かんだ二八屋

2000年03月13日
【店舗数:038】【そば食:070】
東京都千代田区神保町

かき揚げそば

このころの僕は、なぜかナイスファイトな毎日を送っており、毎日片道20キロの道路を自転車通勤していたのであった。都心を自転車で爆走していると、目に付くのがそば屋の存在。広島出身のおかでんにとっては、あっちこっちにそば屋があるというのは驚きだ。東京に出てきて驚いたのが、寿司屋とそば屋の多さ、だった。広島だと、これらの存在の代わりにお好み焼き屋が街角に配備されている。

そんな驚きを味わいながら通勤していたとき、特に目を引いたのが神田神保町にあった「かんだ二八屋」だった。何しろ、入り口に「高級そば店と同じ味を」という看板がでているのだ。まず、若輩者おかでんにとって、「そばに高級と低級(?)があるのか!」という新事実発見がオドロキであったし、「立ち食いそば屋=味は割り切ってひたすら麺をすすり上げるべし」という概念をぐらぐらと揺すられたこともオドロキだった。

・・・というより、どっちかといえば「うそをつけ、そんなにウマかったら高級そば店なんてとっくに廃業だ」と、信じていなかったというのが事実。ほら、よくあるじゃないですか、「○○で二番目に安くて旨い店」とか、「○○で一番旨い店」って名乗っている店。あれと同じ類なのかな、と。

そうなってくると、「高級そば店と同じ味を」の文字列の中の、「を」が気になってくる。「同じ味を提供します」という意味ではなく、「同じ味を目指しています」、すなわち「同じ味ではないんだけど、できるだけ近づけようとガンバってますが、やっぱりまだまだイマイチですわぁ」という意味なのではないか?と。

しかし、事態はそうは簡単ではなかった。杉浦日向子著「そば屋で憩う」にこの店が紹介されていたからだ。なぬ。では、本当に「高級そば店と同じ味」だったのか?これはいかん、いつも素通りしていたけど、今度こそ行って味を確かめてみなければ。ということで、それ突撃だ。

この日はそば屋巡りが二軒目だった。一軒目は、「小諸そば」だったわけで、キャンと言わされた直後だったために「もうどうでもいいや、やっぱり立ち食い蕎麦はしょせんこの程度」という気分。結構投げやりな感じだったのは事実だ。

そんなたるんだ気分の中、「うぃーっす」と入ってみた店内は自動券売機が無かった。ここで急に我に返った。

初めて入る店での対処の仕方については、以前紹介した「とんぼ」の回に詳しいので確認してほしい。慌てて店内をぐるりと見渡し、メニューを確認。よかった、何とか2秒程度でこのお店の流儀を理解。危ない危ない、 動揺してしまったではないか。

最初は、このお店は「高級そば店と同じ味」と言う以上「もり」で直球勝負してやろう、と考えていた。しかし、先ほどお邪魔した某店で「立ち食いそば屋は暖かいそばじゃないと食べられたモンじゃない」という認識を強く持ったため、あえて暖かいかきあげ蕎麦をセレクトした。

一息ついて、ふとカウンタを見るとそこには山積みになった天ぷら類が。「ああ、ここでも揚げたては食べさせてくれないのか」とあらためてがっかり。高級そば店に追いつき、追い越せの精神はどこへ行った?「いやお客さん、そりゃウチだって立ち食いそば屋ですしネ、そこら辺は大目に見てくだせぇ」なんて言われそうだけど、やっぱりちょっと寂しい。

あっ、ちょっと待った、ここでもゆで置きされた麺を使ってるぞ!?おい、高級そば店と同じ味の店!何をやってるんだ!おい、それは僕に出される丼じゃないだないだろうな。あ、待て待て待て、違うって言ってくれよ、僕にはゆでたてを出すんじゃないのか、おい、高級店!あああーーやーめーろーよー。

ちゃっちゃっ。(麺を水切りする音)
しゃっ。(丼に麺を入れる音)
じゃー。(丼に暖かいつゆをかける音)
・・・

「はいかき揚げそばお待たせ」

ああー。やっぱりー。

激しく裏切られた感じ。おい、一体このどこが「高級そば店と同じ味」の蕎麦なんだ。責任者出てこい。揚げて時間の経つ天ぷら、ゆで置きの麺。おいしい蕎麦を出そうという努力すらみえてこないよー。
まあ、当然なんだよな。「立ち食い」という店舗形態を選択してしまった以上、「味よりスピード」が重視されるわけで。いちいち悠長に麺をゆでて、天ぷらを揚げて・・・なんてやっていたら、お客さんは怒って席を立つかもしれない。僕がぜいたくすぎるのかねえ・・・。おかでんみたいに、「立ち食いは気楽だから好き。でも味はしっかりしてくれないとイヤなので、いくら待たされてもいいから旨いの、食わせてくれよな」という輩なんてなかなかいないのだろう。

ま、結局このお店は見かけ倒しだった、ということで諦めて、そばをすすってみた。

甘めの味つけのつゆ。みりんが強いのかちょっとくどい味だけど、ふんわりと自分を包み込んでくれる感じで悪くない印象。関東のつゆは鰹のダシを強く利かせすぎて、ガツンと鰹の味がしてはいおしまい、というものが多いが、こういう柔らかい味わい、結構好きだったりする。ううむ。ずるずる。

そばは。・・・あれれ、細麺でちょっと頼りない感じだけど、これは・・・旨いぞ!?しまった、もりそばにしておけば良かった!これは、暖かいつゆで食べるのはもったいないぞ、つゆにどっぷり浸されているために、正確な味がつかみきれないではないか。

意外だった。何でゆで置きの麺なのに、こんなにしっかりとした味なんだ。暖かい麺につかっているからか、あまり麺が延びているという印象もない。いや、これは侮れないぞ。すまん、前言撤回!「高級そば店と同じ味」かどうかは怪しいけど、立ち食いそば屋としてはイケる味ではないか。うんうん、旨い旨い。

あらためて具を見てみると、かき揚げそばにもかかわらず、ほうれん草とかまぼこが具として乗せられているのがGood。こういうちょっとした具があるか無いかで、さらに印象が変わってくるというものだ。

食べ終わった後、もう一回あらためてもりそばを食べようかとも思ったのだが、さすがに思いとどまった。これ以上そばを食べるのはちょっと、胃袋が・・・。うっぷ。

また今度、このお店にはお邪魔してみたい。侮りがたし、かんだ二八屋。今度は冷たいそばを頂いて、本当にゆで置きの麺でも旨いのかどうかを確認してみることにしよう。

・・・それにしてもこのお店。狭い厨房に店員が3名もいたけど、人件費かかりすぎなんじゃなかろうかしらん。なんて余計な事が気になった。

あと、壁に「そば屋で憩う」で自分のお店が紹介されているページを切り抜いて貼っているというのが、しみじみとイヤだった。まあ、蕎麦がうまかったのでそんなことはどうでもいいんだけど。

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