アルパインポールを修理する【ブラックダイヤモンド ディスタンスカーボンFLZ】

以前別の記事で書いたが、2023年夏山シーズンに向けて、僕はアルパインポールを買い直した。ブラックダイヤモンド製の「ディスタンスカーボンFLZ」という商品だ。

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これまで使ってきたアルミ製のポールが壊れたからだ。ポールの伸縮を固定するパーツが空回りするようになり、長さを維持できなくなった。

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最近の僕は改心して、登山から帰ってきたら装備品を洗ったり干したりするようになった。昔は「疲れたー」と言って放置していたのだが、今ではちゃんと洗って、ちゃんと乾かして、ちゃんと片付けている。妻子がいる家庭なので、こういう細々とした作業を後回しにすると全く終わらないからだ。

しかし、メンテナンスのせいで劣化が早くなってしまったものもある。ポールがまさにそうだった。

下山後、丁寧に洗ってドロを落とすのは良いけど、しっかりと乾かすことができていなかった。アルミ錆が出てしまい、ポールの伸縮に支障がでてしまった。これだったら、むしろ洗わず泥だらけのまま放置しておいた方が良かったのではないか、と悔やまれる。それはそれで泥が詰まって、ポールが伸縮しなくなっていたとは思うけど。

アルパインポールなんて邪道、と考える登山愛好者がいるのは知っている。僕もそう思う。体幹を支えることを筋肉ではなくポールに任せると、どんどんインナーマッスルが衰えると思う。しかし、それよりもなによりも、怪我をすることが怖い。

2023年になって僕は本格的な登山を再開したのだけれど、毎回登山のたびに肝に銘じているのが、「昔はこれくらい簡単に出来た、標準的なコースタイムを20%短縮できた、という過去の実績を過信しないこと」だ。明らかに体は老化しているし、コロナによる活動自粛の3年間で運動量が明らかに減った。いつ、なんの変哲もない道の石ころで足を滑らせて大怪我を負うかわからない、という警戒心を持ちながら山道を歩いている。

だから、新しくアルパインポールを買い直すことにした。

50歳近くなってくると、物を買う時に自分の寿命のことを考えるようになる。

たとえば、僕は39歳のときに冷蔵庫が壊れたことをきっかけに引っ越しをしたのだけど、それは当時住んでいた家だと容量200リットル程度の一人暮らし用冷蔵庫しか置くことが出来なかったからだ。冷蔵庫は一度買うと10年程度は使うことができる。そう考えたとき、自分が49歳のときにまだ200リットル程度の冷蔵庫を使い続けている光景を想像し、とってもイヤだった。僕が49歳のときは、もっと大容量の冷蔵庫がある暮らしを送りたい。そう思ったので引っ越したし、大きい冷蔵庫を買った。

登山装備も同じだ。最低数年、あわよくば10年近く使えるかもしれない装備品を買うと、僕が老いるまでずっとそれを使い続けることになる。「今は安いものでもいいけど、いずれは値段が高くて良いものを。」と思っているうちに、僕は肉体が衰えて山に登れなくなってしまうかもしれない。

今からあと数年が登山を趣味とする人生ではピークだ、と思っている。ならば、装備品をケチることはやめよう。そう思った。あと、今は小さい子どもが今後成長して養育費がかさんでくると、ますます僕一人の趣味である登山に対して出費がしづらくなる。今のうちに駆け込みでお金を使っておこう、という考えもある。

アルパインポールは、値段が安いことで定評があるモンベル製だと2本で約14,000円だ。モンベルといえども、案外高い。昔はもっと安かったのだけど、物価高の影響で値上がりをしてしまった。

安いポールはアルミ製で、値段が高くなるとカーボン製になる。カーボン製はとても軽くなるので快適なのだが、アルミほど耐久性がないという点で一長一短だ。登山道を歩いている最中に岩の隙間にポールの先端を挟んでしまうことはよくあることだけど、その際に強い力がかかると、アルミ製のポールだとぐにゃっと折れ曲がるのに対し、カーボン製はバキッと折れる。曲がったポールはだましだまし使い続けることができるけど、折れたポールはもうどうしようもない。

あと、ポールの中にバネが入っていて、ポールを地面に突いた際の衝撃が緩和されるような機構を持っているものもある。これも値段が高くなる。確かにこのアンチショック機能は快適だけど、バネがある分重たくなる。

さらに、折りたたみ機能がついているポールも高価格帯の商品にはある。多くのポールは、伸縮することで使わない時に長さを調整できる。しかし縮めるといっても限界があり、どうしても60センチ近くになってしまう。ザックからポールがはみ出て、登山の行き来の電車やバスの中では邪魔だ。できるだけポールは短く収納できるに越したことがない。また、山の中でも、ポールを使って歩いていたけれど岩場に差し掛かったのでポールを畳んで片付ける、という場面が頻繁にある。簡単にポールを使ったり片付けたりできることは重要だ。予算があるなら、折りたたみができるポールにしたいところだ。

Amazonなどで調べれば、中華製の聞いたこともないメーカーのポールが多数売られている。しかも、折りたたみ機構付きで値段が2本で4,000円弱で売られていて、目を疑うレベルだ。カーボン製なら5,000円程度。1本単位のバラ売りでも目を疑うレベルの値段なのに、2本でこの価格は桁を一つ間違えているのではないか?と思ってしまう。

こういう安い商品もひょっとしたら良い商品なのかもしれない。しかし、とても信頼することができないので、こんなポールに体重を預けるのは無理だ。ポールは登山靴と違って、山の中で壊れたとしても「まあ、しょうがないか」で済むアイテムではある。とはいえ、壊れるかもしれないものを山に持ち込むのは怖いから嫌だ。結局、こういうのはしっかりと実績があるブランドの商品を買うしかない。

