剛性がある、コンパクトな三脚を求めたらこうなった【Ulanzi MT-47 / ST-27】

僕は、これまでに膨大な写真を撮影している。プロのカメラマンや写真を趣味としている人の撮影枚数と比べれば微々たるものだが、このサイトに掲載している写真だけでも5万枚以上ある。

振り返れば、飲食店で料理写真を撮影する(そして、それをwebサイトに公開する)ことをやりはじめた、初期の人間が僕だ。2000年から連載を開始した「蕎麦食い人種行動観察」がその典型例だが、当時は料理を撮影すると店員さんから怒られたり、周囲の人から「下品」と言われたものだ。なので、撮影するときは常に「店員さんの目を盗んで高速に撮影する」ことを心がけてきた。

自撮り撮影も、僕が他の人よりかなり早くから行ってきた。2004年の時点で、三脚を自撮り棒代わりにして撮影している。

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僕が先進的な撮影をしていたカメラマンなのかというと、それはちょっと違う。ただ、コンパクトデジカメには執着していて、仕事のときもプライベートでちょっと近所に行くときも、いつも肌身離さずカメラを持ち歩いていた。なので、気になるものに出会ったら即撮影していた。

携帯電話にカメラが実装されてからは、カメラは市民権を得るようになった。それまでの間、僕のやっていることは珍しいことだった。

今はもう、僕がやっていることはすっかり古臭くなってしまった。今の若い世代の写真にはいつも驚かされる。ローアングルから見上げてみたり、わざと水平を崩してみたり、被写体の一部分だけを切り取ってみたり。僕の撮影スタイルが「自分が見たものを、再現する」ことを目的としていて、そのためにカメラは目線の高さで水平をキープしているので、大違いだ。

たとえば、ラテアートをアップにして写真に撮る人が結構いる。その気持はわかるのだが、僕だったら「カップに注がれたラテと、そのラテアートを見下ろしている自分の視線を写真で再現」してしまう。そのため、アート部分だけを撮影する、という発想はなかなかできない。

基本的に「自分の目で見たものを画像で保存し、その場にいなかった他の人達に共有する」のを目的としている僕の写真だが、違う使い方をする場合もある。それが、自撮りだ。

自撮りは、登山やキャンプといった非日常的空間に僕がいるときによく使う技法だ。というのも、周囲の風景が素晴らしければ素晴らしいほど、その空間の中に自分がいることを第三者の視線から記録に残しておきたいからだ。

自己顕示欲があるから自撮りをしたいわけではない。この素晴らしい空間で自分がひとときを過ごした、という「体験を記憶」しておきたい。なので、自分の顔が大々的に写っている必要はなく、むしろ自分は後ろ姿だけ写っていたり、写真全体の中で小さく自分が写っているくらいがちょうどいい。

登山の場合、素晴らしい景色の道を歩いている!これは心地よい!と僕が感じたら、歩いている前方10メートル以上離れたところに三脚を立ててカメラをセットする。そしてセルフタイマーを動作させるやいなや、10メートル元に戻り、カメラなんて存在しないかのように前に向けて歩いていく。そんな様子を、カメラは撮影し写真を残す。

こういう写真が、大好きだ。だから、山頂の標識前に三脚を立てて、「登頂記念!イエーイ」という自撮りは好きではない。一応記念にそういう写真を撮るけれど、可能ならばそんな写真は撮りたくない。山頂まであとわずか!というシーンを自分の背後に三脚を立てて、セルフタイマーで撮影したほうがよっぽどいい。

ということで、僕にとってカメラは日常生活の重要な伴走者だが、旅になると三脚は必須アイテムとなる。三脚がない旅なんてありえないくらいだ。


ただ、過去20年近く使ってきた三脚が、今では使えなくなっている。それは、僕がコンデジを使わなくなったからだ。

これまで使ってきた三脚は、特殊警棒のように4段伸縮する、ステンレス製の三脚だった。使わないときはコンパクトに縮み、「あっ、ここで撮影しよう!」と思い立ったら、脚を引っ張ればすぐにシャキンシャキンシャキーンと伸びて撮影準備に取り掛かることができる。

タイミングを逃さないし、面倒だからやめておこうという気にならないメリットがある。なにせ、カメラを三脚にセットした状態で登山中はいつも持ち歩いていたから。脚が短いときは30センチ弱、長く伸ばせば100センチくらいになる。

