さらし奈乃里(01)

2000年02月04日
【店舗数:022】【そば食:036】
東京都板橋区前野町

精進揚げ、鳥わさ、もり、熱燗(菊正宗)

さらし奈乃里外観

くつろぎ度数今のところMAXで、ついつい顔がほころんでしまうそば屋「築地さらしなの里」。ここで修行を積んだお弟子さんが独立開店した店が、自宅の近くにあるという。これも何かの縁、お邪魔してみることにした。近場でさらしなの味と雰囲気が楽しめるのであれば、こんなにうれしいことはない。

実は今日(2/4)に訪問する数日前、夜に一度偵察したことがある。この時は、お客さんが夫婦一組しかおらず入店するのがちょっと憚られ、逃げ帰った経緯がある。僕は初めてのお店というのはちょっと苦手であり、こういう偵察行動を事前に行う事が時々ある。ん?弱虫と言うな。

実は、こういうそば屋が身近にあるという事を一週間ほど前、友人に語っていた。その友人は不埒な事に、このおかでんを差し置いてフライングでこのそば屋に行ってきやがった。そのときの彼の報告では

・そばはまあまあ。けっこういいと思う。
・お客がほとんどいなかった。やっていけてるのだろうか。
・天ぷらがおいしくなかった。

という3つの特徴を挙げていた。3つのうち二つがネガティブな内容であるが、そば屋のメイン:そばがまあイケるというのであれば、ますます行ってみなくてはなるまい。

このお店は住宅地のど真ん中にあった。最寄りの駅から徒歩15分以上かかってしまう距離にあり、回りは家、家、家。大通りに面しているワケでもなく、とても商業地と呼べる場所ではない。

そんなお店を訪れたのは12時40分くらい。平日昼ということであり、どれくらいのお客さんがいるかと思ったが、お客は6名連れのおばちゃん、中年夫婦1組、中年夫婦+おばちゃんの11名。あ、よかった。そこそこお客さんがいる。

店の内装は白を基調としていて、壁だけではなくて机も白かった。だから、妙に店内が明るい印象を受ける。そういえば、今まで訪れたお店は全て薄暗かったような気がする。そば屋は暗い方が良いのだろうか。

明るいからといって、落ち着かないかといえば決してそういうわけではない。席数は28くらいとまあまあの数ながら、こじんまりとまとまってしっとりと落ち着いた空間が形成されている。今回は初対面のお店という事でもあり、四方八方を「胡散臭いぞビーム」で眺め倒していてどうも落ち着かないが、数回通えばきっと自分自身がこの空間に馴染めそうな、そんな予感がする。

鳥わさ

お酒を頼んだら、突き出しで揚げそばが出てきた。これをぽりぽりやっていると、お酒よりもビール・・・という気になってしまうあたり、まだまだニセそば食い人種なのだろうか。ビールをぐいっと飲んで、揚げそばをぽりぽりやってしまったらそれだけで完結してしまいそうだ。やめておくのが良かろう。大体、こんな少量の揚げそばでは、物足りない。おーい、ビール追加で、揚げそばももっと持ってきて!って言いたくなってしまう。おっとっと、ここは居酒屋ではないんだった。あくまでも、そば屋。

このお店は、ご主人一人と奥さん一人の2名で切り盛りしているらしい。まだ二人とも若く、奥さんは「おねえさん」といって差し支えないくらいだ。このおねえさん、「もの凄く」と言って過言でないくらいにこにこしながら客あしらいをする。そば屋にありがちな永続勤務はや幾十年、というお局様とちがい、新鮮な印象を受けた。ああ、こういうそば屋もいいよなあ。

お酒は、二種類あるうち菊正宗樽酒を頼んでみた。まさか樽を鏡割りして、そこから柄杓で汲むのでは・・・とどきどきしておねえさんの様子を窺っていたが、店の内装に気を取られているうちにお銚子が到着してしまった。肝心の所を見逃してしまったが、鏡割りという冗談のような話はさすがになかったようだ。ちと残念。

このお酒、さすが樽酒だけあって木の香りがふわんと立ち上る。紙パックでお世話になっている同種のお酒とは違う。木の香りだけしか違いは無いはずなのだけど、こっちの方がはるかにおいしく感じる。「くつろげるお店で一献やってる」というシチュエーションがそう感じさせるのだろうか?

お酒のつまみだが、種類はそれほど多くない。玉子焼きは夕方の営業からでないと提供しないという事もあって、その数は7種類程度。居酒屋のノリでついついお酒飲み過ぎて、おつまみ頼み過ぎちゃいましたァ、なんてやってるとあっというまに全メニュー制覇なんて事になりそうで怖い。こじんまりとした営業をやっているお店だから、おつまみはこの程度で十分、という事なのだろう。とりあえず、精進揚げと鳥わさを注文してみた。

精進揚げ

鳥わさ、こんな味がするのかと初体験の料理にびっくり。ああ、いかに自分が経験値少ないか。

精進揚げ・・・あれれっ。衣がもってり。普通、お店で食べる天ぷらってのは衣がぱりぱりと鱗のようになっていて、食べるとしゃくしゃくするもんだけど・・・この精進揚げ、ぼそぼそしている。衣が外へ外へと突き出ようとしていないで、仲間同士で手をつないで仲良くやりましょうや、という感じ。こ、これは家庭で食べる「へたくそ天ぷら」じゃないか?激しくショックを受けてしまった。

そば屋は天ぷら屋ではない。油を操るのは本職ではないので、プロの天ぷら職人のような技術は持っていないというのは理解できる。しかし、一瞬でも「これは家庭の天ぷらの味では」とお客に思わせてしまっては大失態だ。事前にここの料理を試していた友人の言っていた「天ぷらがおいしくなかった」といっていたのは本当だった。

もり

お酒を飲み終わるとほぼ同時に、もりそばが出てきた。どうやらおねえさんが僕の食事を観察していて、ベストなタイミングを見計らってくれたらしい。こういう心遣いは非常にうれしいものだ。逆に、そばとお酒を一緒に持ってくる様なお店はぜひ見習って欲しいものだ。

いや、通ぶってこんな苦言を言うのでも何でもなくて、本当にそう思う。さすがにそばをつまみにお酒って飲めないですよ。

さて、そのお蕎麦だけど、築地さらしなの里とはちょっと感じがちがうような。つゆの味がこっちの方がだしが強い?という印象を受けた。まあ、おいしいといえばおいしいそばだけど、ごく普通のそばといってしまえばそれまでな感じ。特に感動は覚えなかったな。

そばは悪くない。天ぷら、うーん、ちょっと頂けない。店の雰囲気、良い。立地条件、僕にとっては良い。客あしらい、とても良い。さて、このお店とはどうつきあっていけば良いのだろう。とりあえず天ぷら問題については、天ぷらを避けて注文すれば何とかなりそうだ。

えーい、気持ちよくお酒飲ませてもらえたし、のんびりとした時間を過ごすために、あと数回お邪魔してみることにしよう。今度は読みかけの本でも持って。そのときに判断したっていいじゃない。

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