サントリーが「のんある酒場」と銘打って、期間限定の飲食店を出店するという。
サントリーといえば、「オールフリー」をはじめとし、「のんある気分」などノンアルコール飲料に積極的なメーカーだ。そういえば先日、テレビ東京の経済専門ニュース「ワールドビジネスサテライト」で、「ノンアルコール市場を積極的に取りに行く」的なことを報道していたっけ。
お酒を飲まない僕にとってはありがたい展開だ。いいぞもっとやれ。
お酒を飲まなくなってから、飲み屋に行きづらくなった。お気に入りのビアパブができたりもしたけれど、混んでいるときは入店を避けるようになり、そのうち足が遠のいてしまった。いくらウーロン茶を飲むとはいえ、飲んでいるお客さんと客単価が違うし、客層というかノリも違うからだ。お店のメインターゲット客の邪魔になったらよくないな、とか思っているうちに行けなくなってしまった。
そんな体験があるからこそ、堂々とノンアルコールを謳う酒場があるというのは嬉しいことだ。その心意気やよし、ということで企画を応援する意味もこめて行ってみることにした。
場所は東京駅の八重洲一番街2階。
あれ?「八重洲一番街」って、東京駅八重洲口地下改札を出たところからどーっと広がっている広大な地下商店街のはずだ。なのに「2階」なのか?と不思議だったが、調べてみるとたしかにごく一部だけ、八重洲一番街が地上から上に出ている部分があった。
そのお店があるエリアは「東京グルメゾン」という名前になっていた。飲みを意識したお店がずらりと並んでいる。新幹線改札からほど近い場所なので、「出張から帰りがけに一杯飲もう」というビジネスマンの利用を想定しているのかもしれない。
えーと、今回の「のんある酒場」は「東京コトブキ」というお店でやっている、と聞いている。
あった。東京コトブキ。
うわあ、水色をベースに白字の「のんある酒場」という文字が堂々と出ている。「のんある」という言葉と「酒場」という組み合わせがよく考えればミスマッチで面白い。
2022年のGW限定イベントで、2022.04.28-05.05の開催となっている。それ以外の時期は、単なる「東京コトブキ」という居酒屋なのだろう。
東京コトブキとしての営業も続行していて、和風っぽい居酒屋メニューが並んでいる。そしてお酒も通常運転で売っている。イベント期間中だからといって、このお店からアルコールが排除されてしまったわけじゃない。
ただ、当たり前だけどここはサントリー系列のお店らしい。扱っている飲み物は全部サントリーのものだ。
「のんある酒場」で扱っている飲み物が並んでいる。
いろいろあるものだな。「ノンアルでワインの休日」だって。僕は記念日にノンアルコールスパークリグワインやノンアルコールワインを買うことがあるけれど、いつも瓶で買っている。缶で買ったことはない。
缶にしてまで、ワイン風ブドウジュースを飲みたいと思うのかどうか。そして、ノンアルコールのレモンサワーを飲んで「いいねぇ」と思えるのかどうか。自分との相性を今回見てみたい。
GW期間中のお昼だったけど、比較的空いていた。さすがに「のんある酒場」という企画だと、ドドドと人が押し寄せるほどの訴求力はないか。
僕以外のお客さんは、仲間で普通にお酒を飲んでいるのが大半だった。
通されたカウンターテーブルは、目の前に「ノンアルだって、乾杯だ。サントリーのノンアル」というぽアスターが貼ってあった。
色使いにしろ、フォントにしろ、メッセージにしろ、全部が軽薄だ。ノンアルコール飲料をブランディングすると、こういう軽薄な感じに行き着くのだろうか。でもまあ、そうなるよね。
ここは難しい問題だ。ノンアルコールだからといって、18歳未満の子どもがノンアル飲料を飲むことは原則認められていない。なので、大人に向けてのPRということになる。そして、なぜ本物のお酒でなくノンアルコールを選ぶのか?というのは人それぞれの事情がある。なかなかビシッとコンセプトを決めるのは難しいと思う。
言い方は悪いが、ノンアルコール飲料とは「フェイク飲料」だ。お酒に似せた、お酒でないジュース。でもジュースっぽくはない。
よく考えると、「なんでこんなものをわざわざ飲んでいるんだ?」と飲んでいる本人が首を捻りたくなるような、そんな飲み物だ。
ちなみに僕はノンアルコールビールを毎月ケース買いするほど愛飲している。でも、いつもドライゼロだ。ドライゼロは大してうまくないと思うんだけど、炭酸のカアッとくる感じが好きだからだ。ビールを模した飲み物、としてはもっと他にうまいものがある。でも、もはや僕は「ビール風のものが飲みたい」んじゃない。「ビール的な、食前食中ドリンクが欲しい」と思っている。だから、ドライゼロのわざとらしさを愛している。
オールフリーはその点、すごーくインパクトに欠けるノンアルコールビールで、実は僕はあまり好みじゃない。零一やサッポロパーフェクトフリーよりは好みにあっているけれど。
レモンサワー、ビアカクテル、ワインカクテル、梅酒がメニューにずらりと並ぶ。どれも400円。
安いような気がするけど、酔いもしないものにどこまでお金を払う気になれるか?というのは人それぞれだろう。
