうえん」がある。

りゅうしょうえん
『メガオムライス』 (埼玉県八潮市中央) 旅行から帰宅する際、今から家で夕食を摂るには時間が遅いし面倒臭い。そんなとき、漠然と「本日の夕食会場」を探していて発見したお店。 埼玉県八潮市にある「りゅうしょうえん」。八潮市役所

「りゅうしょうえん」を訪れた時は夜が更けていて、まさかこういう町並みだったとは全く知らなかった。

カラチの空の看板には「インドパーク料理」と書かれている。日本人客向けには、「インド料理」を標榜した方が通りがよいのかもしれない。

なお、「パーク料理」という言葉は聞いたことがないので調べてみたら、「パキスタン料理」のことを「パーク料理」と呼ぶとのこと。

カラチの空店頭

店頭には、象さんの絵と、象の像がある。象を尊敬するのはインドっぽい文化だけど、パキスタンにも象はいるのだろうか?

ちなみに「カラチ」とは、パキスタン最大の都市の名前。首都はイスラマバード。

カラチの空ランチメニュー

ランチメニューを見ると、一見普通のインド料理店の品揃えに見える。

カレーと、サラダと、ナンの組み合わせ。値段が高いものになると、タンドリーチキンやケバブが付く。一番安くて648円。

ナンは、インド的な「三角形っぽい形をした」ものだ。パキスタンのナンは丸い形をした物が多い、と聞いたことがあるので、このあたりはインドの流れを汲んでいる。

ちなみに、「インドって、実際はナンを殆ど食べないんだよ。食べるとすればチャパティなんだよ」というのは有名な話だけど、パキスタン人はナンを食べる民族らしい。

チキンビリヤニ

そんなランチメニューには目もくれず、ランチではないメニューを頼む。それが、「チキンビリヤニ」。

見たことも聞いたこともないメニューだけど、この「カラチの空」を紹介するwebサイトでは必ずといっていいほどこの料理が登場し、お褒めの言葉がついてくる。なので、これを食べないことには始まらない。

出てきたのはこちら。大皿にみっちり盛られている。一人で食べるには明らかに多い量で、これは中華料理のように仲間でシェアするのが正解っぽい。

端的に言うと・・・ドライカレー?

チキンビリヤニアップ

食べてみてびっくりした。あッ、これは美味いぞ、と。

複雑なスパイスの味がする。ドライカレーとは明らかに違う食べ物だ。なんて言えばいいのだろう・・・似たような料理は、ありそうでない気がする。

一見炊き込みご飯のようで、味がまったりと丸く収まっていそうな印象を受ける。しかし、スパイス一つ一つがはっきりと主張をしてきて、香りがとても高い。えーと、クミン、クローブ、胡椒、シナモン、生姜あたりは入っているっぽいけど、それ以上はもうわからない。

不思議なのが、バスマティライスの色がまばらだということだ。ざくっとかき混ぜただけ、という感じで、味にムラがある。でもこのムラが味に変化を与え、食が進んでたまらなかった。

この料理は、シャバシャバのヨーグルトをまわしかけて食べるものらしい。ヨーグルトをかけて食べたら、これまた味が複雑になっておいしい。タイ料理を人生で初めて食べて困惑したのと同じ、「新しい料理の概念に出会った」感を覚えた。

何故一部の人がこのカラチの空のビリヤニを絶賛するのかというと、この料理自体は日本でも食べられるお店がいくつもあるものの、「偽物」ビリヤニが結構多いからだそうだ。「偽物」は、炊き込みご飯を作って、そこに具を混ぜて完成させるというもので、しかもジャポニカ米を使う。一方本物は、バスマティ米とカレーを鍋の中で層状に積み重ねて、加熱調理するという。なるほど、道理で米に色むらがあるわけだ。調理が終わってから、層状になっているものをざっくり混ぜるのでこういう色合いになるのだな。

確かに、この料理をモチモチしたジャポニカ米で作ったり、炊き込みご飯で食べるというのは物足りないと思う。人生初のビリヤニだったけど、とても美味しかった。また食べたい、定期的に食べたい。そう思わせる料理だったぞ。

