2000年03月29日
【店舗数:045】【そば食:079】
東京都港区新橋
冷やしかき揚げそば
巴町砂場の「趣味のとろそば」で腹を満たしたつもりだったが、どうも満足感が足りない。財布の中身だけは「いや、もうおなかいっぱいです」と青色吐息なのだが、食欲中枢が満たされていない気がした。かといって、新たにもう一軒そば屋に入るというのも気が引ける。
・・・そうだ、折衷案ということで、立ち食い蕎麦屋に行けばいい。
まるで、「もうご飯食べたでしょ?」ってヘルパーさんにたしなめられるお年寄りみたいだ。ここからさらにアクセルを踏みこむ、というのが蕎麦喰い人種の醍醐味(だいごみ)。
と、自己正当化してみる。やっぱり相当無理があったか?
虎ノ門から新橋まで歩いて、「天久利」という店を目指す。ここは、もともと天ぷら屋だった店が立ち食いそば屋(といっても、カウンター席はある)に変身したらしい。ならば、天ぷらにはちょっと期待できそうな予感。早速、「冷やしかき揚げそば」を注文してみる。
時間を空けず、注文の品が出てきた。あら、やっぱり揚げたてじゃなかったのか。そば屋のガイドを読むと、立ち食いそば屋であっても「できるだけ揚げたての天ぷらを提供するようにつとめている」なんて記述がある。この天久利についても、そういう書かれ方をされていたのでちょっと期待していたのだが。まあ、昼過ぎという時間帯を考えたら、揚げおきの天ぷらが出てきてもしょうがないか。
(筆者注)
この当時のメモ書きには、このような記述が残されている。
天ぷら屋出身ということで、揚げ立てかき揚げを期待。
出てきたそばはゆでおき、かき揚げは揚げおきだった。がっかり。
うーん、やっぱり立ち食いそば系のお店で揚げ立て・ゆでたてってのは難しいのかなあ。相当がっかり。
今この文章を執筆している時点では、「それも、立ち食いの味わいだ」と開き直って、むしろ楽しんでいる。しかし、この当時は立ち食い系のお店と一般的なそば屋のお店とを同列に語ろうとしていた。だから、ゆでたて・揚げたてでないと「駄目な蕎麦」と解釈していたようだ。
しかし、かき揚げは揚げてからそれほど時間が経っていないようで、自然な暖かさが残っていた。うん、これはうれしい。乾燥してスナック菓子のようになっているかき揚げ、水分を吸ってしまいべっちゃりしてしまったかき揚げ・・・いろいろ世の中にはあるが、ここのかき揚げはまだサクサク感が残っていそうだ。しかし、「それほど時間が経っていない=そこそこ時間は経っている」かき揚げ、ということで相当油っぽくなっているのは事実。それ単体で食べると、結構胃にもたれそうだ。暖かいつゆにかき揚げを浮かべておけば、その油っぽさもつゆのうま味として幸せな融合を果たす。しかし、今回注文した品はざるそば系のメニューであったため、逃げ道無し。さあ、この油と格闘せよ状態。
かき揚げの話題をする際に、この形状を語っておかないといけないだろう。とにかく、ばかでかい。貝柱が放射能を浴びて巨大化しました、みたいな感じだ。円柱形で高さが5センチくらいはある。これを初めて目の当たりにしたときは、さすがにびびった。きっと、茶筒のようなセルクルを使って天ぷらを揚げたのだろう。これだけの分厚さがあるということで、揚げる際には箸でざくざくと生地を突き刺し、空気を混ぜるという動作を行ったのだろう。適度に密度が薄いかき揚げになっていて、サクサク仕上がっているのが楽しい。中身はタマネギが中心メニューだった。これが、駅そばなどでよく見かける「小麦粉ばっかりでまるでオデンの練り物みたいな、せんべい型かき揚げ」と同じ成分で作られていたら、きっと恐ろしい「小麦の円柱」が仕上がるに違いない。
このかき揚げをはむはむと食べ、その合間に蕎麦をすするような感じで食事は進行。食べ終わった時点で、口の周りは巨大かき揚げのせいでべとべとし、油もの特有の甘みが口の中に充満。なんだか、蕎麦を食べにきたのだか、かき揚げを食べにきたのだか分からなくなってしまった。
でも、麺はそこそこおいしいと思ったし、結構このお店は好きになりそうだ。今度、また暇をみつけてお邪魔してみることにしよう。
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