大和屋

2006年10月21日
【店舗数:212】【そば食:381】
福島県南会津郡下郷町

ねぎそば

大内宿までは渋滞

紅葉見物も兼ねて、福島県の幕川温泉に一泊で旅行することになった。前日の午後に宿の予約を入れたこともあって、さて全く当日のプラニングができていない。お昼ご飯、どこで食べようかしらん。

一緒に同行した連れの顔色をうかがいつつ、地図も睨みつつ、さてどうしたもんかねえと話をしているうちに、あっ、いけないルートを間違えた。車は東北自動車道を大きく逸れ、日光方面に向かってしまった。

これも何かの思し召しだ、ということで大内宿に行ってみることにした。ドライブがてら、霧降高原経由でぐいぐいと下道を北上していく。カーナビが何度も東北自動車道方面にルートを引き直そうとするが、完璧に無視だ。どっちが先にギブアップするか、我慢比べだったが最後までこのナビは折れようとせず「だから東北道に合流しろってんだろうが!」と主張し続けた。うるさい、黙れ。大内宿を立ち寄り地を指定したら「あれっ、そういうことだったんですか。いやだなあ、早くそうならそうだって言ってくださいよ」とようやく沈黙。

そんなわけで、幕川温泉行くはずが大内宿というカーナビもびっくりな立ち寄りを敢行したわけだが、大内宿に向かう一本道は車で大渋滞。なんなんでしょう、これは一体。道路工事中なのか、それとも事故渋滞か。

周囲に何もない山中で、車がずらりと並んでいる様は一種異様だ。この渋滞が、大内宿の駐車場に入ろうとして待ち行列を作っているものだというのに気づくのにはそう時間がかからなかった。

「げぇ!秋の行楽シーズンになるとこんなに車がやってくるのか!」

激しく面食らう。以前訪れたのは雪がまだ残る3月だったので、そのときとは印象が全く違う。

こりゃあ駐車場渋滞にいつまでも付き合っていたらせっかくの温泉到着が遅れて、お湯を満喫できんぞ・・・と心配になってきたので、途中の路肩に車を路駐して、徒歩で現地に向かうことにした。さすがに山の中の道なので、駐停車禁止の標識なんて存在しない。普段都会暮らしをしていると、路駐というのは非常にドキドキしてしまうわけだが、今回は法的にもオッケーな状態で路駐だ。もちろん他の車の迷惑にならない場所を選んで。

大内宿

作戦大成功で、のろのろ運転されている車の列を徒歩で追い抜いていき、大内宿に到着。

既に14時だというのに、人が多いことといったら。観光バスによる団体旅行の人がいっぱいいて、その影響もあって人だらけだ。みんな、旅行会社のワッペンやシールを貼っているので、何だか変な光景だ。

さて、われわれもざっと観光をした後、お昼ご飯にしようじゃないか。

目指すはもちろんねぎそばだ。ねぎそばは、友達を誘うには格好のイベント料理となる。「ねぎで蕎麦を食べるんだよ。面白そうでしょ?」と誘えば、必ず「えー、それは体験したことがない。ぜひ試してみたい」と言う。今回の連れも、そう。

三澤屋

以前訪問したことがある三澤屋

前回は雪が積もっている時期だったこともあり、建物が完全によしずで覆われていた。そうかぁ、無雪期だとこういう建物だったのか。

今更だけど、感心する。

昼下がり、お昼ご飯のピークは過ぎ去ったと思っていたのだが、結構な待ち行列があった。さすが人気店だ。今回はこのお店での食事は諦める。

大黒屋

大抵どこのお店も蕎麦は提供しているのだが、「ねぎそば」を提供しているお店というのは案外少ない。いや、ひょっとしたら「もりそば」と書いてあっても葱が出てくるようなお店があるのかもしれないが、「ねぎそば」と明言しているお店は三澤屋を含めて三軒しか発見できなかった。大内宿といえば、全てねぎそばなのかと思っていただけにこれは意外。

大黒屋、というお店には待ち行列なさそうだったので入ってみることにする。

すると、店員さんから「この後団体さんがやってくるので、少なくとも30分はお待ち頂くことになるんですが」とのことだった。あらら。

団体旅行の場合、お昼どきにお昼ご飯にありつけないなんてことはざらだ。まあ、14時近い時間で「これから団体さんの食事」と言われても不思議ではない。観光地で食事をするというのは難しいのぅ。