この手の商品はいろいろなメーカーのものがあるが、一例として↓のものを挙げる。

この三脚は小型軽量なので、僕が一眼カメラを使うようになるとその重さを支えきれなくなった。その結果、別の三脚に頼らざるをえなくなってしまった。

そこで僕が一眼カメラ用に買った三脚は、Manfrotto製のものだった。

これを実際に上高地に持って行ったりしたが、重たいうえに大きく、さらに畳んだ状態から撮影できるように組み立てるのが時間を要した。サッと取り出してババッと撮ってすぐ移動、という僕のスタイルにはあわない、と気づき早々に使うのを断念した。

今ではホコリを被って部屋の片隅に置いてある。もったいないことをした。

その後、一眼カメラで撮影するのは風景で、自撮りをするならスマホカメラという使い分けをするようになった。そのとき採用したのが、スマホ用の自撮り棒だ。これは三脚にもなるタイプだった。

自撮り棒という概念を手に入れた僕はちょっと興奮し、こんな記事を書き残している。

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この自撮り棒を旅行先にも持っていき、遠方から自分をスマホで撮影するための三脚として使えればよかった。しかし実際は三脚としての機能はおまけに過ぎず、屋外では実用に向かないレベルだった。水平な場所でさえ安定して立たせるのが難しいし、風がちょっと吹いただけでスマホがぐらついた。倒れてスマホが壊れてしまうのは困るので、屋外では三脚としての運用を諦めた。

その結果、自撮り棒を使って、自分の前方1メートルほど前から自分を撮影する、という写真が増えていった。

そういう写真は、自分で後で見返してみて、なんだか嫌な気分になった。どれも同じ距離感で、似た構図ばっかりで退屈だし、そもそも僕が画角の大半を占めているために「今、自分はどこにいるのか?」を説明するための背景描写の面積が少ない。あと、老いが進んでいる自分の顔を近くでまじまじと見るのは嬉しくない体験だった。自分を撮るにしても、もっと遠くから撮りたい。

そんな自撮り棒の限界を感じながらここ最近の登山を繰り返していたら、ある日バキッと音がして自撮り棒の首が折れた。構造上もっとも負荷がかかる場所だったので、経年劣化したらしい。軽量化と引き換えに、剛性は高くない商品だった。

その後の登山では、自撮り棒無しで、自分の手をぐーんと伸ばしてスマホの自撮りをやってみた。しかしこれは「やらないほうがマシ」レベルの出来だと思った。自撮り棒よりもますます僕が大きく写ってしまい、己の醜さを認識し反省するための材料を作っているとしか思えない写真だらけになったからだ。

やっぱり、昔やっていたように、遠く離れたところに三脚を設置し、そこからセルフタイマーで自分を撮影するというやり方でないと、僕は納得できない。そう確信した。


そもそも僕がコンデジから一眼カメラに切り替えたのは、一眼カメラのほうがもはや安かったからだ。コンデジはスマホカメラの勢いに押され、今やすっかりオワコンとなっている。残っているのは、防水防塵カメラのような特殊用途のものか、ハイスペックなカメラが中心だ。ハイスペックといっても、5年くらい前に発売されたようなものが現行機種として売られているので、もはやすっかり技術革新と新陳代謝が行われないジャンルになってしまった。それでいて、値段は20万円弱くらいする。

僕もいっときソニーのRX100を使っていたので、値段が安ければ引き続きRX100の後継機種で良かった。小回りがきく三脚が使えるからだ。しかし、値段が高すぎるので買うことができず、結局値段が安かった一眼カメラに切り替えた、という経緯がある。


登山における至近距離からのセルフィーは、ちょっと正直キツい。僕自身の自尊心が削られる気がする。一方、2024年もあちこちに旅に出る予定があることから、早急にこの問題を解決する必要があった。

僕が三脚または自撮り棒に希望する条件は以下のとおり。

  • 伸縮は極力簡単な機構であってほしい。ネジを緩めたり、レバーを開放したりといった手間は無いほうがよい。
  • ある程度の重さと堅牢さが欲しい。風が吹いたらグラグラしたり、三脚の足が安定しないのは困る。
  • スマホないしカメラの水平がちゃんと取れるくらい、三脚としての基本的な性能は持っていてほしい。
  • スマホと一眼カメラの両方に対応したものであってほしい。

これら要望をすべて満たしたのが、UlanziのMT-47という三脚だった。

Ulanziというメーカー名を聞いて、「どうせ中華製のクオリティが低い商品だろう」と思った。最近、Amazonではよく見かけあるブランドだが、「安かろう悪かろう」に違いないと思った。実際に安いから。

しかし、あれこれ口コミを調べてみたら、安いなりに馬鹿にならない性能の商品を沢山出している、意欲的なメーカーらしい。中華製だけど。

あまりに意欲的すぎて、三脚の数がかなりある。外観が似た、型番違いの商品がたくさんあるので、選ぶ側としては「あれとこれはどう違うのか?」というのをいちいち見比べないといけない。そういう点で、とても面倒だ。メーカー側が商品ごとの比較表を作ってくれればよいのだけれど。

