総本家 更科堀井

2012年11月11日
【店舗数:313】【そば食:534】
東京都港区元麻布

鶏焼、玉子焼、季節野菜三点盛り、もりそば、さらしなそば、赤坂生ビール、純米吟醸名倉山

更科堀井
更科堀井提灯

知人から連絡が入った。「蕎麦が食べたい!」と。この人、もともと蕎麦好きではなかったはずなんだが、どういう風の吹き回しだろう。どうやら最近のこのサイトで「蕎麦喰い人種行動観察」の連載が相次いだ事で、蕎麦の存在が気になってきたらしい。それは結構なことで。巷じゃ新蕎麦シーズン真っ盛り。蕎麦を食べるには最適な季節だ。

とはいっても、蕎麦初心者の方をどこにエスコートすれば良いのか、蕎麦歴12年のおかでんにとってはさっぱりわからない。しかも、この知人は所用のため六本木にいるという。六本木界隈で蕎麦・・・?えーと、「竹やぶ」かなあ。

しばらく思案した結果、「総本家更科堀井」に行ってみる事にした。更科系蕎麦屋の総本山といわれるところだ。おかでんもまだ一度も訪問したことがないお店なので、訪れるモチベーションが十分にある。お店の場所は麻布十番なので、六本木からちょっとだけ歩くけどまあ許してもらえるだろう。

蕎麦業界では「ナントカ更科」と名前が付くお店がなんと多い事よ。ややこしくてかなわん。でもそれだけ親しまれている名前であるということだ。そういえば、おかでんが蕎麦屋で昼酒を飲る習慣を身につけたご近所のお店が、「さらし奈乃里」(現:蕎香)というお店だったっな。

この手の蕎麦屋には珍しく、お店の外に食品サンプルが置いてあった。ここで、知人に「ふつうのもりそばと、さらしなそばの違い」を説明しておく。果たして、理解してもらえただろうか?色が違うだけじゃないんだよー、製法も、味もぜんぜん違うんだよー。

お店の中

お店は非常に広い。団体客でも収容できるんじゃないか、というくらいだ。テーブル席とカウンター席、それにお座敷席まで完備。訪れたのは18時だったのだが、ひっきりなしにお客さんが出たり入ったりしていた。とても繁盛している。そのため、花番さんもたくさんいて、追加注文をするときなど非常に迅速に対応してもらえたのが良かった。

※調べてみたら、客席数は70席だった。神田まつや(66席)とほぼ一緒。だが、神田まつやはぎゅうぎゅう詰めの席なので、単純比較はできないが。

お客さんを見ていると、家族連れの場合が多そうだった。お酒を飲んでいる人はそれほど多くない印象。飲んでいてもあまり長っ尻はしていないようだ。・・・ということを観察できているということは、われわれはちょっと長っ尻してしまった、ということだ。えへへ。ごめんなさい。

お品書き、というより「メニュー」と呼んだ方が良さそうだ。各テーブルには立派な製本がされたメニューが用意されている。

最近の蕎麦屋が料理の取り扱い品目を増やしているのは食べ歩きを通じて分かっている事。その点、このお店は居酒屋的品数を誇るほどの料理数はない。しかし、メニューには料理のカラー写真が掲載されており、それぞれが「おいでおいで」をしている。うう、目移りするなあ。

一品料理のお値段はまあまあだが、写真を見る限りでは量があまり多くないようだ。そこであれもこれも、と注文したら結構な額になってしまいそうなので要注意。天ぷらが食べたい、と知人からはいわれていたのだが、「海老天種」を頼むとお海老様2本で1,990円のプライスなので危険だ。

おかでん一人で訪れているなら、酒肴一品に熱燗一本、あとは蕎麦でシメ・・・なんて展開ができる。お金だってあまりかからない。ただし、おかでんはお酒飲んだ勢いで暴走して、追加注文するので結果的にはお金がかかるのだが。まあこれは自業自得だ。

