越後十日町 小嶋屋 越後湯沢店

2015年03月15日
【店舗数:388】【そば食:645】
新潟県南魚沼郡湯沢町湯沢主水

妻有豚の角煮、油あげの炙り焼き、天ぷら盛り合わせ、元祖へぎそば

小嶋屋

「のっとれ!松代城」参戦のために新潟県を訪れていた。帰りの新幹線まで、越後湯沢駅ではたっぷり2時間を確保してある。それくらいの時間は、余裕で過ごせてしまう懐の深さがある駅だ。

戦を終えたのっとれ戦士たちは、いったん駅構内にある日本酒風呂で汗を流した。さてそのあと「ぽん酒館」で利き酒でもやるか、それともデパ地下以上に広い土産物屋を片っ端からしばき倒すか、まだ決めかねていた。

そんな中、同行者の一人が「何か食べよう」と提案してきた。この人はお酒が大好きな人で、前日は旅行のうれしさも相まって1日4回もお酒飲んじゃう、という豪快っぷりを見せつけてくれた。ちなみに女性。そんな人だからこそ、「ぽん酒館で時間いっぱいまで利き酒やるよ!」と宣言するものだと思っていたが、「ご飯」宣言でちょっとびっくり。

「じゃあ、へぎそばなんてのはいかがでしょう」

と提案したら、それがいい、という。では、ということでへぎそばを食べに行くことにした。幸い、駅構内にはへぎそばを提供するお店がある。

我々が先ほどまで滞在していた「まつだい」は、十日町市という自治体に属している。十日町といえば、布海苔(ふのり)つなぎの特徴を持つへぎそばが有名だ。しかし、公共交通機関を利用しての訪問だったため、へぎそば食べ歩きしようぜ、なんていう余裕はなかった。折角の名物なのに、全く食べなかったのはよく考えると残念だ。ここでへぎそばを食べるというのは大変理にかなっていると思えた。

角煮

このとき一緒だったのは僕以外に女性二人だったのだが、その両方とも「折角だから」という自分に甘い言葉と、「いいぞもっとやれ」という無責任なムチャっぷりに大変理解がある人だった。

「おっ、へぎそばは5人前まで一度に盛れるそうですよ。どんな感じか見ていたいですよね。5人前頼んじゃいましょうよ」

という思いつきに対して、「いいねえ」と即答が返ってきた。この場には3人しかいないし、しかも男性1名の女性2名だ。分別ある大人なら、「そんなに沢山あっても蕎麦がのびるし、食べきれなかったらどうするんだ」とかいって却下するだろう。しかし、三人揃って「5人前のへぎそば!見たい!」と子供のようにはしゃいでいるのだから、楽しい。

で、へぎそばだけじゃシンプルすぎるので、天ぷらの盛り合わせを付けましょう、という話は即座に決まった。しかしそれに加えて、

「栃尾の油揚げがありますね。これ、美味しいですよね」
「じゃあ、頼んじゃえば?折角なんだし」

で油揚げ追加。さらにそのあと、

「あのー、もう一ついいっすかー。角煮食べたいんすけどー」
「角煮!いいねえ。じゃあそれも」

と追加するんだからつくづくよくやる。

蕎麦喰い人種おかでん、これまで蕎麦屋の訪問のほとんどは一人だった。お酒を飲むにしろ飲まないにしろ、一人の胃袋は限りがあり、そのためあれこれ頼むことはできなかった。しかし2015年春、こうやって健啖家とともに蕎麦屋を訪問し、あれよあれよと注文が行われていく様を見ると「ああ、いい人生を送ってるものだな」と感慨深くなる。

蕎麦屋の注文ぐらいで大げさだって?いやまあ、そうなんですが。

で、真っ先に届いたのが「妻有(つまり)豚の角煮」。妻有というのは十日町市、津南町界隈の地名で、ブランド豚として売り出し中らしい。そういえば昨日、松之山温泉で250gのトンカツを食べたっけ。

