蕎麦 にしざわ(01)

2005年02月24日
【店舗数:179】【そば食:333】
長野県長野市高田

ざる、大雪渓

「スペシャルオリンピックス冬季世界大会・長野」のボランティア参加のため、10日間の長野滞在となった。野沢温泉会場での業務なのだが、仕事が朝早くから始まるため前日から現地入りすることにしていた。2月24日は、野沢温泉まで移動するだけでいい。

ここで、早く野沢温泉まで行ってスキーを楽しもうか、という考えもよぎった。ボランティア業務中は、スキー場で働いておきながらスキーを滑る余裕など全くない。これはもったいない話だ。・・・しかし、荷造りをしていて、この考えは断念した。無理すぎる。9泊分の荷物に加えて、スキー用の荷物をスタンバイした日にゃ、東京地検特捜部のガサ入れ状態に荷物がふくれあがってしまう。夜逃げじゃないんだから、そんな荷物はいやだ。

かといって、せっかく長野まで行くわけで、初日は移動だけというのもあまりに不毛だ。故に、単独行となるが、長野市街のお蕎麦屋さん巡りをしてみることにした。

長野市街の蕎麦、といえば「信州新蕎麦紀行2」の時に善光寺近辺の蕎麦屋を2軒ほど巡ったのだが、結論として「駄目じゃん」というものだった。だから、「長野県で美味い蕎麦を食べたければ田舎に行け」というイメージができつつあった。以降、何度も長野県下で蕎麦を食べ歩く機会があったが、長野市だけは素通り対象となっていた。

そんな中、先日のアワレみ隊企画で逢ったばばろあから、「KURA」という雑誌を貰い受けたところで認識が変わった。この「KURA」という雑誌、「信州を愛する大人の情報誌」と銘打っているだけあって、「散歩の達人」か「日経大人のオフ」の信州版みたいな渋い月刊誌に仕上がっている。その2005年2月号の特集記事が「そばの新店」だったのだが、そこには「えっ、長野ではこんな美味そうな蕎麦屋が誕生しているのか!」とオドロキを禁じ得ないお店が次々と紹介されていた。はっきりいって、掲載されているどのお店にも行ってみたい・・・そう思わせるだけの店構えと蕎麦の姿だった。もう、写真見ただけで「あっ、これは美味いに決まってる!」と断言できちゃう蕎麦だらけだ。くそう、もう長野での蕎麦屋巡りは卒業かと思っていたのに、まだまだ奥が深いぜ。

ってなわけで、本日は「KURA」に掲載されていた長野市の蕎麦屋2軒と、時間があればいつものバイブル本「長野味本」に載っている蕎麦屋1軒ないし2軒を巡ってみよう、ということにした。荷造りが長引いた関係で、長野到着はお昼過ぎ。さて何軒回れるかな、と。

長野駅前は、大きな荷物を抱えている人たちでいっぱいだった。スキーヤーもいるが、これからボランティアですっていう人の方が多い。彼らは、目的地に向かうボランティア用シャトルバスに乗っていくわけだが、おかでんだけは一人タクシー乗り場に向かった。一軒目、本日のメインイベントなお店と目している「蕎麦にしざわ」は、駅から歩いていくわけにはいかない距離と場所だ。乗り合いバスが近くを運行しているかもしれないが、時間が惜しいのでタクシー乗車。あまりお金が高くつきませんように。

運転手さんに「KURA」を見せ、このお店に行きたいんですけど、とお願いした。運転手さんも知らないお店らしい。長野駅からエムウェーブに向かう真っ直ぐな道「長野須坂線」をゴトゴトと走っていく。途中、運転手さんからいろいろなおいしいと評判のお蕎麦屋さんの話を聞いたが、人によってどんな蕎麦を美味いと感じるかというのは千差万別で、あまりあてにならない。運転手さんには失礼だが、話半分で聞き流させて頂いた。

ちなみに、そのときに聞いた話だと「信州新町の道の駅にある蕎麦屋」「戸隠のうずら家」「これから目指す場所(長野市高田)の近くにある西屋敷」というお店が良いということらしい。とりあえずメモしておく。

にしざわ

運転手さんと二人がかりで、道路脇を凝視する。蕎麦屋というのはえてして地味な外装なため、見落としかねない。そろそろ、行き過ぎちゃったかなあ・・・と心配になってきだした頃、さりげなく「蕎麦にしざわ」の看板を発見。あ、あった、あれだあれだ。

運転手さんも「へぇー、こんなところに蕎麦屋があったんですねえ、覚えておこう」と感心していたが、確かにこりゃ意識しないと気づかない。この辺りは郊外だから、郊外型の大きなお店の風景に慣れてしまい、こういうこぢんまりした蕎麦屋は見落としてしまうだろう。

長野駅からのタクシー代1260円を支払い、運転手さんと別れた。車で10分程度の距離。

にしざわ前の幹線道路

店の前からみた道路。こんな感じ。典型的な郊外の幹線道路って感じだ。こんなところに(恐らく)絶品の蕎麦屋があるとは誰も気づくまい。

店の外観はいたってシンプルだけど、きりりと引き締まっている。蕎麦屋は外観でも魅せないといけない、と思うが、まさにこのお店は店に入る前からこれから展開される味に期待を抱かせる作りだ。

では、入ってみよう。

にしざわ店内

わくわくしながら入店する。おっと、ここは靴を脱いで中に入るのですね。下駄箱に靴を納めて、店内に入った。

店の内部は、総フローリング仕立て。全体的に和風なのだが、洋風な気配も混ざっているジャパニーズモダン。最近、お座敷よりもこういう店構えの方がよっぽど和風な感じを受けるようになった。

