2006年05月27日
【店舗数:---】【そば食:375】
神奈川県下足柄郡湯河原町
自作手打蕎麦
前日夜から、担当旅行で湯河原に滞在していた。二日目のアトラクションは?と幹事に問うたところ、「蕎麦打ちやります!行きの電車の中で決めました!」と鼻息が荒い。ほーう、蕎麦打ちか。
年越し蕎麦を打つ身としては、今更蕎麦打ち体験か、という立場ではある。しかし、最近年を重ねるごとに雑になり、ひどい蕎麦をうつ傾向が強まっている自分にとっては今回の機会は格好の「癖直し」のチャンスだ。とても良い機会なので、喜んで参加することにした。
当日、指定された場所にタクシーで乗り付けてみると、そこは蕎麦屋さんだった。「手打ちそば きょう」という看板が出ている。
・・・あれ。蕎麦打ち体験工房みたいな、観光客向けの施設かと思ったんだが、これって営業前の普通の蕎麦屋さんだよね。え、ここで打つんスか?
何しろ只今の時刻はAM10:00。いや、これから打ち始めたら、お昼の営業に間に合わないと思うんですが。ひょっとしたら、夜のみの営業をしているお店なのだろうか?
不思議不思議、と思いながら店内に入ると、机が客室の隅に寄せられており、われわれの人数分の蕎麦打ちセットが床に用意されていた。ほーぅ、なるほどそういうことか。
さすがに粉が飛び散っては後片付けが面倒なので、フローリングの床の上にはちゃんと緑色のシートが敷かれている周到ぶり。
蕎麦打ちをする場所のすぐ横が厨房。結構広めなのが印象的だ。
さて蕎麦打ち開始。今までの蕎麦打ち体験は、グループ単位で、一人あたりちょっとずつ蕎麦を打つということばかりだった。しかも、お手本と称して先生がせっせとやっちゃう。ほんと、蕎麦打ち「体験」に過ぎないありさまで、大いに不満だった。
しかし、このお店は違う。凄い。一人で500gのそば粉を打つ。全行程を一人で打つのだ。蕎麦を打ったァ、という充実感が感じられる蕎麦打ち教室と言える。ちなみにお値段は3,500円。5人前を打ち、お持ち帰りができる。お店で食べることも可能。
蕎麦打ちとしては少々簡略化されたものを習った。七三の割合で、湯ごね。そして、角出しはせず、丸く延ばした状態で畳んで切りに入る。
ただ、全行程を自分の手でやることができるので、得られたことはとても多かった。へそ出しの仕方だとか、こま板の持ち方など、いろいろ懇切丁寧に教えてもらえた。指導してくれる先生は2名。5名の教室で2名の指導者だから、何ともぜいたくだ。
打ちあがり。すぐ食べる分以外は、容器に入れてお持ち帰りだ。
蕎麦打ちが終わったら、おかみさんがそそくさとシートを片づけ、通常店舗運営モードに机を配置しなおしていた。時間があまりないから大変だ。うっかり僕が、シートで覆われていない床に粉をこぼしたのだが、そのときはおかみさんが「何て事を!」ってな感じで粉を掃きとっていた。すいません・・・。営業を控えているお店なので、きれいに使わないと。
普通の蕎麦を食べに来た来客がちらほらとやってきはじめた。そんな傍らで、われわれは「お店が提供する蕎麦」ではなく、「自分で打った蕎麦」を食らう。
これがおかでん作。んー、さすがに自宅で打つ「おかでん家特製年越し蕎麦」とは風情が違う。こちらのほうがよっぽどうまそうだ。盛りつけやお皿の関係もあるのだろうけど。
ご主人と話をしていたのだが、このご主人は相当蕎麦にこだわりがあるようだ。蕎麦は戸隠に限る、と力説し、蕎麦粉は戸隠産を使っているのだという。ほー、今じゃ戸隠自体でも地粉を使うのは供給不足で大変なのに、よくぞ入手できたものだと感心する。しかし、戸隠の蕎麦粉は使っても、戸隠独特の「ぼっち盛り」にはしないのだな。戸隠スタイルにはこだわりはないようだ。
そういえばこのお店は暖かい蕎麦がラインナップされていない。全て冷たい蕎麦だ。これもこだわりなのだろう。
このご主人、「十割蕎麦はおいしいとは思わない」と断言していた。何て言っていたか、正確な事は覚えていないが、十割蕎麦は苦いだかなんだか、仰っていたような・・・。(間違えていたらごめんなさい)
こういうとき知ったかぶりをするのはすげー恥ずかしいので、「なるほど。ほーぅ、そうなんですかぁ」などと相づちを打ったが、後で後輩から「おかでんさん、あのときすごーく納得してない顔してましたよ」と指摘された。他人からみてすぐにわかるような感情の起伏はいかんな。もっとポーカーフェースに努めないと。
帰り、快速アクティに乗って東京に戻る。車中では、初めての蕎麦打ちで大興奮した女性陣が興奮さめやらず、蕎麦打ちを趣味にしよう!とかなんとか、盛り上がっていた。部長が持ち込んだノートパソコンでネットにつなげ、僕が紹介した古川製粉所のサイトで一生懸命蕎麦打ちセットの購入を検討していた。うち一名は、翌月末で退職し英国に移住することになっているのだが、「蕎麦打ちセット買ってイギリスに持って行こうかなあ」としきりに悩んでいた。
大の大人をここまで虜にする蕎麦打ち。案外遠くない将来、ブレイクする趣味かもしれない。
なお、後日談だが、「蕎麦打ちセット英国持ち込み計画」は、ダンナから「荷物になるから駄目」とあっけなく却下され頓挫したらしい。
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