江戸前手打蕎麦 蕎香(38)

2012年12月28日
【店舗数:—】【そば食:565】
東京都板橋区前野町

玉子焼き、里芋のあげだし、生桜えびかき揚げ、もり、菊正宗

今年ももう終わりが近づいている。この秋から冬にかけては、蕎麦を食べる機会がとても多かった。「蕎麦喰い人種」の面目躍如だ。まさか、このコーナーをこしらえてから12年目にして、確変するとは思わなかった。

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蕎麦、食べれば食べるほど奥が深いなあ・・・、というのが、今年一年の実感。だというのに、蕎麦の風味について相変わらずボキャブラリーが貧困なのは困ったものだ。他の蕎麦食べ歩きwebサイトを見るにつけ、自分の文章がいかに駄目なのかがよく分かる。小説などを読む機会が滅多にないからだろう、と思い、帰省時の暇つぶし用に小説を2冊ほど買った。これで少しは文章がグレードアップ、するだろうか?

※後注:グレードアップしませんでした。小説としてはいまいちなできの本を掴んでしまったから。

あと、つゆについては完全に訳がわからんままだ。原材料が鯖節なのか亀節なのか本枯節なのかとかは別に知らなくて良いとは思う。でも、つゆが「甘い」か「辛い」かという根本的なところでさえ、理解があまりできていないのは蕎麦喰い人種として失格だ。でもねぇ、そばの返しって、「醤油」「みりん」「砂糖」で構成されているので、甘辛いのは当然なのよね。あとは、他店と比較して辛味が強いとかどうとか、コメントできれば良いのだけど。2013年はつゆにもう少し注目して蕎麦を食べ歩いていきたい。

こんな感じで、一年を総括していたのだが、やっぱり今年最後には自分の蕎麦喰いのベースを作ってくれた「蕎香」に行ってみるべきだろう、という結論になった。迷ったら基本に戻る。これに尽きる。とはいっても、結局この店を訪れると、廉価な酒と肴に惹かれてしまい、単なる「一人飲み会」になってしまうのだが。

蕎香外観

仕事納めの後にお店に向かったので、到着は19時15分になってしまった。このお店、夜の営業が17時~20時となっていて、会社帰りに立ち寄るにはちょっとしんどい。もし営業時間が18時~21時だったら来店者にとって随分余裕ができてありがたいのだが、逆にお店側にとってはよろしくないのだろう。

そんなわけで、本日は45分一本勝負と相成った。せわしないぞ、これは。蕎麦を一枚手繰るだけなら45分なんておつりが来る時間だけど、おかでんの場合酒飲んでつまみを食べて、最後に蕎麦でフィニッシュという流れだ。綿密な作戦を立てないと、時間がオーバーしてしまう。もちろん、少々の遅れはお店から許してもらえるだろうが、おかでん個人の美意識がそれを許さない。

目標:20:00(ふたまるまるまる)にてきっちり退店せよ。

ラジャー。

壁いっぱいメニュー

お客さんはゼロだった。おかでんだけ。この状態は閉店するまでずっと続き、お店を独り占めすることができた。フォークギターのBGMが静かに流れている。今年をしみじみと振り返るにはちょうど良いシチュエーション。ええと、とりあえず菊正宗ください。

相変わらずお酒を頼むわけであり、「しみじみ振り返る」なんて到底できっこない。でも、流れに身を任せ、杯を重ねるのもいいもんですよ?とセルフ弁護してみる。

それにしても今日も安定の臨時メニューたくさん。壁いっぱいに張り出されている。これ以上は物理的に追加は無理だ。ご主人のやる気は相変わらず絶好調だ。でも、最近の蕎麦屋でよくあるような、鮮魚系のメニューは扱っていない。そりゃそうだ、このお店の立地と集客力を考えたら、鮮度がすぐに落ちてしまうような食材は使うわけにはいかない。というわけで、壁に張り出されているものの大半は天ぷら系のメニューとなっていた。

菊正宗の樽酒

菊正宗の樽酒。常温でいただく。おや、お通しが昆布ですよ?これはこのお店で初めての体験かもしれない。いつもは揚げそばが付いてくるのだけど、方針転換したのかな。

よく考えてみると、このお店で食事をするときは必ず最初にビールを飲んでいたのだった。おそらく、ビールのお通しが揚げそばで、清酒のお通しが昆布なのだろう。使い分けているんだとすれば、なかなかやるな、このお店。

