2009年02月08日
【店舗数:231】【そば食:408】
埼玉県日高市田波目
十割蕎麦、せいろ
高麗鍋コンテストに行ってきた。その様子(というか、憤然として会場を後にした様子)はこちらに詳細記載。
その後、憂さ晴らしに蕎麦を食べる事にした。
日高市にも美味い蕎麦屋があるらしい。
おかでんの性分として、1やれば良いという目標に対して、3,4くらいの可能性を全部想定して、事前調査する癖がある。そのため、無駄に時間がかかり効率が悪いし、いつも逼迫感漂う生活を送っている。しかし、そのおかげで今回は「高麗鍋はダメだったけど、蕎麦食べればいいや」という次の選択肢を選べたのだから、自分に乾杯。
目指すお店は「百日紅」という。たまたまネットで引っかかった。埼玉の美味い蕎麦だかなんだかという本に掲載されたらしい。それは兎も角、読み方はなんだ。ええと、もずく?違うな、何だろう。後で確認しておこう。
※後で調べたら、「さるすべり」と読むのが正解でしたー。
カーナビの検索ではひっかからなかったので、大体の住所をナビ上に登録しておく。辺鄙なところにあるとは聞いているが・・・ええ?看板を路肩に見つけたので、その通りに進んでみたらなんだかすごい道を走っているんですけど。本当に大丈夫か。
「山奥になぜか蕎麦屋が」というのは時々あるシチュエーションだが、こういうところに蕎麦屋があるのはあんまり経験がない。ちょっと心配になる。
心配になりながら車を走らせていたら、別のしっかりした道にぶつかった。そこに、目指す蕎麦屋発見。あ、道筋を一本間違えていたのか。よっぽどマニアックな場所にあるのかと思ったが、大きな看板のあるちゃんとした店構えの店だった。バラックの店舗だったりしたらどうしようかと思った。
百日紅外観。
駐車スペースがあまりないので、一人で車を乗り付けるのは少々気が引ける。
建物は完全に民家仕様。民家を改築してお店にしたらしい。でも、そうだとしたら日常生活を送るところはどこだろう?夜になると、客席スペースに布団敷いて寝るのだろうか?
営業時間は11:30-15:00で、定休日は火曜日と水曜日。短時間営業+週休二日。飲食店としてやっていけるとは思えない。ご主人がリタイア後に、趣味の蕎麦を一般に振る舞う事にしたのだろうか。
靴をぬいで客席にあがる。畳敷きの部屋が二部屋。奥の部屋にはおひな様が飾られてあった。ちょっと気が早い。
手前の部屋にはご主人自慢の(?)蕎麦猪口コレクションが陳列。酒好きで、お猪口やぐい飲みをあれこれそろえるのが趣味な人は聞いたことがあるが、蕎麦猪口もコレクションする人がいるんだな。蕎麦は好きであるおかでんであるが、蕎麦猪口をそろえようなんて思った事はこれまで一度もない。そもそも自宅に蕎麦猪口すらない。
着席したら、まずおしぼりと蕎麦茶、そして揚げた蕎麦。酒を頼んでいないのに、お茶請けとして揚げ蕎麦が出てくるのがうれしいじゃないか。よーしパパ今日はこれから清酒を飲むぞー。
やめとけ。車どうするんだ。
お品書きをめくると、最初のページには普通「もり」だとか「ざる」あたりが文頭を飾るものだ。しかし、ここのお店は違った。来店のお礼と共に、いきなり「そば切り職人の独り言」が始まるのだった。ご主人劇場の開始。えええ、ちょっと待って、まだ心の準備が。ポップコーンとコーラ買ってきていいですか。ダメですかそうですか。
「よせばいいのに大きなお世話を一言」
という言葉から独り言は始まる。こういう場合、本当に「よせばいいのに」という事が多い。本人が自覚しているくらいなら、やめといた方が良い。
内容はこうだ。
お蕎麦の食べ方は皆様のお好みで良いのですが、もし、違うことがありましたら、「一度だけ」やってみてください。
一、お蕎麦を二、三本つまんで食べてみてください
一、つけ汁の味を見てください
一、お蕎麦をつけ汁に少し(1/3位)付け食べてください
一、つけ汁に薬味を入れ食べてください
一、後は、ご自由に どうぞ
勝手な事を言いましてすみませんでした
これからもご愛顧お願い申し上げます
だ、そうで。
