そば さくら(01)

2000年12月31日
【店舗数:077】【そば食:154】
岡山県倉敷市本町

玉子焼、そばがき、ざるそば、冷酒

さくら外観

年末はよく岡山県の倉敷を訪れるのだが、20世紀最後の年末であるこの年も倉敷の地に足を運んでいた。倉敷といえば美観地区と呼ばれる、蔵作りの建物が倉敷川沿いに立ち並ぶ場所が有名だ。しかし、実際はその建造物ほぼ全てが飲食店、お土産屋などの観光客向け店舗になっている。そのため、風情があるかというと、実際それほどのものではない。

倉敷で風情を楽しむのであれば、美観地区からちょっとだけ外れた路地が良い。ぐっと、「きらびやかさ」がなくなり、渋い雰囲気になる。

そんな渋い道の傍らに、「手打ちそばと地酒 さくら」というお店がある。両親がこのお店に行ったことがあり、蕎麦好きを宣言したおかでんに対し「さくらというお店があるから行ってきたらどう?」と水を向けてきた。場所は鶴形山のふもと、森田酒造の近くだという。はて、あんなところに蕎麦屋ってあったっけ。

渋い路地にお店があると、よく近くを通る人であっても気が付かないものだ。両親から言われない限り、全く気がつかなかった。

どんなお店か、と母親に問うたところ、「お酒が何種類も置いてあって、酒肴類もある。お蕎麦だけ食べて帰るには物足りないけど、お酒を飲みたい人には向いているかもしれない。お蕎麦は悪くないけど、お店がちょっと気取りすぎ」とコメントを残してくれた。

むむ、素晴らしげなお店ではないか。母親が言う「気取りすぎ」の蕎麦屋、というのは逆に蕎麦酒好きのおかでんにとっては非常に好都合な、まさにジャストフィットなお店であるということを暗に示している事になる。母親にしろ、父親にしろ、「蕎麦屋でござい、と偉そうにしているお店は駄目だ」というスタンスの人なので、おかでんが好むタイプのお店に対しては毛嫌いする傾向がある。

蕎麦喰い人種行動観察をはじめて、まる1年。当初、蕎麦屋50軒そば食100食を目標にしてスタートしたのだが、予定を大幅に上回る形でこの1年を締めくくろうとしていた。我ながら、「蕎麦経験値」がUPしたことを実感できる、充実した蕎麦食べ歩きの1年だった。

今日は大晦日。通常、年越し蕎麦は1杯食べればそれで十分だ。しかし、今年は例年以上にたくさんのお蕎麦を食べてきたということを考慮しなくてはならない。・・・年越し蕎麦、いつもの2倍、3倍食べないと、この2000年という年を終えることができないんじゃないか・・・?

よし、わかった。ならば、今日は倉敷界隈の蕎麦屋を行脚してみることにしよう。

倉敷の地は蕎麦の産地でもなんでもないし、とりたてて有名なお店があるわけでもない。行き当たりばったりで良いので、とりあえず食べ歩いてみることにした。

最初の一軒目は、話題に出た「さくら」に行ってみることにした。一人で行くよりもせっかくだから、兄貴氏に登場願って、兄弟連れだってさくらへ。

「さくら」はなまこ壁の蔵を改造した建物だ。道路に面した間口が広くないので、車で通過した場合は見過ごしてしまう。蕎麦屋なのに造り酒屋のごとく杉玉がぶら下がっているのも、紛らわしい。まあ、そうは言っても入口に「手打ちそばと地酒 さくら」という看板がでているので、ここが蕎麦屋であるということが判るのだが。

入口は大きな引き戸になっていて、中が伺い知れない。営業をやっているのかどうか、不安になる。以前このお店に昼下がりに訪れて、席に座ってさて注文を、と思ったところで店員さんに「すいません、営業やってないんですけど」と言われて恥ずかしい思いをしたことがある。ええと、入口脇に「営業中」の看板を発見したぞ。よし、今日はやっているらしい。中に入る。

冷酒

入口の間口のままで、客席は幅があまりなく奥が長いつくりだった。黒光りするテーブルと椅子が並んでいる。シックで、オシャレな作りだ。客席数はあまり多くないのだが、6人がけのテーブルが並んでいたのはちょっと珍しいと思った。混んでいるときは相席前提になるのだろうか。

われわれは客席スペースの一番奥にあるカウンター席に通された。カウンター越しに、厨房をのぞくことができる一風変わった席だ。

蔵づくりの蕎麦屋といえば、東京・江古田の「甲子」を思い出す。あのお店は、高い天井が醸し出す開放感が気持ちよかったが、このお店の場合、そういう雰囲気は特にない。外観が蔵なだけで、中は特に蔵であることを感じさせない。

