出雲そば 八雲庵

2009年11月06日
【店舗数:244】【そば食:432】
島根県松江市塩見縄手

鴨南蛮そば、プレミアムモルツ

松江駅

信州・松本そば祭り日光そばまつりとここ最近は蕎麦を食べまくった。そのせいでいい加減蕎麦にはうんざり、かと思ったら、案外そうはならないものだ。うんざりなのは事実なのだが、「東京流の洗練された蕎麦に食傷気味」というのが正解。なんだか急に、ワサワサした、野蛮で無骨な蕎麦をぐいぐい噛みしめたい気持ちになってきたのだった。

あれだけ蕎麦ブースが並んでいたのに、どこも金太郎アメ状態。おろし蕎麦やダッタン蕎麦、韓国そば(冷麺)といったものもあったが、その他大半が同じような雰囲気の蕎麦だった事は紛れもない事実だ。

これでも食らえ的蕎麦を食べようと思ったら、山形蕎麦街道にでも行くか、それとも出雲か。山形はうどんみたいに太くて濃厚な味わいの蕎麦が楽しい。板そばという食べ方も、がっつりしていて思わず雄叫びを上げたくなるワイルドさだ。一方出雲はというと、挽きぐるみでどす黒い、ぼそぼそした蕎麦がなんとも男らしい。落語家が演じるようなつるつるッと「手繰る」とは別次元の蕎麦だ。そういうのを食べようじゃないか。ざまあみろ。いや、何に対してざまあみろなんだかわからんけど。

山形はどうにも都合が悪かったので、仕事の都合をつけて出雲蕎麦を食べてくることにした。
ところで、出雲蕎麦があれこれ食べられるところって、どこ?出雲市だろうか。実は、全然知らない。調べてみたら、安木、松江、出雲大社周辺あたりに比較的店があるようだ。「おろちループ」で有名な奥出雲のあたりが、よりディープな出雲蕎麦を楽しめるらしいのだが、さすがにこれは交通の便が悪すぎる。日帰り強行軍を組むには無理だ。よって、便利な松江市内で食べ歩くことに決めた。

渋谷から夜行バスで10時間。松江駅前に到着。別に夜行バスでなくても良かったのだが、最近自分を追い込む事をやっていないので、自らに試練を科してみたのだった。おかげで、朝6時過ぎには松江駅に到着してしまい、途方に暮れるわたくし。当然のことながら、こんな時間に営業をしている蕎麦屋など、ない。

竹島かえれ島と海

駅前には、竹島は我が領土、と訴える標識があった。

「竹島 かえれ島と海」

「返せ」ではなく「帰れ」という表現を使っているあたり、微妙すぎる。以前、島根県が「竹島の日」を制定したら大韓民国が猛反発した、とか政府が腰が引けた、とかいろいろある。だから、あまり強い口調で「返せ」と言えないのだろう。その結果、「帰れ」という、「帰ってこい」という意味にも、その逆の「アッチいけ」という意味にもとれる変な言葉を使っているのだった。

なんで北方四島についてはあれだけ返せ返せ言っているのに、竹島には遠慮がちなんだろうね、この国は。

松江駅改札

事前に、松江市内のそば店をプロットした地図は印刷してある。また、各店舗の営業時間も全部調べてある。今回は、営業開始が早い店から順に、満腹になるまでお店巡りをしようと画策している。

一番早いのが、朝9時から営業開始の「出雲庵」。まだ3時間あるので、それまで、出雲そばのお店の外観ウォッチングとしゃれこもう。聞くところによると、出雲そばの店はなかなかのディープさで、民家じゃないかコレ、というお店もあるという。事前学習しておけば、9時以降順次開店していく各店舗を探す際に迷わずに済むというものだ。

まずは松江駅内にある店を見てみることにする。

八雲路

駅ビル内にある「八雲路」。出雲蕎麦、第一発見店。

さすがにこういう場所のお店なので、パスする予定。美味いかまずいかは、知らん。あまり事前情報収集しすぎると頭が混乱するから、余計な調査はしていない。そもそも、出雲蕎麦の旨い・まずいを評価する物差しすら持っていないので、口コミがあったとしても何とも判断のしようがないのだった。

割子そばのサンプル

出雲そばといえば、割子。もともと弁当箱として使われていたという、塗りものの器に蕎麦が入って、積み上がっている。通常、1人前を頼むと3段で出てくる。1枚単位で増やしたり減らしたりする事も可能。つゆをそばに少量かけて食べる、ぶっかけスタイル。

・・・と、書いてみたが、実は2007年にも、広島で出雲蕎麦のお店に2軒訪問していた。全く、記憶に残っていなくてびっくり。そうか、あれは出雲蕎麦の店だったんだ、っていうくらいだ。あまりに仕事が忙しくて、頭がぼーっとしていたので忘却してしまったらしい。すんません、今回あらためて本場にて勉強させてください。

奥出雲 大橋

駅ビルにはもう一軒出雲蕎麦の店があった。「奥出雲 大橋」だそうだ。松江の地において、「奥出雲」という名前はブランド力を持っているらしい。東京の人が、「武蔵野うどん」と聞くとちょっと唾液腺が活発になるのと一緒か?

