そばまつりとよひら2009

2009年11月15日
【店舗数:—】【そば食:438】
広島県山県郡北広島町

もりそば

そばまつりとよひらのポスター

週末、しばらくぶりに実家に顔を出したら、父親が「紅葉を見に行こう」と言う。広島県の奥、今話題の臥竜山からそれほど遠くないところに「温井ダム」というところがあり、そこが紅葉が奇麗なのだという。異存はない、両親とそろってお出かけすることにした。

その際、母親が「この時期、豊平でそば祭りがあるはずだけど」といっていたのが気になった。webで調べてみたが、よくわからない。この手のイベントは、主催者側のPR不足もあってwebで情報収集ができない事が多々あるので、特に珍しい事ではない。ただ、念のために、と「達磨」のサイトに行って、高橋名人御一行様の11月のスケジュールを確認してみたら・・・ああ、ちょうどこの週末、確かに豊平のそば祭りに出店していることが判明。では、温井ダムに行きがてら、お昼ご飯は豊平で食べることにしよう、と家族会議の上決定となった。

おかでん自身は、己の蕎麦好きを親に押しつける気はないし、お奨めする気さえない。だから、親から「じゃあ豊平でお昼」と言い出さない限りは、行くつもりはなかった。蕎麦通ぶっている奴が鼻持ちならんのは自分自身よく理解しているので、こういうところでは一歩引いておくのが処世術ですよ。

場所すらよくわからんかったのだが、あのあたりでイベントやろうとすれば道の駅どんぐり村がある場所しかありえんので、適当に車をそちらに走らせた。すると、やあ、会場手前で車が渋滞しだしたぞ。田舎道とは思えない光景だ。

のろのろ運転しながら、気がついた事ひとつ。このイベント、「そばまつりとよひら2009」という名前なのだな。もともと、「そば」は「蕎麦」という言葉も頻繁に使われ、検索しづらい言葉だ。加えて、「まつり」は「祭り」とも書くし、しまいにはこのイベント、「豊平」という漢字の地名をご丁寧にひらがなにしている。道理で、webで検索してもみつからんわけだ。せめて告知用のwebサイトくらいは、検索しやすい言葉にしたほうが良いと思うデスよ。

広大な駐車場

道の駅周辺はお金かけまくりな体育館(アリーナ、と呼んでも差し支えない)をはじめ、巨大な野球場など、ぜいたくの極みで敷地が広い。その空き地を利用し、そばまつり用の臨時駐車場をこしらえていたのだが、兎にも角にも車だらけ。いやまあ、公共交通機関でここを訪れるのは非常に難しいので、必然的に全員車になるわけだが・・・それにしても、車、多すぎ。これから輸出されようとして、岸壁に待機する車を思い出したくらいだ。

われわれは昼前の到着だったため、会場の隅っこの方にようやく車を停める事ができた。1,000台近くは来場していたのではないか?豊平という地の利を考えると、相当な集客力だ。

そばまつりチラシ1
そばまつりチラシ2

会場入口で、チラシをもらう。わら半紙にモノクロ印刷、という、小学校の時授業で配布された教材を連想させるもので、懐かしい。今時、まだわら半紙ってあったんだ。

これを見ると、蕎麦ブースが集まっている「そば処 おおごっつぉう広場」と、ステージを中心に馬蹄形に屋台が展開されている「イベント広場」の二箇所がメイン会場となっているようだ。

開催期間は11月14日~15日の土日二日間だけ。さすがに平日まで開催したところで、集客は難しいだろう。広島市内から、高速道路を使って約1時間の場所なので、この日程がちょうどよいだろう。

車両整理費協力金200円

パンフレットと一緒にもらった紙。大きく「車両整理費協力金200円」と書かれていた。

確かに、駐車場周辺には車の整理のため警備員が結構な数配備されており、その人達の人件費だけでもそれなりのものだ。恐らく、大会主催者はそば店や屋台に対して「売上の●%を支払うこと」なんて契約は結んでいないはずなので、運営経費はこういう形で少しでも回収したいのだろう。