一方、今回は二名での訪問。やっぱり料理を何品かとって、お酒も若干ながらいただいて、という展開になるとお値段がぐんと高くなりそうな予感が。もちろん財布の中身がすっからかんになる程高くつくことはないのだが、せっかく蕎麦を食べようとしている知人に、「蕎麦っておなかいっぱいにならないのに、随分高いんだな」とネガティブな印象を持たれたくない。料理選びは慎重にしたいところだ。

赤坂生ビール

われわれが座ったテーブル席に、グラスが届けられた。氷入りの蕎麦茶だった。知人なんて外出時はダウンジャケットを着ている時期だというのに、冷たい蕎麦茶が出てくるというのは面白い。つくづく、日本人って「お冷や」が好きなんだなと思う。

それはともかく、まずは「赤坂生ビール」なるものを選んでみた。300ccで600円。聞くところによると、「ホッピー」の製造でおなじみのホッピービバレッジが作っているビールらしい。以前、深大寺の蕎麦食べ歩きをやった際、「深大寺ビール」というのを各店舗で見かけたが、あのビールもホッピービバレッジ社製だった。深大寺ビールは飲む機会が無かったので、今回赤坂生ビールを飲んでみる事にする。

それにしても、瓶での提供ではなく、生ビールでの提供というのはさりげなく凄いな。

お通しとして、揚げ蕎麦が出てきた。知人はビールを飲まなかったのだが、揚げ蕎麦をポリポリ食べ続けて、まるでウサギのようだった。「これだけお代わりできないかな?」と言っていたが、お通しのお代わりってできるんだっけ?やったことがないのでよく分からない。

純米吟醸名倉山

蕎麦屋でビールだけじゃ面白くない。ということで、清酒も頼んでみる事にした。純米吟醸名倉山。一合680円。「お燗にしますか?」と聞かれたが、純米吟醸酒だったのでそのまま常温にしてもらった。

知人はお酒全般があまり強くないのだが、この名倉山をちびちび飲みながらおつまみをつついていた。

季節野菜三点盛り

季節野菜三点盛り。650円。

「季節の!」とか「旬の!」という言葉に弱いんだよなあ。値段も手頃だし、ついつい頼んでしまった品。

外見ではこれが何だかさっぱり分からない。「分かる?」「さあ?」二人ともしばらく「こいつの正体突き止めてやる合戦」を繰り広げたが、唯一分かったのは「りんごを刻んだのが入っている(写真左の小皿)」ということくらいだった。あと、写真右の料理が「台湾料理の『大根餅』に似ている」という「印象」を持ったくらいで、それ以外は何だかさっぱり。

後になって、メニューにこの料理の正体が掲載されていたのを発見。

  • きのこ、胡桃、りんご アンチョビソース
  • 水菜の柿酢和え
  • むかごの揚げ蓮根餅

こんな小皿料理なのに、結構手の込んだ料理だったんだな。道理で分からなかった訳だ。

かき揚げ
かき揚げアップ

かき揚げ920円。

ソフトボールのようなものがやってきたのでびっくり。なんですか、これ。

箸で触ってみると、下半分は通常のかき揚げで、上半分は天かすであることが判明。天かすがこんもりと盛りつけてあるから、まん丸に見えるのだった。こんなかき揚げ、初めて見た。

「かき揚げもり」にして食べるなら、このたっぷりの天かすをつゆに投入してこってり、まったりと蕎麦と一緒に食べるのもよろしかろう。しかし、単品で頼んだ場合、どうすりゃいいのこれ。天かすをカリカリと食べるのが正しい食べ方だろうか?