大黒屋のお品書き

大黒屋のお品書き。

「ねぎ一本そば」というのと、「ねぎそば」という料理が存在するようだ。どう違うのだろう。

ねぎ一本そばは、われわれが普通に想像するねぎそばなんだろう。では、「ねぎそば」というお品書きは?・・・ひょっとしたら、刻んだ葱が山盛り盛られているかけそばなのかもしれない。ねぎ盛り放題、のセルフ店で、ついつい調子に乗って盛りすぎましたぁ、っていう感じの。

あくまでも想像なので実態はどうなのか、不明。

大和屋

二軒に振られたので、あともう一軒の大和屋に行くことにした。

このお店は、店の壁に「テレビでおなじみ ねぎそば」「ねぎ一本で食べる ねぎそば」と大きく書かれており、耳目を集めている。逆にそれが俗っぽく、ちょっとお店選びの優先順位を下げていたところだ。

しかし、ここで食べそびれると後がないので、お世話になることにした。

入り口は建物脇にある

大内宿特有の建物の作りで、道路に面したところは縁側になっている。入口は、建物の脇に入ったところ。

ここでも行列ができていたが、あまり長くはなかったのでおとなしく行列の最後尾に並ぶ。

通路に並べられたおみやげ物

目抜き通りから、建物の入口までの通路に並べられたおみやげ物。お土産は道路に面した縁側でも売られているのだが、こちらはもっぱら行列客向け、ということだろうか。

その向こうには、オープンテラスという面もちで客席が用意されていた。みんな一様にねぎそばを食べている。

10月でも既にうすら寒いのだが、これからあと1カ月もしたら寒くて外で食事はできなくなるのではなかろうか。

蕎麦打ち真っ最中

入口で順番を待っている間、蕎麦を一生懸命打っている様を見学することができた。

「食堂」と窓ガラスには書かれている。この大和屋、昼はおみやげ物屋兼蕎麦屋なのだが、夜は民宿もやっている。恐らく民宿用の食堂を昼間は蕎麦打ち場にしているのだろう。

これだけひっきりなしにお客さんがやってきたら、蕎麦打ちの量も半端じゃないはずだ。腰痛にはくれぐれもお気を付けください。

土産物売り場になっている縁側のすぐ内側の席

待つことしばし、案内された場所は土産物売り場になっている縁側のすぐ内側の席だった。

なんとも不思議な光景だ。お店のカウンターの内側にお客がいるわけだから。

店のおじちゃんと、来客のやりとりを「おじちゃん側」の視点で見ることができる。「もっと値引いちゃえ!」「えーいこれは無料だ!」という無責任な声援を後ろから放ちたくなったがぐっと我慢。

店内の壁には民芸品?

壁には、売り物かどうかよくわからないが着物がぶら下げられていた。

客席にいる全員が、一様に縁側の外を眺めているのがちょっと面白い光景。

大和屋お品書き

お品書きは、ねぎそば950円、もり、かけそばが各850円。その他くるみもちや岩魚塩焼きなど。

なるほど、葱一本を箸替わりに添えると100円高になるのか。お店からするとうまい商売と言える。こういう「アイディア」でもうける、というのはとても良いことだと思う。

さてこのお店には「そばセット」なるものがあるようで、ねぎそばだけでなく、大根そばとかにらそばとかごぼうそばとか、箸の変わりになる食材が色々用意されて・・・いるわけではないのか。なんだ。って、当たり前だ。

五目ごはん、山菜、冷や奴、おしんこがついて1,400円。ねぎそばだけで950円であることを考えれば十分お得なお値段と言えるが、さすがにこの状況で冷や奴を食べたいとは思わないのであった。

この状況って何?・・・寒いんスよ、ここ!ずばーんと外に解放されてしまっている縁側に面した部屋なので、外気温と室温が全くのイコール。太陽を浴びて、歩き回っていればそれほど寒くないんだけど、室内でじっとしていたらしんしんと寒さが背筋を昇っていくのがわかる。うう。

