みよしそばの里(01)

2004年09月04日
【店舗数:176】【そば食:317】
埼玉県三芳町

十割盛りそば

「ぐらの」によく通っている、という話を知人にしていたら、たまたまそのすぐ近所に住んでいる方が居て、「へぇ、その蕎麦屋は知らないけど、近くにある別の蕎麦屋なら知っているよ」と情報を提供してくれた。

何でも、店の前には一面の蕎麦畑があって、そこで収穫された蕎麦粉を使って蕎麦が打たれているという。ほう、あんなところで蕎麦が栽培されていたのか。

地図で確認してみると、関越自動車道の三芳PAの近くだ。なるほど、あのあたりは街道筋から離れると、未開の雑木林や広大な農地が広がっている場所だったな。でも、蕎麦が栽培されているとは全くの予想外だった。蕎麦というのは米が育たないような環境の悪いところに植えるのが相場だ。埼玉のあの辺りだったら、何も蕎麦を植えなくても他にあるだろうに、と思う。

きっと、おかでんに蕎麦を食べて欲しい、という地元の人の熱い情熱が

妄想はやめろ。

はい、すいませんでした。

しかも、その情報提供者によると、店は地元の主婦の方たちが切り盛りしていて、そのためか営業時間は10時から16時と短めだという。「本気になってビジネスをやろうとしてるのかね、あのお店は。それくらい、素朴だよ」と言われた。ますます期待感が高まる。ビジネスライクになればなるほど、蕎麦ってぇ食べ物はイマイチになっていくモンだ。オバチャンが切り盛りしているようなお店って、何だかおいしそうじゃないか。

みよしそばの郷

さて、そんなわけで、この日のお昼に訪問してみた。カーナビでもひっかからなかったので、情報提供者から教えて貰った位置関係を頭の中で整理しつつ、道を進むと・・・あった。

町外れもいいところだ。東武東上線の駅からだと、1時間かけても歩けないくらいの距離にある。周りには特にこれといった商店もなく、まさに田舎なシチュエーションだ。

そんな中に、ログハウス風の洋風建築があった。これが、蕎麦屋か?これが、オバチャンがやっているお店か?予想していたよりはるかにハイカラな作りだったので、ややたじろいでしまった。そのため、ここに本当に車を停めて良いのだろうか、と店の前で車をオタオタとさせてしまった。かっこわりー。

土曜日の12時半過ぎだというのに、客の気配が全くない。石臼で蕎麦を挽いている音がするだけだ。営業しているのか、不安になる。営業中、という看板がでていたので、恐らく営業しているんだろうけど・・・入り口はここでいいのかな?まるで客を入れる気がないかのような、素っ気ない入り口をくぐる。

メニュー

中にいたオバチャンに「お食事ですか?」と質問された。ちょっと待て、お食事以外に何の選択肢があるんだ。ますますわからんお店だ。ああ、そういえば隣に蕎麦打ち体験工房があったっけ。あっちのお客という可能性もあるのかな。ええと。

ちょっとオドオドしながら、「はぁ、蕎麦食べに来ました」と言ったら、「じゃ、食券買ってくださいね」と言われた。食券?どうも話が微妙に分かりかねる。店の入り口を見渡すが、食券販売カウンターのようなものや、自動券売機らしきものは見あたらない。

「ええと、食券はどこで買えばいいんですか?」

とおそるおそる聞いてみたら、「売店で買ってください」と言う。売店?そんなの、どこにあるんよ。少なくとも、この入り口近辺にはそれらしきものは無い。

「売店ってどこですか?」

一体、店にはいるまで何度の「?」を伴ったやりとりをせにゃならんのだ、このお店は。すると、「店を出て左手のところに売店がありますんで、そちらで食券を買ってくださいね」と言うことだった。ははーん、そば粉の直販とかやってるんだな、さては。でも、売店ってあったっけ?