あと、駅前の一畑百貨店内にも、「奥出雲そば処 一福」というお店があるようだ。こちらはこの時間に立ち入りはできなかったので写真無し。

松江駅前のホテル1

松江駅前のホテル2

駅南口にはビジネスマン向けのホテルが並んでいるのだが、なかなかの激戦区だった。

シングル3898円、だって。何だこの安さは。しかも驚きなのは、朝夕食無料、温泉サウナ無料ということだ。朝はともかく、夕食まで含んでこの値段とはどうなっているんだ。

すぐ近くのホテルは、同じ条件で3,634円。カプセルホテル並だ。どんな食事が出てくるのか、逆に気になる。仮にカロリーメイトだけだったとしても、一泊3,634円は安い。薄利多売といっても薄利に程がある。凄いな、松江。

「※ただしイケメンに限る」とか小さく但し書きが書いてあるんじゃないか、と心配になる。

殿町一色庵

JRの高架橋の脇の道を歩いていたら、偶然蕎麦屋を発見した。手持ちの地図には載っていなかった店だ。

「殿町一色庵」、と書いてある。一色庵は、島根県庁前にある有名店だと認識していたが、こちらにも支店があるとは思わなかった。一色庵は松江で出雲そばを食べる際には定番のお店らしく、今回自分も訪れてみようと思っている。ただ、あまりに時間がタイトなのと、有名店だからこそ行きたくないねぇ、という天の邪鬼な気持ちのせいで、満腹になったら真っ先に行き先から外されそうな予感。

コミサイト

高架橋の下にコミサイト、というアニメ・漫画ショップを発見。

「うーん、メイドカフェや耳かきなど、萌えビジネスは出尽くした感があるから、『わたしが一生懸命コネコネしましたっ!』という蕎麦屋があると、人気がでる・・・わけないな」

と、一人で勝手に思いつき、勝手にその考えを否定してみた。

松江市街

松江城や県庁などがある方向にとりあえず歩いてみる。

駅前、しかも県庁所在地の駅前の道だけどあまり派手な感じではない。質実剛健な山陰でございます、といった風情。

そば清

そんな道にある「そば清」。

うお、ちゃんと看板が出ているとはいえ、地味な店構えだ。おしゃべりに夢中になっていたら、気付かずに素通りするような外観。松江の蕎麦屋ってこういう作りなのか?これは要注意だな。

ちなみに、このお店の向かい側にあるはずの「橘屋そば店伊勢宮店」は、閉店したのか、光学迷彩で姿をくらましているのか、発見できなかった。蕎麦店の外観がこんなのだと、なかなか遠目では発見できんぞ、こりゃ。

ここの開店時間は10時半ということなので、他店よりちょっと早い。よって、3軒目くらいに訪問しようと考えている。

ちなみに、本日の予定は次のとおり。

09:00八雲庵(09:00開店)→
10:00後藤そば店(10:00開店)→
10:30そば清(10:30開店)→
11:00岡本(11:00開店)→
11:30きがる(11:00開店)→
[以降、胃袋の限界が来た時点でストップ]→
12:30一色庵(11:00開店)→
13:30ふなつ(11:00開店)→
15時前、松江を離脱

お店の開店にあわせて食べ歩くため、松江市内を東西南北歩き回ることになる。周遊バスが走っているが、そんなものを待っている時間があったらとっとと歩いた方がよろしい。今日は相当歩く事になりそうだ。

夜明けの新大橋

突撃する漁船

新大橋を渡っているところで、漁船が一斉に十艘以上、ドドドと音を立てて宍道湖に向かって突っ走っていった。堰を切ったように疾走しているので、まるで競艇を見ているかのようだ。ヨーイドンで出漁、という決まり事でもあるのだろうか。なかなか壮観だったが、競艇のようにUターンしてこなかったのでただただ船を見送るだけだった。当たり前だが。

橘屋そば店東本町本店

裏道に入ったところに、「橘屋そば店東本町本店」があった。大きな看板が店頭に掲げられてはいるが、渋すぎる建物と立地で分かりにくい。なにしろ、入口よりもその脇の自販機の方が目立つ。でも、それがまた地元密着っぽくて良い感じ。

和風気替わり料理

これは蕎麦店ではないが、面白かったので写真を撮ったもの。

「和風気替わり料理」の店、だそうで。

「気まぐれサラダ」なんてのは時々見かけるが、「気替わり」というのは初めて見た。本来、「気まぐれ」も「気替わり」も意味はほとんど一緒だが、「気替わり」という言葉を使うと、なんとも無責任な感じがする。「アレつくろうと思ったけど、やっぱやーめた。コレ作る」って途中で手のひら返ししそうで。和風料理の店なのに、「今日はオートミールをお召し上がりください」と言い出したりして。もしくは、一度テーブルに出された和食を、「ああすいません、やっぱりそれダメ。返して」と没収して別の料理を持ってくるとか。

ネーミング一つでいろいろ想像力をかき立てられる。良き名前哉。

上田そば店

遊覧船乗り場近くにあるという、互合庵は発見できなかった。再開発がされている地区のようなので、移転したのかもしれない。もしくは、見落としただけかもしれない。

その次に見つけたのが、「上田そば店」。これも裏道にある。

ほら、見よこの外観!間口は狭いし、東京流の気取った感じの店構えでもない。民家に埋没しそうな見てくれ。これは観光客だと気がつかないわ。ただでさえ、この路に観光客がどれだけ足を踏み入れることか。