いわゆる「自撮り棒」は、伸縮する棒の先にスマホを挟むことができる万力のような機構が備わっているものだ。

僕が今回欲しかったのは、スマホも一丸カメラも装着できる構造を持つものなので、いわゆる雲台がついていて、アルカスイス互換のクイックシューを備えていることが条件になる。

アルカスイス互換の雲台付きミニ三脚、となると案外選択肢は限られてくる。僕はその中から商品を絞り込んでいった。

一方で、「1/4カメラネジ対応」のネジが三脚の先についているものは結構多い。ただ、この製品を選んだ場合、ネジにカメラを装着する手間がかかる。そして三脚をスマホに付け替えるときは、ネジをはずして、また装着するのに時間がかかってしまう。なので僕は、このタイプの製品を買うのは避けた。

Ulanzi MT-47にFUJIFILM XT-20をマウントしたところ。

APS-Cカメラなら、剛性はまったく問題なくびくともしない。安定感があって、頼もしい。これなら、屋外でセルフタイマーで撮影をする際にも使うことができそうだ。

なにせ、樹脂製ではなく、ステンレス製なのでまったくしならない。手にすると、かなりずっしりと重たいのだが、安定感と安心感を考慮するとこれくらいは仕方がない。諦めがつく。

伸縮する棒は、最大高が17センチ。正直、自撮り棒には短すぎるし、屋外で三脚として使うにしても短すぎる。とはいえ、「使わないときはコンパクトに収納できていて、使うときは即座にシュッと伸ばせる三脚で、剛性が十分にある」という商品を求めれば、おのずと背の高さは期待できない。

背の高い三脚は諦めて、背が低い三脚をなんとか工夫しながら今後は使っていこうと思う。ローアングルから印象的な構図で撮影するとか、木の切り株の上に三脚を置くとか。

アルカスイス互換の雲台なので、ピークデザインのキャプチャーを装着している僕のカメラがすぐに装着できる。これはメリットが大きい。

普段、登山の際はこのカメラをキャプチャーを使ってザックのショルダーベルトに固定しているので、必要に応じてババッと三脚に付け替えることができるのはとても便利だ。

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お次はスマホホルダーだ。

アルカスイス互換で雲台に取り付けられるものを探す。

やっぱりこれも、Ulanzi製になった。

Ulanzi製に絞ってみても、スマホホルダーはたくさんの種類がある。何がどう違うのか、見極めるのが結構たいへんだった。「面倒」だと思うくらい、商品選びはダルかった。

ちなみにこのホルダーも、三脚同様にステンレス製。

なので、両方をくっつけると、かなりずっしりと重たい。「いつでも三脚を持ち歩き、必要に応じてサッと三脚を取り出そう」と思ってポーチの中に入れて行動していると、ポーチのベルトが肩に食い込んでくるレベルだ。あと、暴漢に襲われたら護身具として使えるレベルに、三脚とスマホホルダーは硬い。正当防衛のつもりが過剰防衛になって、むしろお巡りさんに捕まえられそうだ。

MT-47とST-27を連結し、そこにスマホをセットした図。

APS-Cのカメラでさえ安定感が素晴らしかったのだから、スマホならばより一層安定する。

この三脚、外出しないときはデスクワーク用の机の上に設置してある。ディスプレイのすぐ脇にスマホがセットされるようにしてあり、ディスプレイからほとんど目線を移動させずに、スマホの画面も見ることができるようにした。

些細なことだけど、これがすごく良かった。目線移動が少ないというのは、とても快適だ。

メインディスプレイでお仕事やこのサイトの文章を書く作業をしながら、BGMをスマホでコントロールすると、とても塩梅がよかっった。とくにYouTubeをBGM用で使うとなると、定期的に広告が挿入されるので、そのスキップ操作が楽だ。

これまで使ってきた自撮り棒でも同様のことはできたのだけど、あちらの製品は軽いがゆえにグラグラしていた。何かのはずみでスマホが机から転落するかもしれない、という警戒感があったので、自分のすぐ手元に、目線の高さにスマホを設置しようと思った試しがなかった。でもこのMT-47とST-27の組み合わせならそれができる。

素晴らしい製品ではあるが、自撮り棒として使おうとするなら致命的に長さが足りない。

スマホを手に取り自撮りするのと比べ、毛が生えた程度にしか画角が広がらない。

また、自撮り棒と違って、あくまでもこれは三脚だ。なので、スマホの向きを柔軟に動かして固定することが難しい。そのようなことをするなら、雲台のレバーをいったん緩め、雲台が360度自由自在に動くような状態にしてから向きを決め、またレバーを締めて位置を固定しなければならない。それでスマホを構えてみて、向きが納得できなけりゃ、またやり直しだ。

