そば処 浅田(02)

2001年03月04日
【店舗数:—】【そば食:173】
長野県松本市深志

ざるそば、きのこそば、女鳥羽の泉

浅田

安曇野翁で大絶景と美味なる蕎麦を満喫したわれわれは、ますますおなかが空いてしまったのであった。人間、ぜいたくな生き物だ。欲望に際限がない。胃袋には安曇野翁の蕎麦が収まっているにもかかわらず、脳は「さらなる蕎麦」を欲求していた。

「もう一軒、お薦めのお蕎麦屋さんに行ってもいいか?」

メンバーに許可を求める。浅田は、安心してお薦めできるお店だ。僕以外は蕎麦を食べ歩きたくなるほど蕎麦好きな人ではない。そんな人からすると「また蕎麦屋かよ」という気持ちになるに違いない。しかし、そのネガティブな印象を補って余りあるのが、浅田・・・だと思う。まだ一回しか訪問したことないので、断言できないが。

しかし、その一回のインパクトが相当によろしかったので、今回も間違いはないと思う。メンバーの許可を得て、意気揚々と浅田へ。

お酒と焼き味噌

昼下がりに訪れたところ、店主はてんてこまいで蕎麦をうっていた。すごく忙しそうだ。どうやら、作ってあった蕎麦が切れてしまい、急きょ追い打ちをしているらしい。

接客担当の店員さんが申し訳なさそうに「できあがるまで20分ほどお時間がかかりますけどよろしいですか?」と聞いてきた。「いやもう、打ち立てが食べられるんならぜいたくの極みです。待ちます。喜んで待ちます」と即答。

実際のところ、蕎麦は打ち立てよりも少し時間を置いた方がおいしくゆで上がるらしい。しかし、そんな実態はともかく、目の前で打たれた蕎麦がすぐに目の前に供されるということは何だかすごくスペシャルな感じがしてうれしくなる。

「おい、打ち立てだぞ、打ち立て」
「楽しみですなぁ」

といいながら、ご主人の奮闘っぷりを眺める。

このお店、蕎麦は「」「きのこそば」の2種類だけしか扱っていない。開店と同時に入店できれば、「15食限定」の十割そばを頂く事ができるが、売り切れじまいだ。あとは、お酒と飲み物だけ。それだけ。そんなシンプルなお店だけど、店主さん大忙し。やっぱり、こだわって店をきりもりしようとするとメニューを絞り込んでも忙しいんだろう。

「女鳥羽の泉」というお酒を頼んで、焼き味噌を頂きつつじっくりと時間を楽しむ。浅田は、蕎麦屋独特のぴんと引き締まった空気が気持ちいい。こういう空間で、お酒を飲んでふにゃふにゃするのが何よりも楽しい。

ざるそば

さて、打ちあがった蕎麦を持って店主はすぐにゆで釜へ。待っているわれわれのために、即座にゆで始めた。

待つことしばし、蕎麦ができあがりました。

本当は前回未食のきのこそばを食べたかったのだけど、やっぱり浅田に来たからにはノーマルなざるそばも食べたい。うーん、どっちも食べたい食べたい。

結局、両方頼んだ。うむ、大人の賢い判断。

ざるそばをひとつまみ、ずずずぅとすする。

ふはぁ。いやー、美味いなあ。

周りを見渡すと、メンバー全員が「うう」とか「はぁ」とため息をついている。「いやー、これはおいしいなあ」とみんな一様に口走っている。うん、誰しもがご納得いただける、美味さだ。間違いない。

蕎麦好きのみなさん。常日頃、ご友人やご家族から「蕎麦好きなんて、通ぶっていてイヤミったらしくてキモい」なんて言われて迫害をうけていませんか?そんなときは、飛び抜けておいしいお蕎麦屋さんに相手を連れて行きましょう。お店は、「山奥にある」「不定休である」みたいな肩の力が入った蕎麦屋じゃ、逆効果だ。できるだけさりげないお店が良いです。そんなところで、何気なく食べた蕎麦が・・・実は蕎麦を食べつけない人でも「あっ、これは違う!」と分かるお蕎麦。そういう体験があれば、必ずや蕎麦好きをバカにしなくなると思う。

きのこそば

ぜいたくにもう一つ頼んでいた、暖かい蕎麦である「きのこそば」もほどなく到着。きのこたっぷりで、食感が楽しい。きりりと引き締まったつゆが、きのこの味わいと相まって相乗効果の幸せ加減。うん、これも絶品。冬場に食べるには最適だなあ。

これを見たメンバーの一人が、我慢できなくなって「すいません、追加できのこそばください」と注文していた。しかし、おばちゃんは「ごめんなさい、もう蕎麦が切れちゃったんです。今うっていますので20分ほどお時間を頂きますけどよろしいですか?」との回答。見ると、先ほどまで厨房にいたご主人が、また蕎麦打ち場に戻っていて水回しをはじめていた。うわ、激務だなあ。

普段は温厚なご主人だけど、あまりの忙しさに「ちょっと待ってもらってて!」なんて声を張り上げている。打っても打っても、すぐに無くなってしまう蕎麦に相当お疲れモードだった。波打ち際で砂の城を造るようなものだ。美味い蕎麦屋の宿命ということか・・・。

ご主人、体をこわさないように頑張ってください。おいしいお蕎麦をありがとう。

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