さすがに、こういう店に自分のような外部の人間が「ちわーっす」と暖簾をくぐるのは緊張するな。今回はこのお店を訪問する予定はないが、こういう店が他にもいろいろあると思うと、他人事ではない。

十一軒

上田そばの近くにあった、十一軒。ここは一階がリニューアルされ、ちょっと目立つ上に「出雲そば」ののぼりが掲げられており、ちょっとだけ目立つ。ただし、ちょっとだけ、だ。二階は完全に民家だし、まあ相変わらず出雲そばの店はディープだ。素晴らしい。

すし割烹 井津茂

井津茂 そば林、というお店を探していたが、見つからなかった。その代わり、その店があったと思われる場所には「すし割烹 井津茂」という新しい店が建っていた。もともと出雲そば・郷土料理の店で、そば割烹を出していたということだったので、リニューアルしたのだろう。しかし、「すし割烹」を一応お店の看板にしているので、若干方針転換があった模様。詳細は不明。しかし、ひょっとしたらすし(割烹)屋で蕎麦も食べられます、という変わったお店になっているのだろう。それはそれで面白いな。

松江しんじ湖温泉駅

ガラス張りの駅、一畑電鉄の「松江しんじ湖温泉」駅に到着。

ここでコインロッカーを見つけたので、荷物をいったん預ける。なにしろ、キャリーバッグをゴロゴロ引きずりながらの行脚だ、邪魔ったらありゃしない。

松江しんじ湖温泉足湯

松江しんじ湖温泉、という存在自体あまり知らなかった。こんなところに温泉なんて湧くんかいな、と思ったが、確かに宍道湖の湖畔には大型ホテルが建ち並ぶ。それなりの歴史と湯量がある温泉なのだろう。

にわかには信じられなかったのだが、調べてみたら地下1,250mまでボーリングして湧いたお湯、ということが分かった。なるほど。松江という城下町のそばに温泉旅館が並んでいるというのは、観光地としては非常にメリットがあるだろう。その点、おかでんの実家がある広島なんて、県全体を見渡してもこれ!という温泉がないからなあ・・・。ちょっとうらやましい。

駅のすぐ脇に足湯があった。時間が余っているので、せっかくなので足湯に浸かってみることにした。

20分ほど足湯に浸かってみたが、おおおお、案外ええやんけ、これ。

足湯スキーな人が、「足湯は素晴らしい」とか「家にもフットバス用のバケツを買った」などと目をキラキラさせて語っているが、なるほどその意味は分かる。特に本日のおかでん、既に結構歩き回っている上に、昨晩は高速バスの椅子でまんじりと過ごしている。足が一気にスッキリしたのがよく分かった。いいもんですね、これ。気楽に使えるのが良い。

ただ、できれば早朝からやっている共同浴場があるともっとうれしいンですが、ダメですかね?理想は、朝風呂。

タウンバス

松江市内には、「レイクライン」と「100円ウォーカー」というタウンバスが走っている。前方からなにやら風変わりなバスが走ってきたので、ああきっとこれだな、と写真撮影してみたら、幼稚園児を護送するスクールバスだった。機関車をイメージした車体。

あぶねぇ、最近は変態が多いので、うかつに幼稚園児にカメラなんて向けたら通報されるぞ。君子危うきに近寄らず。写真なんて撮ったらいかんで。

ふなつ

しばらく足湯に浸かって、作戦会議を自分の右脳と左脳との間で戦わせていたのだが、とりあえずいつまでもここにいるわけにはいかぬ。出陣することにした。

一軒目の「八雲庵」が朝9時開店とはいえ、ギリギリまでここで足湯というのは冴えない。せっかく松江までやってきて、「蕎麦だけ食べてブクブク太りやがってよこの豚野郎」というレッテルを貼られるのは悔しい。せっかくだから、松江城を見るなどもっと文化的な事をしないと。

「出雲蕎麦を食べるのも、食文化という観点では十分文化的ブヒ」

と主張しても良いのだが、ぱんぱんに膨れあがったおなかをさすりながら何を言っても説得力はない。というか、語尾に「ブヒ」を付けるな豚野郎。

そんなわけで、蕎麦屋を見学しつつ、松江城に取り付く事にした。まさか松江の殿様も、こんな蕎麦屋に鼻の下を伸ばしている奴が天守閣に攻め入ってくるとは思うまい。

向かった先は、「ふなつ」。ここはおいしいという噂を聞いているが、11時からの営業。胃袋に余裕があれば、最後に訪れることになると思う。

このあたりを歩いていると、登校中の小中学生がいっぱいいる。自転車通学の中学生はみなヘルメット姿で、純朴そうで見ていて和む。小学生は、すれ違う時にみんな「おはようございます!」とあいさつしてくれる。