・・・ただし、お腹いっぱいだ。さすがに後半は味に飽きた。今度は仲間と訪れたいものだ。またはお持ち帰りにするか。

他にもパキスタン料理店

「カラチの空」の近くには、「アルカラム」というパキスタン料理店もあった。

パキスタン料理、もう少し深掘りしてみたいものだ。こういう「パキスタン人向けのパキスタン料理店」は、しっかりと本場の味を再現しているはずだからだ。

公共交通機関を使って訪れる、というのは若干難しい場所なので、また車を仕立てて訪れたい。

菊水堂

せっかく車で八潮を訪れたので、もうひとつ別のところに立ち寄ってみる。

今度はつくばエクスプレス八潮駅の南側にある「菊水堂」という工場だ。

ポテトチップを生産しているのだけど、原則通販しかやっていない、変わりものだ。最近はナチュラルローソンでも手に入るようになったそうだけど、それでも入荷は月2回。

菊水堂できたてポテトチップがすごい!|ローソン研究所
メディアでも度々取り上げられ大人気のポテトチップ。ぜひお試しあれ!

それなりにレアな食べ物だ。

そんなポテトチップだけど、工場直売をやっている。ナチュラルローソンだと1袋378円だけど、工場で買うと200円だ。直売だけあって、全然値段が違う。

ただし、工場は平日しかやっておらず、土日は閉まっている。さらに、駅からは遠く、バスも近くを走っていない。車がある人限定だ。しかも、この工場界隈は激しく宅地造成をしたり道路をつけかえたりしている最中で、カーナビが当てにならない。道に迷いやすいので注意が必要だ。道中通行止めに出っくわしても、動揺しないだけの冷静さが必要。

菊水堂工場

ポテトチップ工場って、案外小さいんだな・・・と感心する。「食品工場」、しかも僕らが「工場見学」で訪れるような場所って、とんでもなく広くて大きいものだ。だから、こういうこぢんまりした工場を見たら、ちょっと親近感がわく。

ただし、あくまでも一般客ができるのは「工場直売」までで、「工場見学」は受け付けていない。

そんなこともあって、来客向けの駐車場なんて物すら存在しない。狭い道路に路駐して、そそくさと買ってすぐに退却、ということになる。

菊水堂売店

工場脇に、「売店」と張り紙が貼ってあるサッシがある。この中でポテトチップは売られている。

常時店員さんがいるわけではないので、「チーン!」と呼び鈴を鳴らし、事務所から社員の方を呼ぶ必要がある。そんな場所。

一人5袋まで、という制限がある。なので、「せっかくここまで来たんだから」と大量買いをすることはできない。

味は「しお」と「のり」の2種類で、サイズは100gと145g。

145gで200円

友達に頼まれた分含めて、5袋を購入。これが「工場直売」の菊水堂のポテトチップ。

ポテトチップの袋裏

ぱっと見た目、ごく普通のポテチだ。しかし、食べてみると、いわゆる「カルビー」や「コイケヤ」のものとは全然違うことに気づく。

とにかく味が軽い。手が油でべたつかないし、サクサクした食感は軽やかで、嬉しく楽しくなってくる。パーム油を使って揚げているから、というのもあるだろうし、工場直売なので生産して間もないからというのもあるだろう。

ちなみにこの日買ったポテトチップは、前日製造のものだった。

たまに、コストコなんかで売っているアメリカンなポテチを食べると、そのこってりした油に驚く。そして、「これはこれで悪くないかも」と思う。いつも食べたいとは思わないけど。その逆で、この菊水堂のポテチは軽くてサクサクしていて、気がついたらどんどん食べてしまっている。「食べたいか、食べたくないか」なんて考える以前に、手が止まらないのだ。これは危ない。むしろ、重たいポテチを食べるよりも危険なスナックかもしれない。

「なかなか買いに行けない」という希少性が、美味さをより強く感じさせているという側面はあると思う。でもそれを含めても、やっぱりこいつは美味いと思う。「カラチの空」を訪れる際はセットでこの菊水堂にも訪れたいものだ。

そんなわけで、ある春の日の八潮訪問記はおしまい。

(2018.03.27)