2024年年末、今年も年越し蕎麦打ちを実家にて執り行う。

未だに、2015年年末に振る舞ったにしんそばのことが親から話に出る。「あれは良くなかった」と。

味は悪くなかったのだけど、小さい子どもにとって骨が多いニシンは不人気であること、そして高齢者である両親にとっては量が多すぎたことから全方位で不評だった。
それ以降、にしんそばは作っていない。じゃあ肉が良いだろう、ということで鴨南蛮に転身し、さらには「もっとわかりやすく旨味が出る肉の方がいい」と豚南蛮に切り替えた。
豚肉を使っているのは、極めて安直な発想だ。
今年も、そう。スーパーに行くと、しゃぶしゃぶ用の豚肉がなんと4割引で売られていたので、それを使うことにした。
ついでに、子どもが大好きな鶏つくねの肉も。

2024年の蕎麦打ちは、前年に引き続き姪と、3歳の弊息子タケにほぼ任せようと思っている。僕は監督役だ。
蕎麦が細いだの長いだのあれこれ家族から言われるストレスから開放されるのは、気が楽だ。
そのかわり、僕はつゆをちゃんと作らなくてはならない。
今年の自分なりの課題は、「できるだけ駅の立ち食いそば屋(東京界隈)に近い、出汁の匂いが強くて醤油っからいつゆ」を作ることだ。
今年はかつお節を例年より多くし、さらにグラグラ煮る時間を長くしてみた。サッと出汁を取るのではなく、敢えてかつお節のエグみを出すのが狙いだ。
それから、この時期は正月料理用に、と上等な昆布が台所に置いてあることが多く、いつもそれを使ってしまう。でもそれだと味がマイルドになってしまうので、今年は昆布の使用を減らした。できるだけ出汁はかつお節に任せる。

そば粉は今年も高山製粉。
https://shop.takayamaseihun.co.jp
オンラインショップでいろいろな種類のそば粉を扱っているし、打ち粉・つなぎ粉も売っているので便利だ。
ただ、そば粉の種類が多すぎて、一体どれを選べばよいのか迷ってしまうのが良し悪しだ。
高いそば粉を買ったからといって、そのそば粉のポテンシャルをすべて引き出せるほど蕎麦打ちの技術が高いわけじゃない。だから、どの程度価格を妥協するか?というのは毎年の悩みどころだ。
激安のそば粉にして、家族から「まあまあの味だね」程度の素っ気ない評価を受けるのはモヤモヤする。もうちょっと良いそば粉を選んで、その上で美味しい・美味しくないの評価をいただきたいものだ。
ということで今年は「黒耀(こくよう)」という名前のそば粉を選んでみた。やらしい話だが、11種類あるそば粉のうち、上から5番目の価格のものだ。

小学生の姪が蕎麦打ちをやってくれる。
彼女はいつまで蕎麦を打ってくれるだろうか?「面倒。疲れるからヤダ」といずれ言うのか、それとも面白がって続けるのか。
彼女にはこう伝えておいた。
「いいかい、君は小さいときから蕎麦打ちを毎年のようにやってきたんだ。それは履歴書の特技欄に書いてもいい、自慢できることなんだよ。これからも蕎麦打ちを続けていけば『特技』だけど、途中でやめてしまえば『昔、蕎麦打ちをやったことがあります』という単なるエピソードトークになってしまう。それは勿体ないことだよ」
と。

それは弊息子タケにおいても同じ。
彼は2歳のときに蕎麦打ちデビューをし、今年もちょっとだけ蕎麦打ちに関わってもらった。
姪はあくまでも人の子なので僕があれこれ言う立場にないけれど、タケにおいてはちゃんと「2歳のときから毎年欠かさず、我が家の年越し蕎麦を自分で打っていました」と言えるように僕が仕向けていく。

3歳になったタケだが、まだまだ腕力が足りない。そして身長も足りない。
捏ねたそばを伸ばす段階になって、彼の身長体重腕力ではなかなか生地が伸びていかない。
彼はまるで「休み時間に昼寝をする学生」のように机に突っ伏し、手のひらとおでこでグイグイと生地を押さえつけていた。

打ち上がった蕎麦。
姪が9割、タケが1割ほど切った。太さはまちまちだけど、そもそも1回につき打ち粉込みで750gのそば玉を打つ、ということ自体が無謀だ。生地を伸ばすのも、切るのもすべて難儀する。そんな中、ふたりともよく頑張った。

打ち上がった蕎麦を手に記念撮影する二人。
毎年、この写真がとてもいい。本当に得意げな顔になるからだ。

この日の蕎麦が完成。豚南蛮。
つゆの評判はこれまでで一番良かった。狙い通りだ。昆布だしとみりんに甘えず、できるだけキリリと辛いつゆにしようと踏ん張った成果だと思う。あと豚肉から出たエキスのおかげ。
2024年はこれにて終わり。2025年も良い一年でありますように。
(2024.12.31)
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