今後はもう入れなくなる、と聞いて麻布台ヒルズの34階に行ってきた

スカイロビー。

奥へは入れないように、仕切りが設けられていた。

床にはあちこちに全館空調用の空気穴が空いていて、風が吹き出ている。

先ほどの場所からくるりと180度向きを変えたところ。

この広さ。贅沢だ。

ビルの1階がピロティになっていてイベント広場になっているのだとしても、この広さなら相当贅沢だ。それがこんな高層階にこんな空間があるというのは、かなりスペシャルな気分になる。

イケてる感を全面に出したいと考えている新商品発表会の場として、今後多用されるのだろう。

突き当りの窓から、東京タワーがちらっと見える。人だかりができているので、あそこからの景色を楽しむのは後回しにする。

それにしても、ここに入ることができることの告知が少なかったおかげで、日曜日にもかかわらず来場者が少なくて良かった。

南側の窓から下を見下ろすと、「おっ!」という建物を発見。

場所から、あれが東京アメリカンクラブであるということがわかった。

入会金で数百万円がかかる、会員制の建物。会員になるためには会員からの推薦のほか、英語での面接や素性も審査されるという噂だ。港区愛好家御用達雑誌「東京カレンダー」にも登場する、セレブ御用達(とされる)憧れの建物、らしい。

噂では知っていたが、建物を見るのは初めてだ。なんだありゃあ。すごいぞ。ガラス張りの温室みたいな場所は、おそらくプールだ。そしてその外には、デッキチェアが並んでいて都心ど真ん中で日光浴が楽しめる。

そしてちょうど車寄せに車がやってきたのだけど、スタッフと思しき人がお出迎えに出てきていた。そんじょそこらの高級ホテルよりもエレガントっぽい。

一度潜入してみたいものだ・・・とは思うが、世界が違い過ぎるのであんまり羨ましいとも、憧れも感じない。たぶん、館内のレストランでお昼ご飯を食べただけでもびっくりするお金がかかるだろうし。

僕が年を取ったからだろう、分不相応な贅沢には興味が沸かなくなった。「今から成り上がって、ああいう世界に足を踏み入れる」ということが物理的に無理だと悟ったので、贅沢の世界が視界に入らなくなったのだと思う。

それはともかく、この「東京アメリカンクラブ」がロシア大使館のすぐ裏手にある、というのが面白い。ひょっとするとCIAの最前線としても機能しているのかもしれない、なんて妄想すると楽しい。

麻布台ヒルズ森JPタワー33階から見た、東京タワー。

まだこの場所は中層階なので「東京タワーを見下ろす」というほどの高さではないが、むしろこれくらいの高さがちょうど見やすい。

東京タワーは、雑な言い方をすると「鉄骨が三角形に積み上がったもの」だ。僕ら人間がこのタワーを見る際、無意識のうちにこのタワーの「顔」となる場所を探すことになる。それは東京タワーの展望台、ということになる。

東京タワー展望台に目線が向かい、そしてその目線のまま東京タワーの付け根からてっぺんまでが視界に入っている状態。それこそが「東京タワーを一望」といえるわけで、まさに今ここにいる地点がそうだった。

これ以上上の階でも下の階でもない、絶妙な高さだと思う。なんで中途半端な場所にこんな空間を?と思ったが、ちゃんと東京タワーの高さと見比べながら決めたに違いない。

なお、東京タワーの展望台「メインデッキ」は地上150メートル、さらにその上にある「トップデッキ」は地上250メートル地点になる。

この33階部分の高さについては公式な情報が見つけられなかったが、東京タワーのメインデッキをやや見下ろす位置にあるので150メートル~200メートルの間くらいだろうか?

人との対比。

窓際の段差を極限まで下げているため、まるで掃き出し窓のように窓が低いところまで広がっている。なので眺望がすごい。やや古いオフィスビルの場合、窓際は空調の吹出口になっていて、腰の高さまで塞がっていることが多い。でも新しいビルなので、ここはバーン、ズドーンという眺めだ。

弊息子タケが半袖の肌着1枚だけの格好になっているのは、この空間が暑いからだ。ガラスには赤外線カット機能がついているはずだが、それでもこれだけ大きな窓ガラスで、日光を遮るものがないので暑い。