日光や松本といったそばまつりは、無料シャトルバスが運行されるくらい運営にお金をかけている。しかしこちらは広島の山間部の人口が少ない町だ、それらのそば祭りと財政状況が違う。

「樽に入れてください」と書かれている通り、会場入口には樽が置いてあった。そこにお金を投げ入れる仕組み。広島の伝統芸だ。広島出身の人なら皆知っている話だが、昔、広島カープが設立直後は市民球団故に資金がなく、球場の入口に募金用の樽が置いてあった。また、広島市民球場の老朽化に伴い、新球場(=現・マツダZoomZoomスタジアム)を作らにゃならん、という時も資金不足だったために樽募金が復活した。広島には西条という酒造メーカー密集地があるので、樽というのは馴染みやすかったのだろう。

そんなわけで、ここにも、樽。

開放的で気持ちが良い会場

とにかく、自然が豊かな会場で気持ちがよい。

11月中旬とはいえ、まだ広島はお日様さえ出ていればそれほど寒くはない。屋外イベントをするには全く問題ない。むしろ、半月前に開催された日光そばまつりの方が寒かったくらいだ。

中国産地ののんびりした山を眺めながら、会場内をてくてく歩く。正面に見えるのは竜頭山で、標高928.4m。これから食べる蕎麦が旨かったら、「うーまーいー」と叫びながらそのままあの山のてっぺんまで登っちゃうかもしれん。

このあたりに、泉質・湯量ともにナイスな温泉があり、気の利いた温泉旅館があれば結構人気が出ると思うんだがなあ・・・。

注:一応そのものずばりの施設「どんぐり荘」が敷地内にはあるのだが、広島は温泉に恵まれない地なので、泉質については不明。

巨大屋台

駐車場からメイン会場に通じる道には、両側に屋台が並んでいた。お祭りじゃないか、これでは。・・・ああ、お祭りだ。そりゃそうだわ、「そばまつり」なんだから。

ちょっと意外、というか今更気がついた。これまで行ってきた、「金砂郷」「松本」「日光」、それぞれのそば祭りは、いわゆる「お祭り屋台」は無かった。だから、ここでお祭り屋台を見ると違和感を感じたのだった。

結局、マニアックな商品を出す「専門店の出店」なんてのは広島界隈にはそれほど多くなく、こういうイベントの時には「お祭り屋台の店」が登場となるのだろう。それはそれで楽しい。

写真のお店はやたらと細長い、万里の長城的屋台だ。その分品そろえも豊富で、居酒屋かと思わせる。ええと、暖簾に書かれているお品書きを列記すると・・・

ラーメン、酒・ビール、ジュース、ラムネ、うどん、お好み焼き、焼きそば、やき鳥、いか焼き、おでん
だって。ここで酒飲んで終了、と一軒で完結できるお店。それはそれで素敵だが、何のためにそば祭りに来たのかわからなくなってしまう。

たこやき屋台
うんこ屋台!?

屋台が並ぶ。見ているだけで楽しい。屋台に対して、時代遅れな・レトロなイメージを持っているとすればそれこそ時代遅れだ。さりげなく、どんどん進化している。

たとえばこれをみよ、ウンチが売られている。すげえな。誰が買うんだ、これ。多分コドモが欲しがるんだろうが、それを買い与える親も親だ。売る方も、欲しがる方も、買い与える方も、商品そのものも全部凄い。未来へ突っ走ってるな。

そば処 おおごっつぉう広場

屋台をチラ見しつつ、蕎麦屋が並ぶ「そば処 おおごっつぉう広場」へ。

パンフレットによると、7軒の蕎麦ブースがあるようだ。そりゃ楽しみ・・・だが、今日は両親と一緒なので、一軒だけだな。ここは大人しく親の意向に従い、後ろからついていくことにする。

