一寸亭 支店

2004年08月27日
【店舗数:175】【そば食:315】
山形県東根市大字荷口

冷たい鳥そば

もうおなかいっぱいです。さすがに3軒目で庄司屋のごつい蕎麦を食べてしまうと、完璧ゲームオーバーです。でも、もう一軒いかねばならぬのだった。

「せっかく山形まで来たんだし」という貧乏根性の他に、「3軒とももりそばばっかりたべてるのも寂しいよな、最後は別の蕎麦を」という気になったというのも理由の一つだ。最後に訪れる一寸亭支店は、鳥そばで有名なお店だという。

今晩宿泊する酒田のホテルは、1階のロビーがビアホールになっているらしく、生ビールをぐいぐい飲めるといううわさがあった。それが本当なら、もうこれ以上昼飯を胃袋に詰め込むのはやめておきたい。蕎麦よりも、夜に美味いビール飲めた方がいいじゃん。・・・というネガティブモードだったのだが、「蕎麦屋で憩う」で一寸亭支店の鳥そばが絶賛されていたのが気になって仕方がなかった。気になったら、行くしかあるまい。

何の気無しにカーナビにお店を登録すると、山形市街から大きく外れた場所にあることが今更のように分かり、また尻込みをする。でも、もう引き下がれない、行くぞ。

途中、「竹ふく」をはじめとしていろいろな蕎麦屋の横を通過していった。そのいずれもが、ホント地味だ。地味だけど、軒数がやたらと多い。山形は蕎麦の町、というのはまごう事なき事実だろう。「あー、4軒目は竹ふくでも良かったんだけどなあ」とお店の前を通り過ぎなら思ったが、じゃあもういっぱいもりそば食うのかい?と自問自答をして、やめにした。山形市街の有名蕎麦屋で行きそびれを作ってしまったが、まあ仕方がない。次回のためにとっておこう。

のどかな光景

山形から30分ほど、「おいおい、こんなところに蕎麦屋なんてあるのかよ」という大田んぼ世界を車は走る。そういえば、さっきから蕎麦屋を通り過ぎるたびに「肉そば」という金太郎旗が店先でひらめいているのを見かけるようになった。どうやらこの辺りは肉そばが名物らしい。

そんな中、幹線道路の脇に一寸亭支店があった。「支店」という名前であるからには、「本店」があったのだろうが、今はどうなったのだおろうか。本店は無くなって、支店だけが残っているのかもしれない。

一寸亭支店

それは兎も角、店のたたずまいが・・・相変わらず渋いな、山形の蕎麦屋である以上は。立地条件的には、ドライブインのような店構えで当然なのに、もうね、なんか民家って感じなんですよ。町中の蕎麦屋さん、って感じで。

「微妙にアンバランスだけど、それが味があって良い」と感心しながら写真を撮影していたら、店の裏で作業をしていた店員さんにばっちりその光景を見られてしまった。

「ちょっと恥ずかしいところを見られてしまったな」と頭をかきながら店に入ったら、その店員さんが入口のところでこちらの到着を待ちかまえていた。あんなところで写真だけ撮って帰る変人は居ないだろうから、きっとお客さんだろう、と思って待ち伏せしていたのだろう。

お店の中は、お客さんが誰もいなかった。おかでんだけだ。客席スペースはL字形になっていて、その全てがお座敷席になっていた。靴を脱いで、どっかと畳に座り込んだ。目の前のテレビでは、オリンピック中継が流れている。ううむ、なんかホント庶民的なんだよな。お店の人に「つめたい鳥そば(800円)」を注文。

・・・オリンピック中継をじっと眺める。

・・・蕎麦、なかなか出てこない。一体どうしたのだろう。

厨房では、トントンと包丁で何かを刻む音が聞こえる。一体何を切っているのだろう?蕎麦を切っている・・・まさか。

15分ほど待ったところで、鳥そばがやってきた。ことり、とお盆がテーブルの上に置かれて、仰天。な、何だこれは。

鳥そば

ボリューム満点、という言葉はこのために産まれてきたのではないか、というくらいのよりどりみどりな具の数々。なんだい?冷蔵庫の在庫一掃セールでもやってるのかい?というくらい、多い。ええと、鶏肉、しいたけ、たけのこ、ねぎ、かまぼこ、三つ葉が入っているのかな?麺が見えないじゃないか、これは。

ネギなんて、どうやら丸ごと1本を入れてしまったらしい。豪快、とはこのことだ。

この鳥そば1杯食えば、お昼ご飯として十分に成立する。誰だって、満腹で大満足だ。・・・少なくとも、既に蕎麦を3杯食べてきた人が食する料理じゃあ、ないよなあ。

ええい構うもんか、と頂いてみる。つゆは、鳥のだしがきいていて、蕎麦屋っぽくない。どちらかといえばちゃんこ鍋の味だ。でも、それが非常においしい。ネギをはじめとする具は、適度な歯ごたえが残されていて、とても小気味良くさくっ、しゃくっと噛まれていく。ああ、これはおいしいぞ。鶏肉は、地鶏を使っているらしい。もの凄いコリコリとした歯ごたえがある。ブロイラーの柔らかい肉に慣れきってしまった自分にとっては、この堅さは一種のリハビリテーションという感じがする。でも、お年寄りには食べられない堅さだな。歯が健康なうちにこの鳥そばに出会えて、本当に良かった。

おっと、何か忘れちゃいませんか。そうだ、この料理は蕎麦だった。蕎麦を食べないとはじまらない。蕎麦、蕎麦やーい。

大量の具の隙間から蕎麦を引っ張り出してみた。げげっ、というか、うわっ。何だ、この蕎麦は。黒々とした蕎麦で、太い。食い応え抜群の蕎麦がそこにはどかん、と隠れていた。

ええと、この鳥そばって、腹が減っている貧乏学生用のメニューですか?このお店って、大学や高校の側にあるんでしたっけ?いやいや、この立地条件を見よ。周囲に学校など、存在しない。腹を空かせた学生が訪れるようなシチュエーションでは決してないのだ。すげぇなあ、なんか、ラーメン二郎を思いだしたですよ。盛りの豪快さで勝負、みたいな。

でも、盛りだけで勝負って訳じゃないんですよね。きっちりと美味い。そして、何よりもこれで800円って、冗談みたいに安くありません?普通の蕎麦屋って、ちょっとした種もの蕎麦ってすぐに1000円行くじゃないですか。山菜そばー、なんていって、ヘロヘロの山菜を載せてハイ900円です、みたいな。それを考えると、このお店価格設定間違ってますよ。あと200円高くても、誰も文句言いませんよ。

郊外にあるお店だからできる値段設定なのだろうが、この具だくさんの蕎麦を見ていると、お店の威信をかけて提供しているんだな、という気がしてきた。

いやー、山形市近郊の蕎麦屋巡り、4軒目にしてすごいいいお店を発見しました。蕎麦の香りが、とか味が、というのはこの際おいといて、このお店の鳥そば、今日の一番の満足感を与えてくれたのでした。4軒目で既に満腹状態であったにもかかわらず、これだけの喜びを与えてくれたということは、空腹時に食ったとしたらどれだけの満足感があるというのか?今度は思いっきり腹ぺこな状態で訪れてみたいものだ。どうもごちそうさまでした。

このお店、今後おかでんの生涯中何回か訪れる事があると思う。しかし、その都度「鳥そば」ばっかり食べてしまい、死ぬまでこのお店の「もりそば」の味をしらないままなんだろうなあ、という予感がする。