道理で、床に空調の穴が開いているわけだ。この空間、ひっきりなしに冷房・暖房を動かしていないと夏は蒸し風呂だし冬は極寒になりそうだ。吹き抜けで空間が広いので、天井から温度調整された空気を送り出しても、人々のところに届きにくい。

東京タワーが見える東側のエリアには、大階段が設けられていた。33階から34階に通じていると同時に、階段真ん中がベンチになっているのでそこに座ってイベントを見ることができる。

階段上部、34階に近いところから33階を見下ろした様子。

正面は南側。左側が東京タワーがある東側。この時間帯は日差しの関係なのか、ロールカーテンがおりていた。たぶん、夜景が美しい時間になるとカーテンが上がるのだろう。

天井にはライトやプロジェクタ用のスクリーンが設置されている。スクリーンの位置がやや前に感じる。もっと窓際まで下げてもいいのに、と思う。ははーん、さてはあれだな、スクリーンがバーンとあがると、そこから新製品が現れる!どよめく記者席!という演出ができるように、背後にスペースを設けたな?

ここでプレゼンやったら、相当かっこいい。ただし、神谷町駅からここに至るまでの道がずいぶんラグジュアリーなので、しょぼい内容のプレゼンだったらとんでもなく見劣りする。場所のインパクトに見合うだけの発表をやらないと。

大階段を登ったところには、カフェがあった。「スカイルームカフェ&バー」というお店らしい。店の前には、数は多くないもののスツール席が用意されていた。

席数が少ないじゃないか?と思ったが、ここは観光地ではなく、朝から晩までドサドサと客が押し寄せる場所じゃない。イベントが始まる前にちょっと一息つく、という利用シーンを考えれば、席数は少なくて十分なのだろう。

こういう店の規模感や席数を見ても、「自分が観光地ではないところに潜入している感」を実感して気分がたかぶる。

こういう場所の飲食は、さぞや高いんでしょう・・・?と思ってメニューを見たが、そこまで高額ではなかった。そうか、「観光地物価」じゃないもんな。あくまでもこの場所を利用するビジネスユーザー向けの「サービス」として営業しているお店だから。

どうしようか、と思ったが、今後このお店を使う機会はないだろうということで飲み食いすることにした。

この日買ったものはこちら。

よくよく値段を見ると、当たり前だけど市井の価格よりもちょっと高い。でも麻布台ヒルズ自体の高級感に既に圧倒されており、少々高くても「まあ、そんなものだよね」と納得してしまっている自分がいる。感覚の麻痺って怖い。

ちなみにコーヒー1杯600円。デニッシュは350円。

スカイルームカフェ&バーのそばから見た、34階からの光景。

東京タワー、そしてその奥に増上寺、左側に東京プリンスホテル、さらに奥には浜松町界隈のビル群が見える。昔はあの界隈は東芝本社ビルがとても目立っていたけど、今や「どれ?」と目を凝らさないと気づかないレベルにまで、周囲のビルがニョキニョキと伸びてきた。

この写真は広角レンズで撮影しているのでこんな画角になるが、望遠レンズを使えば東京タワーが目の前にあるような、そしてその背景もグググッと迫ってくるような画になるはずだ。

スカイルームカフェ&バーの奥には、ホテルの大宴会場のような扉で仕切られた大部屋があった。ピッタリと閉じられて中は見ることができなかったが、扉の脇にはクロークもあることから、おそらく33階でイベントをやった後にここでパーティーをやる、という流れになるのだろう。スカイルームカフェ&バーは、スカイルームのホワイエという位置づけ。

33階に戻る。

33階のエレベーターホールの反対側が「ヒルズハウス」になる。

Dining33とMembers Lougeの2つのエリアがあるようだ。

超高級レストランとVIP御用達のラウンジなのではないかとビビりながら外から様子を伺ってみたが、もちろん中は殆ど伺いしることができなかった。ただ、後々調べてみると、そこまで肩肘に力を入れなくても良いカジュアルな場所だった。

Dining33は「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國シェフがプロデュースするフレンチレストランで、昼は6,000円、夜は11,000円のコース料理(値段は2024年4月時点のもの)が基本となるようだ。

予約ありきのお店なので、店頭にメニュー看板が出ていたりしない。家に帰ってネットで調べて、知った。

ちなみに店の人に「席に空きはありますか?」と聞いたら、「本日はご予約でいっぱいです」とのことだった。結果的にそれで良かった。お茶をして帰るつもりで空席を聞いたのだけど、実際は座ったらコース料理を食べる展開になるところだった。