そば処むさし

会場入ってすぐのところにあるテントが、「そば処むさし」。

むさし、というのは広島では何店舗もある有名なお店。おむすびがメイン?で、広島の郷土料理などを提供する和食店だ。この豊平にもどんぐり村店があり、以前そこで蕎麦を食べたことがある。

ええと・・・。見ても、何だかよく分からない。ブースが横長で、いろいろメニューが書かれた短冊がぶら下がっていて、どこが売り場だかも分からないし何が売られているのかも直感でわからない。こりゃ従来のそば祭りと全然毛色が違うぞ?

若鶏むすびとか売っている

そもそも蕎麦が売られているのかどうかすら、わからないという蕎麦ブース。

なんだなんだ、何が起こっているんだ。

若輩者おかでん、まだまだ経験不足だな。痛感させられましたよ。そば祭りともなれば、黙ってブース前の行列に並べば蕎麦が食べられる、と思いこんでいた。せいぜい、「暖かいのにしますか、冷たいのにしますか」とか、「天ぷら載せますか?」と聞かれるくらいで。

しかしここでは、そうはいかない。蕎麦食べるつもりが、気がついたら「若鶏むすび」なんて手にしてしまっている可能性がある。いやいやいや、蕎麦食べに来たんでスけど。

さすが「むすび むさし」。そば祭りといえども、自分のホームグラウンドであるむすびが前面だ。つくね、なんてものも売ってるし、ビールやらラムネなんてものまで売っているので、誘惑だらけだ。

ビール?ビール売ってるのか。車でないとほぼ来られない場所なのに、お酒って売れるんだろうか?ビール一本飲んで、半日くらいここで過ごして、酒抜いてから帰るのかな。

当然蕎麦打ちもやっている

おっと、蕎麦打ちもやっているんだな。

ようやくこれでそばまつりっぽくなってきた。「おっと」と言ってしまうくらい、あまり目立たないありさま。このブース、蕎麦をメインで売る気、ないだろ。

それがまたよい。

こういうユルいそばまつり、そばブースがあっても面白い。

活 地海老天婦羅新そば

むすびの種類は豊富だけど、蕎麦の種類は1種類。

「活 地海老天婦羅新そば」500円。

オンリーワンの蕎麦が、海老のかき揚げ蕎麦というのがすごい。「かけそば」と「もりそば」で勝負するような、直球勝負を最初からしない。それよりも、お得感、満腹感を重視しているのが広島流か。それにしても、天ぷらがついて500円ってめっぽう安いな。

テボで蕎麦を茹でる

うお。

ゆで釜が見えたんだが、思わず後ろ20度くらいの角度でのけぞってしまった。

釜にあったのは、テボ。そこに、一人前ずつ蕎麦を投入して、ゆでているのだった。立ち食い蕎麦屋以外で、この手の蕎麦のゆで方を見るのは初めてだ。相当びっくりした。

そして、軽く感動した。なんてざっくばらんなんだ、と。これはある意味潔い。

もちろん理想を言えば、麺類をテボでゆでるのは良くない。麺が均一にゆで上がらないからだ。ただ、こういう「現実路線」を堂々と地でいくのを見ると、そりゃそうだよな、これが正解だよな、と妙に納得するのだった。広島のそばまつりなんだし、ええじゃないか。

実際問題、むさしブースにやってくるお客さんを見ていると、蕎麦がひっきりなしに売れているという状況ではなかった。そのために、蕎麦を少量ずつ多頻度でゆでるというオペレーションがベストであり、テボというのは合理的だった。

どんぐり荘

レストランやお土産物店がある「どんぐり荘」。

これは臨時テントでは・・・当然ない。

「どぶろく」ののぼりが立っている。

広島の人は酒好きなんかいな。ここでお酒飲ませて、車運転できなくして、滞在時間延長プラス飲食費用さらに上乗せ、という作戦だろうか、なんて陰謀論を仮定するとなかなか楽しめる。