小学校周辺には、PTAの方や学校の先生などが要所要所に立ち、あいさつしつつもおかでんのような変態紳士からの突撃を防いでいる。ちくしょう、抜かりはないぜ。

・・・悔しいのか?ちょっと待て、本当に変態かお前は。

島根県庁

松江市街のど真ん中に、県庁がある。なんてエラそうなんだ、と呆れるくらい、どどーんと鎮座している。そう、まさに「鎮座」だ。敷地面積がやたらと広く、またこの時間は通勤時間なので、県庁に吸い込まれていく職員さんがアリンコのようだ。この町は県庁で成立しているんじゃないか、とこれだけを見ると思ってしまうくらいだ。

県庁の背後の丘には松江城。せっかくだから、天守閣のてっぺんを知事室にすれば良いのに・・・と思ったが、多分天守閣で仕事をしていると気持ちが傲慢になり、「お前気にくわないから死刑」とか言い出しそうだな。

一色堂

移転のお知らせ

松江駅近くにあった「一色庵」の本店がこの県庁の近くにあるはずだ。

探していたら、「一色堂」という看板は発見した。・・・一色「堂」?「庵」じゃないのか。「堂」も「庵」も意味としては似たようなモンだが、店名としては全然違う。

困惑していると、一色堂の脇に「一色庵は移転しちゃったのです」という看板が出ていた。ああそうですか。ご丁寧に案内下さり感謝。幸い、移転先はすぐそばだったので行ってみることにする。

一色庵1

一色庵2

行き止まり道路の最奥に、一色庵はあった。立派な塀構えのお店。中を覗くと、石畳。

奥まっているし、看板も派手ではないので「通りすがり」で気がつく店ではない。

これまで見てきた松江の蕎麦店数店が「民家改造」の延長線なものが多かったのに対して、ここはちょっと高級感ある作りだ。とはいえ、ここも店専用として作ったというより、何か古い、蔵があるような古民家を改造したような感じだ。

感心して写真を撮っていたら、出勤してきた女性従業員らしき人に怪訝な顔をされた。

そりゃそうだ、「開店前の蕎麦店の外観写真を撮って歩いているんです、ボク」なんて正直に説明したって、多分理解されないであろう行為だからな。

再開発されたと思われる新しいビル

みしまや

一色庵のすぐ近くに、「みしま」という蕎麦店がある、と手元の情報にはあった。しかし、それらしきところを調べてみたが、見つからず。再開発されたと思われる新しいビルがそこには建っていた。

その代わりに、すぐ近くには「みしまや」というスーパーがあった。おおお、蕎麦屋からスーパーに業態変更か。そりゃすごい変貌を遂げたものだな、と感心しまくったが、松江を歩き回っていると「みしまや」はあちこちにある、チェーン店であることが判明。名前がたまたま一緒だっただけだ。

「みしま」は見落としたか、移転したかどっちかだろう。

松江開府400年

松江城の大手門から中に入る。

ちょうど菊が飾られており、何をどうやったらこんな菊が?という立派なものがたくさん並んでいた。もし、今日蕎麦を食べ歩いていて、途中で蕎麦を喉に詰まらせて窒息死するようなことがあれば、この菊の上で死のう。そう心に誓った。ただし、ここにたどり着く前に息絶えるとは思うが。

その菊の展示の脇には、「松江開府400年」の文字が。あら、そうでしたか。松江城、今年で400年だったのか。

んー。本当は、時間の関係もあるので、天守閣と一緒に記念撮影して、それで八雲庵に移動するつもりだった。しかし、開府400年ともなれば、こりゃ一応天守閣に入っておいた方が良いのではないか。いや、399年だったら入らない、400年だったら入るというルールは特にないんだが。

松江城入城券売り場

共通入場券

松江城天守閣の開門時間は08:30。9時からヨーイドンされる蕎麦食べあるきを考えると、正直あまり時間はないのだが・・・。

えーと、入場券の自動券売機を見ると、あれ?松江城、小泉八雲記念館、武家屋敷の3箇所に入れる共通入場券も売られているぞ。うーむ。

30分刻みくらいで店を移動していかないといけないスケジュールが既に組まれているけど、まあいいか。歴史のお勉強も少しはしないと、どんどん馬鹿になる。せっかくなので、共通入場券購入。

割引特典いっぱいの入場券

入場券には、その他いろいろな施設での割引特典もついていた。

美術館やらなんやら。蕎麦店の割引は・・・とワクワクしながら探したが、そんなものは無かった。ちぇっ。

ただし、地ビール館は1割引だそうだ。今回は「麦汁よりもそばつゆ」というコンセプトなので興味無いが、皆様、松江観光の折にはぜひどうぞ。

松江城天守閣

松江城天守閣。

いったんは国宝に認定されたものの、後で重要文化財に格下げされてしまった不遇の天守閣。再建されたものではなく、昔からのものが現存している。

ためしに、こういう城を一カ月借り切って、「兵糧攻めは本当にうまくいくか実験」ってのをやってみたいな。敵味方数百名ずつで。逃亡あり、裏切りあり、内通あり、焼き討ちや大砲打ち込みあり。