12時40分頃に入店したのだけど、客足はご覧の通り。広い店内ががらんとしていた。おかでんを入れて、合計4名のお客さん。まあ、ビジネス街にあるお店ではないので、12時から13時の間は激混み、というピーク特性があるわけではないのだろう。平日よりも週末、混む店なのかもしれない。

にしざわお品書き(1)

にしざわお品書き(2)

メニューは、ベニア板の表と裏に貼り付けてあった。蕎麦は4種類のみ。冬季限定でかけそばをやっているので今の時期は5種類。あとは焼き味噌と、飲み物だけだ。非常に潔い。ご主人は安曇野翁で3年間修行を積んでいたそうだが、まさに翁流な品そろえだ。お酒も、安曇野翁で見かけたラインナップだ。ただ、見たことがない銘柄もあることから、これはご主人が探してきて組み込んだ拘りのものなのだろう。

昼から蕎麦屋でお酒・・・考えてみれば、最近あまりやっていない事だ。ちょっと照れと後ろめたさもあったが、どうせ今日は車で来ているわけでもないし、注文してみることにした。

焼き味噌

「大雪渓」を注文して、しばらく待っているといろいろとお盆の上に届け物がきた。

酒のアテとして、しゃもじであぶった焼き味噌がスタンバイ。それだけでは飽きたらず、山葵の醤油漬け、そして沢庵までついてきた。いっぱいのお酒で肴が三品ですか。これは、「ぜひ3杯はお酒を飲んで欲しい」という店主の期待感の表れ・・・なわけないよな。それにしてもこれでお酒いっぱいだけってのはちょっともったいない。従来だと、ちょっとつまんで、飲んで、飲んで、ちょっとつまんで・・・というペースがちょうど良いのだが、今回に関して言うと、つまんで、つまんで、つまんで、飲んで。っていうペースにしないと釣り合わなさそうな予感。

お客さんが少ないということもあって、ゆっくりとした時間を過ごす。手酌で酒器から猪口に酒を注ぐという一手間が楽しい。BGMで、JAZZが静かに流れていた。なぜ蕎麦屋でJAZZというのは合うのだろう、としばしあれこれ妄想してみたりする。

お酒を飲みつつつくづく思ったのは、こうやって昼からお酒を飲んでもみっともなくない大人になりたいよな、という事だった。年を取って、なんだかアル中一歩手前な感じでガハハハ、と笑いつつお酒を飲む、なんてのは絶対にいやだ。そのためにも、おなかが脂肪ででっぷりと太っているのだけはやめたい。たるんだ体の人が昼から酒を飲んでいる様は、見るからに自己管理ができていないっぽくて見苦しいと思う。

というわけで、お酒を飲みつつ思ったこの場での結論は、「将来も楽しく昼酒ができるよう、フィットネスクラブ通いを今後も続けてグッドシェープを目指そう」という事だった。支離滅裂な結論のようだが、これでもちゃんと考えて導き出した結論。

焼き味噌は、辛くなく柚子がほのかに利いていて非常に美味い。飲み込んだ後も、華やかな香りが口の中に残る。ほわん、とした感じがいい。逆に、山葵の醤油漬けは、そのふんわり感を引き締める辛さ。メリハリがあって、うれしい。ほわん、で一献。しゃきーん、で一献。どっちも良し。

お酒をお代わりしようかと思ったが、この後も蕎麦屋巡りが控えているのでやめておいた。

ざるそば

ざるそば登場。見た目からして非常においしそうだ。

「では」

と一言いいながら、蕎麦だけすすってみた。

驚いた!これは強烈だ。えーと、一言で形容するなら「香ばしい」かな?兎に角、前面に蕎麦の香りがパーンと出てくる状態。うわ、これはちょっと珍しいかもしれない。

蕎麦を空気と一緒に口にすすりこんで、鼻で息を抜く・・・この行程で、香りを楽しむのが蕎麦の食べ方だ。しかし、ここの蕎麦の場合、鼻で息を抜く手前、蕎麦をすすりこんだ瞬間にかつーんと蕎麦の香りが鼻の先の方に感じられる。おっ、と思っているうちに、遅れて鼻の奥のほうで深く蕎麦の香りが広がる。いいなあ、これ。

薫り高い蕎麦はいろいろ食べてきたけど、ここの蕎麦は瞬間最大風速が相当強いと思った。すてきです。もう、こんな蕎麦暴風になぎ倒される幸せ。蕎麦好き冥利に尽きます。

蕎麦アップ

アップにしてみたところ。こうやって見ると、何の変哲もない蕎麦って感じなんだけどねえ。でも、めっぽう美味いときたもんだ。

こうなると、つゆは無しでもいいくらいなのだが、せっかくなのでつゆも頂く。翁系のつゆに共通して言えることなのだが、あくまでもまろやかで、どこにも角が立っていない味わいがたまらんですな。特徴を述べよ、といわれても、まろやかすぎてコメントに窮する・・・そんな感じ。つゆだけでもついつい、ぺろぺろ嘗めてしまう。ご飯の上にかけて食べても美味いだろう、とヨコシマなことを考えてしまった。

お会計をする際に、店主の顔を見ることができた。あー、どこかで見たこと有るぞ、このお顔。普通、店員さんの顔なんてなかなか覚えられないものだが、この人は見たことがある。安曇野翁に行った時に見かけたんだろうな、きっと。ということは、当時は接客をやっていたわけで、それが今では一国一城の主。ぜひこれからも頑張って欲しいです。

はっきりいってにしざわすげぇ!また来たい!というのが今回の感想。まだ、田舎そばを食べていない事だし、長野を訪れる機会があったら、真っ先にお邪魔したいお店にランクインされた。