そば処 どんぐり村
蕎麦が見当たらない

どんぐり荘の前には「そば処 どんぐり村」というブースが出ているのだが、これがまた「むさし」以上に蕎麦を売っている気配が見あたらない。

派手に見えるのは、牛肉コロッケ、からあげ君、さつま揚げ・・・といった揚げ物系のお品書きばかり。おかしいな、蕎麦ってゆで釜とシンクがないと運営できないはずで、目立つんだがなあ。

大変に目立つのは、串に刺した巨大肉の塊と、その下で炭火焼きにされている焼肉だった。バーベキュー祭りを勝手に始めちゃいました状態。

さりげなく茹で釜発見

どんぐり荘の中からこのブースを見てみると、建物のすぐそばにゆで釜が据え付けられていたことに気がついた。煙突付きのコンパクトなもの。へぇ、こんなものがあるのか。

蕎麦を売っている事が全く目立たないのは、

・その他副食類がずらりとカウンターに並べられていること
・蕎麦は当然でき上がったものをカウンターに陳列できないので、目立たないこと
・蕎麦が実際問題、他の商品と比べて売れていないこと
・料金収受する場所がはっきりと定義されていないこと

という理由があり、さらに言うと、蕎麦そのものが「温かい蕎麦」だから、という理由もあった。お椀一個と箸で完結。そりゃ目立たないわな。しかも、蕎麦にレパードリーがない。一種類のみ。

先ほどのむさしも、温かい蕎麦一種類しかやっていなかった。蕎麦で品数を増やすより、つまみ類やご飯ものを増やす方に熱心、というのがこのそば祭りの大きな特徴。いいぞもっとやれ。こういう「地元の人の嗜好」が露骨に出ているお祭りは、ワクワクする。

どんぐり館

どんぐり荘の隣には、「どんぐり館」という建物がある。

ここは、そば打ち道場で、蕎麦打ち体験をすることができる施設だ。食堂も併設されているらしい。

高橋邦弘氏率いる「達磨」は特別扱いということで、この建物の中でお店を営んでいるようだ。建物の前にはディズニーランドのアトラクション待ちのように、つづら折れで行列が並ぶよう仕切りができていた。

そば処 長笹みつば会

「そば処 長笹みつば会」。

田舎そば、と高々と横断幕を掲げているが、高すぎるが故にその下の「たい焼」の文字の方が目立つ。どっちをメインで売りたいんだ、このブースは。

缶ジュースやビールが冷やされている
手打ち蕎麦ブース

そしてここも、店頭をぱっと見る限りでは蕎麦を売っているんだかどうかすら分かりにくい。目立つのは、缶ジュースやビールが冷やされている水槽。こんなにあちこちでアルコールを売っているなんて、何だかすごい。一人で来ていたら、「帰宅は深夜になっても良い」と腹をくくって、飲みまくっていたかもしれん。

で、さりげなく「田舎そば500円」の張り紙。あ、でも、その隣では店頭でそば打ちをやっていた。しかし、捏ね鉢がステンレスボウルだったり、いろいろ見ていて面白い。

松尾きじ園
きじ鍋販売中

隣は・・・ここはさすがに蕎麦ブースではなかった。松尾きじ園、だって。

きじ串をはじめ、おむすび数種類。きじ鍋なんてものも売られていて、鍋とおむすび、いいなあと思った。ただ、鍋をいっぱい、おむすび一個、ついでにきじ串なんて食べたらもうゲームオーバーだな。