でも、守備側は「ネット環境さえあれば十分です」という歴戦のひきこもりを傭兵に雇って、完全に守りに入るかもしれん。時間切れで守備成功になるかも。

雉成兜

朝9時前から、歴史のお勉強。

写真は「雉成兜」というらしい。なんだかピースフルな兜。

城の北側

お城を後にし、城の北側に向かう。

お城からお堀を挟んだ対岸は、武家屋敷があったりする一角。そこに、目指す「八雲庵」がある。また、さっき購入した共通券で見られる、「小泉八雲記念館」や「武家屋敷」もここにある。

遊覧船がお堀をすすむ

遊覧船がお堀をすすむ。

お堀のあちこちに乗り場があり、城を取り巻くお堀及びその周辺に延びる運河部分まで、この遊覧船が行き来していた。お昼前になると相当な数が行き交っており、なんだか水上市場でも始まるのかという気配すらあった。団体観光客の定番になっているらしく、バス一台で乗り付けただけでも、数隻の船が必要となる。だから、結構な数の船があるようだ。

神代そば

神代そば。

ここもおいしいと評判だときく。昔はもっと田舎にあったようだが、道路拡張の関係で今のところに移ってきたようだ。

店の前には「玄丹そば」というのぼりが掲げられている。これは、国の減反政策のため稲作ができなくなった田んぼに、島根の在来種を植えたものだかなんだとか。「減反」の言葉をもじて、「玄丹そば」と。

小泉八雲記念館

古い建物が並ぶお堀端ゾーンに入る。

小泉八雲記念館があるが、まずは9時営業開始の八雲庵に行くのが先決。ここは後にしよう。どうせ、途中でおなかがいっぱいになる時がくるので、その際の腹ごなし用。

・・・ああ、今気がついた。これから行く「八雲庵」って、「小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)」から来ているんだな。あと、JR伯備線の特急「やくも」っていうのも小泉八雲だ。すげえな。特急電車で、人の名前が使われているなんて。

八雲庵

八雲庵。

こんな場所柄、このお店も古くて立派な作りのお店。蕎麦店にしておくのがもったいないくらいだ。お見合いやら法事の後の食事会なんかで使える格式あるお店、として運営しても良いくらいの店構え。

9時ちょうどに到着予定だったが、お城を見ていたので遅れて9時12分着。

八雲庵サンプル

このお店は鴨なんばんが名物なんだそうだ。

鴨南蛮、おいしいとは思うが、おかでんはあまり食べない。なぜなら、鴨肉が旨すぎるからだ。鴨肉の圧勝に伴い、蕎麦の味がよくわからないからだ。

はるばる松江までやってきました、さあ一軒目の蕎麦は鴨なんばんです、と言われたらどうも冴えない。だから、本当は別の店にしたかったし、このお店で食べるにしても別の料理にしたかった。でも今回は、いつまでももりそば至上主義じゃお前ダメだろ、と自分に言い聞かせ、名物と言われたものは素直に頂く所存で候。

八雲庵内部

八雲庵は誰もいない

「食事しないでも庭園だけでもどうぞご覧ください」といった内容のことが門のところに書いてあるくらいだから、庭はご自慢なのだろう。鯉が泳ぐ池もあり、その池を間近に見ながら蕎麦を食べる事もできる。ただしこの「レイクビューサイド」席は予約制らしい。

早速お店に入ろうとするが、なにやら人の気配がない。あれれ。

厨房を覗いてみると、電気はついているが一部のみ。まだ、台ふきなどが干してあり、臨戦体制になっていない状態。おかしいな、9時から営業だと思ったのだが。

「すいませーん」と厨房の奥に声をかけたが、へんじがない。ただのしかばねのようだ。誰も死んでないけど。

どうやらまだ営業を始めていないようだ。むー。困ったな、出直すしかあるまい。

小泉八雲記念館

出直しをはかるため、小泉八雲記念館に行ってみた。ちょうど時間つぶし用として最適だった。ナイス選択、俺。

結構な広さだったら途方に暮れ、焦るところだが建物はこじんまり。じっくり見ても20分、ざっと見るなら10分以下というプチサイズでお手頃。今度は文学のお勉強。

小泉八雲、松江にずっと居た人かと思ったら、滞在したのはわずか1年だったというのは知らなかった。その後、熊本に移り住み、さらに東京に移っている。日本滞在期間のうち、松江に居た期間は寧ろ短いくらいなのに、この厚遇っぷり。

小泉八雲旧宅

小泉八雲が住んでいた旧宅も、記念館の隣にある。こちらは入場料別途要。

1年しか住んでいなかったというので、どうでもいいやと思い中に入らなかった。小泉八雲が設計に口を出して作った家でもないし。

なお小泉八雲だが、松江の気候、特に冬の寒さが堪えてこの地を去ったらしい。そりゃそうだわな、日本家屋って夏をどうやって涼しく過ごすかという事しか考えていないもの。冬はテント生活しているよりも寒い。

鴨なん蕎麦の明かりが点る

さあ、あらためて八雲庵ですよ。

今度は、玄関先に明かりが灯っているので、大丈夫そうだ。「鴨なん蕎麦」と書かれていて、あくまでも鴨食え、というスタンスらしい。

店に行ってみると・・・あー、相変わらず、営業開始の気配がないんですが。

あらためて厨房に首突っ込んで声をかけてみたら、おばちゃんが出てきて「まだやってないんですよー、お庭でも眺めてお待ちいただければ」と言う。いやいや、さっきもう十分堪能しました。で、何時開店スか?「10時頃になるかと」

