分上野藪 かねこ

2010年10月11日
【店舗数:255】【そば食:451】
埼玉県さいたま市浦和区仲町

そばがき、秋野菜の天ぷら、せいろう、オゼノユキドケ、樽酒、桜正宗

分上野藪

前回の「土合やぶ」に引き続き、浦和シリーズ第二弾。

本当は栃木や群馬のほうの蕎麦店を行脚したいのだけど、週末の朝ダラダラ家で過ごしてしまい結局行けていない。その罪滅ぼしで、浦和駅にプチ旅行。

浦和駅前は、レッヅ一色。どこもかしこも浦和レッヅの応援横断幕やら垂れ幕やら、そしてレッヅサポーターが「スパイはいないか」とあたりを鋭い目で監視してる。居酒屋でも、赤い服着た客だらけ。こんなところで「レッヅ死ね」なんて叫んだら、多分30秒後には逆に殺されていると思う。危険地帯だ、うかつなマネはできぬ。

そんな駅前繁華街を過ぎると、県庁所在地とは思えないくらいゆったりとした町が広がっている。高級住宅地と商業地の混合、といった雰囲気。そんな土地柄の脇道に今回の目的地、「分上野藪 かねこ」がある。

「分上野藪」と名乗っていることから、上野藪そばで修行した人の店なのだろう。「上野藪 浦和店」ということにはしなかったらしい。

どう見てももともと民家、という一戸建てを改修したらしいお店。・・・いや、「もともと」というよりも、二階部分は今でも民家として使っているっぽい。

エントランス

入口は、「土合やぶ」同様建物の脇から。お勝手口のようなところから入る。なんだなんだ、浦和界隈ではこういうのが流行りなのか?

お品書き

一戸建てとはいえ、さすがに暖簾をくぐったらそこにはちゃぶ台とテレビがありました、なんてことはない。一階部分は完全に蕎麦屋モードに改築されている。とはいえ、それほど広いわけではなく、客席もそれほど多くない。事前に座席予約の電話をしてから来店しているご夫婦がいたが、この店に関してはそれが無難だと思われ。

壁と対面するカウンター席に陣取る。

お品書きを見るが、さて困ったぞ、やたらと料理が豊富。最近の蕎麦店事情ってぇのに詳しくないのだが、居酒屋のようにあれこれ用意しているのがデフォルトなのかね?目移りしてかなわん。というか、一人で来た事を後悔しちまうお品書き。ああ、独り身は辛いのう。でも身軽にこうやって蕎麦店に行けるのは独り身ならではだしのぅ。

早速しんみりしてしまいつつ、でもやっぱりお品書きに目移りしつつ。おかでんが馴染んでいる蕎麦店というのは、板わさがあって、焼き海苔があって、と「蕎麦で使う食材を酒肴でも提供する」というものだった。で、時には色気を、ということで季節の料理なんぞがいくつかある。こちらとしても非常に分かりやすかった。しかしこの店はどうだ、サバのお造りがあったり、松茸の土瓶蒸しがあったり。しまいにはザーサイなんてものもあるぞ。ここは中華料理屋か。

オゼノユキドケ

シンプルな酒肴と、菊正宗くらいの安いけど美味い樽酒で十分なんだけどなあ・・・と思いつつも、適当にみつくろって注文を。

まずはビール。オゼノユキドケ、という群馬県の地ビールだそうだ。ミズバショウの花がラベルデザイン。

これに蕎麦味噌のお通しで。

目の前が壁なので、どうも何か落ち着かない。他の客の目線を気にしなくて済むので良い、という人もいるだろうが、酒飲みおかでんとしては「客や、店員さんの様子をそれとなく眺めつつお酒をくいっと」というのが楽しい。白い壁見ても、楽しくない。

我慢できずにパソコンを取り出し、ネットを見ながらのお食事。なんだ、これだと自宅と一緒じゃないか。

そばがき
そばがきアップ

そばがき(900円)。

なにやらお盆ごと運ばれてきたので何事かと思ったら、土鍋でぐつぐつ煮えとる。一体何をしようというんだ。湯豆腐と間違えたか?