ホントこのお祭り、「蕎麦を食べていってください」という考えはあまりないな。とにかく祭りだー!という感じ。豊作を祝う秋祭り、くらいに考えた方が良いのだろう。

豊平手打ちそば保存会
赤いのぼりがはためく

L字型に広いブースを持っているのが、「豊平手打ちそば保存会」。会場の一番奥に陣取っていることからも、ボスキャラであることが分かる。

「保存会」ということは、絶滅危惧種なのだろうか。そばを豊平以外に持ち出したら、ワシントン条約違反で捕まるんじゃ・・・。どきどき。

「絶滅」しないよう、ブースでは一生懸命そば打ちが行われている最中。産めよ殖やせよ、だな。

このグループの歴史は知らないのだが、確かに高橋邦弘氏が豊平に移り住むまでは「豊平」という名前は無名だった。「保存会」という組織名になったのは、実際本当に保存せにゃやばいぞ、という状態だったのかもしれない。

それが今じゃ、これだけ大規模なそばまつりだもんな。保存会の人たちも感無量だろう。

行列前提のお店
「最後尾」のプラカード

ボスキャラだけあって、行列が長い。達磨は当然に長いとして、こちらもそれに負けない長さだ。例年、長蛇の列になるらしく「最後尾」のプラカードを持った人が列の末尾に控えている用意の良さ。

「食券をお買い求めのうえ、順番にお並びください」なんて看板も出ているし、とにかく手練れだ。気をつけろ、背中を向けた瞬間に襲われるかもしれん。「順番にお並びください」の看板には、アニメ絵なイラストが描かれているが、油断したら命に関わるぞ。

リサイクルプラ容器

おや。ご時世ですな、リサイクルプラ容器を使っている。

ということは、ここももりそば・ざるそばの類は出さないということか。どのお店も徹底してかけそばなのだな。季節柄、寒くなってきているので冷たい蕎麦は流行らないというわけだな。広島の人は、東京界隈の人ほど蕎麦に拘りはないだろうし。

ところでこのリサイクル容器、実際のところどれくらいの割合で再利用できているのだろう?シールを剥がす際に容器にキズがついてしまったものが多いだろうし、そもそも品質チェックしたり洗浄したり再度シール装着したり、手間がすごい。いっそのこと、給食で使うような食器にしちまう、ということはできんのかね。飲食店のおしぼりが「おしぼり業者」による提供と回収が行われているように、「食器屋」っていうビジネスがあっても良いと思う。

そば処 とくさん

こちらは「そば処 とくさん」。

ここでもそば打ちをやっている。最近のトレンド?である「ビニールカーテンの中でのそば打ち」ではなく、オープンな状態なので迫力がある。職人さんとしては、風が吹いたりインフルエンザウィルスが飛んできたり、やりにくいシチュエーションだとは思うが、野次馬としてはうれしいパフォーマンスだ。

とよむすめポスター

豊平の蕎麦は「とよむすめ」というブランド。

最近は、雨後の竹の子のようにいろいろなブランド名が全国各地で出現していて、若干混乱気味。今後、お米における「コシヒカリ」のような圧倒的ブランドが飛び出てくるのだろうか?

このとよむすめ、「ルチンが多い」んだそうで。はあ、そうですか。そういう健康によろしい、という類の話はあんまりワクワクしないんですが、まあ、少ないより多い方がいいねえ、程度の認識。それだったら、先日松本そば祭りで食べた「サンルチン」はルチンが従来の3倍だ。負けているぞ、とよむすめ。頑張れ。

ルチンよりも、「蕎麦の香りがずば抜けている」とか、「常温保存でも風味が損なわれない」といった蕎麦を開発してくれた方がありがたいんだが、きっと難しいのだろう。そんな蕎麦粉、誰もが望むもんな。

きっと、蕎麦の香りについては、香料を開発してそば打ちの際に数滴垂らせばあら不思議、というのができると思う。香料って何でもできてしまう悪魔的技術だから。試しにそういう「わざとらしいまでに香る蕎麦」を食べてみたいんだが、どこかで扱ってないかな?