なに。10時とな。10時だったら、2軒目の候補地、「後藤そば店」が開く時間だ。んー、それだったらいいですわ。鴨なんばん、それほど拘り無いし。縁が無かったようで。さようなら。

このお店、ザ・観光地という場所にあるので味をそもそも期待していなかった。雰囲気を楽しむ店と割り切るべきだろうね、と。だから、10時開店ならまあいいや、ご縁が無かったですね、と。

どうやら、今日は平日なのでいつもよりゆっくりした開店時間にしているらしい。

この先は宍道湖

出雲庵に振られたので、急きょ移動する。「後藤そば店」は松江駅の南側なので、延々と歩く。やあ、今日はよく歩くな。深夜バスで10時間揺られた直後に、松江市内を東西南北歩き回るとはなんとも元気があってよろしい。健康優良児として表彰してもらいたいくらいだ。表彰しよう、なんて言い出す酔狂は人はいないと思うけど。

後藤そば店近辺

後藤そば店は、地図で見る限りこの脇道にありそうだ・・・と、細い道に入っていく。到底、観光客が分け入る場所ではない。地元民でも、あえてこの道を通ろうという人はあまりいないだろう。「この道で合っているのか?」と若干心配になるが、まあいいや。人と待ち合わせをしているわけでもないし、間違えたら間違えたで楽しいハイキングだ。

正面に、道路を跨ぐ形で屋根がある。なんだ、あれは。瓦ぶきの立派な屋根だけど、その下は単なる道路。市道だと思うが、こんなのを天下の道路の上に作って、よいのだろうか。そもそも、何のためにこの屋根があるのだろう?

両側の家を行き来するために、濡れないようにしたかったのだろうが、それにしてはゴージャスすぎる。渡り廊下の屋根なんてのはもっとカネかけない質素なものが相場だ。

きっと、あの屋根をひっぺがすと「へそくりが数億円」とか「世界中から集めてきた美術品がごっそり」だぞ。気になる。

後藤蕎麦

そんな道を歩いていたら、前方に「後藤蕎麦」という看板が見えてきた。おっと、あれが目的地だな。やっぱり、こんな細い路地にも店があるのか・・・。驚きだな。一体どういう客層をターゲットに商売をしているのだろう。

香川県のうどん屋さんはディープな店が多いが、それはもともとが客商売を前提としない製麺所を起点にしているからだ。製麺所だけど、来店者にうどん食べさせていたら人気が出たというパターン。ディープになるにはディープたる所以がある。

しかしこの松江の蕎麦屋はどうだ?「蕎麦屋」として、千客万来な店なのに、路地裏にあったり、民家をちょっといじっただけのような外観の店が散見される。そりゃ、自宅を改装すればコストはあまりかからないだろうが、客がこなけりゃ話にならん。松江の蕎麦店、面白いな。

後藤蕎麦の地味すぎる外観

とはいえ、これはちょっとディープすぎるんですけど。

「後藤蕎麦」という看板が出ているので、蕎麦屋であることは間違いないのだろう。とはいえ、それ以外はどう見ても民家だ。まじですか。

さすがにこの外観で、中に入る度胸は無かった。怖くて入れんよ、これ。
「見なかった振り」をして素通りしようとしたが、店の前を通るとぷーんとかつおだしの臭いがした。あ、やっぱりここは蕎麦屋だ。外観がコレでも、中は蕎麦屋で間違いなさそうだ。まさか、「今晩の魚の煮付けを仕込んでました」でこれだけ強烈な臭いはするまい。

戸惑う。激しく戸惑う。せめて、お店なら暖簾くらいは出して欲しい。「営業中」という札が出ていればなおよしだ。そんなものが全くなくて、入っていいのか、結界が張られているのかわからない。

ハロウィンで、他人の家に押しかけて、家の人から発砲されて死んだ留学生のことを思い出した。うっかり玄関開けたら、警察に通報されるんじゃあるまいか。

躊躇した結果、手元の携帯でこのお店の外観写真をネット検索してみることにした。本当にここで正解なのか、と。実はここは裏口で、表口は別のところにあるのではないか、と。

調べてみたら、写真発見。見ると、玄関には青い暖簾が下がっていた。あれれ、営業中はやっぱり暖簾が下がっているんだ。ということは、今は営業をしていないのか。玄関を見上げてみたら、確かにのれんをひっかける穴がある。やっぱり、「まだ営業してません」ということだ。

やられたぁー。八雲庵に次いで、またスカった。事前情報で得ていた、「後藤そば店は午前10時から営業開始」、外れたーッ。これは、店の開店時間がルーズなのか、それとも情報が古いものだったのか、もともと間違った情報だったのかは不明。ただ、松江市のオフィシャルサイトに「10時から」と書かれていたのは事実。

地方故に、関東のお店と違って口コミ数が少ないため、ネット上で情報修正があまり行われない。営業時間が変更になったとしても、昔のまま放置されているのかもしれん。

ある程度、ブレることを前提にスケジュールを組まないといかんな。とはいっても、開店時間直後を狙って訪れるような輩はほとんどいないだろうから、あまり実害はないと思うが。