売店

店の外に出てみたら、どうやら建物の端の出っ張った部分が売店だったらしい。

見えにくい看板にそう書いてあった。気づかないよ、これじゃ。

売店には店員さんが誰もいなかった。おいおい、どうするんじゃいと思っていたら、さっき応対してくれたオバチャンが店内を横切ってこっちにやってきた。なんか、わざわざ売店までお客を移動させる意味がよくわからん。後払いじゃ、いかんのか?メニュー少ないんだし。

メニューによると、この店のお品書きは3種類のみだった。「十割盛そば(900円)」「二八盛そば(600円)」「二八大盛そば(1000円)」。汁物や種物は一切やっていない。至ってシンプルだ。ここは、問答無用で十割盛そばをオーダー。

900円、ということでやや高い印象を受ける。しかし、二八盛そばが600円であることから、決して値段が高いお店というわけではなさそうだ。しかし、「二割の小麦粉」が無くなって、「全てが蕎麦粉」で蕎麦を打ちました、というだけで300円値上がりしちゃうのは結構割高だよなあ。どういう値段構成になっているのだろう。

店内の様子

売店脇からも店内に入れるようだったが、果たしてここから入っていいものなのか、それともさっきの入り口に戻った方がいいのか軽く戸惑いながら、そのまま店内に入店。この辺りも全然店員からのアナウンスが無い。どうやら、このお店は「接客」という観点はあまりないのだろう。讃岐のうどん屋のように、蕎麦を打っている工房の傍らで蕎麦食わしちゃる、という感じなのかもしれない。だったら、非常に合点がいく。

店内は、これぞウナギの寝床という作りで細長ーい。そのため、机は一列にずらーり。なんか、公園の歩道脇のベンチみたいな感じだ。

奥の方では、まさにゴウンゴウンと電動石臼が製粉中。お客が居ないのに製粉フル稼働ということは、ここで精製された蕎麦粉をあちこちのお店や業者に卸しているのだろう。自店舗用にしちゃ、威勢が良すぎる。

蕎麦畑

窓の外は、蕎麦畑が広がっていた。

恐らく、蕎麦だと思う。

断言しちゃってもいいかな?よし、蕎麦畑だ。きっとそうだ。

まだ芽が出たばかりだ。あと2-3週間もすれば白い花を一面に咲かせるのだろう。その頃ここに訪れた人は、きっとすごくきれいな光景に出会える事だろう。

十割盛そば

あまり待たされずに、十割盛そばが到着した。机には、たくさん雑誌の蕎麦特集記事が貼り付けられていて、一人で蕎麦を待っている間でも暇を持て余す事が無くて良い。今回おかでんは、神田まつやにおけるそばがきの作り方をマスターしたぞ。

さてお蕎麦だが、結構繊細なできだ。もっと素人っぽい不そろいな、太めの蕎麦がでてくるのかと思っていたのだが、いやいやお上品な風体してますぜ。

ずるずるっとな。

おおう、さわやかな風が今僕の鼻腔を撫でていったよ。蕎麦の香りが心地よい。ありゃー、立派な蕎麦じゃないですか、これぇ。おいしいです。洗練された感じではない、やや土っぽい香りがする。しかし、こういう味の方が、このお店のシチュエーションにはよく似合う。

麺の堅さを表現するとすれば、「ふわっとしている」という言い方になる。なんだか、泡立て器を使って生地を捏ねました、という感じで、ふんわり、優しい食感。ゆですぎて柔らかいとかいうわけではない。恐らく、水をやや多めにして生地を作ったんだと思うが、十割独特のぼそぼそ感がなくこれは食べ心地が良い。いいねいいねいいねえ。

そば打ち体験

蕎麦の生産もしている蕎麦屋ということで、そこそこおいしい蕎麦を頂けるだろうとは思っていたのだが、この時期にここまでくっきりとおいしい蕎麦を頂けるとは思わなかった。結構満足感高し。

ただし、せっかく美味い蕎麦食ったのに、店の不思議な雰囲気に飲まれてしまい、トータル的な満足感は案外高くなかったりする。これだから、蕎麦屋食べ歩きって難しい。

蕎麦は、美味かった。でも、二度三度と通いたいか、というとあんまりそういう気に、なれない。

恐らく、蕎麦屋としての艶というか、色気が欠けているから「また来よう」という気になりづらいのだろう。でも、もしそういう自分の心境がホントだとすれば、要はおかでんって店の外観や内装で善し悪しを決めてるのね、と言うことになる。うわぁ、ダメダメじゃん、俺!

でも美味かったんで、新蕎麦収穫後のシーズンにはもう一度訪れてみたいところ。きっと、今回以上のうまいうまい蕎麦に出会えることだろう。

・・・こっそり、酒と肴を店に持ち込むっての、ダメっすかねえ?(ぼそっ)

蕎麦畑の白い花を愛でつつ、酒肴を愉しむってきっとすてきな昼下がりだと思うんですが。

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