よもぎ鯛焼きを売る店

よもぎたい焼きを売るお店。

2009年のたい焼きトレンドは、タピオカが入った「白いたい焼き」だが、敢えて緑色に染めてやるぜ、というこの逆行っぷりが素晴らしい。よもぎ入り、おいしそうだな。ちょっと惹かれる。

おにぎりを売るお店。広島県人はむすびが大好き

その隣では、ちらし寿司やおにぎりが山積みになっているお店。こりゃ、「せっかくだから蕎麦を食べよう」と思って来場したけど、結局蕎麦にたどり着く前に「米飯類の誘惑に負け遭難」する人が多そうだ。「そばまつり」だけど、「蕎麦を食べさせたい守旧派」と「蕎麦以外のものを散弾銃のようにばらまくゲリラ」の戦いだ。

よもぎ餅の餅つき
鮎の塩焼き

やあ、こっちはよもぎ餅の餅つき中だ。他にも、鮎の塩焼きが売られている。

資材全般が、あまりプロっぽくないのが逆に好感。関東近辺のイベントだと、コテコテのプロ資材でやる気満々な店が多く、その資材に驚き感心させられる。しかし、ここではそういうのが無く、逆にうれしくなってしまう。手作り感が、むしろプラス要素だ。

もえぎ庵
手打ち蕎麦の看板

こちらは「もえぎ庵」。

「手仕事」と銘打っているのが、なんかいい。「手打ち蕎麦」を標榜する店はゴマンとあるので、そろそろ違ったサブタイトルで他店と違った味わいを出すと面白い。

会場風景1
会場風景2

会場の真ん中は、お食事処としてベンチがずらりと並んでいた。・・・あれ?机は?

机は無かった。みんな、ベンチに座って、蕎麦やらおにぎりを頬張っている。

ああ、そうか。全店かけそばなのは、こういうところにも理由があるのか。かけそばなら、立っていても、机がなくても食べられる。しかし、もりそばだったらそうはいかない。試しに立食パーティーでざるそばを出してみろ、誰も食べられないぞ。手が三本ないと無理だ。

達磨

「達磨」は、「翁」時代から通して「かけそば」という概念がない蕎麦店。故にここでも「もりそば」オンリーで出店だ。どんぐり庵という建物をそのまま使わせて貰えているのは、蕎麦界のゴッドに対する配慮もあるが、「もりそばだから」というシンプルな理由もある。

ここで、大会主催者が「いやー、達磨さんには今度はかけそばをお願いしたいんスけどね」と言ったら、達磨側がどういう対応をするか、興味深い。

両親は、「せっかくだから達磨にしよう」と言う。異存はないので、どんぐり庵の前の行列にわれわれも並んだ。「すごい行列だねー」とあちこちで驚嘆の声が上がるが、せいぜい30名、40名程度だ。日光そばまつりのすさまじさを知っている身からすると、「超穴場」と言って差し支えない。

東京を拠点に生活しているおかでんとしては、今後達磨の蕎麦を食べる機会はもう無いだろうから(早朝から整理券を確保してまで食べたいとは思わない)、今回は実に良い機会だった。

高橋氏蕎麦打ち実演中

高橋氏は、ビニールカーテンで仕切られたテントの中で今日も蕎麦打ち。

子供たちがじーっと見ていたのが印象的だ。これが後の●●名人である・・・と、なるかどうか?