おそるおそる天かすを箸ですくい、天つゆに浸して食べる。うん、おいしい。これだけでも十分においしいや。知人からは「こんな油っぽいもの食べられない!」と言われるかと思ったが、結構気に入ったようでうまいうまいと箸を進めていたので良かった。

あっ、もちろん本体のかき揚げも美味かった。ぷりぷりした海老が入っていて、食べ甲斐があった。

鳥焼

鳥焼、680円。

イメージとしては神田まつやの「焼き鳥」を想定していたのだが、このお店の鳥焼はちょっと違う。こちらは照り焼きだ。

「蕎麦屋で焼き鳥、ってミスマッチなイメージがあるかもしれないけど、そばつゆを使ったたれで焼くからこれが美味いんだなもう」

と知人には説明しておく。

鳥焼の皿に白いものがちょこんと載っていたので大根おろしかと思ったら、ガリだった。ガリをこういう使い方にすることがあるのか。

玉子焼

ここまでで一応注文は全て出てきたのだが、案の定知人からは「まだちょっと物足りないかな?」という声が聞こえてくる。まあ、そうだろうなぁ。では、ということで注文したのが玉子焼680円。

「玉子焼きは甘いのが好きだ、とか甘くないのが好きだ、と好みが分かれるんだけどね、このお店の場合はどっちだろう?」

と言いながら箸をつけてみたら、このお店の場合は甘かった。おかでんは結構好きな味付けなのだが、知人はあまり甘いのは好きではなかったようだ。好みが分かれる料理を注文するのはリスクが高いからやめておくべきだったかな。

それにしてもきれいに焼けている玉子焼きだ。家で焼いたらどうしても焦げ目ができるんだよな。どうやってこんなに焦げ無しで焼けるんだろう?これぞ職人の熟達技なんだろう。

薬味とつゆ

最後に蕎麦を食べてしめることにした。おかでんはさらしな蕎麦(蕎麦の芯の部分だけで打った、白い蕎麦)を滅多に食べないので、あまりさらしな蕎麦には興味がない。とはいえ、さらしなの総本山に来ておいて「食べません」という訳にはいかんだろう。ちょうど二人で訪れた訳だし、ここは「さらしなそば」と「もりそば」を一つずつ注文することにした。

複数名で訪れると、こういう時ありがたい。いろいろ食べられる。ちなみにこのお店、「二色もり」といったコンビセットは扱っていないので、一人で訪れた場合はさらしなかもり、どっちを選ぶか悩むことになる。二人でよかった。

ちなみに本日の変わり蕎麦は「くちなし切り蕎麦」だった。あと、このお店には「太打ちそば」がある。というわけで、厳密に言うと四種類の蕎麦がこのお店では用意されているので、四人で訪れるとジャストフィット。

蕎麦に先立って届けられたのは、色違いの徳利と猪口、薬味。何で色違いなのかと思ったら、さらしなそば用のつゆともりそば用のつゆは味が違うという。ほう、そうなのか。さらしなそばの方が甘いんだとか。

さらしなそば
さらしなそばアップ

さらしなそば870円。

漂白したの?というくらい真っ白な蕎麦で、目にまぶしい。

もりそば
もりそばアップ

もりそば770円。

ものすごい老舗なので、蕎麦粉なんてのは馴染みの製粉業者から仕入れて早うん百年、という世界なのかと思っていた。しかし、メニューの記述によると石臼自家製粉をしているとのこと。へー、老舗でも時代の流れにしっかり乗っていってるんだな。

知人と交代交代に二種類の蕎麦を手繰る。途中でどっちがどっちのつゆだかわからなくなりそうになったが、そこはなんとか体制立て直し。うん、どちらの蕎麦もおいしい。さらしなそばも、これだったらわざわざ頼んでもいいぞ、と思える味。だけど、やっぱりおかでんはさらしなそばよりももりそばの方が好きだな。

うまいうまいと蕎麦をずぞぞぞぞっ、と手繰っていたら、知人から「下品!」と言われてしまった。いやでも、下品と言われても、蕎麦の食べ方ってこういうものですし。止めろと言われても・・・はあ、そうですか、では以降少し音量は下げて食べるようにします。へぇ。

とはいっても、ついついボリュームが上がってしまい、その都度「あっ、いかんいかん」と慌てる始末だった。

蕎麦を手繰るときの音ってどうなんだろうね。大きければ大きいほど良しとされるものなんだろうか?それとも、ある程度は遠慮しなければいけないものなんだろうか?考え込んでしまった麻布十番の夜。

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