ということで買ったのが、ブラックダイヤモンド製のポールだった。ポールの有名どころとしては、他にLEKIやSHINANOといったメーカーがあるが、それらと比べると「少し安い」という価格だったから、選んだ。

国内正規代理店経由で買うと、2本でだいたい31,000円程度。相当高いが、僕は並行輸入品を買ったので20,000円ちょっとで買うことができた。1本10,000円強なら、実はモンベルのポールと値段に大差はない。

このポールがとても快適だった。

Z型に折りたたむことができるので、商品の型番の末尾に「Z」という文字が入っている。この折りたたまれた状態から、ピンと伸ばした状態にするまでわずか数秒。簡単すぎて、こんな体験をしてしまうともう昔のポールには戻れない。

そして、軽量コンパクトなので収納が楽だ。25リットル程度の小型ザックで日帰り登山をしたとしても、ザックの脇からポールが突き出て周囲の人を危険にさらす心配がない。ザックの中に収納できてしまう。

あと、カーボンなのでポールが細くてスタイリッシュだ。ちょっとポールを小脇に挟んでカメラを構えたい、というときでも邪魔にならないのは僕にとってありがたかった。

山では大活躍だ。

火打山・妙高山を縦走しているとき、片方のポールだけカツンカツンと地面の衝撃がくることに気がついた。ポールの先端を見ると、形状が左右で違っている。なんだこれは。

写真右のポールも、なんとなく「全く問題ありませんよ?」という態度をとっている。でも、左のポールと見比べると、明らかにパーツが足りなくなっていることがわかる。よく見ると、石突きと呼ばれる部分がなくなっていた。

ポールの先端は「石突き」と呼ばれるボールペンのペン先みたいな金属の突起が取り付けられている。雪面や岩場ではその石突きが活躍するのだけど、通常の山歩きの際にはラバー製のキャップを被せるのがマナーとされている。鋭利な石突きのままだと、登山道の損耗が早まるからだ。

そのラバーキャップはよく外れて紛失するのが山において誰しもが経験することだ。ぬかるみの中にポールを突き刺すと、結構あっさりとキャップがはずれ、キャップが地面に取り残される。登山道保護のはずのキャップが、むしろゴミ投棄をしているのではないか?という議論があるくらいだ。

で、僕のポールも、最初はそのラバーキャップが外れたのだと思った。しかしどうも左右のバランスが悪いので、長さを比較してみたら右の方だけやたらと長さが短い。キャップの分厚さ数ミリ分、ではないレベルで短い。

よく見ると、石突きのもっと根元の部分からボッキリ折れており、青色の「バスケット」と呼ばれるパーツまでも紛失していることがわかった。一体どうしてこんな壊れ方をしたのか、僕にはまったく記憶がない。

カーボン製のポールだから耐性がない、とか偉そうなことを言う以前に、ポールの先に付いている石突きパーツが破損するとは。

結局この日、燕温泉に下山するまでの数時間、左右のバランスが悪くてとても使いにくいポールで道をあるき続けた。

石突きは所詮パーツにすぎないので、交換ができるはずだ。これでポールを買い直しです、となったら困る。なにせ相当高い買い物だったのだから。

あれこれ調べてみたが、ブラックダイヤモンド製の石突きは単品で売られているものの、僕が持っている「ディスタンスカーボンFLZ」のものはバラ売りされていなかった。売られているのは、明らかに長さが違うものだった。一応、ブラックダイヤモンド製ではあるけれど。

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どうやら、ポールの太さというのはどのメーカー製もだいたい同じらしく、LEKIの石突でもブラックダイヤモンドのポールに装着可能らしい。なので、たぶんこれでハマるはずだが・・・。安くない追加の買い物なので、若干心配だ。

あと、この石突きにはバスケットがついていない。バスケットは単なる飾りではなく、ないと困るものだ。これがないと、それこそぬかるみにポールを突っ込んだ際、ズブズブと深くポールが沈み込んでしまう。バスケットがあるおかげで、バスケットよりも深く地面にポールがめり込まなくなる。

これも、ディスタンスカーボンFLZに使われているものとは違う。本当に使えるかどうか不安になるから、各種パーツはバラ売りしていて欲しいものだ。

このときばかりは、「モンベルってやっぱり便利だよな。困ったら直営店に行って店員さんに相談できるから」と思った。自分の装備品をモンベル以外のメーカーに切り替えていこう、と画策していたのだけど、今更モンベルの偉大さに気がつく。

それにしても、この段階で相当な出費だ。元々のポールがとても高い商品だったので感覚が麻痺している。我ながら散財していると思う。

石突きパーツの交換の仕方は、ネットで調べて学んだ。

それは、熱湯に2分ほどポールの先端を浸け、その後登山靴の裏などでぐーっとパーツをしごいて、引っこ抜くというものだ。熱によってパーツとポールとを結合している接着剤が溶けるので、そのすきに交換するらしい。

新しい石突きに交換、完了。破損した片方のポールだけ交換、というわけにはいかないので、2本とも交換した。

この交換によって、ポールの長さが数センチ長くなってしまった。こんなに長いのは邪魔なんだけど仕方がない。

元々の石突きと、破損した石突きも並べて写真に収めた。破損したパーツが、きれいに真ん中で折れてしまっているのがわかる。あまりにスッパリと折れているので、ポールの先端はこういうものだ、と信じてしまいそうになるくらいだ。

(つづく)

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