この通りに後藤蕎麦がある

10時で開店していないとなると、実際の営業開始は11時なのかもしれない。11時ともなると、松江の全ての蕎麦店が「おはよー」といいながら営業を開始する。一店だけ離れたところにある、この後藤そば店に立ち寄る余裕は時間的にない。

非常に未練があるが、やむなく店を後にすることにした。惜しいなあ、こういうディープな店で食べてみたかったんだがなあ。

気になって振り向き振り向きしながら店を後にする。大通りに出たところでもう一度振り向いてみると、ここは一方通行の道だということを知った。しかも、店は一通の出口近く。ますます「偶然発見」ということがない店だなーと思った。さようなら、後藤そば店。

そば清

後藤そば店を諦めたのは、既に時刻が10時をまわり、そろそろこっちも急がないとどんどん後ろに予定がずれていくからだ。歩いて店に行って、蕎麦手繰って、お会計して、移動して。結構せわしない。昼時になるとどの店も混むだろうから、昼前にどれだけお店を回れるかが重要。

次は10時半営業開始の「そば清」だ。早朝、このお店の前を通った6時半過ぎには既に明かりがついており、仕込みを開始していた。ここは多分大丈夫だろう。おっと、店頭には暖簾が下がっているし、足ふきマットも敷いてある。よし、栄えある出雲そば一軒目だぜ。

・・・あれれ。店の中に入ると、おっちゃんがテレビ見とる。おばちゃんは店の奥で、机に広げた台ふきを片付けとる。ええと、あれれ?

おっちゃんがおかでんに気づき、「え?あれ?」と言う。どっちも戸惑っとる。なんだこの空気は。

「えーと、一名ですけど。もう大丈夫ですか?」
「んー、まだちょっと準備中でしてー」
「ありゃ」

またやってもうた。

「これから机拭いたりしなくちゃいけないんでー」

手元の時計を見ると、やられた!10時20分だ。今度はおかでんの大チョンボで、営業開始時間より前に店に飛び込んでしまったのだった。後藤そば店で時間が浮いた分、早くこのお店に着きすぎた。

「どれくらいで開店ですかね、なんなら待ちますけど」
「そうですねぇ、もう少し時間かかるかと」

お店の人の雰囲気を見ると、「まあせっかくなので座って待っときんさい」という感じではない。これはまだちょっと時間がかかりそうだし、居座ったら邪魔な気配。10時30分きっかりに開店しそうでもなさそうなので、

「すいません、出直してきます」

と恐縮しながらお店を飛び出した。いかんいかん、「常に予定より遅れて計画は進行する」ものだとばかり思っていたので、前倒しになることは想定外だった。

不思議な民家

そば清の開店を待っている時間が惜しいので、またもや八雲庵に戻ることにした。あそこは10時開店、と店員さんの証言を得ているので、既に開店しているだろう。

またもや松江市街をてくてく歩く。ほんと、よく歩く。松江の地理に無駄に詳しくなってしまっている自分。

途中、普通の民家の横を通ったのだが、玄関には白い暖簾が下がっていた。まさかあそこも蕎麦屋では、と思わず身構えてしまう。もちろん、違ったが。

暖簾が下がっているからといって、お店が営業しているとは限らない。門が開いているからといって、お店をやっているとは限らない。松江市のオフィシャルサイトに書かれている営業時間だからといって、開店しているとは限らない。こういうトラップだらけの食べ歩き、結構個人的には好きです。

八雲庵

本日三度目の八雲庵到着。ふぃー、歩いたー。

これで営業開始していなかったら、食中毒でも起こしたと疑わざるをえないが、幸い店の中に既にお客さんがぽつぽつ居た。おお、営業しているぞ。こんな朝早くからご苦労様です。それは朝ご飯ですか、それとも昼ご飯ですか?

八雲庵お品書き1

八雲庵お品書き2

お品書きを見る。

表が蕎麦で、裏がうどんになっている。蕎麦専門店かと思ったが、どっこい、うどんも出しております。うどん好きの方もご安心を。

「名物」と銘打っているだけあって、鴨なんばんがお品書きの先頭を飾る。鴨なんばんそば単品(900円)の他に、割子そば1枚付(1,130円)、2枚付(1,360円)というのがあるのが面白い。やっぱり出雲蕎麦なんだから割子食べたいよねぇ、という人のために、セットメニューがあります、ということだ。

なおこのお店には、「ご飯」「おにぎり」「かやくご飯」といった類はない。腹を満たすのは蕎麦ないしうどんでやれ、という事だ。大変に潔い。

割子そばは基本が三段だが、このお店では五段までお品書きにあった。また、それに対応する形で、「三色割子そば」「四色」「五色」という料理もあった。ちなみに「五色」の場合は、五段の割子そばに薬味として、山芋、うずら、おろし、なめこ、葉わさびがつく。味の五段活用。いろいろ楽しみたい人はぜひどうぞ。

冷たい出雲蕎麦っつーのは、無条件で割子になるのかと思ったが、一応ざるそばというのも存在していた。ただ、鴨汁付きとなっており、実質的にはいわゆる「鴨汁せいろ」なので、お値段は1,050円。ちょっと高いのだった。

