両国駅のホームで餃子を焼きまくる!【超ギョーザステーション2024】

JR総武線の両国駅には、ホームが3つある。

1番線、2番線は黄色い電車の総武線が停車する島式ホームになっている。そして3番線は、一段下がったところに独立してあり、普段はまったく使われていない。

ときどき、房総半島方面に向かう臨時の企画列車がこの3番線を始発駅として利用することがあるらしい。でも、それ以外は使われていない。

もともと、両国駅は千葉方面に向かう鉄道の玄関口だった。隅田川を横断する線路がまだ存在していなかったからだ。

その名残で、両国駅には3番線までホームがある。で、この3番ホームにある線路は、どん詰まりになっていて秋葉原方面には迎えない。

あまり使い道がないホームなので、不動産業に熱心なJR東日本ならばここを壊して商業施設を作ることも検討したはずだ。それでもまだホームはしぶとく残されている。

春になると、改札口からこのホームに登っていく階段に緋毛氈が敷かれ、雛飾りがずらっと並べられるのが季節の風物詩になっている。

そして、電車の往来がなくなった3番線ホームでは、ときどき何らかのイベントが行われている。

今回僕らが訪れた「超ギョーザステーション」もその一つだ。

食品メーカー・味の素が企画するイベントで、なんと駅のホーム上にテーブルを並べ、餃子を焼いて食べるというものだ。

餃子を焼く、といっても味の素が主催するだけあって、みんなおなじみの「冷凍ギョウザ」だ。それをテーブル上の家庭用カセットコンロとフライパンを使って食べる。

今回限定の青じそ味が用意されています!・・・なんて気が効いたものは一切ない。ご家庭で食べられるあの味をそのまんま、両国駅のホーム上で食べる。しかもちゃんと有料だ。無料ではないし、食べ放題でもない。

これが大人気で、はるか昔に第一回目が開催された時に僕が職場の同僚とともに突撃したら、「2時間待ちです」と言われてスゴスゴと引き換えした苦い思い出がある。

家で寸分違わぬ餃子を食べられるのに、と思う。でもこれだけ人が押し寄せるのだから、現代人、特に東京の人というのは「体験」に飢えていることがよくわかる。腹は大して空いていない。

だから、冷凍餃子だろうが、うまい棒だろうが、ガリガリ君だろうが、ありきたりなものでも何らかの付加価値をアドオンすれば人は群がる。

2024年GWに開催された「超ギョーザステーション」は、公式サイトから事前予約ができる仕組みになっていた。

僕は予約受け付け開始時間ちょうどにアクセスし、ガッチリと家族分の予約を確保した。本当は気心知れた友だちも一緒に誘いたかったのだけど、何しろ予約が取れるかどうかわからないイベントだったので、周囲に声をかけることができなかった。

当日、両国駅に到着してみると、3番線ホームから餃子が焼ける匂いが漂ってきた。おお、やってるな。

駅の改札に向かう通路の壁広告に、でかでかと「ギョーザ →」と書いてあって雰囲気の盛り上げに一役買っている。

3番ホームに通じる通路の入口のところに、「超ギョーザステーション」と書かれた看板と「ようこそ」と書かれた提灯がお出迎え。

そして、「ただ今の待ち時間 165分」という記述が。

165分も待つ人、果たしているのだろうか?

このイベントは1時間入れ替え制になっている。食事は最大1時間で離席しなければならない。会場から客が全員いなくなったところで片付け・清掃が行われ、その後次の予約集団が入ってくる。なので、予約は1時間15分刻みだったか、1時間半刻みだったか忘れたがそういう仕組みになっていた。

実際はものの数十分で退席する客が多く、僕ら家族みたいに制限時間ギリギリまで食事をしている客は全体の半分くらいだった印象だ。所詮、家でも食べられる味だ。なので、「ホームで餃子を焼いて食べる」という体験ができた時点で満足して席を立つ人がいるのだろう。

だから、時間とともに空席がチラホラでてくる。そして接客をしているスタッフも暇そうにしている。

もったいないから、どんどん次のお客さんを入れればいいのに・・・と思うが、なぜかそういう運用にはなっていない。総入れ替え制を徹底している。何か理由があるのだろうか?

予約の有無をチェックされたのち、ホームに通じる廊下に並べられているパイプ椅子に座って待つよう指示される。まだ、ホームには行かせてもらえない。

壁には、味の素が冷凍餃子にかける熱い思いがたくさん展示されていた。

「フライパンにくっつかない、というのが売りなのにくっついたというクレームが多かったので原因を調べたら、多くの家庭でテフロン加工が剥げて傷んだフライパンを使い続けていて、これは想定外だった。なので、そういうフライパンでもくっつかない餃子の開発に力を注いだ」

みたいな話が書いてあって面白い。

僕らの予約時間と同じ時間帯の人が全員パイプ椅子に揃ったところで、スタッフから会場のお作法について説明が行われる。

まず、オーダーは注文表を使う。

スターターキットとして、「羽根パネェ~!実感セット 600円」を人数分頼む必要がある。これは、冷凍餃子1パック+お好きなドリンク1杯の値段となる。

餃子またはドリンクをおかわりしたかったら、その都度この注文表を使って、カウンターまで買いに行く。「追いギョーザ」は300円、その他ドリンクは250円~400円。全部サントリーの飲み物だった。ビールならプレモル、ジュースならなっちゃん等。

注意事項として、「一度にたくさんの追いギョーザを買わないでくれ」と言われた。追加はすぐに用意できるので、食べ終わったらその都度買いに来てくれ、という。面倒だから一度にたくさん買って手元に置いておきたい。でも、味の素側としては「ベストな状態の自社製品を食べてほしい」と思っているのだろう。だから、半分溶けたような餃子を焼くのだけはカンベンしてほしいのだろう。