卓上の調味料各種

机には、いろいろなものが。

練りわさび、ごまふりかけ、醤油、一味唐辛子、七味唐辛子。

練りわさびが置いてあるあたり、蕎麦屋としては非常にざっくばらんと言える。逆にこの開き直りが心地よい。あと、栓抜きが置いてあるのも味があって良い。

しかしこんな気温で、ビールなんて飲む人なんて・・・あ、いた!目の前の中年夫婦さん、ダンナさんがよりにもよって生ビール注文して飲んでる!うわあ、寒そう。

でも、その寒さもなんのそので、「やっぱり旅先でビール飲まなくちゃあ」というガッツがあるのだとしたら素晴らしい。同士として、ビール談義をしたいと思ったとか思わなかったとか。

伝聞調で書いてしまうあたり、ウソ臭いんだが、まあ筆の勢いだ。

ねぎそば

ねぎそばを注文したら、店員さんが「暖かいのと冷たいの、どちらにしますか?」と聞いてきた。二種類あるらしい。

連れが当然のように「暖かいの」を頼んだので、対抗上僕は「冷たいの」を頼まざるを得なかった。

いや、無理しないで暖かいのを頼んでも良かったんだけど、何だか悔しいじゃないですか。「寒さに震える」のは一過性でも、「悔しくて後悔する」のは今後も続く話だ。ここはココロを鬼にして・・・「じゃ、僕は冷たいので」。

しばらくして、まずは暖かいねぎそばがやってきた。どっぷりとした丼に盛られていて、あのつゆを飲んだらさぞや体が暖まることだろう。

冷たいねぎそば

で、こちらが自分の注文である「冷たいの」。

「あれ、見た目は全く変わらないのか」

それだったら、無理しないで暖かいのにすれば良かった、とちょっと後悔。なんだ、結局後悔してるじゃん。

平打ち麺

麺は平打ち麺っぽい。具として刻みねぎ、なめこ。ねぎの青い部分は大きめに刻んであるところがちょっと面白い。

ねぎそば初体験

ねぎそば初体験の連れが、恐る恐るねぎを使ってそばを手繰りよせる。

「あれ、難しいな」

何度かつるーんとそばを逃がしてしまいつつ、トライアンドエラーでじょじょにコツをつかんできたようだ。結局、箸のようにうまい具合にそばを捕まえて、口元に運ぶというのは事実上無理。そのため、ねぎはあくまでも「そばをつゆからすくい上げる」役しかなく、あとは人間様が犬食いに近い形でかぶりつくしかない。

連れが何度かつるんつるんとそばを滑らせている様を観察していて、何だか金魚すくいに似ているな、と思った。

まてよ、それだったら新しい食のレジャーが開発できるんじゃないか。ふと、それに気が付いた。1回100円、そば食べ放題。ただし、箸のかわりに葱を使うことが条件で、つるーんと滑らせるとその時点でアウト。そばを滑り落とさない限りはいくらでも食べて良し。

・・・なんだか薄幸なビジネスな気がしてきた。そんなのを生業にしてたら悲しすぎる。やめとけ。

ねぎで蕎麦をすくい上げる

他人様が食べているのをいつまでも観察しているわけにはいかない。自分も食べようではないか。

さすがに二回目のねぎそば体験なので、そばのピックアップは手慣れたものだ。ずずずい、と。

うう、寒い。

何だかすごく負けた気分になってきた。

最後は、お茶漬けをかきこむような形で

結局最後は、お茶漬けをかきこむような形で食べていた。葱が小さくなってくると、食べ方も変化させていかないといけない。ちょっとだけ知的な、頭を使う食べものだ。

肝心の蕎麦だけど、食感が良く結構満足でした。新蕎麦という割には風味が無いように感じたけど、つゆにどっぷり浸かっている上にねぎをばりばり食べているんだから、そりゃあ風味を感じるのは難しいってもんだ。

体はすっかり冷えてしまったけど、それでも特等席でおみやげ物屋の風景を満喫できたし、満足度高かったです。わざわざ進路をかえて大内宿までやってきた甲斐があったってもんだ。

また今度、違う人と一緒に大内宿に行こう。ここは、葱と格闘する初心者さんの光景を愛でるのが一番の楽しみだ。