そば蔵 丁子庵

2001年02月11日
【店舗数:088】【そば食:167】
長野県小諸市本町

信州そば、藤村ゆかりのにごり酒

そば七で見かけた一輪挿しの窯元を探し求めて、丘陵地をうろうろ走り回った。さすがに蕎麦屋のハシゴばかりやっていると、胃袋より先に精神的におなかいっぱいになってしまうので、格好の気分転換だ。

そのあと、マンズワイナリーを見学し、ワインを試飲し(あっ、またここでもお酒が!)、一息ついたところで次の蕎麦屋を目指した。

菖蒲庵。小諸市街から南にはずれた千曲川沿いにあるお店だ。のどかな景色を眺めながら、お店に向かった。カーナビではジャストな位置を表示できなかったので、またもや三人がかりで周りの景色を睨み付ける。・・・おや、どうやらあれが菖蒲庵らしい。

本日休業
肩のリハビリのため・・・

車一台も止まっていない駐車場に首をひねりながら、歩いて店に向かってみたら「本日休業」の看板が。その横には、「肩のリハビリ治療のため休業」という説明書きがあった。ありゃー。わざわざここまでやってきたのに。残念。

でも、肩の調子が悪けりゃ、いい蕎麦なんて打てるわけがない。仕方がない、タイミングが悪かったということで撤収。

丁子庵

代替案として、丁子庵というお店に行ってみることにした。小諸市本町にそのお店はあり、先ほどのそば七から歩いていける距離にある。われわれがそば七に向かった際、このお店の横を通り抜けたりもした。

でも、スルー。

なぜか。創業200年近い歴史を誇る蕎麦屋なのだが、「ながの人気味本」によると「団体向けに60席の新館と大型バス駐車場がある」という記載があったからだ。団体観光客を客として迎えるような蕎麦屋、とてもじゃないがおいしいとは思えない。同行者の中からも、反対意見が続出したので訪問対象から外していたのだ。しかし、菖蒲庵に振られてしまった以上、ここはもう、「見聞を広める」くらいのつもりでこのお店に行ってみるしかあるまい。おいしくなければ、「ああやっぱりね」と思えばいいし、おいしかったら「もうけモン」だし。

店の外観は、歴史を感じさせる建物だった。総けやき作りで、100年以上の歴史がある建物らしい。しかし、駐車場がある裏手に回ってみると・・・ああ、でかい駐車場があるなあ。表の店構えとはうってかわって、そこは観光バスの停車位置が記された広大な駐車場が控えていた。なんだか、このギャップがすごい。

丁字庵店内

店内の様子。

食事時からおおきく外れた時間にもかかわらず、お客さんがいっぱいいた。繁盛している。

「団体さん?」
「いや、違うと思う」

中休みをとらない蕎麦屋なので、こういう蕎麦食べ歩き旅行の際には非常に助かる。ちなみに営業時間は11時から18時半だそうで。

藤村ゆかりのにごり酒

本日3軒目のお蕎麦屋さん、ということで、ちょっと蕎麦に対しての集中力が途切れてきたような気がする。ちょっと毛色を変えた注文をしてみよう。

お品書きを眺めていたら、このお店でも「浅間嶽」という清酒を取り扱っていた。そば七と同じだ。どうやら、小諸で有名なお酒らしい。初めて聞いたが。

二軒の蕎麦屋で立て続けに浅間嶽を頂く、というのも味気ないので、ここは「藤村ゆかりのにごり酒」というものを注文してみることにした。フジムラって一体誰だよ。クラスメイトか?・・・え?トウソン?あああ、なるほど、島崎藤村の事か。うわ、お店の人に注文するとき、「フジムラゆかりのにごり酒ください」って言っちゃったよ。恥ずかしいなぁ、もう。

何でゆかりがあるのかさっぱりわからなかったが、調べてみると、彼の名作「千曲川旅情のうた」で

千曲川 いざよう波の 岸ちかき 宿にのぼりつ にごり酒 にごれる飲みて 草枕 しばしなぐさむ

という一節があるかららしい。

すんません、学がないのでこの一節の意味がよくわからんのですが、意訳すると「濁り酒飲んで酔っぱらって意識が混濁しちゃって、千曲川沿いの草むらでノビてました」って事でしょうか。

※全然違います。草枕=旅を意味する枕詞。

鴨の鉄板焼き

同行者の一人は、「もう、ちょっと蕎麦はいいわ」と言って、鴨の鉄板焼きを注文していた。お酒のつまみ、としてではなく、メインディッシュとしてだ。このお店に来て蕎麦を食べずに鴨だけ、というのは相当珍しい客だろう。

古風な蕎麦屋のインテリアに似つかわしくない、「じぅー」という鉄板の音があたりに響く。周りのお客さんも、「何事か」とこっちをちらっと振り向く。

信州そば

信州そば、800円。おっと、どんぶりで出てきたぞ。相変わらずどのお店に行っても蕎麦の量が多いねえ。しっかり、蕎麦が盛りつけられている。恐らく、一般的な蕎麦屋で見かけるようなざるじゃ、盛りつけきれない量だからドンブリにしているのだろう。

そういえば、昨日から蕎麦屋巡りをやっていて、お品書きに「大盛りは100円増しです」みたいな表記ってどのお店でも見かけなかったような気がする。そんな事をしなくても盛りが良い、ということか。

味には期待しないで、ずるずると蕎麦をすすってみた。・・・「手繰る」って感じじゃないですね、ドンブリの蕎麦なので。・・・うん?あれ?おいしい。これ、おいしいじゃないですか。蕎麦の香り、味ともにしっかり、しっかり。甘みのある麺は、けっこう幸せな噛み心地。

「あれっ、美味いじゃないか。気のせいか?」
「いや、気のせいじゃないと思う。こりゃおいしいぞ」

にわかに信じられなかったので、思わず仲間同士で確認しあったくらいだ。へぇーっ、てっきり「有名店だけど、知名度が上がりすぎて拡大路線に走っちゃって、味はダメダメ」という結論になるかと思っていたのだが。団体客こなしても、仕事はおろそかにしていないのだな。いや、参りました。

帰り、団体客用の新館の横を通り過ぎて、観光バス用の駐車スペースも通り過ぎて車へ。

「このギャップが、いまだに理解できん」

とつぶやきつつ。

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