僕は、ノンアルコールビールを愛してやまないけれど、それ以外のノンアルドリンクには全く興味がない。「お酒を飲みたい!でもハンドルを握る立場なので我慢しなくちゃ!」みたいな発想がまったくないからだ。だから、ノンアルレモンサワーよりもまだスプライトのほうがマシじゃね?と思ったりする。
今回、せっかくの「のんある酒場」なんだから、いろいろ試してみよう。スーパーの商品棚にあるやつを手にとって買おうとは思わないけれど、こういう飲食店ならば試すハードルが低くなる。
アンテナショップなので仕方がない、というか当然なんだけど、メニューが商品の紹介ページになっている。缶の写真が並ぶ。
なるほどわかりやすいけれど、「スーパーで買ったらもっと安いよな・・・」という思いが頭をよぎってしまい、微妙な気分になる。コロナによる自粛も相まって、外で飲み食いすることのコストの高さが最近特に気になる。お酒もどきのノンアル飲料ならば、なおさらだ。
僕が愛しているノンアルビールでさえ、飲み進めているうちに毎回「何をやっているんだ、僕は」と白けてくる。炭酸水で良かったんじゃないか?とか、そもそも飲まなくてよかったんじゃないか?とか考えてしまう。ましてや、お店で、店舗コストを上乗せした値段で、メニューに缶が並んでいるとどうにもテンションが上がらない。
まずは「とりあえず」のノンアルコールビール。「からだを想うオールフリー」。
「とりあえず生」はノンアルの世界においても同じで、やっぱり「とりあえずノンアルビール」ということになる。
おっ!タンブラーで出てきた。久しぶりだな、この感覚。お酒をやめてから早9年、居酒屋でこうやって一人ノンアル酒を飲むとは意外だった。
そしてお通しとして茶碗蒸しが出てきた。ちょっとソワソワする。
もちろんお酒を止めてからも酒席に同席する機会はあったので、こういう「お通しが出てくるシチュエーション」がなかったわけじゃない。でも、会社での飲み会はコロナがまん延する以前からどんどん減っていき虚礼廃止となったし、友人との飲み会も「エスニック料理の店」とか「焼肉店」といった珍しい料理を出すお店中心になり、いかにも居酒屋という風情のお店でお通しをつつく、という体験は殆どなくなった。
極めつけがコロナだ。これで、僕の中ではほぼ完全に居酒屋文化を忘れてしまった。ましてや一人でカウンター席で、なんて一体いつ以来だろう。
いやあ、くすぐったいなあ。懐かしすぎて。
一人ノンアル酒なので、気兼ねなく食べたいもの飲みたいものをあれこれ頼もう。
居酒屋の素晴らしいのは、いろんな種類の食べ物が用意されている、ということだ。ガチッとメシを食わせるお店とは違う食の体系がある。一人であれこれ食べたいときには居酒屋はありがたい存在だ。でも、酒が飲めないと基本的に居酒屋は敷居が高いので、僕にとってはそれがとても残念なところだ。
おっと、QRコードが記載されたオーダー表を渡されたぞ。これをスマホで読み取ってオーダーしてくれ、ということだった。最近このスタイルのお店、増えたな。テーブルごとにタブレットを置くことさえしなくなっている。お店としてはコストが減らせて万々歳だ。
ふーむ。いろいろメニューがある。
せっかく茶碗蒸しのお通しでノスタルジー感に浸って、「こういう世界もいいなぁ」と思っていたのに、スマホ注文になると現実世界に引き戻された感じがする。僕は「ノンアル飲料を飲みに」東京駅にやってきて、非日常空間を楽しみたかったのだけど。なんか現実の延長線にいるようだ。
こういうところでも、チラッチラッと我に返ってしまう。「酔わないのに、お金を払って飲むの?」ということに。「喉が乾いているわけでもないのに?」と。
こちらはれっきとしたアルコールドリンク。うっかり間違って注文しないようにしないと。
1杯目500円、2杯目300円、3杯目200円と飲んでいるうちに値段が下がっていく仕組みが面白い。3杯飲めば合計1,000円。
こういう、オーダーの創意工夫って居酒屋は得意だなと思う。サイコロの出目によって無料になるお店とかあるし。
いろいろなメニューがあって、どれも気になる。
しかし、濃い味噌味の牛すじ煮込みをノンアルコール飲料と一緒に食べて、果たして僕はハッピーになれるのだろうか?酒だからこそ、濃い味に耐えられる。酒でないなら、もっとあっさりしたほうが相性が良い気がする。さてどうしよう。
あと、そもそも酒を飲む人のコスト感覚と飲まない僕のコスト感覚が違いすぎる。
たぶん酒を飲む人は、「まあ、3,000円くらいは当然いくでしょ。仲間と飲むなら5,000円いってもしょうがない」くらいの感覚はあると思う。一方の僕は酒を飲まないので、ベースとなる価格が「普通に昼飯を食べた値段」となり、つまりそれは「できれば1,000円以内で抑えたいなあ」という感覚だ。
こんなのじゃ、到底あれこれ飲み食いはできない。たとえノンアルであったとしても。
価値観の転換ができないと、ノンアル飲料を居酒屋で楽しむ、という生活習慣は身につかないとおもう。僕にとっては。
2杯目は「ノンアル生搾りレモンサワー」にした。この手のドリンクを飲むのは初めてだ。さて、どういう印象を持つだろうか?