これがホロホロなんだわー。口の中に入れたら、噛む前に重力に負けて豚がほぐれるんだわー。よくもまあここまで煮込まれたものよと感心。僕以外の二人はビールを頼んでいたので、「ああーいいわー」とのけぞっていた。豚+ビール=幸せ。ということらしい。

栃尾の油揚げ

新潟県の名産は続く。こちらは栃尾の油揚げを使ったあぶり焼き。

栃尾の油揚げといえば、極厚でふっくらした独特のものだ。食べる際、ぎゅっと噛みしめることになるので豆の味が楽しめておいしい。ただ、調理がへただと、スポンジを食べているようなモフモフ感だけで、あんまりおいしくはない。

今回はどっちかというと後者かな?「炙り焼き」というなら、もっとガツンと炙って表面をカリカリ煮して欲しかった。あと、味噌が甘くてちょいとアンバランス。

天ぷら盛り合わせ

天ぷら盛り合わせ。三人の紳士淑女諸君は順番こに欲しいタネをつまんでいった。

「私、海老食べたいです」

とさっさと宣言する人がいて、大変よろしかった。こういう場で、えてして「どうぞどうぞ」「いやそちらこそ」なんて遠慮の押し付け合いが始まる場面が多いが、所詮天ぷら、ここで食べられなかったら一生食べられないなんてことはないんだ。遠慮無用で、欲しいものをとっととゲットした方が全員がハッピーだ。

で、僕は、

「海老はいらんです、そのかわり舞茸もらいます」

と宣言し、二尾しかなかった海老は無事希望者のところへと引き取られていった。僕は海老天は憎く思っているクチなので、ちょうど良かった。いや、海老天美味しいっすよ?僕だって嫌いじゃない。しかし、お海老様が盛り合わせに入った瞬間にぐっと値が上がるのが悔しくて。悔しいあまりに、最近は海老天はあんまり食べなくなったな。今回は、舞茸天を食べたあとに蓮の天ぷらを食べるという草食動物っぷり。

へぎそば5人前

さて、へぎそば5人前が到着。水がしたたるので、大きなトレイの上に載っけられての登場だ。

「へぎ(片木)」というのは、この木箱のことを指す。山形の「板そば」とやっていることは一緒だ。しかし、「へぎ」に蕎麦を入れれば「へぎそば」なのではなく、やっぱり布海苔つなぎの蕎麦製法でないと「へぎそば」とは呼ばないようだ。

蕎麦粉だけでは生地がまとまりにくい蕎麦の場合、普通は小麦粉を2割から3割程度混ぜてグルテンの力を借りる。しかし小麦粉が手に入りにくい時代や地域においては、小麦粉の代わりに山芋であったり、ヤマゴボウの繊維だったりを使っていた。十日町の場合、それが布海苔という海藻だったというわけ。十日町は昔から繊維産業が盛んで、織物の糊付け用として粘りけのある布海苔が使われていたという。それを蕎麦にも使ったのが、「へぎそば」だ。

へぎそばを抱えてご満悦

さすが5人前だけあって、どっしりとしている。「手繰り」と呼ばれる独特の盛りつけ方がされていて、箸でひょいっとひとすくいできるようになっている。戸隠の「ぼっち盛り」に似ている。

1列7手繰りの、5列。今回は5人前を頼んだので、1人前は「7手繰り」だということがわかる。

ちょうど我々は来週、わんこそば対決をすることになっていた。その予行演習だとばかりにガシガシと食べてみた。それが許されるだけのボリューム感。

味はさすがに後半飽きてきた。蕎麦は麺同士のくっつき防止のためか、たっぷりの化粧水がかけられている。そのために後半つゆがかなり薄くなる。それを見越して追加のつゆは徳利で用意されているのだが、それでも蕎麦の味を満喫するにはピンぼけ感があったのは事実。

18時を過ぎると、お店の外には大行列。スキー客が日曜夜で帰宅しようとして、この店で食事をとろうとしているようだ。スキーシーズンは、食事をするのもお土産を買うのも大変。混雑する時間を避けるのがいいだろう。または、混雑覚悟で新幹線の時間をぐっと遅めに設定するか。

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