プレミアムモルツ

ビールと、鴨なんばんそばを注文する。

ビールは正直飲みたいとは思っていなかったのだが、この後訪れるお店で飲めるかどうか、怪しかったのでここで飲むことにした。何しろ、「後藤そば店」のようなディープな店だと、「黙って座れば割子が出てくる」ような感じかもしれん。ビールなんて頼んだら、気むずかしいオヤジに「ここは居酒屋じゃねーんだ」と塩まいて追い出されるかもしれん。

酒肴として「おあげさん甘煮」というのがあって、とっても気になったが注文は見送り。蕎麦店でおあげさんは珍しくない食材だが(きつねうどん・そばに使用)、単品であるのは初めて見た。

ビールの銘柄はプレミアムモルツ。朝から飲むにしては華やかすぎる味で、何だか場違いな感じがした。まだ日が高くなりきっていない時分には、もう少し大人しい味のビールがよい。でも「大人しいビール」って何だ?

結局、朝からビール飲んでるんじゃねーよ、ということか。

鴨なんそば

ビールをさあ飲もう、としたところでもう鴨なんばんそばが到着しちゃった。

やたらと早くてびっくり。チン、という音が厨房からしたのはそういう事だったのか。・・・ごめんなさい、たちの悪いうそです。でも、そんな妄想してしまうくらい素早いオペレーションなのだった。場所柄、ピーク時になると大混雑するだろうから、職人さんの動きが超高速にチューニングされているのだろう。見事。

ビールのつまみに何か一品、なんて頼まなくて正解。鴨なんばんがそのままビールのつまみになる。

お盆の上には、木の筒が二つ。一つは唐辛子、もう一つは山椒だそうだ。ほー、山椒を鴨なんばんにかけるのか。それは面白い。

鴨肉いっぱい

蕎麦は黒っぽく太い

出雲蕎麦一軒目。

鴨肉が結構たくさん入っている。薄っすい肉が二~三切れ、奇麗に並べられていて「鴨でございますが、何か?」と澄ましているものもあるが、ここは量が十分。また、それに負けじと葱の量も多い。葱は、長葱の細い奴で、東京界隈では余り見かけないものだ。

東京流の鴨南蛮といえば、「鴨肉は炙ったものをトッピング。葱も炙った、白くて太いものを2本3本並べる。あとは、店によっては鴨つくね団子も載せる」といったところか。

この八雲庵では、両方ともだしで煮ている。そのため、肉がチリチリになっていて、これを美しくないと見る向きもあるだろう。でも、おかでん個人はこっちの方が好き。いかにも鴨の旨みが汁にしみ出しました、って感じで。

案の定、鴨肉はうまみを汁に放出しまくりで、その分鴨肉の旨みが抜けてしまっていた。あちゃー、そうか、そうなってしまうんだな。それでも美味いのが鴨肉の凄いところ。なぜもっと手軽にスーパーなどで廉価に手に入らないのか、不思議でならん。

麺は言うまでもなく、太くて、ざらついた食感。口にすると、エッジが立っているわけではないもののしっかりと麺の輪郭を唇で、歯で、舌で、そして喉で感じるワイルドさ。荒々しくて、おかでんが女性なら確実に惚れた。

ついつい東京流の蕎麦喰いの癖で、つるつるっとすすりあげようとしたが、途中で摩擦抵抗が大きすぎてひっかかった。いかん、これはモグモグ食べる蕎麦だ。郷に入っては郷に従え。

つゆがめっぽう美味い

「ちくしょう、ずるいよな」

と思わず独り言を言ってしまうくらい、美味いのですよこれが。鴨肉の美味さは反則、とさえ思っているわけだが、今日またそれが実証されてしまった。ましてや、今回はつゆに煮込まれてるんですよ。つゆがめっぽう美味い。薄口の澄んだつゆに、濃厚な鴨の味わい。そして、太くてごわごわした蕎麦。噛めば噛むほど、蕎麦の味もさることながら、滋味深いつゆの味が口の中に広がる。これは大正解な蕎麦料理だと思った。野趣溢れる麺だからこそ、鴨の旨みを存分に発揮できているのだと思う。

八雲庵玄関にて

いや、侮れんな。

「観光地に美味い物なし」と言うが、この八雲庵なんてまさにド観光地だ。客席数が多いし、鴨なんばんをお奨め料理とすることを考えても、あまり期待はしていなかった。しかし、今や大満足でお店を後にするおかでんが居る。

もちろん、鴨が美味いからどんな蕎麦であっても美味い、というのはあるだろうが、だとしても900円であの料理が出てきたら全く文句ないです。大満足です。

ただ、おかでんはこの後まだ食べ歩きがあるので、出雲蕎麦の象徴でもある「割子」や、独特な食べ方の「釜揚げ」を食する機会がある。しかし、普通の観光客は松江で、出雲蕎麦を食べる機会は1チャンスしかあるまい。それで鴨なんばんそばを選ぶというのはちょっとした勇気がいるだろう。

食べ歩きできる胃袋と時間的余裕があって、ホントよかった。このお店で鴨南蛮を食べたのはとりあえず正解だった。もちろん、他店にはもっとスゲエ蕎麦があるのかもしれないが。