このせっかくのゴッドハンドの技だが、どんぐり館とどんぐり荘と行列の奥に押し込められるようなポジションでそば打ちが行われていたのが惜しい。なんなら、特設ステージ上で巨大スクリーンに映しながらアナウンサーが実況中継、なんてやってもいいくらいだ。

店内

店内に入れば即お会計・・・かと思ったら、まだまだ行列は続く。店内奥にお会計兼蕎麦受け渡しカウンターがあるので、そこまでもうしばらくの辛抱だ。

おかでん父が「ディズニーランドみたいに、建物の奥でもずっと行列が伸びているんじゃないか」と冗談を言っていたが、我が親ながらなかなか上手いことを言うと思った。

建物の半分がそば打ち道場、そしてこちら側半分が飲食スペースになっている。

そば打ち道場スペースは、今回出店しているお店がそば打ち秘密基地として活用していた。さすがに、屋外のそば打ちはパフォーマンスであり、殺到する来場者のためには朝から秘密基地で仕込みをしているというわけだ。

食券機

建物入り口に食券機が置いてあった。

達磨の蕎麦はここで食券をお買い上げくださいー。。。。なわけはない。もりそばだけしか扱っていない臨時蕎麦店で、食券機など不要。これは、どんぐり館が通常営業している時のものだ。

どれ、どんなものがあるのかね。

ざるそば630円、大盛りざる1,050円。大盛りになると一気に値段が上がる。恐らく「大盛り」は二倍量になるのだと思うが、麺類における「大盛り」ほどいい加減な基準は無いな。ビールのジョッキ以上に幅が広い。

ざるの他におにぎりのセットやおにぎり、寿司単品があるのは広島という土地柄当然として、面白いのは「割子そば」「おろしそば」があることだった。割子=出雲、おろし=越前、と広島の山中とは思えないくらいグローバル(?)な料理をmade for you。

その割には、「かけそば」が食券機の随分下にひっそりとあった。おむすびなどと同列。ほとんど「サイドメニュー」的扱いだ。やはりここは、蕎麦打ち道場併設の蕎麦飲食処。温かい蕎麦は脇役なのだった。

この食券機、面白いのは「そば打ち体験」関連の料金もここでお支払いということだ。「そば道場(1kg)4,700円」なんてボタンがある。こんな高額なものを機械で買うのって、滅多にないぞ。せいぜい、新幹線のチケットくらいだ。そのせいもあって、この食券機はきっちりと1万円札対応。

あと、自作自演の蕎麦を打った後は当然ここで食べたくもなる。しかし、つゆは?薬味は?ご安心を、「試食代210円」という食券もありますんで。用意周到だ。

厨房から長机が伸びる
厨房

カウンターでは、広島のそば祭りということもあっておにぎりやら太巻きがたくさん売られていた。

ごめんなさいうそです、どこへ行っても達磨は達磨。高橋氏の本やDVDなどが売られてはいるが、いろいろなオプションメニューは一切ない。外の喧噪とは全く違った空間。

奥の厨房ではどんどん蕎麦がゆでられ、厨房から客席に突き出された長机にずらりと並ぶお盆の上に、でき上がり次第どんどんのせられてお客に手渡される。普段のそば祭りブースよりもスペースが広い故に、逆にやりづらいかもしれない。

父親から「二枚食べるか?」と水を向けられた。え?二枚?

見ると、確かに男性の何割かはお盆の上にざるが二枚載っている。おおお?もりそば一枚では足りないから、二枚頼む人がいるのか。

完全に不意をつかれた。いつも行列が当たり前の達磨。そんなそば祭りで、「もり二枚」なんて注文したら後ろの人から視殺されそうだ。そもそも、整理券制を採っている日光そばまつりの場合は、二枚注文は物理的に無理だ。そうかー、ここでは二枚食べができるのかー。そんな恐れ多いことを、と思ったが、これで達磨との邂逅は最後かもしれん。二枚食べる事にした。ひゃー、なんかすごいぜいたく。実際、1,400円もするわけであり、お昼ご飯としては相当ぜいたくなんだが。

もりそば
もりそばアップ

もりそば二枚。

一つのざるに山盛りにするわけではなく、なんとかお盆の上に二つ載せちゃう。ひっくり返すなよ、くれぐれも。薬味も二人前あるぞ。

へっぴり腰になりながら着席。さあ、二枚あるから早く食べないと。

蕎麦の凜、とした感じはさすが。・・・だが、「翁」というブランドに自らデッドボールになりに行っている状態なので、もうこの蕎麦は真っ当に評価できんよ。とはいえ、おいしい蕎麦ですな相変わらず。