時間になり、椅子に並んでいた人たちが会場・・・というか、ホームに通される。さあ、いよいよだ。

ホーム左手に、餃子や飲み物を販売する屋台が用意されている。大きなホテルの宴会場で立食パーティーをやる際、会場の端にこういう屋台が作られていることがある。で、出張寿司職人が寿司を握ってくれたりする。あれをどこかから調達してきたっぽい。

客席。

卓上に、家庭用のカセットコンロとフライパンがセットされている。至ってシンプルだ。

しかし、卓上調味料はやけにたくさん並んでいて、餃子1品のために気合が入りまくっているのがうかがえる。

何しろ、味の素としてはここで「冷凍餃子!うまい!」と客に思って帰ってもらわないとプロモーションとして失敗だ。最大限餃子を美味く食べさせるように工夫は怠らない。

「羽根パネェ~!セット」2人前を買ってきた。

とてもよく見慣れた、味の素の冷凍餃子が2袋。そして飲み物2人分。さすがに3歳児は人数としてカウントしなくてよいそうだ。

食べるものは、この餃子しかない。お口直し用にちょっとした漬物とか、ご飯とか、せめてシウマイ・・・というのは一切ない。ひたすら餃子を食べ続けるしかない。この潔さ、僕は大好きだ。

味に飽きるのが先か、それとも満腹になるのが先か、または制限時間いっぱいになるのが先か。

1時間しか時間がないので、慌ただしい。どんどん焼いていかないと。

弊息子タケに餃子を袋から出してもらったら、ドチャーっとフライパンにひっくり返した。おいちょっと待て、きれいに並べてくれ。・・・ということを3歳児に言っても、なかなか理解してもらうのは難しい。

餃子の焼き方が丁寧に解説してある。

フライパンにフタをして5分、フタをとって1~2分。トータルで7分。

でも実際はヒエヒエの餃子2袋を一度にフライパンに並べて焼いたし、慣れない環境なので焦げないように気をつけていたため、1回の焼き上がりにトータル10分くらいかかった。

追いギョーザを買ってくるのに要する時間も踏まえると、ずっと餃子を焼き続けても制限時間1時間の中で4回焼くのがやっとだった。

餃子が焼けるまでの間に、乾杯。

子ども用にお冷はないか?とスタッフに聞いてみたが、無いと言われた。あっそうか、ここはホームの上だもんな。

我が子には外食の際にジュースを一切与えていない。そういう育て方だ。ウーロン茶も当然飲ませていないので、この会場では子どもが飲むものが全く見当たらなかった。せめて「南アルプスの天然水」があればよいのだけど、それすらない。

たまたま、弊息子タケの水筒があったので、その中に入っていた水を彼に与える。

第一回目の餃子が焼けるまでの間は、ひたすら待つしかない。「お通し」や「すぐ出るおつまみ」といった料理が何一つないからだ。

「ねえ、まだ?」とタケが繰り返し言うが、ぐっと堪える。

ときどき、餃子ソムリエと名乗るスタッフの方が巡回してきて、焼き方のアドバイスや焼き加減のチェックをしてくれる。冷凍餃子の焼き方なんて人から習う機会がないので、案外こういう機会は貴重でありがたい。

さあ、餃子が焼けた。さすが味の素だ、羽根つき餃子がきれいに出来上がった。しかも、トゥルン!とフライパンからお皿にダイブしてくれた。焦げ付きとは無縁で、とても快適。

餃子は言うまでもなく美味い。どういう味か、今更形容する必要はあるまい。家で焼くのと全く一緒だ。

でも、屋外で食べる、というのがとても楽しいので美味しさ3割増。

それから、準備と後片付けはスタッフさんにお任せ、というのが気分的にとてもラクだ。冷凍餃子を家で焼く時だって、そんなに手間がかかることはない。でも、「全く何もしなくていい」この場所での食事は、本当に気楽で美味しさ2割増。

とはいえ、制限時間1時間はタイトだ。一回目が焼けたら、すぐに追いギョーザを買ってきて二回目の餃子調理に取り掛かる。食べている間に焼き、焼けたら次を食べる、の繰り返し。わんこ餃子だ。なので案外せわしない。

弊息子タケは、餃子を夢中で食べていた。でも、まだこの皮で包まれた謎の食べ物を上手に食べることができない。ましてや、子供用のカトラリーが用意されていない会場なので、食事は大人と同じ箸だ。

結果的に、バラバラにほぐれた餃子を口にかきこんでいた。

ホームの上で食べる餃子はとても楽しかった。ただ、景色が良かったか?というとそれほどではなかった。というのも、線路側に大きなちょうちんをたくさん吊り下げていて、それが視界の妨げになっていたからだ。

はるか昔、第一回目のこのイベントのときにはこのちょうちんはなかった。なので、ホームから餃子を焼いている光景が丸見えで、奇異な光景がとても人々の注目を集めたものだ。しかし今回はちょうちんが目隠しの役割を果たし、総武線ホームからジロジロ見られないかわりに、こちらからもホームを行き交う人や電車の様子を臨場感とともに観察できなかった。それはもったいない気がした。

夫婦2名+3歳児1名。1時間のタイムリミットでちょうどお腹いっぱいになる時間だった。これで子どもがもっと成長して食べ盛りになると、1時間だと満腹にはなれないかもしれない。いや、その頃には僕の食がどんどん細くなっていて、今と比べてプラマイゼロかもしれない。

いずれにせよ、次回もまた同じイベントがあるなら、予約をとって参加したい。予約なしで何時間も待つ気にはなれないけど、予約が取れてサッと食べられるなら、何度でも食べたい・体験したいひとときだった。

(2024.04.30)

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