お酒を飲みながら、壁のメニューとにらめっこする。毎度定番のものもあるが、「おや、これは初めて見たぞ」というのも結構あって、吟味するのが楽しい。

・・・ん!?「豚汁 300円」?一体なんだこれは。蕎麦屋で豚汁って、見たことも聞いたこともない。これ、どうするんだろう。お蕎麦のおともに豚汁・・・というのは随分無理があるし、お酒の傍らに豚汁、というのもどうも具合が悪そうだ。一体どういうシチュエーションを想定して、ご主人はメニューに載せたのだろう。白いご飯が単品であれば、あとは一品料理と組み合わせて「豚汁定食」ができるのだが・・・。想像力をかき立てられる、珍妙な一品だ。

「最近、ようやく蕎麦屋で『1酒、1酒肴、1蕎麦』という注文に慣れてきたんだよな。このお店でも当然そうするぜ」

と思っていたのだが、あえなく玉砕。それぞれ一品料理の値段が安すぎるんだよなあ。「これだったら2品頼んでもいいかな?」なんてついつい頼みすぎてしまう。

結局、一品料理は3品も頼んでしまった。やり過ぎだ。それでも、3品あわせて1,100円なんだから、激安だ。

玉子焼き

最初にやって来たのは「玉子焼き」400円。できたてのふわふわ、あつあつが楽しめるから、つい頼んじゃうんだよな。蕎麦屋の玉子焼きはダシが効いていてい美味い。焼き色がついていない、真っ黄色の玉子焼きも素敵だが(「更科堀井」etc)、このお店のようにちょっと色づいているのも家庭料理の延長線といった風情で好きだ。

里芋のあげだし

「里芋のあげだし」というのは見たことがないので、頼んでみた。お値段は驚愕の250円。おいちょっと待て、値段が安い食材を使っているのだろうが、だとしても250円で商売が成り立つとは思えないぞ。この料理が一皿売れた時、一体いくらの粗利になるんだろう。微々たるものなのは間違いあるまい。よくぞメニュー化してくれた!と拍手を送る。酒をちびちび飲んでいるので、些細なことで感動してしまう。

出てきた「あげだし」は、揚げ出し豆腐の里芋版だった。揚げられた里芋が1個、お皿の中央に鎮座していらっしゃる。つゆは大根おろしが混ざっていて、食感、味わいともによろし。あと、里芋の上に生姜が載っているのもうれしい心配り。うん、これおいしいですよ。里芋一個とはいえ、300円または350円で売ってもバチはあたらないと思う。

あげだし、時間の経過とともに柔らかくなっていく。口に運ぶたびに食感が変わっていくので楽しかった。10分も経てば、怪しくとろける里芋の完成。うん、酒に合うなぁ。

生桜えびのかき揚げ

もう一つ頼んだのが、「生桜えびのかき揚げ」450円。桜えびは干したものを食べる機会が多いが、生なのは滅多に食べた事がない。面白そうだったので、頼んでみた。

出てきたかき揚げはサクサクそのもの。丸い形状から「サクボール」と名付けてみた。すいません酔ってます。

このサクボール、さすがに生の桜えびを使っているからか、堅かったり歯の隙間に挟まったりする感じがしなかった。柔らかくておいしい。でも、桜えびは干したものを使った方が風味が強いような気がする。

もり

もりアップ

蕎麦は、閉店20分前に注文した。蕎麦湯をゆっくりと楽しむにはこれくらいの時間配分をしておかないと間に合わない。我ながらベストな時間に注文したと思う。

しかし、なかなか蕎麦が出てこない。10分くらいかかってようやく届けられた。おそらく、ゆで釜の湯温が下がってしまったからだろう。「釜が来る」(沸騰する)まで時間がかかったものと思われる。お客さんがあまり多くないお店の場合、こういうところまで時間計算に含めておかないといけないのだな。これは作戦失敗だった。

閉店まであと10分!でも、これだけあれば十分蕎麦湯までたどり着く事ができるはずだ!

蕎麦は、味・香りとも弱かったが普通。麺はやや短めで、もう少し長い方が手繰る際に気持ちよい。600円なのに量が多いのはありがたい限り。うん、ここ最近蕎麦屋の食べ歩きを続けてきたので、ここの蕎麦を相対的に見る事ができるようになったぞ。少し進歩したかな。

蕎麦湯を三杯頂いた後、お会計。時計の針はちょうど20時を指していた。蕎香の45分一本勝負、無事終了。良かった良かった。これで年を越すことができそうだ。

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