蕎麦物語 遊山

2005年03月20日
【店舗数:184】【そば食:339】
福島県耶麻郡猪苗代町

地鶏蕎麦

宮城県で美貌の天丼、元祖ろばた焼きのお店を訪問した翌日。 突発的に決めた旅行だったため、特にやることがなかった。仙台までやってきたのだから、青葉城でも見てお昼に牛タン食べて帰ろうかとも思ったが、昨晩のお酒の影響で体が重い。もっとさっぱりとした料理の方がいいな。つるつるっと食べられる。

・・・そうか、蕎麦か。

結局、相も変わらずこの日は蕎麦屋巡りとなってしまった。とはいっても、事前に情報収集していたわけではない。手元にあるのは「じゃらん東北版」という、東北を十把一絡げにしちゃってる何とも強引な観光ガイドだけ。こんなところに掲載されている蕎麦屋が果たして本当に美味いのかというとやや疑問だが、まあいいや。ぺらぺらとページをめくっているうちに、ある一軒の蕎麦屋が目にとまった。「蕎麦物語 遊山」という。ゆさん、と読むのかゆうざんと読むのかは不明だが、「ゆうざん」が正しいのだったら「あるじを呼べぃ」とご立腹する人が居そうで怖い。

このお店は独特の蕎麦の打ち方をしているらしい。解説によると、

一番粉を基本とした更科系のそばで、つなぎは一切使用せず、そばを打つ際、生地を「伸ばす」のではなく、太いのし棒に巻き付け、トントンと「打つ」ことによって歯ごたえを良くするなど、素材、作り方をはじめ随所にご主人の気迫が現れている。地下407メートルの湧水を使用したそばを心ゆくまで味わおう。

ということだ。「伸ばす」かわりに「打つ」ってのは聞いたことがない。非常に面倒そうな作業だ、トントン打って生地を伸ばそうなんてなかなか難儀なはずだ。朝、蕎麦打ち場から「これでもか!これでもか!」ドスンドスンという音が聞こえてきたら怖いものがある。

地下407mの湧水というのには正直興味はない。最近、「天然水仕込みのビール」とかいろいろ水質自慢のものが増えたが、そういう拘りが売上増に繋がっているとはとても思えない。一例を挙げればサントリーモルツ。水から拘ることはとても良いことだが、「どうだ!と自信満々に披露されても、案外消費者ってのは『ふーん。で、肝心の味自体はどうなの?まずかったら水なんて意味無いじゃん』ってドライな対応をとるだろう。

ま、水はともかくとして、珍しい製法の蕎麦には非常にそそられる。ぜひこれは食べてみなければ。場所は猪苗代だというので、仙台から一気に高速道路で南下だ。うわ、蕎麦いっぱいのために猪苗代か。

磐梯山

磐越道を進んでいくと、前方に雪の磐梯山が見えてきた。げげっ、そうかこっちはまだ雪が残っていたのか。3月20日という日にちを完全になめていた。ノーマルタイヤしか履いていない車だったので、やや焦る。

下道に降りたら、辺り一面雪原だった。しかし、さすがに道路は除雪されていて、通行に何ら問題はなかった。危ない。

遊山

磐梯山の東側、県道2号線を進んでいくと目指す「遊山」があった。

でかい看板がでているし、「営業中」という赤いのぼりが立っているし、どう見ても「通りすがりのドライバーさん目当てのドライブイン的蕎麦屋」感ありあり。大丈夫か、おい。あんまりこだわりのお店、って印象がないんですけど。

遊山の玄関

疑心暗鬼になりながら車を降りてみたら、店と思っていた建物が単なる門であることを発見。

門だけでこんなにごつい。お寺みたいじゃないか、まるで。仁王様が左右でにらみを利かせているんじゃないだろうな。

と、のぞき込んでみたら、仁王様ではなくて値札がついた骨董品が積み上げられていた。

一体何なんだ、このお店は。

遊山の建物

門をくぐると、そこには1万坪の庭園が・・・というわけではなく、当然のことながらお店あがあった。しかしこれも変な作りだ。蔵とペンションを足して二で割ったような作り。

遊山の玄関

しかも、玄関がこんな感じ。ここのご主人、建物に強いこだわりがあるのか、それともアイディアマンの建築家にいいように丸め込まれたか。

重々しい店内

がらがらというより「ゴゴゴゴ」という感じで引き戸を開けて中に入ると・・・

ええと、何ですかこれは。

お店が広がっていると思っていた正面は、重苦しいふすまがぴったりと閉まっていた。下駄箱の横から二階に上がる階段があるので、客席は二階、ということなのだろうか。じゃあ、このふすまの奥は一体なんだ。

途方に暮れていると、店員さんがふすまをがらりと開けて出てきて「どうぞこちらへ」とふすまの奥に通してくれた。あ、一階にもちゃんと客席があるんだな。まあ、そりゃそうだ。

どうやら、防寒のためにふすまを閉めていたらしい。しかしそれだと、今回のおかでんのようにお客は途方に暮れてしまう。だから、玄関の扉がガラガラと音をたてて開けられたのを聞きつけた店員さんが、わざわざふすまを開けて玄関まで出迎えに行っていた。

お品書き

お品書き。一品物やお酒はまた別にあるが、蕎麦に関してはこの7品しかない。一番安い「ざる蕎麦」が840円だからちょっと値段は高めだ。やはり、これでもかこれでもかと蕎麦生地を叩きつける重労働の対価として、これくらいは取らないといかんだろう・・・本当か、それ?

「せっかく遠いところから来たんだから」

という変な理由で、地鶏蕎麦をオーダーした。店員さんから「冷たいお蕎麦になりますがよろしいですか?」と念押しされたが、さすがにこの寒い時期に冷たい蕎麦を食べる人は少ないのだろうか。

地鶏蕎麦

地鶏蕎麦1,260円到着。

皿盛りの蕎麦を久しぶりに見た気がする。お皿に盛られると、何だか具なしの冷やし中華みたいに見える。

大根といかげその煮物が小皿で添えられているのが珍しい。お店のサービスということか。

丸丸とした地鶏

では早速食べてみる。まずは蕎麦を・・・

ずるずる。

!!!

何だ、これは。一口噛んだところで衝撃が走った。二口、三口噛む。うーむ、これは驚きだな。

確かに、この蕎麦は食感が従来の蕎麦と全然異なっていた。というか、蕎麦の範疇を逸脱しかかっている感じだ。美味いんですけど、コレは・・・何?

何とか喩えを見つけだそうとして、何口か食べ進める。

あっ、わかった。これ、グミに近い食感だ。もしくは、糸こんにゃく。

生粉打ちそばというのはできが悪いとボソボソしてしまうものだ。しかし、この蕎麦はボソボソどころか、ぷるぷるしとる。蕎麦粉だけでよくもこんな麺が打てたものだ。さすがは製法が違うだけある。

でも、美味いか?と言われるとちょっと違和感を感じる。食べ慣れていない食感である上に、更科蕎麦ということもあって、まさに糸こんにゃくな感じだ。多分、このグミグミ感に慣れてしまうと、他店の蕎麦が非常に軟弱に思えてくるのだろう。

地鶏が入った温かいつゆは、こくがあって香ばしくておいしかった。やっぱり地鶏は美味い。麺だけ食べて、その後で地鶏つゆをすする。「ご飯とおみそ汁の関係」のような食べ方になってしまった。

蕎麦が蕎麦だけに、ある程度インパクトのある地鶏つゆで正解だった。単なる「ざる蕎麦」にしていたら、麺の異色っぷりにつゆが負けていたかもしれない。

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