両手を使わないとこれらの作業ができないので、スマホを自分に向けながらの微調整は無理だ。なので、スマホ自撮りをする場合は、「だいたいこの角度で撮る」というベスポジを見つけておいて、その角度に雲台を予め調整しておく必要がありそうだ。

この機材一式はまだ実戦投入されていないが、今から利用が楽しみだ。

この記事はUlanziのステマでもなんでもない。使ってみて、「ダメじゃんこれ」と思ったら、そう書くつもりだ。

(2024.01.18)

コメント

コメント一覧 (4件)

  • https://youtu.be/f-Lks_Tpiqw?si=jKgSYS5APSAstjKH

    動画の紹介って本来ならしたくないんですが(見るぶんの時間を相手から奪ってしまうため)、自分の言葉ではうまく説明できないのでご容赦ください。
    三脚と聞いて真っ先に思い浮かんだのが、最近見たこのレビュー動画でした。
    小型で高剛性で使い方の幅が広い、脚の展開(伸長)にかかる手間が最小限、アウトドアでの使い勝手がよさそう、というメリットを聞く限り「いいんでは?」と思った次第ですが、隊長殿の用途には合わないでしょうか?
    ちなみにLeofoto MT-04というモデルらしいです。クイックシュー等の条件については知識がないので実際見ていただかないとなんですが、組み合わせる雲台次第でしょうからそこは何とかなるのかな?
    あくまでも参考までに、ということで、ひとつ。
    もし既にご存知で、検討した結果除外された型でしたらすみません。

  • 一平ちゃん>
    紹介いただいた三脚は、ちらっと商品画面を見た程度で検討対象からは外してました。値段が高かったので。
    検討のスタート地点が「1,000円、2,000円程度の自撮り棒」だったので、桁が一つ違う商品はそもそも検討対象に入っていなかった。
    スパイダー状の三脚は、岩山などの不整地で威力を発揮するとは思うんですが。

    ミニ三脚をあれこれ調べていたら、「気がついたらミニ三脚をいくつも買ってしまっている」と書いている記事がありました。それを読んだときは「んな馬鹿な」と思ったんですが、いざ買ってみるとよくわかります。TPOに応じて、丈の長い三脚がほしいな、とかコンパクトにまとまる三脚がいいな、とかいろいろ変わってくるので。「これ一つで万能」というものが存在すれば良いのですが、さすがにそれは難しそうです。

  • お時間とらせてしまってすみません。わざわざご覧いただきありがとうございます(恐縮)
    想定していた予算というか、これくらいの値段のがほしい、という話が出ていた時点で候補外かもなとは思っていたので特に驚きはないです。自分もここまでトリッキーな状況で三脚を使うことはないので魅力を感じなかったです。
    逆に考えると、こんなに高くても値段度外視でこれほしい!っていう人がいるほど、このジャンルには他に選択肢がなかったりするんでしょうかね?

    余談ですが、YouTubeに動画を投稿するようになってはじめて、これまでは気にもしたことがなかった選択条件が三脚選びに加わりました。それは「色」。
    用途や撮影対象にもよるんでしょうが、シルバー色の三脚だと、それが被写体に思いっきり写り込んで目障りなことに気付いたんですよ。正確には被写体のディスプレイ部分のアクリルパネルなんですけど。
    これまで使っていた黒い三脚には映像撮影用のコンデジをつけていて、音声録り用のレコーダーを載せる用に別の三脚が急遽必要になりテキトーなやっすい中古品を値段だけ見て買ってきたんですが、それがダメだった。
    今まで色なんて気にもしてませんでしたが、市販の三脚には黒が多い(ような気がする)のにはもしかしたらそういう理由もあるのかな?なんて思いました。

  • 一平ちゃん>
    MT-47には1つのコールドシュー、ST-47には2つのコールドシューがついていて、あわせて3つのコールドシューがあります。それぞれにライトを取り付けたり、マイクを付けたりできるので、三脚に拡張性が欲しい人にとっては便利です。

    黒いと光の反射が防げるのではないか、ということについては、そのとおりだと思います。
    僕の家の周辺では結構結婚式の前撮り写真を撮っている風景を見かけるんですが、カメラマンおよびカメラマン助手は決まって真っ黒のスーツやスラックスを着用しています。黒子のようです。おそらく、白いシャツを着たりすると光の反射が被写体に影響するからでしょう。

    あと、人間を撮影する場合、黒目のところにカメラマンが映り込んでしまわないように、ということもあるそうで。

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