そば七

この記事は約7分で読めます。

2001年02月11日
【店舗数:087】【そば食:166】
長野県小諸市本町

ざるそば、やきみそ、やっこ、浅間嶽生酒

そば七

「草笛本店」で本日一軒目の蕎麦を食べたあと、われわれは次の店に進軍した。
この企画を立てる際に小諸の蕎麦屋を調べていたら、何やら「土日しか営業していない蕎麦屋」があるらしい、という情報が飛び込んできた。土日休み、の蕎麦屋は決して珍しくはないが、土日のみの営業とは珍しい。

・・・観光客目当てか?

観光客目当ての蕎麦屋は正直しんどいものが多いと思うが、この店も果たしてそうなのか。しかし、調べがすすむうちに、ここのご主人の本業はあくまでもプラスチック工場の経営であるということが判明した。すっげぇ、平日は別の仕事をしていて、土日は蕎麦屋か。体が休まる時がないじゃないか。

そんな超人的蕎麦屋に激しく興味を抱いたので、今回の訪問店舗に加えておいた。恐らく、蕎麦好きが高じてこのようなお店を営むに至ったはずだ。マズい蕎麦を出すとは思えない。

小諸の町を車でドライブする。恐らくこの辺り・・・というところで、辺りに気を配ったのだがお店を発見できず。「あれ?見つからなかったぞ?」と折り返したところで、ようやく発見した。蕎麦屋は、地味な外見が多いのでえてしてこのような事態になる。

しかし、いざお店を発見してしまうと、その作りにはちょっと驚かされた。なんだか、年期の入った銭湯みたいだ。入り口上につきだしたひさし部分が、威厳を保っている。後で聞いたのだが、江戸末期の建物で、もともとは料亭の建物だったらしい。その後、銀行が入って、今は蕎麦屋。中のテナントは変わっても、外見はキープされているというわけだ。こういう味のある建物は、蕎麦屋にふさわしい。

入り口に、今では珍しい円柱形の郵便ポストが設置されているのも味わい深い。

しばらく、店に入らないで遠巻きに店を眺める。

そば七店内

店内も味があった。

たたきと、お座敷両方に座席が用意されていて、けっこうな席数がある。とても、土日限定営業のお店とは思えない。

「もっと、小さなお店かと思ったんだがな。自宅の居間を土日は客席として解放しました、みたいな感じの」
「この建物を土日だけしか使っていないって、もったいないよなぁ」
「空いている平日はわしに貸してくれんかのぅ」

思わず、ひそひそ声でしゃべってしまう。

居酒屋風短冊メニュー

ええと、お品書きは・・・ああ、あった。壁に短冊形の紙が張り出されているぞ。まるで、赤ちょうちんみたいな感じだ。

右端、お品書きの冒頭に太字で「うんまいそば」と自信満々に書いてあった。おおぅ、実に気合いが入っていてヨロシイ。この文字を見ただけで、蕎麦に対する期待が高まるぜ。

「おいしい蕎麦」「美味なる蕎麦」「絶品の蕎麦」なんて表現をされたら、単に店の傲慢っぷりが鼻につくだけだ。「美味いかまずいかはこっちで判断するから、自ら美味いって名乗るな」と思う。

しかし、「うんまいそば」と書かれたら、「そうか、うんまいのか。うむ」と妙に納得し、期待てしまう。この違いは何なのだろう。

ラインナップは至ってシンプルだ。ざる(800円)、せいろ(1,200円)、かけそば(800円)、みぞれそば(1,000円)の4種類が、そばの全てだ。しかし、奇妙な記述がそのラインナップの途中に挿入されていた。

「つゆはお好みで あたたかい、特つゆ つめたい、並つゆ 大根のしぼり汁にみそ、おしぼり」

ほほー。つゆを3種類から選べるとは面白い。じゃあ、オニーサンは3種類のミックスで・・・あ、冗談です。

「おしぼり」には激しく興味を抱いたのだが、ふと「そば湯を飲むときに大根の絞り汁じゃ、物足りないのでは?」と気になって、注文に二の足を踏んでしまった。結局、オーソドックスに普通の「並つゆ」をセレクト。王道すぎる選択となってしまった。

なぜって、このお店の外見・内装を見るにつけ、「こりゃ蕎麦がまずいワケがないぞ」という事に気づいたからだ。明らかにダメっぽそうなお店だったら、あれこれお品選びでチャレンジをしても良いが、美味そうなお店だったらまずはきっちり、食べてみたい。だから、並つゆ、だ。

もう一つ、お品書きで気になるところがあった。「ざる800円」「せいろ1,200円」だ。400円の違いは一体なんだろう?「ざるそば」といえば、海苔がかかっていて「もりそば」「せいろそば」から100円高、というのが蕎麦屋の通例だ。しかし、このお店の場合、ざるの方が安い。しかも、400円も安い。何が違うのだろう。とりあえず、同行者全員でオーダーを散らしてみて、様子をうかがってみることにした。