確かに、湯豆腐よろしく鰹節がお椀に入っている。で、土鍋の中は、水菜と椎茸、葱、そして・・・ああ、あった。すいとんみたいな状態でそばがき発見。そばがきと一言で言うけど、いろいろな形があるもんだ。餅のようなもの、紙粘土みたいにかきっぱなしのもの、すいとん状のもの。

個人的には餅状のものが大好きだ。手間はかかるのだろうが、あのむっちりした外観はエロスの領域に達している。そして、食感もよいし、香り立つし、言うこと無し。今回のようなそばがきも嫌いじゃないが、どうしても水っぽくなってしまう。このタイプでムンムンと大人の色香、じゃなかった、蕎麦の風味が立っているのは残念ながら未体験。

でも、これはこれ、と割り切って、かつおぶし入りそばつゆにじゃぶんとつけてがりーっと噛むのもいいもんだ。

そこで全国の蕎麦店店主にお願いしたいんだが、お品書きにそばがきの調理法を明記するか、または完成品の写真を添えてくれんかね。そばがきって決して安くない品なので、事前に知っておきたいんよ。

天ぷら

秋野菜の天ぷら(850円)with花菱純米吟醸生。

季節の移ろいがわかりにくくなったこのご時世、「秋野菜の!天ぷら」などと言われると頼まない方が無理だ。収穫の秋、食欲の秋。「秋野菜」は、「夏野菜」に並んで魅惑の言葉。

残念ながら「冬野菜」といわれてもわくわくはしない。「春野菜」もしかり。でも、春だったら「山菜」という強豪が控えているので素晴らしい。冬、もっと頑張れ。冬野菜って何だ?寒玉キャベツとか葉物かな?

さてこの秋野菜の天ぷらだが、かぼちゃ、さつまいも、しめじ、エリンギ、えのきだけ、茄子が入っていた。

「おっ、すげえ。松茸が入っている!」とエリンギに箸を伸ばし、それが華麗なる間違いであることに気がついたときの気まずさよ。松茸の天ぷらなんぞ、この盛り合わせに入っている訳がないだろうが。、

よくよく考えてみれば、えのきだけの天ぷらってはじめて食べたかもしれない。細いので、揚げるのが難しいだろうが、よくぞ揚げたり。

せいろう

せいろう(750円)。

せいろ、ではなく「せいろう」なあたりが藪の流れを汲んでいる。

藪の名前を一部受け継いでいるとはいえ、昔ながらの蒸籠に入れて出すということをしていない。皿盛り。これも最近の流行りなのかね。確かに、蒸籠よりも洗うのがたやすいし、かさばらないし、なんだかおしゃれなイメージがあるし、こちらの方が合理的といえる。水切りについては、蕎麦の下敷きとしてミニすだれのようなものを噛ませておけば問題ないし。

蕎麦は細めでやや堅めのゆで加減。エッジが残っていて、口を、喉を心地よく刺激する。ずるずるっと手繰って、歯でかみ切ると「ぷちん」と切れる。この切れ方が絶妙で、これまた心地よい。新蕎麦をもう採用しているのか、すすった時、噛んだ時、飲み込んだ時、そのいずれにおいてもさわやかな蕎麦の香りが立つ。メンソールに近いくらい、爽快感のある蕎麦だった。美味、美味なりよ。

最近は蕎麦がうまいんだけど値段が高い、というのは珍しくないが、ここのせいろうは750円。もちろんこの蕎麦だけではおなかいっぱいにならないので、これでも高いっちゃあ高いんだが、こと蕎麦業界においては750円で美味いせいろが食べられるんなら十分過ぎるだろう。満足っした。

鉄瓶に入ったそば湯

やかんにたっぷりと入った蕎麦湯で大満足。

で、お会計してみたら、4,530円。うわー、結構しちゃった。清酒がけっこう効いたらしい。アンタは量を飲むんだから、安酒で十分だろうに。反省します。

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