隣に兄貴がいるので、昼酒を飲るのはちょっとした恥ずかしさを覚えるのだが、やはりお約束でしょう。今年一年お疲れさまでしたの意味もこめて(都合の良い言い訳)、お酒を注文する。このお店は、すぐ近くにある造り酒屋、「森田酒造」のお酒をたくさん取りそろえていた。

こちらのお酒のオーダーが厨房に通ったら、厨房に居たご主人が「あ、お酒は荒ばしりをお勧めして!」とオーダーをとった店員に指示を出した。その店員がこちらに戻ってきて、「すいません、只今でしたらこちらの、『荒ばしり』が当店お勧めなんですけど」とリコメンド。はい、厨房のやりとりが丸聞こえでしたので、よく存じ上げております。「いえ、荒ばしりは結構ですので、お願いした通りのお酒でお願いします」と返したら、店員さん、また厨房に戻ってご主人に同じことを報告する。伝言ゲームを見ているようで、なかなか面白かった。ご主人、こちらをちらりと見て、ちょっとだけ無念そうな顔をした。すまん、ご主人。

森田酒造「萬年雪 荒走り (あらばしり) 」は、いわゆるお酒の「一番搾り」で、量があまりとれない希少品だ。特徴は辛口で、アルコール度数が高い。その名の通り、パンチのきいた荒々しさと、新酒の瑞々しさが楽しめるお酒だ。希少品故に、森田酒造では例年12月20日以降に発売となって、売り切れ次第発売終了となる。そんなわけで、さくらのご主人は「今だけしかないお酒ですよ」とお勧めしたかったのだろう。

しかし、何でおかでんがこの「荒ばしり」についてこれだけ詳しいかというと、毎年年末のおかでん家における食卓に常備されているお酒だからなんですな。おせちを食べながら荒走り。年越しそばを食べながら荒走り。これが定番。何もお昼どきに、お店で飲まなくても良いというわけなのであった。

玉子焼き

酒肴として、玉子焼き600円なりをオーダーしてみた。有精卵を使っているということで、なかなか濃厚な味わいが良い。

・・・と、なんとなく思った。有精卵だと味が濃くなるっていう認識で良かったんだったっけ?申し訳ない、味音痴なもので適当な事を書いてしまった。

できたての玉子焼きなので、「あぢぢぢぢ」と言いながら、ハフハフして食べてしまったので「あー、おいしかった」の一言で終わってしまった。ああ、もったいない。

兄貴と一緒に食べているので、当然一品あたりの食べる量は半分になるので、「一口でぱくり」なんて事をやってはいけない。
心配になったので、今文章を書いている最中に有精卵の味について調べてみた。

Q:有精卵、無精卵の味の違いは?
A:有精卵も無精卵も味や栄養に違いはありません。味や栄養価は飼料が影響します。

イセ食品株式会社のサイト「教えてたまごQ&A」より引用

だ、そうで。あらー。やっぱり味音痴であることが判明。1年蕎麦屋がよいしても駄目じゃん、俺。

そばがき

そばがき900円。

2杯目のお酒を頂くことにしたが、小心者のおかでんはついつい「す、すいません、じゃあお勧めの荒ばしりをください」とオーダーしてしまった。嗚呼。

「家に帰ったら飲めるのに何やってんだ」

と店員とのやりとりを聞いていた兄貴に鋭く指摘されてしまったが、

「何を言うか。お店で飲むお酒と家で飲むお酒じゃ、全然違うんだよ味が」

と口からでまかせの言い訳で華麗にスルー。

ざるそば

最後、ざるそばを注文した。このお店の場合、盛りが3段階に分かれていて面白かった。

1枚:700円、1枚半:1,000円、2枚:1,200円

こうやって並べられると、「1枚」がものすごく少なく感じられてくる。むむ。かといって、2枚を頼むとちょっとお値段がお高くなるので、どうしたものかと。

結局、間をとって1.5枚をオーダー。こういうところも小心者というか、チキンっぷりが露骨に滲み出ておりとてもよろしい。

で、登場しましたお蕎麦。あれ、兄貴が頼んだ量と一緒の気がするが・・・

「まず1人前です。後で残りをおもちします」と店員さん。ほほー、麺が延びないようにとの配慮か。手間かけるなあ。

残りの0.5枚分

1枚目を食べ終わったら、まもなく残りの0.5枚分がやってきた。わんこそばを食べている心境だ。

つゆは、お品書きに「砂糖を使っていない辛口のつゆもございます」と書かれていたが、ノーマルなものを頂いた。二種類つゆを用意しているのが興味深い。つゆのおかわりが250円でできるので(つゆおかわり、というのがお品書きに書かれているのは初めて見た)、味比べをするという楽しみ方もあるだろう。

倉敷を訪れて、昼酒が飲みたい!というときは穴場として使えるお店だと思う。ビールが飲みたければ、近くに倉敷地ビールのブルワリーがあるのでそちらで。森田酒造の清酒が飲みたければ、この「さくら」で、という使い分けが良いのではないかと。

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