せいろそば

なるほどー。

出てきた蕎麦をみて、一同納得なのだ。奥の方が、ざるそば。手前が400円高のせいろそば。

見たまんま、ですね。名前の通りだ。ざるに盛られているから、ざるそば。せいろに盛られているから、せいろそば。

蕎麦屋における、「蕎麦を盛ってお客に供するための、朱塗りのせいろ」ではない。本当に蒸し器として使うぞ、といわんばかりのせいろだ。そこに、蕎麦が6山、盛りつけられている。ざるよりせいろの方が床面積が広いので、盛りも良くなる。だから、400円高。要するに、ざるそばの「大盛り」に相当するわけですな。

しかし、写真を見て分かるとおり、「ノーマル」であるはずのざるそばでさえ、みっちりと盛られている。これだけでも、食が細い人はおなかいっぱいになるだろう。そのさらに上、というこのせいろそば。少量しか蕎麦がでてこない○○屋や×××の6倍以上はかるくあるボリュームだ。草笛に続いて、本日二軒目もボリューム満点蕎麦だ。

面白いのは、蕎麦に小鉢がついていることだ。東信地区の蕎麦屋は、お茶うけとして野沢菜を出してくれるお店が多いという事は「信州蕎麦紀行2」の時点で気付いていたのだが、こうして蕎麦と一緒に小鉢が出てくるのはちょっと珍しい。

しかも・・・小鉢の内容が変わっている。野沢菜と、じゃがいも。なぜ、ここにじゃがいもが・・・?実は名産地なのかもしれない。詳細は不明。

「浅間嶽生酒」をお猪口に注ぎつつ、おつまみも頂く。そばみそ400円、やっこ200円。安いので、ついつい注文してしまった。どちらも、おいしい。

お蕎麦だが、こちらの期待通りに非常においしいものだった。この雰囲気で、この蕎麦で、この酒で、このつまみで、この友。いやあ幸せなひとときだ。

「今日二杯目のお酒だもんな、もう酔っぱらったな、おかでん?」

みぞれそば

こちらは、みぞれそば。

大ぶりのどんぶりに、みっちりと蕎麦と具が詰まっているのがすてき。

こちらもぜひ食べてみたいところだが、さすがに胃袋に余裕がない。横で食べているのをうらやましそうに見守るしかなかった。

お会計の際、店の棚に置いてあった一輪挿しに目が止まった同行者のばばろあ。店を出たところで、「うーん、やっぱり気になる。あれ、どうしても欲しい」と言い出した。そのままわれわれを置き去りにして、店にリターン。何やらご主人と交渉し始めた。

ご主人に「一輪挿しを売ってくれ」と交渉を開始しはじめたようだ。ようやるよ、そんなに「いいもの」なのか?

結局、断られてしまったばばろあだが、近くに窯元があるという話を聞きだしたので、「車を窯元に向けろぉぉ」とジタバタ暴れてわれわれの蕎麦ツアー一時中断。

1時間近く、小諸の山あいの地をウロウロしたが、結局窯元を発見することはできなかった。「やっぱ見つからないよ、諦めな」となだめたところ、

「分かった。窯元探しは諦める。じゃ、もう一度そば七に戻ってくれ」
「えっ?」

またもやそば七に逆戻りだ。ばばろあは、再度窯元の情報を聞き出そうとしているらしい。分からなかった場合は、後日また訪れるから、お手数だがそのときまでに住所を調べて頂くことはできないか、というお願いをする覚悟のようだ。何が彼をそこまでとりこにしてしまうのか。

10分後、店から出てきた彼の手には、何やら白い包みがあった。

「売って貰った」
「えっ?」

結局、面倒くさくなったお店側が、根負けしたらしい。ご主人、その節はウチの連れが大変ご迷惑をおかけしました。あらためてお詫び申し上げます。

あれはいいものだ

でも、本人は大喜び。この日の夜、宿に着くやいなや「戦利品」・・・というか、お情けを受けて売って貰った「お恵み品」の包みを開封。一人でずーとニヤニヤしていた。よっぽどうれしかったらしい。

ご主人、アナタの英断は決して無駄じゃなかったですよ!こうして、ものすごく喜んでいる人がいます。

おでこをテカらせながら、一輪挿しを愛でる男。モノの価値を見いだせないおかでんとあともう一人は、大騒ぎの末手に入れた一輪挿しを前に

「はぁ、これがそんなに欲しくなるようなモノかね?」

とあぜんとしてそのヨロコビっぷりを見守るしか無かった。

タイトルとURLをコピーしました