蕎麦の色、昔はもっとうぐいす色だったと思うんだが、と思ったが、後で以前「達磨」訪問の際の記事を読み返してみたら、当時も同じ事を考えていた。最近はずっとこの色らしい。

蕎麦のゆで加減、味わい、ともに良いのだが感動がない。以前は、達磨(翁)レベルの蕎麦は少なく、突出した存在だったのだが、今ではたくさんの蕎麦店の技術が上がり、達磨が急激に追いつかれている気がする。それはそれで、高橋氏としても悦ばしい事ではなかろうか。と、ただ食うだけのおかでんは思うのであった。お前、偉そうに何様だ。

結局、蕎麦単体もつゆも、唯一無二な凄さは感じなかった。「?」と思いながら蕎麦をつゆにつけて食べてみると、これが「!」なのだった。蕎麦はこれがあるから面白い。ベタな表現だが、「1+1=2」ではなく、「1+1=3」くらいになっとるぞぉぉぉ。

蕎麦湯

よしこうなったら、蕎麦湯も混ぜて、4にも5にも・・・いや、それはやめとけ。

翁の蕎麦湯は大層おいしゅうございますので、残ったそばつゆに入れるだけでも、3になる。「翁特製蕎麦湯」って、ペットボトルに詰めて売ってくれないものだろうか?缶詰でもいいぞ。でも、美味いがゆえに湯桶いっぱい分くらいは飲みたいので、できれば2リットルペットでここはぜひ。

でも、よく考えると単なる「麺をゆでた湯」なので、翁で使用している蕎麦粉をパック詰めにして販売し、それをお湯にかき混ぜながら溶かし込めばOK、という話のような気がする。蕎麦湯という完成形でわざわざ売る必要はないか。

どんぐり荘も繁盛していた

大変に満足して達磨を後にし、お土産物などを売っている「どんぐり荘」に移動。

おや、ここにも食堂があるんだな。見ると、いわゆる普通の和食系定食などが売られている。「そばまつりに来て、何もここで食事をしなくっても・・・」と思ったら、ありゃ?ここも屋外に負けないくらい大変に繁盛しとる。どうなってるの、これ。

あぜんとして店内を覗いてみると、小さいコドモ連れや高齢者などがここを避難場所にしているようだった。確かに、落ち着いてテーブル席で食事できるのはここだけなので、安心できるのだろう。

そんな食事処の入口に、キリン一番搾りのポスターが。「まあまあいっぱいいこうや」だって。そりゃどうも、せっかくのお酌ですし・・・

と、そのポスターの下には、「飲酒運転防止のため、ドライバーには酒は出さねぇ」という注意書き。これぞまさしくマッチポンプだ。

イベント会場

さあ本日のメインイベント、紅葉でも見に行くべえ、と会場を退却していたら、なにやら民謡のような曲が聞こえてきた。立ち寄ってみると、それはイベント会場。ああそうだ、もう一つ会場があるんだったな。

見ると、芝生の広場に野外ステージがあり、そこからずらりと屋台が。ここは蕎麦とは一切関係ない世界が広がる。

酒飲みにはたまらん

売られているのは、もうどう見ても酒飲んでくださいというものばかり。

牛すじ煮込みやら、手羽先やら、おでんやら、枝豆やら。で、屋台の大半でビールとカップ酒が売られているという光景。なんだこの酒のみ天国は。大会実行委員の方、ぜひ近くにテントサイトを用意してください。僕、泊まりに来ます。

温井ダム

腹ごなしに温井ダムへ。

紅葉がとてもきれいだった。深まる秋。今年も蕎麦がおいしい季節がやってまいりました。

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