本当によせばいいにのに大きなお世話だ。まさかこうもストレートでくるとは思わなかった。もちろん、言ってる事はごもっともだし、おかでん自身が実践しているやりかたとほぼ一緒だ。おかでんは、蕎麦を食べている最中は一切薬味を使わないのでその点だけ異なる。
だから、店主が「こういう食べ方を一度騙されたと思って試してみて欲しい」と言いたくなる気持ちはよく分かる。プライドを持って蕎麦打ちしているからこそ、余計言いたくなるだろう。その志は応援したい。
しかし、それを先頭ページに挿入しちゃダメよ。最後にこっそり書いておかないと。
ただでさえ蕎麦の食べ方のうんちくって、「通ぶってる」「たかが蕎麦ごときで気取ってる」と馬鹿にされやすい危険な世界。できるだけさりげなくこの手の話はリコメンドした方が良いと思うのですよ。
まあ、独り言は独り言として、お品書き。
至ってシンプル。
十割そばがお品書きの先頭を飾り、この店の看板の品であることが伺える。800円。
粗碾き十割そば、というものも存在するのだが、こちらは金曜日限定。あとはせいろ、おろし蕎麦、つけとろせいろ、辛味大根そば、涼味そば(夏季限定)。
暖かい蕎麦は鴨せいろ、しいたけせいろ、きつねせいろ、桜エビ姿揚げせいろ。
天ぷらという花型スターかつ粗利が稼げる品を省いたあたり潔い。ただし、このお品書きだと本当の蕎麦好きしかリピーターにならないと思われる。それはそれで有りだと思うが、経営は大丈夫か。
酒はビールと「野武士」なるお酒とそば焼酎とシンプル。酒肴も、京ニシンの棒煮と焼味噌だけ。まあ、車じゃないとここを訪れるのに難儀するので、酒類が売れることはあまりないだろう。営業時間は昼限定だし。
お品書きの最後には、「厳しい意見を雑記帳に書いて欲しい、前向きに改善していきます」という主旨の言葉も。このお店は謙虚さが特徴だ。先ほどの「独り言」も基本的には謙虚な姿勢だった。
悩んだ末、十割そばを注文。
注文して余り時間をおかずに、蕎麦が到着した。ゆで時間が短めである蕎麦らしい。
薬味にはわさびがついていないのが特徴。
あと、水ようかんが付いているのも珍しい。
蕎麦は、結構量が多い。立地条件が不利だとはいえ、これで十割蕎麦で800円は安いと思う。蕎麦は奇麗に切られており、趣味が高じて店開いちゃいました系統のものではなさそうだ。どこかで修行したものと思われる。不そろいな部分がない。
手繰ってみる。うん、美味い。シンプルに、美味い。全粒碾きぐるみということだけあって、蕎麦の香りと味が豊かに引き立つ。十割蕎麦に時折見られる「のどごしの悪さ」も特にない。美味い、としかいいようがない。
水ようかんを食べておなかいっぱいになってしまったのだが、せっかくなので二八そばである「せいろ」も頼んでみた。こちらも間髪おかずに卓上に登場。今度はざるの形状が異なっていた。こちらにも当然のごとく水ようかんが。いやもう水ようかんはおなかいっぱいです。
せいろを食したが、こちらは特に感動なし。いや、美味い。美味いんだけど、十割が十分に美味かったし、のどごしも良かったのでせいろを食べる必然性がなかった感あり。
やっぱり、二割の小麦粉を混ぜることでつるつるッと手繰れてくぅー気持ちいいぜ、というのが二八蕎麦の醍醐味(だいごみ)だと思う。しかし、十割でほぼその役目を果たしてしまっているので、単に二八のほうは「味が薄くなった」印象しか残らなかった。
十割がうまいんだから、十割オンリーでやっても良いんじゃないか?と思う。
蕎麦湯は濃厚。蕎麦湯専用に蕎麦粉をお湯で溶いたものだそうだ。
水ようかん2個と蕎麦湯ですっかり満腹になってお店を後にした。
それにしてもこんなところにも美味い蕎麦を食わせる店があるんだねえ。驚きだ。
ただ、先ほどから「美味い」という表現を連発している割には、コメントに深みがないのに気がついただろうか。そう、美味いんだけど、それだけって言う印象だったのだった。偏差値は高いんだけど、当たり外れがなさ過ぎて面白味にかける蕎麦、というのがおかでんの感想。難しいね、蕎麦ってのは。
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