そう誤解してしまったのは、このDining33の入口に「Dining 33 Pâtisserie à la maison」というスイーツショップがあったからだ。「うわあ、なんて綺麗なんだ!」とびっくりするディスプレイ。これも三國シェフのプロデュース。

美しく並ぶケーキの中で一番目立つ、ピスタチオ色をした「フォレヴェール」でお値段1,000円(tax in)。

もちろんお高いんだが、大きさもそれなりにある。この場にいると金銭感覚がぐにゃぐにゃしてくる。

でも、子連れでケーキを買って家に持って帰る、というのはケーキ崩壊の未来しか見えてこないので、買うのはやめた。

Dining33のすぐ隣に、Members Lougeの入口がある。

入口には受付があって、受付嬢が門番のように待ち構えていた。

ランチメニューが何種類か掲示されていて、メンバーなら1,000円、ビジターなら1,650円と書いてあった。ビジターはずいぶん割高になるが、一方でメンバー価格は安い。

僕はてっきり、この場所は上層階にいる富裕層の人たちも使うのだと思っていた。でも実際は違って、オフィスフロアを利用しているビジネスパーソンが社員食堂がわりに使う場所という理解が正しいようだ。つまり、メンバーというのはこのビルのテナントの人たち。だったらこの値段も納得だ。

とはいえ、このビルを勤務地として働く場合、弁当持参かコンビニ飯にしないかぎりは最低でも1,000円以上の昼飯代がかかってしまう。贅沢するつもりがなくても贅沢してしまう、というのは生きていく上で大変だ。このビルに入居を考えている企業は、このビルの物価に見合っただけの給与水準を社員に提示してあげてほしい。

Menbers Loungeの入口の隙間から、ほんの僅かに中が見えた。中が見えたといっても、全体の1%も見えていないのだが、そこには社員食堂みたいな椅子とテーブルが並んでいた。あ、やっぱりざっくばらんな空間なんだな。

とはいえ、かなり広い空間が確保されているのだから、奥に行けば茶室があったり足湯があったり、スゲー設備があるのでは・・・とあれこれ考えてしまう。

ここで改めて、33階と34階のフロアマップを見る。

33階の構造はまあ、わかった。先程から話題にしているMenbers Loungeが全体の1/2近いスペースを専有している。

一方で34階は、マップ上で黒塗りになっている吹き抜けと、青く塗られたスカイルーム以外の場所が謎空間だ。グレーになっているところと、白いところ、それぞれ何があるのかは部外者には教えてもらえていない。こういうのを妄想するのが僕は好きだ。

改めて先ほどの33階写真(再掲)。

エスカレーターの奥を見ると、Members Loungeの一部が見えた。あのあたりはガラス張りになって開放感を演出しているらしい。そして窓際に向けてカウンターテーブルと椅子が設置されており、超絶眺望を眺めながら仕事ができるようになっている。えぐい場所だな、おい。

そして手前のエスカレーターは何のためにあるのか意味不明なのだが、登った先は黒塗りの壁があって奥が見えなかった。フロアマップ上では白く表示され、何も無いかのごとく振る舞っているエリアだ。気になる!

悶々としていたら、公式サイトがご丁寧にMembers Loungeの間取り図を公開していた。

https://www.hillshouse.jp/memberslounge

バー・ラウンジがあります、ライブラリがありますなどと、やっぱりすごい施設だった。すまん、「社員食堂」と形容したけど、レベル感が違ったわ。

僕の社会人人生で、勤務先が20階よりも下だったことはわずか1ヶ月しかない。残りの25年以上は20階以上、さらにその大半は30階以上で働いてきた。いわゆる高層ビルが勤務地だったわけだけど、こんなすごい設備はビルに備わっていなかった。こういうところに会社を移転すると、社員満足度はバーンと上がるだろうな。古いオフィスで利害関係をちまちま調整しながらリノベーションするより、とっとと新しいビルに移ったほうが早い。

いやあ、すごいものを見た。

どうやら、展望台としてのスカイロビー一般公開は近日終了だけど、Dining33で会食をするならば僕ら一般人もまた再訪は可能だ。地方に住む親が上京してくる日に、「これが東京だ!」と親を驚かせるために予約を取って訪れるのも良さそうだ。

(2024.04.08)

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