・・・うーん、これは。
自宅でsodastreamで炭酸水を作って、それにレモン汁を注いだものでいいんじゃないか?という気になってくる。
やっぱり、「お酒を我慢している人」にとっては良い飲み物なのだろう。一方、僕みたいにレモンサワーを全然我慢していない人にとっては、わざわざお金を払う価値を感じない。
ノンアルコールビールだけは違う。あれは唯一無二のジャンルだからだ。細かい泡、喉越し、食前食中の邪魔にならない苦味。炭酸水の荒々しい泡とは全然別ものだ。だから僕はノンアルビールにはお金を払ってもいいと思っているし、今でも飲んでいる。しかしレモンサワーは・・・まずくはない。良いと思うんだけど、僕にとってはお金を払ってまで飲むものだとは思わなかった。
ただ、居酒屋という場所というのは素晴らしい。食べながら飲む。
今日は当初ガッツリいくつもりだったけど、なんだかそんな気分ではなくなってきた。結局、頼んだ食べ物はフライドポテトだけだった。なんでだよ。もっとこのお店の特色ある食べ物を頼めばよかったのに。
いや、どういうペースで飲み食いすればいいのか、感覚がわからんのですよ。自宅だったら、ポテトチップや柿の種をつまみながらノンアルコールビールを飲んでいるけど、それ以外の餃子とか煮込みとかを、甘いサワーでどうやって食べればよいのか。
昔だと当たり前に出来たのにね、今じゃすっかりやり方がわからなくなってしまった。
ノンアルカシスオレンジ。
うん、やっぱり僕にはいらない飲み物だった。
コロナでテレワーク三昧の日々なので、そもそも外出・外食する機会が減った。幼な子がいるのでなおさらだ。外食するとなると、何か目的があったり、お楽しみがある場合に限られている。「仲間と楽しく酒を飲む」という趣味を持ち合わせていない僕にとって、「居酒屋にノンアル飲料を飲みにいく」というのはコスト意識を常に持ってしまう。「味は悪くないけど、家で飲んだほうが安いな」とか。
僕は「コスパ」という言葉を飲食業界においてあまり使いたくないけれど、それでもコスパを考えてしまう。「楽しく酔える」という付加価値がないぶん、なおさらだ。
お会計をしてみたら、ドリンク3杯+フライドポテト+お通しで2,120円だった。もちろん居酒屋利用としては安くついたけれど、納得感という点では微妙な結果だった。たぶん、複数名で訪れていたら違った感覚になっていたと思うけれど。
うーん、でも複数名でノンアルならば、ファミレスのソフトドリンクバーで良いのでは?ということもちらっと考えてしまう。うーん。
(2022.05.02)
コメント
コメント一覧 (2件)
送別会で最初はドリンクは別会計で飲んだ分だけ、という話だったから、
これは距離的にも車で行こう、と思っていたら、
当日いきなり飲み放題に・・・・
えええー、ソフトドリンクは大量に飲めないしー
で、ノンアルコールで一番単価が高いオールフリーを飲みまくったことが。
私にとってアルコールはバーなら雰囲気、それ以外では「酔う」のが目的なので、大衆居酒屋の飲み放題のカクテル系はジュースだからそれ以外のモノで。
梅酒系ロックかワインが多いです。
缶のノンアルコール飲料はたまに買います。
酔うと眠たくもなってしまうので、それを避ける為に(笑)
ノンアルコール+ノンカロリーのヤツです。
そして飲める時にレモンやグレープフルーツを自分で絞る系を飲んでいたら、ノンアルコールとはいえ、この「絞る」という動作は楽しめたと思います。
あー、コスパ的には最近(といっても2年くらい行ってないけど)
サイゼリアですねー
値段相応とはいえ、十分飲めるワインが安くて。
ネーマさん>
ノンアルコール+ノンカロリー。やっぱりこれが理想ですよね。でも、案外ありそうでない。水かウーロン茶でも飲んでろ!という世界。えー。
飲み放題と言われたら、ついグレープフルーツジュースとか、ジンジャーエールを飲んでしまう。大して飲みたくもないけど。みなさんもそういうことってありませんか?
サイゼリア、あのお店のせいで昼酒が常習化してアルコール依存になった人がいそうです。つくづくすごいコスパのお店です。